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第二章 謎の組織、聖王国へ使者として赴く
悪事33 謎の組織、ド・クダラン帝国の侵略を待ち構える
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『統領』から連絡を受けた拠点のメンバーは、無人偵察機が捉えた艦影を見ながら作戦会議中であった。
「この進路は確実にここを目指してきていますね。予測では6時間後に上陸というところですか。どことなく前回きた魔導船とやらと形状が似ている気がしますが……あの下働きの4人の所属国はド・クダラン帝国でしたっけ?」
「そうだ。話を聞いたやつがそう言っていた。身体に聞いたから間違いないだろう。だが、あの4人が裏切ったわけではないと思う。俺が見ている限りは真面目に働いているし、グロウンバードにも懐かれている」
「『怪人』はやけにあの4人を買っていますね……私情はよくありませんよ? とはいうものの、今回の件は別口でしょう。もしくは最初から捨て石で使われたか、です。恐らく、トカゲが出かけたのを見計らって、でしょうね」
魔導船と呼ばれる戦艦が複数向かってきているのを見ながら、全く緊迫した雰囲気のない会話をしている『参謀』と『怪人』だった。
「あの魔導船って調べたけど、興味があったのは駆動機関くらいかな? 魔力結晶をエネルギーに変換する未知のシステムってことは評価できるけど、変換効率悪いし、事故った時のリスクが大きいよ。それに一番の欠点は魔力結晶が入手できなくなったらどうするのさ? ってところかな」
「私はそういうの興味ない。『統領』はB戦級まで許可してくれたんだから、さっさと吹き飛ばせばいい。それよりも、私は犬モフ族の子供たちの健康診断に行ってくるから、後は任せる。あでゅー」
「おいおい、相手が何者かもわかってないのにいきなり吹き飛ばすのは不味くない? っと、もうそんな時間か、行ってらっしゃい、子供たちによろしくね」
「うむ、もふもふぎゅーぎゅーは『医者』の特権。えっへん」
普段ならこういうことに人一番興味を示す『教授』だが、前回拿捕した魔導船でシステムを調べ終わっているのでテンションは低い。『医者』に至っては、子供たちの健康診断のほうが大切と宣う始末だった。
「見る限り、これが指揮官の船のようですね……自分の居場所を敵に教えるなんてバカですか? あ、もしかしてそれを誘ったフェイクでしょうか? そうだとしたら中々の策士ですね」
「『参謀』どうする?」
「まずは目的を調べましょう。私たちに有益になりそうなら交渉を、敵対するようなら降伏勧告後に殲滅ですね。では、2時間後に『怪人』はC戦級兵装で待機していてくれますか?」
「わかった。それまでにあの船の旗の映像を4人に確認してもらってくる。もしかしたら何か教えてくれるかもしれない」
各自、自分のやるべき仕事を粛々とこなすメンバーたちだった。
作戦会議から2時間後。
「犬モフ族の子供たちは健康そのものだった。男たちの中には少し肌荒れしている人がいたから、仕事が終わって身体を洗ったら軟膏を塗る様に渡してきた。洗浄乾燥機のシャンプーを彼らの身体に合ったものに配合し直す必要があるかも」
「おつかれさま。そっかー、一応犬用の保湿シャンプーを目指して作ったつもりだけどダメだったか。んじゃ、後でカルテ見せて、少し成分弄ってみるから」
もはや、完全に魔導船群のことを気にしなくなってしまった2人。
『獣舎担当の4人から確認が取れた。ド・クダラン帝国軍の戦船で間違いないようだ。『参謀』が調べた人相から数名の人物も割れた。恐らくだが、頗る評判の悪いのが1名いて、他はそれの御守りに巻き込まれた可能性が高いとのこと。詳細はデータで』
「ご苦労様、『怪人』はそのまま海岸線へ移動して待機していてください。こちらでファーストコンタクトを試みます。もし、相手側に攻撃の兆候があれば、即座に殲滅戦に移行しますので回線は開いたままで」
『了解、海岸線へ移動する』
『参謀』と『怪人』の勤労ぶりに対して、『教授』と『医者』の奔放ぶりが酷いように感じられるかもしれない。
しかし、本来、前者の2人は主に指揮や戦闘などを熟す前線の担当で、後者の2人は解析や兵装開発などの裏方の担当なのである。
不向きなことは敢えてせずに、自分の適性のあることをプロフェッショナルまでとことん突き詰める、これがこの5人のモットーなのだ。
ド・クダラン帝国軍魔導艦隊、指揮戦船内。
ブリッジに当たる場所では、『統領』たちの拠点をどう攻めるかで揉めていた。
「何? では、お前はこのまま島を攻めることを良しとしないというのか? それはなぜだ? 邪竜が不在なのを狙ってきたのに、将軍ともあろう者がここまで来て二の足を踏むとは、臆したか?」
「皇子、そうではありません。全軍で上陸するよりも先に、情報収集を優先するべきです。斥候として派遣した7人が誰1人戻らないのです。少なくとも2人は、他の何よりも持ち帰る情報を重要視する諜報部隊の精鋭ですぞ? 船のシグナルが消えたことも不可解ですし、島で何か問題があったに違いありません」
「バカが、それも含めて私が成果を持ちかえれば良いだけだ。父上もそれを望んでいるはずだ。それに我が帝国が誇る魔導船が15隻と精鋭たちだぞ? これだけの戦力があれば小国を落とすことすらも容易い。たかが未開の島の1つで躊躇するようなことではない」
指揮官席に座るのは装飾多めの煌びやかな服を身に纏った若い男。
これがド・クダラン帝国の第一王子である。その顔立ちは整っており、光を受けて靡く金糸のような髪は美しいのだが、知性があまり感じられないのが残念だった。
その王子に苦言を呈しているのが、この軍を実質に指揮している帝国将軍である。
こちらは引き締まった体格に質実剛健の軍服、胸元には唯一の装飾である階級を示す勲章が光る。律儀に刈り込まれた髭が年齢相応の威厳を醸し出し、鋭い眼光は歴戦の戦士を彷彿とさせる。
「おい、邪竜の反応はどうだ? 同じように周囲も索敵しろ」
「……現在、島に竜族に相当する反応はありません。同様に島の周囲にも見られません。先般の情報通り、ニブルタール王国の方角へ移動したものと思われます」
「ほらみろ、唯一の懸念事項だった邪竜は不在だ。それに今回の目的は邪竜討伐ではなく、魔素結晶の調達だ。竜は魔素結晶の鉱脈に住み着く傾向があるからな。長らく島から離れなかったからには相当の規模の鉱脈があるのだろう。我らが魔導船団を維持するにはコレが必要不可欠だからな」
(それだ、私がわからないのは数百年も島から出なかった竜が、なぜ今になって外へ出る様になったのだ? それに音信の途絶えた先発隊。どうも嫌な予感しかしない。昔、戦場で感じたものよりも遥かに気持ちが悪い感覚だ)
「作戦に変更はない。いいな?」
それ以降は、人の話を聞かなさそうな第一皇子へ苦言を呈するものは誰もいなくなり、刻一刻と時間だけが過ぎていったのだが、突如としてその場が慌ただしくなる。
「シグナル不明の回線を検知しました! こちらから応答していないのに、どうして……回線開きます!」
ブリッジ正面に映し出されたのは、1人が映った映像。
黒猫をモチーフにした被り物をしていて、口元だけが素肌を露出している。
『これであちら側に繋がったのですか? ん、おほん、こんにちは、皆さま。私たちはあなた方が向かっている島を拠点としているものです』
「どういうことだ? この魔導船には外部から簡単にはアクセスができないはずだぞ?」
『先日、ならず者たちが乗ってきた船を解析させてもらいましたので、あなたたちが言う回線というのをこちらから強制的に開くくらいは容易なことです。それよりも、あなた方は、あのならず者たちの上司ということでよろしいのでしょうか?』
「ならず者たちというのは誰の事だかわからんな。私たちは目的があって島を訪れようとしているだけだ」
(相手は、古代魔導帝国の遺産の仕組みを短時間で理解してしまう者か……)
『認めないのであれば、それはそれで結構です。ド・クダラン帝国アホンダーラ第一皇子殿下、ドドルガーン将軍。では、改めて同じ問いをすることに致しましょう。現在、この島は私有地となっていますのでお引き取りを。それ以上近づくならば命の保証は致しません』
「はあ? 帰れと言われて素直に帰るやつがいるのか? 私たちにも目的があると言っただろう? それに、いつから島がお前たちの私有地になったのだ? そんな話、私たちは聞いたこともないぞ」
(私たちを知っているということは、初めから何か目的があるな? しかし、あの見た目と声、恐らく20代前半くらいだろう。にも拘わらず、この胆力は何だ? そこらへんにいるような小娘とはとても思えん……これではまるで)
『あなたたちの目的というのは私たちには関係ありません。まぁ、初めから交渉できると思ってはいませんでしたから問題はありません。それでは……』
『ま、待ってくれ! ドドルガーン将軍! ガリウスです! この島はダメです、竜よりも凶悪な人間がいるんです! その証拠に俺たちは為す術もなくやられて拘束されました。今回は引いてください! お願いし……ぎゃぁあああああ』
『参謀』の映像に横から割り込んできたのは、獣舎で働いている男の1人。
どうやら帝国の将軍に危険を知らせるつもりだったようだが、脳内のバイオチップが反応して地面を転げまわる結果となった。
『あらあら、私たちに不利益になるような行動をすると死にますよ?』
「なるほど、お前たちは我が帝国民を人質に取り、剰え危害を加えたのか。それは許されないことだ。すぐに全員を解放して、私たちを島に受け入れろ。そうすれば、刑を軽くすることも吝かではない」
(くそっ、この女の狙いはこれか! 私たちにカマをかけて関係者ということを認めさせることが目的だったのか! そうするとガリウスが先走ることもわかって泳がされたか……あの年でそれほどの策略家、これはまずいな)
「お待ちください、皇子! あの者たちに失礼があったのかもしれません! 軽々に物事を進めては、まとまるものもまとまらなくなりますぞ!」
「将軍こそ何を言っている? あいつらは既に罪人。我が帝国民を貶めたのだぞ? 島へ行き、全員を拘束して帝国にて然るべき裁きを受けさせる必要があるではないか。おい、早く降伏しろ。私はド・クダラン帝国のア・ホンダーラ皇子だぞ」
(このバカ皇子が! それが相手の思うつぼだとなぜわからん!? 皇帝陛下もなぜこの無能に全権を委譲したのだ!)
『はい、それでは宣戦布告と受け取りました。ふふふ、『怪人』やりなさい』
楽しそうな『参謀』の合図と同時に、耳をつんざく様な爆音が次々と上がった。
「この進路は確実にここを目指してきていますね。予測では6時間後に上陸というところですか。どことなく前回きた魔導船とやらと形状が似ている気がしますが……あの下働きの4人の所属国はド・クダラン帝国でしたっけ?」
「そうだ。話を聞いたやつがそう言っていた。身体に聞いたから間違いないだろう。だが、あの4人が裏切ったわけではないと思う。俺が見ている限りは真面目に働いているし、グロウンバードにも懐かれている」
「『怪人』はやけにあの4人を買っていますね……私情はよくありませんよ? とはいうものの、今回の件は別口でしょう。もしくは最初から捨て石で使われたか、です。恐らく、トカゲが出かけたのを見計らって、でしょうね」
魔導船と呼ばれる戦艦が複数向かってきているのを見ながら、全く緊迫した雰囲気のない会話をしている『参謀』と『怪人』だった。
「あの魔導船って調べたけど、興味があったのは駆動機関くらいかな? 魔力結晶をエネルギーに変換する未知のシステムってことは評価できるけど、変換効率悪いし、事故った時のリスクが大きいよ。それに一番の欠点は魔力結晶が入手できなくなったらどうするのさ? ってところかな」
「私はそういうの興味ない。『統領』はB戦級まで許可してくれたんだから、さっさと吹き飛ばせばいい。それよりも、私は犬モフ族の子供たちの健康診断に行ってくるから、後は任せる。あでゅー」
「おいおい、相手が何者かもわかってないのにいきなり吹き飛ばすのは不味くない? っと、もうそんな時間か、行ってらっしゃい、子供たちによろしくね」
「うむ、もふもふぎゅーぎゅーは『医者』の特権。えっへん」
普段ならこういうことに人一番興味を示す『教授』だが、前回拿捕した魔導船でシステムを調べ終わっているのでテンションは低い。『医者』に至っては、子供たちの健康診断のほうが大切と宣う始末だった。
「見る限り、これが指揮官の船のようですね……自分の居場所を敵に教えるなんてバカですか? あ、もしかしてそれを誘ったフェイクでしょうか? そうだとしたら中々の策士ですね」
「『参謀』どうする?」
「まずは目的を調べましょう。私たちに有益になりそうなら交渉を、敵対するようなら降伏勧告後に殲滅ですね。では、2時間後に『怪人』はC戦級兵装で待機していてくれますか?」
「わかった。それまでにあの船の旗の映像を4人に確認してもらってくる。もしかしたら何か教えてくれるかもしれない」
各自、自分のやるべき仕事を粛々とこなすメンバーたちだった。
作戦会議から2時間後。
「犬モフ族の子供たちは健康そのものだった。男たちの中には少し肌荒れしている人がいたから、仕事が終わって身体を洗ったら軟膏を塗る様に渡してきた。洗浄乾燥機のシャンプーを彼らの身体に合ったものに配合し直す必要があるかも」
「おつかれさま。そっかー、一応犬用の保湿シャンプーを目指して作ったつもりだけどダメだったか。んじゃ、後でカルテ見せて、少し成分弄ってみるから」
もはや、完全に魔導船群のことを気にしなくなってしまった2人。
『獣舎担当の4人から確認が取れた。ド・クダラン帝国軍の戦船で間違いないようだ。『参謀』が調べた人相から数名の人物も割れた。恐らくだが、頗る評判の悪いのが1名いて、他はそれの御守りに巻き込まれた可能性が高いとのこと。詳細はデータで』
「ご苦労様、『怪人』はそのまま海岸線へ移動して待機していてください。こちらでファーストコンタクトを試みます。もし、相手側に攻撃の兆候があれば、即座に殲滅戦に移行しますので回線は開いたままで」
『了解、海岸線へ移動する』
『参謀』と『怪人』の勤労ぶりに対して、『教授』と『医者』の奔放ぶりが酷いように感じられるかもしれない。
しかし、本来、前者の2人は主に指揮や戦闘などを熟す前線の担当で、後者の2人は解析や兵装開発などの裏方の担当なのである。
不向きなことは敢えてせずに、自分の適性のあることをプロフェッショナルまでとことん突き詰める、これがこの5人のモットーなのだ。
ド・クダラン帝国軍魔導艦隊、指揮戦船内。
ブリッジに当たる場所では、『統領』たちの拠点をどう攻めるかで揉めていた。
「何? では、お前はこのまま島を攻めることを良しとしないというのか? それはなぜだ? 邪竜が不在なのを狙ってきたのに、将軍ともあろう者がここまで来て二の足を踏むとは、臆したか?」
「皇子、そうではありません。全軍で上陸するよりも先に、情報収集を優先するべきです。斥候として派遣した7人が誰1人戻らないのです。少なくとも2人は、他の何よりも持ち帰る情報を重要視する諜報部隊の精鋭ですぞ? 船のシグナルが消えたことも不可解ですし、島で何か問題があったに違いありません」
「バカが、それも含めて私が成果を持ちかえれば良いだけだ。父上もそれを望んでいるはずだ。それに我が帝国が誇る魔導船が15隻と精鋭たちだぞ? これだけの戦力があれば小国を落とすことすらも容易い。たかが未開の島の1つで躊躇するようなことではない」
指揮官席に座るのは装飾多めの煌びやかな服を身に纏った若い男。
これがド・クダラン帝国の第一王子である。その顔立ちは整っており、光を受けて靡く金糸のような髪は美しいのだが、知性があまり感じられないのが残念だった。
その王子に苦言を呈しているのが、この軍を実質に指揮している帝国将軍である。
こちらは引き締まった体格に質実剛健の軍服、胸元には唯一の装飾である階級を示す勲章が光る。律儀に刈り込まれた髭が年齢相応の威厳を醸し出し、鋭い眼光は歴戦の戦士を彷彿とさせる。
「おい、邪竜の反応はどうだ? 同じように周囲も索敵しろ」
「……現在、島に竜族に相当する反応はありません。同様に島の周囲にも見られません。先般の情報通り、ニブルタール王国の方角へ移動したものと思われます」
「ほらみろ、唯一の懸念事項だった邪竜は不在だ。それに今回の目的は邪竜討伐ではなく、魔素結晶の調達だ。竜は魔素結晶の鉱脈に住み着く傾向があるからな。長らく島から離れなかったからには相当の規模の鉱脈があるのだろう。我らが魔導船団を維持するにはコレが必要不可欠だからな」
(それだ、私がわからないのは数百年も島から出なかった竜が、なぜ今になって外へ出る様になったのだ? それに音信の途絶えた先発隊。どうも嫌な予感しかしない。昔、戦場で感じたものよりも遥かに気持ちが悪い感覚だ)
「作戦に変更はない。いいな?」
それ以降は、人の話を聞かなさそうな第一皇子へ苦言を呈するものは誰もいなくなり、刻一刻と時間だけが過ぎていったのだが、突如としてその場が慌ただしくなる。
「シグナル不明の回線を検知しました! こちらから応答していないのに、どうして……回線開きます!」
ブリッジ正面に映し出されたのは、1人が映った映像。
黒猫をモチーフにした被り物をしていて、口元だけが素肌を露出している。
『これであちら側に繋がったのですか? ん、おほん、こんにちは、皆さま。私たちはあなた方が向かっている島を拠点としているものです』
「どういうことだ? この魔導船には外部から簡単にはアクセスができないはずだぞ?」
『先日、ならず者たちが乗ってきた船を解析させてもらいましたので、あなたたちが言う回線というのをこちらから強制的に開くくらいは容易なことです。それよりも、あなた方は、あのならず者たちの上司ということでよろしいのでしょうか?』
「ならず者たちというのは誰の事だかわからんな。私たちは目的があって島を訪れようとしているだけだ」
(相手は、古代魔導帝国の遺産の仕組みを短時間で理解してしまう者か……)
『認めないのであれば、それはそれで結構です。ド・クダラン帝国アホンダーラ第一皇子殿下、ドドルガーン将軍。では、改めて同じ問いをすることに致しましょう。現在、この島は私有地となっていますのでお引き取りを。それ以上近づくならば命の保証は致しません』
「はあ? 帰れと言われて素直に帰るやつがいるのか? 私たちにも目的があると言っただろう? それに、いつから島がお前たちの私有地になったのだ? そんな話、私たちは聞いたこともないぞ」
(私たちを知っているということは、初めから何か目的があるな? しかし、あの見た目と声、恐らく20代前半くらいだろう。にも拘わらず、この胆力は何だ? そこらへんにいるような小娘とはとても思えん……これではまるで)
『あなたたちの目的というのは私たちには関係ありません。まぁ、初めから交渉できると思ってはいませんでしたから問題はありません。それでは……』
『ま、待ってくれ! ドドルガーン将軍! ガリウスです! この島はダメです、竜よりも凶悪な人間がいるんです! その証拠に俺たちは為す術もなくやられて拘束されました。今回は引いてください! お願いし……ぎゃぁあああああ』
『参謀』の映像に横から割り込んできたのは、獣舎で働いている男の1人。
どうやら帝国の将軍に危険を知らせるつもりだったようだが、脳内のバイオチップが反応して地面を転げまわる結果となった。
『あらあら、私たちに不利益になるような行動をすると死にますよ?』
「なるほど、お前たちは我が帝国民を人質に取り、剰え危害を加えたのか。それは許されないことだ。すぐに全員を解放して、私たちを島に受け入れろ。そうすれば、刑を軽くすることも吝かではない」
(くそっ、この女の狙いはこれか! 私たちにカマをかけて関係者ということを認めさせることが目的だったのか! そうするとガリウスが先走ることもわかって泳がされたか……あの年でそれほどの策略家、これはまずいな)
「お待ちください、皇子! あの者たちに失礼があったのかもしれません! 軽々に物事を進めては、まとまるものもまとまらなくなりますぞ!」
「将軍こそ何を言っている? あいつらは既に罪人。我が帝国民を貶めたのだぞ? 島へ行き、全員を拘束して帝国にて然るべき裁きを受けさせる必要があるではないか。おい、早く降伏しろ。私はド・クダラン帝国のア・ホンダーラ皇子だぞ」
(このバカ皇子が! それが相手の思うつぼだとなぜわからん!? 皇帝陛下もなぜこの無能に全権を委譲したのだ!)
『はい、それでは宣戦布告と受け取りました。ふふふ、『怪人』やりなさい』
楽しそうな『参謀』の合図と同時に、耳をつんざく様な爆音が次々と上がった。
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