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第6章 時の揺り籠
6-25 知らなかったのか? 魔王(もんだい)からは逃げられない!
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冷静を装い3人に説明をしながら、司は背中に大量の汗をかいていた。
司の目の前を体長5センチほどのミツバチがたくさん通過していくのだ。
スズメバチではない、間違いなく見た目はミツバチである。
司の知るサイズではないが、確かに見た目はミツバチなのだ。
司は考える。これは何かと。
前に1回確認をしたときは、普通の養蜂をしていたはずだ。自分で確かめたのだから。
どうやら周りの人間は、これをおかしいと思ってはいないようだ。
周りに他の異常事態がありすぎて、こういう生き物だという認識をしているのだろう。
「橙花はこれを知っているのか? いや、知らないはずはない……だとすると、問題ないということか?」
普通1~2センチの生き物が、僅かな期間に2倍以上に成長しているのは明らかにおかしい。この巨大化には、どこかに原因があるはずである。
そんなことを考えている司よりも、3人の思考はさらに複雑だった。
詠美と澪は目の前の現実を受け入れられないようで完全にフリーズしている。
唯一、優だけは知的好奇心をくすぐられまくっていて、今はモンスタープラントことモンプラちゃんにご執心の様子である。
「司さーん! ミツバチさんのお母さんが困ってるそうなので来てくださーい!」
そして、バレて困る心配の無くなったリリは遠慮なしに自由行動していた。
それにしても、ミツバチのお母さんとは何なのか。まさか、リリはついに昆虫類とも意思疎通ができるようになったということなのか。
リリに呼ばれて向かった先にあったのは、ミツバチの巣だった。
ただし、巣箱を超越して巨大化した巣。外観は土で出来た2メートル程の要塞である。
要塞の入口からは、働き蜂が続々と飛び立ったり、帰ってきたりしている。
勿論、設置した巣箱も使われているようだ。ハチミツ提供用の別荘のような感じで。
ここまで普通のミツバチとは生態が異なると、どこをどう突っ込んでいいのかもわからない。もはや、突然変異を遂げた新種の生物である。
「あ、司様。ハチミツは順調のようです。この様子だと定期的に収穫できそうです。それにしても、このミツバチたちは賢いですね」
そうじゃないだろ、とツッコミたい気持ちを必死に抑える司。
「橙花、これは何だ? ミツバチ、なのか?」
「何とは? この前のミツバチたちですよ? 彼女たちは無事に環境に適応したようです」
頼みの綱だった橙花の感性もズレていることが判明してしまった。
環境に適応すれば、要塞のような巣を作ったり、倍以上に巨大化したりするわけがない。
「それでは、こちらのハチミツは頂きますね。私たちに何か要望があれば……リリちゃんに伝えた? そうですか。リリちゃん、後で私にも教えてくださいね」
伝令と思わしき数匹とボディーランゲージで会話する橙花。
しかし、司にはミツバチが目の前でアクロバット飛行しているようにしか見えない。
司がそんなことを考えているうちに、橙花は設置した巣箱からハチミツが滴る巣を回収し終わっていた。
「では、すぐにハチミツの絞り出しを行いますので、私はここで失礼しますね。リリちゃん、あとでよろしくね。ご褒美は、このハチミツのオヤツですよ」
「わーい!」
おやつという単語を聞いてテンションが上がり、ぴょいんぴょいんとジャンプして喜ぶリリ。この仕草は、彼女が本当にうれしい時の合図だ。
「リリ? それで、こいつらは何をしてほしいって言ってるんだ?」
司はとりあえず、この問題を棚上げした。現実逃避したとも言うが。
「そうでした! オヤツと聞いて忘れそうになっちゃいました!」
再び、伝令と思わしき数匹と会話を始めるリリ。
何やら複雑なやり取りをしているように見えるが、司には全くわからない
「えと、あっちの森にある、果実が食べたい、皮硬くて断念、お母さんが熱望、栄養他、種類たくさん、試食? お願い……」
もはや暗号である。リリにも断片的にしか理解ができていないようだ。
「要は、蜜だけじゃなくて果実が食べたいってことか? 硬い果実……あー、確かにアレは硬すぎて食べれないよな。意外とうまいんだけど」
司は彼の地で食べたヤシの実のようなものを思い出す。
舞ですら旋棍で叩き割っていたくらいの強度がある実を、ミツバチたちが食べようとしても無理だろう。
「他は、意味がわからんな……」
「司さん、どうにかしてあげられませんか?」
リリがうるうるした目で司を見つめる。
自分たちを助けてくれた司ならきっと助けてくれるはず、そんな信頼の瞳だ。応えないわけにはいかない。
「んー、んー? 何か気になるのか?」
伝令蜂の1匹が司のポケット付近を飛んでいる。中には、リリのオヤツのドライフルーツが入ったままになっていた。
リリのオヤツついでに、3分の1くらいを伝令蜂たちに渡してみると、あっという間に働き蜂が現れて巣に運んでいった。どうやら正解らしい。
「試しに色々な種類を持ってきてみるか。どれが気に入るとかわからないしな……」
そうすると、先ほどの暗号は色々な果実を食べたいということになるようだ。
随分とグルメな蜂である。
司の目の前を体長5センチほどのミツバチがたくさん通過していくのだ。
スズメバチではない、間違いなく見た目はミツバチである。
司の知るサイズではないが、確かに見た目はミツバチなのだ。
司は考える。これは何かと。
前に1回確認をしたときは、普通の養蜂をしていたはずだ。自分で確かめたのだから。
どうやら周りの人間は、これをおかしいと思ってはいないようだ。
周りに他の異常事態がありすぎて、こういう生き物だという認識をしているのだろう。
「橙花はこれを知っているのか? いや、知らないはずはない……だとすると、問題ないということか?」
普通1~2センチの生き物が、僅かな期間に2倍以上に成長しているのは明らかにおかしい。この巨大化には、どこかに原因があるはずである。
そんなことを考えている司よりも、3人の思考はさらに複雑だった。
詠美と澪は目の前の現実を受け入れられないようで完全にフリーズしている。
唯一、優だけは知的好奇心をくすぐられまくっていて、今はモンスタープラントことモンプラちゃんにご執心の様子である。
「司さーん! ミツバチさんのお母さんが困ってるそうなので来てくださーい!」
そして、バレて困る心配の無くなったリリは遠慮なしに自由行動していた。
それにしても、ミツバチのお母さんとは何なのか。まさか、リリはついに昆虫類とも意思疎通ができるようになったということなのか。
リリに呼ばれて向かった先にあったのは、ミツバチの巣だった。
ただし、巣箱を超越して巨大化した巣。外観は土で出来た2メートル程の要塞である。
要塞の入口からは、働き蜂が続々と飛び立ったり、帰ってきたりしている。
勿論、設置した巣箱も使われているようだ。ハチミツ提供用の別荘のような感じで。
ここまで普通のミツバチとは生態が異なると、どこをどう突っ込んでいいのかもわからない。もはや、突然変異を遂げた新種の生物である。
「あ、司様。ハチミツは順調のようです。この様子だと定期的に収穫できそうです。それにしても、このミツバチたちは賢いですね」
そうじゃないだろ、とツッコミたい気持ちを必死に抑える司。
「橙花、これは何だ? ミツバチ、なのか?」
「何とは? この前のミツバチたちですよ? 彼女たちは無事に環境に適応したようです」
頼みの綱だった橙花の感性もズレていることが判明してしまった。
環境に適応すれば、要塞のような巣を作ったり、倍以上に巨大化したりするわけがない。
「それでは、こちらのハチミツは頂きますね。私たちに何か要望があれば……リリちゃんに伝えた? そうですか。リリちゃん、後で私にも教えてくださいね」
伝令と思わしき数匹とボディーランゲージで会話する橙花。
しかし、司にはミツバチが目の前でアクロバット飛行しているようにしか見えない。
司がそんなことを考えているうちに、橙花は設置した巣箱からハチミツが滴る巣を回収し終わっていた。
「では、すぐにハチミツの絞り出しを行いますので、私はここで失礼しますね。リリちゃん、あとでよろしくね。ご褒美は、このハチミツのオヤツですよ」
「わーい!」
おやつという単語を聞いてテンションが上がり、ぴょいんぴょいんとジャンプして喜ぶリリ。この仕草は、彼女が本当にうれしい時の合図だ。
「リリ? それで、こいつらは何をしてほしいって言ってるんだ?」
司はとりあえず、この問題を棚上げした。現実逃避したとも言うが。
「そうでした! オヤツと聞いて忘れそうになっちゃいました!」
再び、伝令と思わしき数匹と会話を始めるリリ。
何やら複雑なやり取りをしているように見えるが、司には全くわからない
「えと、あっちの森にある、果実が食べたい、皮硬くて断念、お母さんが熱望、栄養他、種類たくさん、試食? お願い……」
もはや暗号である。リリにも断片的にしか理解ができていないようだ。
「要は、蜜だけじゃなくて果実が食べたいってことか? 硬い果実……あー、確かにアレは硬すぎて食べれないよな。意外とうまいんだけど」
司は彼の地で食べたヤシの実のようなものを思い出す。
舞ですら旋棍で叩き割っていたくらいの強度がある実を、ミツバチたちが食べようとしても無理だろう。
「他は、意味がわからんな……」
「司さん、どうにかしてあげられませんか?」
リリがうるうるした目で司を見つめる。
自分たちを助けてくれた司ならきっと助けてくれるはず、そんな信頼の瞳だ。応えないわけにはいかない。
「んー、んー? 何か気になるのか?」
伝令蜂の1匹が司のポケット付近を飛んでいる。中には、リリのオヤツのドライフルーツが入ったままになっていた。
リリのオヤツついでに、3分の1くらいを伝令蜂たちに渡してみると、あっという間に働き蜂が現れて巣に運んでいった。どうやら正解らしい。
「試しに色々な種類を持ってきてみるか。どれが気に入るとかわからないしな……」
そうすると、先ほどの暗号は色々な果実を食べたいということになるようだ。
随分とグルメな蜂である。
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