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第一章 謎の組織、異世界へ行く
悪事24 謎の組織、第一王女の尋問を受ける
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ウエストバーンの屋敷に戻ってきた一行だったが、帰りは1名増えていた。
「ノルン、酷いです……私とボス様の仲を認めてくれないなんて」
「ごめんごめん、反対してるわけじゃないよ? 私の唯一の親友のことだし。相手がどんな人なのか、この目で直接見てみたくてね」
今は屋敷の応接間で、渦中の娘が2人で向き合ってお茶をしているところだった。
今ここにはノルン王女とメアの2人だけ、密談には持って来いの環境だった。
「さて、本人には後で会わせてもらうとして、あなた、本気なの?」
「本気ですよ」
2人から穏やかな笑顔が消えて、周囲の空気が張り詰める。
お互いに真剣そのもの、嘘偽りは許されないような雰囲気だ。
「メアは前々から言ってたよね、政略結婚なんてしたくない。自分は恋愛をしたいんだって。そりゃ、この国の貴族や王族に生まれた以上はそんな我が儘が通るわけがない。でも、願わなきゃ運命は変わるわけがないって」
「確かに、ウエストバーン家から見れば政略結婚と言われても仕方がないことでしょう。お父様も、本音ではそうお考えです。私も、この国の貴族の1人ですから、家のためと言われれば、心を殺して笑顔で嫁ぐことも考えました」
「なら、どうして? 諦めちゃった? でも、別に投げやりになっているわけじゃないのよね? メアが他国の人間と婚約するって聞いた時は、心配で頭が真っ白になったのよ。一瞬、我を忘れてウエストバーン卿に怒鳴り込みに行きそうになったわ」
身分が違うため、公の場では触れ回ったりはできないが、非公式では親友と明言するだけあってノルンは本当にメアのことを友達と思っているようだ。
「ふふふ、ありがとうございます」
親友の真剣な想いを聞いて、思わず笑みがこぼれるメアだった。
「ノルン、私はボス様と結ばれることを自分で選らんだのです。それは親から言われたからのでも、諦めたわけでもありません。自分自身が望んだことなのです」
「わからないな~。だって、出会ってまだ1か月くらいでしょ? 理由があるんだろうけど、見た目はあの格好だし。私としては、ときめく要素がゼロなんだけど……」
「最初は、変わったお姿だと思いましたよ?」
そこからは『統領』との出会いのエピソードをメアが語って聞かせて、微笑ましい時間が過ぎていく。若干……というかかなり美化されているようではあったが。
「一番、惹かれたところは、あの人の不安定さ……でしょうか?」
「不安定さ? それって普通ならダメなところじゃない?」
「ふふふ、それがわからないノルンはまだまだお子様ってことですよ」
「むかっ、何それ、私は現実主義なのよ。目に見えることにしか興味はないわ」
本心を隠すために、少し不機嫌そうに装って返したノルンだったが、内心は驚いていた。
『統領』の話をする時、メアから女の艶のような色っぽさが見え隠れするのに気づいてしまったから。
「あの方は、望む望まぬに関わらず、そこにいるだけで周囲の人を引き付ける魅力があります。それは強さからなのか、立ち振る舞いからなのか、知的な思考からなのかはわかりませんけど。現に、私やお父様の様子を見れば明らかでしょう? これから先も、あの人の周りには様々な人が集まるでしょうね」
「でも、同時に孤独も抱えているのです。人の輪の中にあって、強い孤独感を。あの人に何がそう思わせるのか、それは、これから私が見つけなければいけない問題でもあります」
集団の中の孤独、メアのそれは、まるで言葉遊びにもとれる。
「そして、子供のような無邪気さも、ドキッとするような憧れも、安心して頼れる男らしさも。でも、時折、1人では放っておけないような弱さも見せるんですよ? 正直な話、あれはズルいと思います」
話しながらメアが見せる表情は、とても幸せそうで、それだけで今が満たされていることがわかってしまう。
「はいはい、もう十分よ。ついこの前までは子供だと思ってたのに、いつの間にか女の顔になっちゃって。あーあ、私にもどこかに良い人が落ちてないかなぁ」
「ノルンにだって、きっと運命の人が見つかりますよ。でも、ボス様はダメですからね?」
それからは、お年頃らしい恋バナが続いたが、余計な詮索はしないほうが賢明だろう。乙女に秘密は付き物なのだから。
今日のウエストバーンの屋敷には緊張感が漂っていた。
いつもなら既に慣れたメンバーで気を使わなくても良い夕食の席に、急遽来賓が1人追加されたからである。
「直接話をするのは初めてかしら? ニブルタール王国、第一王女ノルンです。今日は、あなたと少しだけ話がしたくて、ウエストバーン卿に無理を言ってお邪魔させてもらったわ」
「はぁ、初めまして、『統領』と呼ばれています」
「この国の王族ではあるけど、今日は非公式だから、メアの友人として対応してくれると嬉しいわ。いきなり罵倒されたりとかはアレだけど、多少は大目に見るから」
「そういうことなら……で、俺に何か用か? 昼の謁見では異議があるとか言ってたよな? 俺個人に対する意見なら聞くが、ウエストバーン様たちに迷惑をかけるつもりならお引き取り願おう」
「なんか、一気に扱いが雑になったわね、それに随分と敵意を感じるんだけど……まぁ、いいわ。私が個人的にあなたの人と成りを視たかっただけだから、特に他意はないし。さ、折角なんだから、食事しながら話しましょ」
王女が同席するだけあって、いつもよりも豪華な料理が提供されていた。急に来客が決まって、屋敷の料理人は悲鳴をあげたことだろう。
「本当に食事中もマスクを取らないのね……不思議な感覚だわ。でも、テーブルマナーはしっかりしているし、所作も洗練されている。あなた、本当に一般人?」
ニッグは特に食事が必要ないはずなのだが、なぜか『統領』の肩にとまって色々な料理を少しずつ食べさせてもらっていた。
食事が少し進んだ辺りで、給仕係のメイドが2種類の液体が入った透明の容器を運んで来た。透明で背の低い装飾グラスと氷の入った容器も用意されていた。
「見たことない色のものね……これは飲み物?」
「ええ、急遽、王族の方が来られるのにお酒の準備がないと料理長が嘆いておられたので。琥珀色のほうは酒精がやや強いので男性用です。もう一つは甘めの果実酒なので女性用に……そう言えば、メア様たちはお酒が飲める年なのですか?」
「お酒を制限する法律はないわ。尤も、お酒はそれなりに高価だから、みんながみんな飲めてるわけじゃないけど。貴族なら付き合いで飲むことも多いから、子供の頃から嗜むくらいはしてるはずよ。あ、私は両方いただくわ」
「そうですな。私も専らワインばかりですが嗜むくらいはしております。それにしても、料理長から話が上がってきてないのだが……すまんな、ボス殿」
「いえ、たまたま見かけただけなので、怒らないであげてください。それに、急ぎだったもので、私にとってはありふれたもので申し訳ない」
彼の母星ではアルコールが禁止されていて、作ることも持ち込むことも許されていない。
嗜むためには惑星外に出た時にこっそりと入手するしかないのだが、これはとある惑星で大量に購入したものである。
「こ、これは! 何という芳醇な味わいだ……仄かに森の香りが感じられる? それに、この強い酒精……ふう、良い酒だ」
「美味しいわね……こっちの強いのは私には辛いけど、味わい深さが今まで飲んだどのお酒よりも上だわ。こっちの果実のお酒は、とても良いわね。甘口なのにすっきりしていて飲みやすい。確かに、これなら女性にも楽しめる」
「私にはお酒の味はわかりません……でも、このグラスが美しいですね。これもボス様が?」
『統領』にとっては船に大量に積んである安酒以外の何物でもないので、実は内心は冷や汗ものだったが、比較的どちらとも好印象のようだ。
その後は何故か、このお酒を提供できないかという商談になって、ウエストバーンもノルン王女も目が真剣すぎて、少量なら融通すると約束させられてしまった。
「最後ですが、私の拠点のある島で取れた果物をご用意しました。とは言っても、かなり貴重な果物で私自身もあまり食べた機会がありません。つい最近、栽培に成功したので少しだけニッグに無理を言って運んできました」
そう言って、最後のデザートとして運ばれてきた果実はピンク色で不思議な形状をしている。器に綺麗に並べられているが、特に加工した様子もなくそのままの状態だ。
「ボス様。これは初めて見ますけど……どうやって食べたら良いのですか?」
「これ、かなり美味しいのですけど、採取すると急速に成熟が進んで腐敗する難儀な食べ物でして……高貴な方には申し訳なのですけど、このように齧るのがベストです」
手本と言わんばかりに1つ手に取り齧って見せる『統領』。
(うむ、素晴らしい出来だ。まさか、この星で栽培できるとは思ってなかったが……あの者たちの待遇をさらに良くしてやらんとな。これを作れる逸材は超貴重だぞ)
アプレットの味を知っているニッグがキュウキュウとせがむので、もう1つを取ろうとしたのだが、待てないとばかりに『統領』の齧りかけに食いついてしまった。
(まぁ、ニッグには無理を言って島まで飛んでもらったからな。今日くらいは大目に見よう)
嬉しそうに果実を齧るニッグを見て、今日だけだぞと微笑ましい気分になる『統領』だったが、いつの間にか周りから会話が消えていたことに気づいた。
周りを見れば、アプレットの実を一口齧った状態で全員が呆けていた。
少々アレなノルン王女は兎も角、驚くことに品行方正なメアも含めて全員が、である。
「お口に合いませんでしたか? ここの料理長に味見してもらった時は好感触だったので、不味いと感じられる心配はしていなかったのですが……」
不安になって声をかけた『統領』だったが、それを切っ掛けにして止まった時計は動き出した。
「こ、これは、一体何ですか!?」
「これはアプレットと言って、私の島で最近栽培し始めた果実です。もしかして、お口にあいませんでしたか?」
それを聞いたノルン王女は、恥も外聞も捨てたような剣幕で『統領』に詰め寄ると、怒涛の様に果実についての質問を始めた。
今日の夜は長そうである。
「ノルン、酷いです……私とボス様の仲を認めてくれないなんて」
「ごめんごめん、反対してるわけじゃないよ? 私の唯一の親友のことだし。相手がどんな人なのか、この目で直接見てみたくてね」
今は屋敷の応接間で、渦中の娘が2人で向き合ってお茶をしているところだった。
今ここにはノルン王女とメアの2人だけ、密談には持って来いの環境だった。
「さて、本人には後で会わせてもらうとして、あなた、本気なの?」
「本気ですよ」
2人から穏やかな笑顔が消えて、周囲の空気が張り詰める。
お互いに真剣そのもの、嘘偽りは許されないような雰囲気だ。
「メアは前々から言ってたよね、政略結婚なんてしたくない。自分は恋愛をしたいんだって。そりゃ、この国の貴族や王族に生まれた以上はそんな我が儘が通るわけがない。でも、願わなきゃ運命は変わるわけがないって」
「確かに、ウエストバーン家から見れば政略結婚と言われても仕方がないことでしょう。お父様も、本音ではそうお考えです。私も、この国の貴族の1人ですから、家のためと言われれば、心を殺して笑顔で嫁ぐことも考えました」
「なら、どうして? 諦めちゃった? でも、別に投げやりになっているわけじゃないのよね? メアが他国の人間と婚約するって聞いた時は、心配で頭が真っ白になったのよ。一瞬、我を忘れてウエストバーン卿に怒鳴り込みに行きそうになったわ」
身分が違うため、公の場では触れ回ったりはできないが、非公式では親友と明言するだけあってノルンは本当にメアのことを友達と思っているようだ。
「ふふふ、ありがとうございます」
親友の真剣な想いを聞いて、思わず笑みがこぼれるメアだった。
「ノルン、私はボス様と結ばれることを自分で選らんだのです。それは親から言われたからのでも、諦めたわけでもありません。自分自身が望んだことなのです」
「わからないな~。だって、出会ってまだ1か月くらいでしょ? 理由があるんだろうけど、見た目はあの格好だし。私としては、ときめく要素がゼロなんだけど……」
「最初は、変わったお姿だと思いましたよ?」
そこからは『統領』との出会いのエピソードをメアが語って聞かせて、微笑ましい時間が過ぎていく。若干……というかかなり美化されているようではあったが。
「一番、惹かれたところは、あの人の不安定さ……でしょうか?」
「不安定さ? それって普通ならダメなところじゃない?」
「ふふふ、それがわからないノルンはまだまだお子様ってことですよ」
「むかっ、何それ、私は現実主義なのよ。目に見えることにしか興味はないわ」
本心を隠すために、少し不機嫌そうに装って返したノルンだったが、内心は驚いていた。
『統領』の話をする時、メアから女の艶のような色っぽさが見え隠れするのに気づいてしまったから。
「あの方は、望む望まぬに関わらず、そこにいるだけで周囲の人を引き付ける魅力があります。それは強さからなのか、立ち振る舞いからなのか、知的な思考からなのかはわかりませんけど。現に、私やお父様の様子を見れば明らかでしょう? これから先も、あの人の周りには様々な人が集まるでしょうね」
「でも、同時に孤独も抱えているのです。人の輪の中にあって、強い孤独感を。あの人に何がそう思わせるのか、それは、これから私が見つけなければいけない問題でもあります」
集団の中の孤独、メアのそれは、まるで言葉遊びにもとれる。
「そして、子供のような無邪気さも、ドキッとするような憧れも、安心して頼れる男らしさも。でも、時折、1人では放っておけないような弱さも見せるんですよ? 正直な話、あれはズルいと思います」
話しながらメアが見せる表情は、とても幸せそうで、それだけで今が満たされていることがわかってしまう。
「はいはい、もう十分よ。ついこの前までは子供だと思ってたのに、いつの間にか女の顔になっちゃって。あーあ、私にもどこかに良い人が落ちてないかなぁ」
「ノルンにだって、きっと運命の人が見つかりますよ。でも、ボス様はダメですからね?」
それからは、お年頃らしい恋バナが続いたが、余計な詮索はしないほうが賢明だろう。乙女に秘密は付き物なのだから。
今日のウエストバーンの屋敷には緊張感が漂っていた。
いつもなら既に慣れたメンバーで気を使わなくても良い夕食の席に、急遽来賓が1人追加されたからである。
「直接話をするのは初めてかしら? ニブルタール王国、第一王女ノルンです。今日は、あなたと少しだけ話がしたくて、ウエストバーン卿に無理を言ってお邪魔させてもらったわ」
「はぁ、初めまして、『統領』と呼ばれています」
「この国の王族ではあるけど、今日は非公式だから、メアの友人として対応してくれると嬉しいわ。いきなり罵倒されたりとかはアレだけど、多少は大目に見るから」
「そういうことなら……で、俺に何か用か? 昼の謁見では異議があるとか言ってたよな? 俺個人に対する意見なら聞くが、ウエストバーン様たちに迷惑をかけるつもりならお引き取り願おう」
「なんか、一気に扱いが雑になったわね、それに随分と敵意を感じるんだけど……まぁ、いいわ。私が個人的にあなたの人と成りを視たかっただけだから、特に他意はないし。さ、折角なんだから、食事しながら話しましょ」
王女が同席するだけあって、いつもよりも豪華な料理が提供されていた。急に来客が決まって、屋敷の料理人は悲鳴をあげたことだろう。
「本当に食事中もマスクを取らないのね……不思議な感覚だわ。でも、テーブルマナーはしっかりしているし、所作も洗練されている。あなた、本当に一般人?」
ニッグは特に食事が必要ないはずなのだが、なぜか『統領』の肩にとまって色々な料理を少しずつ食べさせてもらっていた。
食事が少し進んだ辺りで、給仕係のメイドが2種類の液体が入った透明の容器を運んで来た。透明で背の低い装飾グラスと氷の入った容器も用意されていた。
「見たことない色のものね……これは飲み物?」
「ええ、急遽、王族の方が来られるのにお酒の準備がないと料理長が嘆いておられたので。琥珀色のほうは酒精がやや強いので男性用です。もう一つは甘めの果実酒なので女性用に……そう言えば、メア様たちはお酒が飲める年なのですか?」
「お酒を制限する法律はないわ。尤も、お酒はそれなりに高価だから、みんながみんな飲めてるわけじゃないけど。貴族なら付き合いで飲むことも多いから、子供の頃から嗜むくらいはしてるはずよ。あ、私は両方いただくわ」
「そうですな。私も専らワインばかりですが嗜むくらいはしております。それにしても、料理長から話が上がってきてないのだが……すまんな、ボス殿」
「いえ、たまたま見かけただけなので、怒らないであげてください。それに、急ぎだったもので、私にとってはありふれたもので申し訳ない」
彼の母星ではアルコールが禁止されていて、作ることも持ち込むことも許されていない。
嗜むためには惑星外に出た時にこっそりと入手するしかないのだが、これはとある惑星で大量に購入したものである。
「こ、これは! 何という芳醇な味わいだ……仄かに森の香りが感じられる? それに、この強い酒精……ふう、良い酒だ」
「美味しいわね……こっちの強いのは私には辛いけど、味わい深さが今まで飲んだどのお酒よりも上だわ。こっちの果実のお酒は、とても良いわね。甘口なのにすっきりしていて飲みやすい。確かに、これなら女性にも楽しめる」
「私にはお酒の味はわかりません……でも、このグラスが美しいですね。これもボス様が?」
『統領』にとっては船に大量に積んである安酒以外の何物でもないので、実は内心は冷や汗ものだったが、比較的どちらとも好印象のようだ。
その後は何故か、このお酒を提供できないかという商談になって、ウエストバーンもノルン王女も目が真剣すぎて、少量なら融通すると約束させられてしまった。
「最後ですが、私の拠点のある島で取れた果物をご用意しました。とは言っても、かなり貴重な果物で私自身もあまり食べた機会がありません。つい最近、栽培に成功したので少しだけニッグに無理を言って運んできました」
そう言って、最後のデザートとして運ばれてきた果実はピンク色で不思議な形状をしている。器に綺麗に並べられているが、特に加工した様子もなくそのままの状態だ。
「ボス様。これは初めて見ますけど……どうやって食べたら良いのですか?」
「これ、かなり美味しいのですけど、採取すると急速に成熟が進んで腐敗する難儀な食べ物でして……高貴な方には申し訳なのですけど、このように齧るのがベストです」
手本と言わんばかりに1つ手に取り齧って見せる『統領』。
(うむ、素晴らしい出来だ。まさか、この星で栽培できるとは思ってなかったが……あの者たちの待遇をさらに良くしてやらんとな。これを作れる逸材は超貴重だぞ)
アプレットの味を知っているニッグがキュウキュウとせがむので、もう1つを取ろうとしたのだが、待てないとばかりに『統領』の齧りかけに食いついてしまった。
(まぁ、ニッグには無理を言って島まで飛んでもらったからな。今日くらいは大目に見よう)
嬉しそうに果実を齧るニッグを見て、今日だけだぞと微笑ましい気分になる『統領』だったが、いつの間にか周りから会話が消えていたことに気づいた。
周りを見れば、アプレットの実を一口齧った状態で全員が呆けていた。
少々アレなノルン王女は兎も角、驚くことに品行方正なメアも含めて全員が、である。
「お口に合いませんでしたか? ここの料理長に味見してもらった時は好感触だったので、不味いと感じられる心配はしていなかったのですが……」
不安になって声をかけた『統領』だったが、それを切っ掛けにして止まった時計は動き出した。
「こ、これは、一体何ですか!?」
「これはアプレットと言って、私の島で最近栽培し始めた果実です。もしかして、お口にあいませんでしたか?」
それを聞いたノルン王女は、恥も外聞も捨てたような剣幕で『統領』に詰め寄ると、怒涛の様に果実についての質問を始めた。
今日の夜は長そうである。
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