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第6章 時の揺り籠

6-24 3色娘たちの受難?

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 優がストライキの声をあげたので、今日の訓練はこれで終わりになった。

 宗司は残念そうな顔をしていたが、舞はだろうなという表情だった。舞は3人と付き合いが長いので、だいたい何を考えているのかわかっているのだろう。

 休み時間を利用して、司は3人から事情聴取することにしたのだが……

「司さん、司さん、私たちは守秘義務を要求します」

 澪が訳のわからないことを主張してきた。しかし、例の契約があるので、そう言われてしまえば対応せざるを得ないのが実情だ。

 ということで、舞の家で部屋を一室借りて話しを聞くことになった。


 調書をまとめると、

 詠美はとりあえずやってみよう派、優は無理だからやめよう派、澪は別の方法を考えよう派に分かれていることが判明した。
 3人の性格がよくわかるが、割とバランスの良い組み合わせのようだ。

「それで、結局、何が目的なんだ? お前たちのことだから理由があるだろ?」

「えへへ? 何のことですか~? 澪、わっかんないな~」

 解り易く白を切る澪だが、わざとらし過ぎて全然笑えない。そもそも、この3人が舞を遠ざけるときはそれなりの理由があるはずなのである。

「はぁ、話したくないならいいや。おつかれさん~」

 リリたちが舞と待っているはずなので、司はさっさと切り上げることにした。

「あ、待って、待って待って~! こういう時は根気強く話を聞いてくれるのが男の甲斐性じゃないですか~。そんなんじゃモテませんよ~?」

 相変わらず面倒くさい女である。いや、本心ではなく司の事を試しているのだろうけど。

「面倒くさいヤツ……このくだりを何回やるんだよ。俺の性格知ってるなら、本題を話せ。本題を。リリを待たせてるんだから早くしろ」

 そして、舞以外の女の子に対しては、かなり容赦のない対応をする司である。

「ええー、面倒くさいって……あ、ウソウソ。話しますって~」


「ったく、そう言う事なら正直に言えよな」

 話を聞いてみれば、本当に単純なことだった。

「だって~、心配になるじゃないですか~。舞ちゃんが何をしてるか、友達として気になるじゃないですか~。私たちは親友なんですから~」

「危ない事をしてなければ、私たちも別に気にしないんだけど。舞は中身を話してくれないし。帰ってきたら、帰ってきたで生傷が増えてるし」

「興味津々、真相解明」

 つまりは舞が心配、そう言う事である。本心かはわからないが。

「それで、舞を外した理由は?」

「だって、恥ずかしいじゃないですか~。舞ちゃんが大切だから心配だなんて~。ケガをするような危ないことは辞めてほしいなんて~」

 頬に手を当てて、クネクネしながら言うようなセリフではない。断じてない。

「お前ら、それは舞に言ってやれよ……」

 恥ずかしいから本人には言えない。だけど、本当のことを知りたい。
 そこで出た結論が、いっそのこと司に聞いてしまおう事だったらしい。実に回りくどい。

「おかしいとは思ってたんだよな。俺の仕事のことを知りたいとか言うから、何を企んでるのかと思ったくらいだし」

 尤も、舞に聞いたとしても教えてくれなかっただろうし、いきなり押しかけて説明しろと言われてもダメだっただろう。ある意味では正解だったのかもしれない。

「まぁいいや、見たほうが速いし。じゃ、週末に俺の家に集合で」

 3人に有無を言わせない内に、サッサと決めてしまう司。
 最後にぼそっと呟いた、手が足りなくなっていたし丁度いい、というセリフは誰にも聞こえなかった。


 そして、約束の週末になって3人が干支神家で目にしたものは……、

「ははは、何これ……ここって地球? 別の惑星とかじゃないよね?」

「それとも特殊メイクとか機械とか、アトラクションか何かでしょうか~? いえ、これはそんな陳腐なものじゃないですよね」

「こっちのは植物? それとも生物? 実に興味深い」

 彼女たちが連れてこられたのは干支神家のプラントエリア。
 そう、目の前にいるのは、地球で存在を確認されていない生物ばかり。

 なぜか|日本語(・・・)を話す深緑色をした狼たち。
 サイのような亀のような、全身をびっしりと硬い鱗で覆われた陸上生物。
 根っこが絡まり合うような形状をした歩行する巨大植物、とその子供。しかも肉食。
 頭部は龍そのものだが、完全に姿形は亀のような謎の生き物。
 大凡、日本には生えていないとしか思えないような植物群。
 その植物群へ向かって飛んでいく、5センチほどの巨大なミツバチ。

 もはや手遅れとなった、小竜と農狼たちによって魔改造されまくった現代の魔境である。

 極め付けは、

「司、どこへいっておったのだ? 馬鹿娘がビービー泣いて大変だったぞ。今は泣き疲れて、わらわの腹で寝ておるが、起きたら頼むぞ?」

 これまた、なぜか日本語を流暢に話している巨大なペンギン。お腹の袋には珍しくクーシュしかいない。残りの2匹はどこへいったのか。
 それにしてもやけに人間臭い困った表情をしている。顔はペンギンだが。クーシュの子守が相当堪えたらしい。

「さて、これを知ったからには、もう逃げられないからな?」

 完全に脳のキャパオーバーを迎えた3人に、やけに良い笑顔で言う司。
 その表情は、きっと3人には悪魔の微笑みに見えたことだろう。
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