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1章 異世界転移は無理難題
1-19 俺、領主に土下座されてお願いされるようです
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えーと、これはどうしたらいいんでしょうか? 誰か意見を、意見を求む。俺はこれからどうしたらいいんだ? 誰か教えてくれ!? 俺はどうしたらいい!?
目の前では、領主のアルバート様が綺麗に五体投地している。五体投地しているのは、筋肉マッチョで、元傭兵で、辺境伯の領主様が、だ。
俺が土下座しているならまだわかる。しかし、土下座しているのは、領主様が、だ。ここ大切だから2回言うぞ? 土下座しているのは、領主様が、だ。
もし、こんなところを他の人に見られたら、俺は不敬罪で殺されるんじゃなかろうか? ……あ、ありえる、恐ろしい未来が頭をよぎる。
(ぶひゃひゃひゃ、3回も言ってんじゃん! ぶひゃひゃひゃひゃ)
もはやシオンは放っておこう。後で絶対に殴るが。と、とりあえず、もとの姿勢に戻ってもらわないと……。一刻も早く、この状況を離脱せねば、俺の生命が危うい。
「あ、あの、領主様、お立ちになってくれませんか?」
「いえ! あのような素晴らしい逸品を作ることができるハジメ様に、是非のお願いがございます! 平に、平に伏して奏上させてくださいませ! 何卒!」
何、拒否ってるんだよぉぉぉぉ!? おい、この短期間のうちに様付けになったぞ!? お前の中でいったい何があった!? 俺が何をしたっていうんだ!? そして、不意にノックの音が聞こえた。ひぃぃぃぃ、やばいやばいやばいやばい。
「さすがハジメです! ハジメの料理はさいきょーなのです!」
ココさん!? さらに煽らないでもらえますか!? 真剣に現状を打破したいので!
「領主様、話を聞きますから、とりあえず、立って席に戻って頂いてよろしいですか?」
そう言ったら、ガバッとすごい勢いで顔をあげて、
「そうですか?! ありがとう、本当にありがとう!」
今度は四つん這いでにじり寄ってきた。ひぃぃぃぃ、何も解決していない!? ノックの音も続いている。終わった、俺、終わったわ……。
今、俺たちはなぜか屋敷の中を移動している。
あの後、話を聞くべく領主様を何とか説得していたら、ついにはガタイのいい執事っぽいひとが部屋に入ってきて、状況はさらにカオスになった。執事の人が土下座している領主様と土下座されている俺を交互に見て、声をあげようとしたタイミングでやっと領主様がお願いとやらを話し始めたのだった。
「フェリア、入るぞ」
俺たちが案内された部屋の中にいたのは、1人の、ひどくやせ細った寝たきりの女性だった。フェリアと呼ばれたその女性は、領主アルバート様の、
「……その声は、お兄さんですか?」
「ああ、お客様を連れてきた。お前にも合わせたくてな」
「お兄さんにしては、珍しいですね。それでは……こんな格好で失礼するわけにはいきませんね……。少し待ってください。今、起きます」
「いえいえ、そのままの恰好で結構ですよ。私はエリュシオン教のハジメと申します。こちらは従者のココです。少しだけ、『診させて』もらいますね。(シオンどうだ?)」
(これは……確かに状態が悪いですね。原因は、栄養失調と度重なる治療の失敗によるものでしょう。きっと手あたり次第、身体に良いと言われた薬草などをのませたのでしょうね。分量を間違えれば、薬は毒にもなりますから。重度の中毒状態です。それが失明の原因にもなっていますが、一時的なものでしょう。まずは解毒、そして栄養補給、その後は浄化排出が必要です。少し時間はかかりますが何とかなるでしょう)
「……時間はかかりますが、おそらく大丈夫でしょう」
「ほ、ほんとうか!? フェリアは本当に治るのか!?」
「いい加減なことを言うな! これまで私がどれだけ手を尽くしてきたと思っているんだ! それを見ただけで大丈夫などと! 無責任もいいところだ! 領主様! 私は……」
「だまれ! 誰に口を聞いている! 貴様が、私のすることに指図できる立場なのか!?」
なんか不穏な雰囲気になってきたな……俺、大丈夫なんだろうか?
目の前では、領主のアルバート様が綺麗に五体投地している。五体投地しているのは、筋肉マッチョで、元傭兵で、辺境伯の領主様が、だ。
俺が土下座しているならまだわかる。しかし、土下座しているのは、領主様が、だ。ここ大切だから2回言うぞ? 土下座しているのは、領主様が、だ。
もし、こんなところを他の人に見られたら、俺は不敬罪で殺されるんじゃなかろうか? ……あ、ありえる、恐ろしい未来が頭をよぎる。
(ぶひゃひゃひゃ、3回も言ってんじゃん! ぶひゃひゃひゃひゃ)
もはやシオンは放っておこう。後で絶対に殴るが。と、とりあえず、もとの姿勢に戻ってもらわないと……。一刻も早く、この状況を離脱せねば、俺の生命が危うい。
「あ、あの、領主様、お立ちになってくれませんか?」
「いえ! あのような素晴らしい逸品を作ることができるハジメ様に、是非のお願いがございます! 平に、平に伏して奏上させてくださいませ! 何卒!」
何、拒否ってるんだよぉぉぉぉ!? おい、この短期間のうちに様付けになったぞ!? お前の中でいったい何があった!? 俺が何をしたっていうんだ!? そして、不意にノックの音が聞こえた。ひぃぃぃぃ、やばいやばいやばいやばい。
「さすがハジメです! ハジメの料理はさいきょーなのです!」
ココさん!? さらに煽らないでもらえますか!? 真剣に現状を打破したいので!
「領主様、話を聞きますから、とりあえず、立って席に戻って頂いてよろしいですか?」
そう言ったら、ガバッとすごい勢いで顔をあげて、
「そうですか?! ありがとう、本当にありがとう!」
今度は四つん這いでにじり寄ってきた。ひぃぃぃぃ、何も解決していない!? ノックの音も続いている。終わった、俺、終わったわ……。
今、俺たちはなぜか屋敷の中を移動している。
あの後、話を聞くべく領主様を何とか説得していたら、ついにはガタイのいい執事っぽいひとが部屋に入ってきて、状況はさらにカオスになった。執事の人が土下座している領主様と土下座されている俺を交互に見て、声をあげようとしたタイミングでやっと領主様がお願いとやらを話し始めたのだった。
「フェリア、入るぞ」
俺たちが案内された部屋の中にいたのは、1人の、ひどくやせ細った寝たきりの女性だった。フェリアと呼ばれたその女性は、領主アルバート様の、
「……その声は、お兄さんですか?」
「ああ、お客様を連れてきた。お前にも合わせたくてな」
「お兄さんにしては、珍しいですね。それでは……こんな格好で失礼するわけにはいきませんね……。少し待ってください。今、起きます」
「いえいえ、そのままの恰好で結構ですよ。私はエリュシオン教のハジメと申します。こちらは従者のココです。少しだけ、『診させて』もらいますね。(シオンどうだ?)」
(これは……確かに状態が悪いですね。原因は、栄養失調と度重なる治療の失敗によるものでしょう。きっと手あたり次第、身体に良いと言われた薬草などをのませたのでしょうね。分量を間違えれば、薬は毒にもなりますから。重度の中毒状態です。それが失明の原因にもなっていますが、一時的なものでしょう。まずは解毒、そして栄養補給、その後は浄化排出が必要です。少し時間はかかりますが何とかなるでしょう)
「……時間はかかりますが、おそらく大丈夫でしょう」
「ほ、ほんとうか!? フェリアは本当に治るのか!?」
「いい加減なことを言うな! これまで私がどれだけ手を尽くしてきたと思っているんだ! それを見ただけで大丈夫などと! 無責任もいいところだ! 領主様! 私は……」
「だまれ! 誰に口を聞いている! 貴様が、私のすることに指図できる立場なのか!?」
なんか不穏な雰囲気になってきたな……俺、大丈夫なんだろうか?
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