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第二章 謎の組織、聖王国へ使者として赴く
悪事41 謎の組織、竜鱗族の生態調査を開始する
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『統領』たちの星間航行船から飛び立った物体は、空中を音速で飛行して指定された座標へと真っすぐに飛んでいく。
これは『統領』たちが言うところの偵察用同調個体と呼ばれる機体で、現在これを操作しているのは『教授』。つまるところの遠隔操作が出来るロボットというやつである。
『目的座標付近に到達。水平移動を減速し、降下します。降下完了と同時にステルスモードを起動。遮断項目は光学、熱源を選択。更に、オートモードを終了してパイロットモードへ移行します』
銀色の機影は、空中から大地に降り立つと同時に景色に溶け込んで見えなくなる。
(ふむふむ、やはり湿地地帯が生息域か。気温は16度、この時間にしては随分と低いな。水深は……3~50センチ、これだけ水があるとステルスの意味がほとんどなくなるから、念のため物理兵装を用意しておこう)
右手を手刀のように変形させてから、『教授』をフィードバックしている遠隔ロボットは滑らかに二足歩行して湿原を進んでいく。
歩行には問題はないが、歩くたびに水がザバザバと音と波紋を立てているので何かがいるのは丸わかり。
しかし、ステルスモードのため、外部からは透明な何かが動いていることしかわからないので余計に不気味である。
(『統領』からの依頼は竜鱗族の集落の発見と調査だけど、道中に面白いモノがあれば収集して行こう。折角、ここまで遠出したんだから、ついでにね!)
初めて来た土地に躊躇することなく、遠隔ロボットはずんずんと道なき道を進み、複数の熱源が集合している場所へ到達した。
まずは、不用意に近づくことなく、遠巻きに集落と思わしきものを眺めながら視覚的な情報を集めることにしたようだ。
(あれは木の枝をドーム状に組み上げて、内部を住居にしているのかな? 外部に入口は見当たらないから、出入りは水中か)
そこには、不自然に木が積み上げられた物体がいくつも点在していた。
入口は見当たらず、木のドーム近くの水面から、大人の竜鱗族と思われる大型の爬虫類が出入りをしているのが確認された。
まるでビーバーのような生態である。
(熱源反応は巣の内部に複数あるのに、出入りする個体は少ないな。外に出てるのは、オスの個体だけ? たぶん食料の調達のためなんだろうけど……メスと子供は、基本的に巣から動かない)
『教授』は外から確認した内容を元に考察を進める。
(『統領』が保護したのは、子供だけを10体。しかも、気絶して、気づいたら知らない場所に移動していたと聴取が取れている。基本的に巣から出てこない子供だけが、なぜ? これは少し理由を探ったほうが良さそうだ)
長期戦になりそうな予感を感じつつも、久しぶりのフィールドワークを生き生きと熟す『教授』は楽しそうだった。
一方、島から放逐されたド・クダラン帝国民たちは、全員がお通夜のようなテンションでもと来た道を帰っている途中だった。
行きは魔導船15隻で悠々と行軍していた500名あまりの兵士たちだったが、帰りは1隻でぎゅうぎゅうのすし詰め状態。
しかも、勝利の凱旋などではなく、圧倒的な敗戦による撤退。
更には、全員が脳内にバイオチップなるものを埋めこまれて、まるで生きた心地がしないという有様では、それもしょうがないのかもしれない。
「……というのが、『参謀』から私が聞いた内容だ。いいか? 今後は彼女たちに敵対してはならない。そして、我々の頭には仕組みの分からない爆雷があるものと思え。全員が、だ。ガリウスからの情報では複数の条件付けを施すことができ、設定された条件を違えると即死ということだ」
「では、去り際に渡された頭のない3体の遺体は……」
「そうだ。ガリウスの仲間と、諜報部隊から同行させた者の成れの果て、と聞いている。彼らの場合は敵対行動、島からの逃亡が条件らしい」
「将軍……皇帝陛下への報告は如何しますか? このような荒唐無稽な内容を素直に報告して、信じてもらえるとはとても思えません」
部下からの尤もな指摘を受けて、目を瞑って考えるドドルガーン将軍。
正直な話、彼にもどうすればいいのかがわからなかった。
これほどの敗戦にも関わらず、幸いにも戦死者は軽微だった。
しかし、貸与された魔導船を14隻も失い、生き残った兵士たち全員を人質に取られた状態で本国に帰るようなものである。
「うそだ……うそだ……私が負けたなんて……うそだ……うそだ……」
そして、極め付けなのは、第二皇子の精神状態だ。
長期間意識を失っていたが、ついさっき目を覚ました。
しかし、目を覚ますなり、ブリッジの隅で蹲り、頭を抱えてブツブツと呟き始めた。
今回の遠征で彼らが得たものは、竜の島には悪魔が棲んでいるという情報だけ。
(私の命はどうなっても構わない。しかし、巻き添えにしてしまった兵士たちの身の安全だけは何としても守らねばならぬ。それが、今回の皇子を止められなかった、私の責任だ)
帝国に着くまでには何らかの結論を出さなければならないド・クダラン帝国軍だったが、答えの見えない議論が続くのだった。
調査を開始して1日ほどが経過した。
遠隔ロボットにダイブした『教授』は不眠不休で動き続けていた。
彼のフィールドワークである生物調査の基本は、ひたすら観察と考察すること。興味のある事ならば、これくらいは朝飯前なのである。
周辺に分布していた集落を複数調査した『教授』だったが、事前の情報とは異なる不自然な点をいくつも発見してしまった。
「これは……『統領』に報告して判断を仰ぐ必要があるね」
すぐさま5人専用のチャット回線を開いてコールを開始した。題名は、竜鱗族に関する緊急確認事項と記して。
『む、どうした? 何か問題でもあったか?』
30秒ほどで『統領』と『参謀』から応答があったのだった。
これは『統領』たちが言うところの偵察用同調個体と呼ばれる機体で、現在これを操作しているのは『教授』。つまるところの遠隔操作が出来るロボットというやつである。
『目的座標付近に到達。水平移動を減速し、降下します。降下完了と同時にステルスモードを起動。遮断項目は光学、熱源を選択。更に、オートモードを終了してパイロットモードへ移行します』
銀色の機影は、空中から大地に降り立つと同時に景色に溶け込んで見えなくなる。
(ふむふむ、やはり湿地地帯が生息域か。気温は16度、この時間にしては随分と低いな。水深は……3~50センチ、これだけ水があるとステルスの意味がほとんどなくなるから、念のため物理兵装を用意しておこう)
右手を手刀のように変形させてから、『教授』をフィードバックしている遠隔ロボットは滑らかに二足歩行して湿原を進んでいく。
歩行には問題はないが、歩くたびに水がザバザバと音と波紋を立てているので何かがいるのは丸わかり。
しかし、ステルスモードのため、外部からは透明な何かが動いていることしかわからないので余計に不気味である。
(『統領』からの依頼は竜鱗族の集落の発見と調査だけど、道中に面白いモノがあれば収集して行こう。折角、ここまで遠出したんだから、ついでにね!)
初めて来た土地に躊躇することなく、遠隔ロボットはずんずんと道なき道を進み、複数の熱源が集合している場所へ到達した。
まずは、不用意に近づくことなく、遠巻きに集落と思わしきものを眺めながら視覚的な情報を集めることにしたようだ。
(あれは木の枝をドーム状に組み上げて、内部を住居にしているのかな? 外部に入口は見当たらないから、出入りは水中か)
そこには、不自然に木が積み上げられた物体がいくつも点在していた。
入口は見当たらず、木のドーム近くの水面から、大人の竜鱗族と思われる大型の爬虫類が出入りをしているのが確認された。
まるでビーバーのような生態である。
(熱源反応は巣の内部に複数あるのに、出入りする個体は少ないな。外に出てるのは、オスの個体だけ? たぶん食料の調達のためなんだろうけど……メスと子供は、基本的に巣から動かない)
『教授』は外から確認した内容を元に考察を進める。
(『統領』が保護したのは、子供だけを10体。しかも、気絶して、気づいたら知らない場所に移動していたと聴取が取れている。基本的に巣から出てこない子供だけが、なぜ? これは少し理由を探ったほうが良さそうだ)
長期戦になりそうな予感を感じつつも、久しぶりのフィールドワークを生き生きと熟す『教授』は楽しそうだった。
一方、島から放逐されたド・クダラン帝国民たちは、全員がお通夜のようなテンションでもと来た道を帰っている途中だった。
行きは魔導船15隻で悠々と行軍していた500名あまりの兵士たちだったが、帰りは1隻でぎゅうぎゅうのすし詰め状態。
しかも、勝利の凱旋などではなく、圧倒的な敗戦による撤退。
更には、全員が脳内にバイオチップなるものを埋めこまれて、まるで生きた心地がしないという有様では、それもしょうがないのかもしれない。
「……というのが、『参謀』から私が聞いた内容だ。いいか? 今後は彼女たちに敵対してはならない。そして、我々の頭には仕組みの分からない爆雷があるものと思え。全員が、だ。ガリウスからの情報では複数の条件付けを施すことができ、設定された条件を違えると即死ということだ」
「では、去り際に渡された頭のない3体の遺体は……」
「そうだ。ガリウスの仲間と、諜報部隊から同行させた者の成れの果て、と聞いている。彼らの場合は敵対行動、島からの逃亡が条件らしい」
「将軍……皇帝陛下への報告は如何しますか? このような荒唐無稽な内容を素直に報告して、信じてもらえるとはとても思えません」
部下からの尤もな指摘を受けて、目を瞑って考えるドドルガーン将軍。
正直な話、彼にもどうすればいいのかがわからなかった。
これほどの敗戦にも関わらず、幸いにも戦死者は軽微だった。
しかし、貸与された魔導船を14隻も失い、生き残った兵士たち全員を人質に取られた状態で本国に帰るようなものである。
「うそだ……うそだ……私が負けたなんて……うそだ……うそだ……」
そして、極め付けなのは、第二皇子の精神状態だ。
長期間意識を失っていたが、ついさっき目を覚ました。
しかし、目を覚ますなり、ブリッジの隅で蹲り、頭を抱えてブツブツと呟き始めた。
今回の遠征で彼らが得たものは、竜の島には悪魔が棲んでいるという情報だけ。
(私の命はどうなっても構わない。しかし、巻き添えにしてしまった兵士たちの身の安全だけは何としても守らねばならぬ。それが、今回の皇子を止められなかった、私の責任だ)
帝国に着くまでには何らかの結論を出さなければならないド・クダラン帝国軍だったが、答えの見えない議論が続くのだった。
調査を開始して1日ほどが経過した。
遠隔ロボットにダイブした『教授』は不眠不休で動き続けていた。
彼のフィールドワークである生物調査の基本は、ひたすら観察と考察すること。興味のある事ならば、これくらいは朝飯前なのである。
周辺に分布していた集落を複数調査した『教授』だったが、事前の情報とは異なる不自然な点をいくつも発見してしまった。
「これは……『統領』に報告して判断を仰ぐ必要があるね」
すぐさま5人専用のチャット回線を開いてコールを開始した。題名は、竜鱗族に関する緊急確認事項と記して。
『む、どうした? 何か問題でもあったか?』
30秒ほどで『統領』と『参謀』から応答があったのだった。
応援ありがとうございます!
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ボスはいつまで街で遊んでる気ですかね?それと何者にも縛られずなんですよね?王族とか貴族に囲われ気味なんですが!
mayayaさん
感想ありがとうございます(;´∀`)
色々なしがらみはありますが基本的に自分の好きなように行動するので、もう少しお待ちください。
そろそろ別のシーンに移行します。
面白い‼️一気に読み進めてしまいました。これからの展開に期待しています。頑張ってください。
ユウキさん
ありがとうございます(*´ω`*)
面白いと言って頂けるだけで執筆を頑張れます(∩´∀`)∩
7日金曜日あたりに次回更新予定です。もう少しだけお待ちください。