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3-1 商隊の役割
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「カパーさん、オレの秘密、聞いてくれますか?」
些かマシになったとはいえ、この時期の夜はまだ肌寒い。
昼間とは打ってかわって静かに整列する白い影が、ここだけを小さな村のように見せていた。
ズラリと並んだ天幕は昼間には見られないものだ。天幕により狭くなった空と草原を、月明かりと松明が照らしている。
「おや、ワタクシが聞いてもよいものなので?」
カパーはフフフと楽しそうに笑った。
「貴方に聞いて欲しいんだ。」
子どもが答えるとカパーは、おや、と真面目な表情を作った。
「こちらへどうぞ。そこだと冷えるでしょう。」
カパーは焚き火の向かいで折り畳み式の椅子に座っていた。
骨組みに大きな布を固定したその椅子は、椅子と言うよりも三日月型のハンモックのようだった。
ゆったりと包み込まれるように身体を預けていたカパーは、背もたれから身体を起こす。
「リンクスから新しい衣服を受け取ったのですね。お似合いですよ。」
黄色を基調としたコーディネートは明るくて真っ直ぐな彼に良く似合う。
裾の広いズボンやノースリーブのインナーは元気なイメージをより強くしていた。
彼は腕に持っていた白い布を被ると、外套はカパーさんの真似なんだ。と誇らしげに胸を反らせた。
「ウッドっていうんだ。オレの名前。」
「おや?貴方の村には名前がないと聞きましたが?」
カパーは、わざとらしく驚いたような顔をした。
「うん。だから、これが、オレの秘密。」
「そうですか。話してくださりありがとうございます。
ところで、秘密というのは1度誰かに話すと皆が知るところとなるのは御存じですか?」
いつものニヤリとした顔でカパーは言った。
「え?」
「本当に知られてはいけない秘密は絶対に誰にも話してはいけませんよ。
どこで誰が聞き耳を立てているかわからないのですから。ねぇ、リンクス?」
「ま~た、バレてた~……。」
一番近い天幕の影から黒い影がぬるっと出てくる。
月明かりの中では、彼の姿は闇に溶けてしまい、姿を現した今でも見失ってしまいそうだ。
トパーズの瞳が星のように彼の位置を教えてくれていた。
「リンクス、貴方は今日、不寝番ではないのですよ。夜更かしせずに休みなさい。それとも何か気にかかることでも?」
カパーはニヤリと笑う。
「わかってるくせに~。意地悪だなぁ。もう。
ウッドのこと本当にいいんですか?」
「おや?何のことでしょう?荷として預かったのは名前のない少年です。
この隊にはウッドという名前の者は居ないのですよ。
彼は、この広い草原で迷い、我々の隊にいつの間にか流れ着いていたのでしょう。
保護して差し上げなくては。それも商隊の務めですからね。リンクス、貴方が面倒をみておやりなさい。」
つらつらと話すカパーの声にトパーズの瞳がくしゃっと細くなる
「隊長ってば、ほんと素直じゃないよな~。しょうがねぇな。俺が面倒みてやんよ。ついてこいよ。ウッド」
言葉とは裏腹にリンクスは嬉しそうだった。
「兎の下ごしらえ教えてやるよ」
些かマシになったとはいえ、この時期の夜はまだ肌寒い。
昼間とは打ってかわって静かに整列する白い影が、ここだけを小さな村のように見せていた。
ズラリと並んだ天幕は昼間には見られないものだ。天幕により狭くなった空と草原を、月明かりと松明が照らしている。
「おや、ワタクシが聞いてもよいものなので?」
カパーはフフフと楽しそうに笑った。
「貴方に聞いて欲しいんだ。」
子どもが答えるとカパーは、おや、と真面目な表情を作った。
「こちらへどうぞ。そこだと冷えるでしょう。」
カパーは焚き火の向かいで折り畳み式の椅子に座っていた。
骨組みに大きな布を固定したその椅子は、椅子と言うよりも三日月型のハンモックのようだった。
ゆったりと包み込まれるように身体を預けていたカパーは、背もたれから身体を起こす。
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黄色を基調としたコーディネートは明るくて真っ直ぐな彼に良く似合う。
裾の広いズボンやノースリーブのインナーは元気なイメージをより強くしていた。
彼は腕に持っていた白い布を被ると、外套はカパーさんの真似なんだ。と誇らしげに胸を反らせた。
「ウッドっていうんだ。オレの名前。」
「おや?貴方の村には名前がないと聞きましたが?」
カパーは、わざとらしく驚いたような顔をした。
「うん。だから、これが、オレの秘密。」
「そうですか。話してくださりありがとうございます。
ところで、秘密というのは1度誰かに話すと皆が知るところとなるのは御存じですか?」
いつものニヤリとした顔でカパーは言った。
「え?」
「本当に知られてはいけない秘密は絶対に誰にも話してはいけませんよ。
どこで誰が聞き耳を立てているかわからないのですから。ねぇ、リンクス?」
「ま~た、バレてた~……。」
一番近い天幕の影から黒い影がぬるっと出てくる。
月明かりの中では、彼の姿は闇に溶けてしまい、姿を現した今でも見失ってしまいそうだ。
トパーズの瞳が星のように彼の位置を教えてくれていた。
「リンクス、貴方は今日、不寝番ではないのですよ。夜更かしせずに休みなさい。それとも何か気にかかることでも?」
カパーはニヤリと笑う。
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ウッドのこと本当にいいんですか?」
「おや?何のことでしょう?荷として預かったのは名前のない少年です。
この隊にはウッドという名前の者は居ないのですよ。
彼は、この広い草原で迷い、我々の隊にいつの間にか流れ着いていたのでしょう。
保護して差し上げなくては。それも商隊の務めですからね。リンクス、貴方が面倒をみておやりなさい。」
つらつらと話すカパーの声にトパーズの瞳がくしゃっと細くなる
「隊長ってば、ほんと素直じゃないよな~。しょうがねぇな。俺が面倒みてやんよ。ついてこいよ。ウッド」
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「兎の下ごしらえ教えてやるよ」
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