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後日談
いつかの未来を想像した日②
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もう少しだけ腰を上げて、ずれないようにフィストスのものに軽く手を添える。
それだけで熱い息を吐いたフィストスが、なんだかかわいい……。
「あ、んっ……」
「ゆっくりでいい……」
先端を入り口にあてて、慎重に身体を沈めていく。
ようやく全部入ったと思った時には、これだけで息が上がってもう動ける気がしない。
薄暗い部屋に光る赤い目で見つめられたら、フィストスがかわいいだなんて思える余裕も消えていた。
「腰を前後に……そう」
「ん……ぅ……」
視線に促されるまま、必死に、けれどゆっくりと腰を動かした。いつもと違って、ぐちゃぐちゃで訳が分からなくなるほどではない、でも。
「んっ、ん、あ……、っ」
「エルフリーデのいいところ、自分で分かるか? 好きに動いていいから」
なんて言われても、それが分かる程の余裕がなければ、好きに動ける度胸も技術も体力もない。
それでもフィストスは恍惚とした表情で私を見上げている。時折、喉の奥を小さく鳴らすのを見れば、私もお腹の奥がきゅんとした。
「……っ、もう」
支えに手をついていた固い腹筋に突然、ぐっと力が込められる。
「悪い、エルフリーデ……っ」
「あっ? あ、あっ、ああっ!」
下から強く突き上げられて、目の前がチカチカと光った。
ぐちゅっ、ずちゅっ、と水音が響く。その度に、自重が手伝ってフィストスのものが奥まで当たる。
その深さに、さっきまでのは浅かったのだと否が応でも思い知らされた。
「ひっ、あ、あぁっ、ふか、いっ……あっ」
自分ではうまくできなかった、私のいいところ――いつもフィストスが執拗に突いてくるそこが、重力も手伝って強すぎるほどに押しつぶされる。
背中ごと仰け反る私の腰を支えるように掴んで、腰の動きと合わせるようにがつがつと揺さぶられて……頭がおかしくなりそうだった。
「あっ、う、ああっ、あ、あ、っん……、っ……!!」
「は……っ」
先ほどとは比べ物にならないほどの強い光で、頭の中がいっぱいになる。腰がうねるように痙攣して、達したのだと頭が理解するより早く、視界が反転した。
何が起きたのかも分からないうちにフィストスの腰が動いていて、もう泣き声みたいになっている音が私の口から漏れる。
「あっ、ひぐっ……だめ、だめ、イってる、イってるからぁっ……」
聞こえるのは、肌がぶつかる音、繋がった部分の水音、それに、フィストスの荒い息遣い。
欲情を映したような赤い目に見つめられながら追い詰められて、また高みに押し上げられる。
「あっあぁっ、んっ……んぁ、あっ……」
「エルフリーデ……、一緒に……」
「んっ、うん、フィス、トス……あっ、あっ……!」
額に汗を浮かべているフィストスの首に腕を回して、どちらからともなくキスをして……言葉の通り、私たちは同時に果てた。
しばらくして先に息を整えたフィストスが、ゆっくりと私の中から出ていく。私はまだ少し頭にもやがかかったようだったけれど、フィストスが何やら私のお腹をそっと撫でているのは分かる。
フィストスの精を吐き出されたお腹の中が、なんだかまだ熱い。
「なぁエルフリーデ」
「うん……?」
「子供、ほしいか?」
「まぁ……できれば……」
悪魔と人間が肉体関係を持つことは多々あれど、子供が生まれることはまずないと説明されている。
ハイデマリーについては本当に珍しいことなのだと、ユルゲンとフィストスが口を揃えて言っていた。実際、結婚して10年以上して、これはやっぱり無理なのだろうと思っていた頃にできた子らしい。
子供は望めないものだと思ったほうがいいと聞いた上で、それでもフィストスと結婚すると決めた。
温泉と宿は能力とやる気のある人に引き継げばいいし、どうしてもということであれば養子をとることだってできるのだ。
だから私はあまり気にしてはいない。フィストスとずっと一緒にいられたら、それだけでいい。
「じゃあ、残しておく」
「うん」
何を残しておくんだろう。
よく分からないままに返事をした私の額にキスしたフィストスは、そのまま唇を下へ下へとやって。
「今後も頑張らないとな」
そう言って最後、おへその下にキスを落とした。
*
翌朝。
目が覚めてもしばらくウトウトして、ようやくベッドから起き上がる。
「あ……」
立ち上がった瞬間、中からとろりとこぼれてくる初めての感覚があった。思わずお腹に力を入れたけれど、重い液体が、ゆっくりと太ももへ向かおうとしている。
「残しておくって、そういうこと……?」
昨夜のフィストスの発言の意味が、今になってようやく分かった。
いつもはフィストスが魔法を使ってくれていたらしく、気がついたら身体が綺麗になっている。
今回も表面はいつもどおり綺麗になっていたけれど……中に出したものだけは、そのままにしていたんだ……。
昨日、子供がほしいって言ったから。フィストスも私との子供ができたらいいって、思ってくれてる。
あれ、じゃあ、今後も頑張るって……つまり、ええと……。
顔の火照りを感じながら背後のベッドを振り向けば、フィストスがぐっすり眠っていた。ベッドの上に身を乗り出して、眠っている悪魔の頬に唇を寄せる。
「大好き」
小声で言ってみたけれど、フィストスは目を覚まさない。そんなフィストスにもう一度軽くキスをしてから、そっと部屋を出た。
働き始めるハイデマリーと出会わないように急いで、けれどちょっとぎこちない足取りで、お風呂場に向かったのだった。
それだけで熱い息を吐いたフィストスが、なんだかかわいい……。
「あ、んっ……」
「ゆっくりでいい……」
先端を入り口にあてて、慎重に身体を沈めていく。
ようやく全部入ったと思った時には、これだけで息が上がってもう動ける気がしない。
薄暗い部屋に光る赤い目で見つめられたら、フィストスがかわいいだなんて思える余裕も消えていた。
「腰を前後に……そう」
「ん……ぅ……」
視線に促されるまま、必死に、けれどゆっくりと腰を動かした。いつもと違って、ぐちゃぐちゃで訳が分からなくなるほどではない、でも。
「んっ、ん、あ……、っ」
「エルフリーデのいいところ、自分で分かるか? 好きに動いていいから」
なんて言われても、それが分かる程の余裕がなければ、好きに動ける度胸も技術も体力もない。
それでもフィストスは恍惚とした表情で私を見上げている。時折、喉の奥を小さく鳴らすのを見れば、私もお腹の奥がきゅんとした。
「……っ、もう」
支えに手をついていた固い腹筋に突然、ぐっと力が込められる。
「悪い、エルフリーデ……っ」
「あっ? あ、あっ、ああっ!」
下から強く突き上げられて、目の前がチカチカと光った。
ぐちゅっ、ずちゅっ、と水音が響く。その度に、自重が手伝ってフィストスのものが奥まで当たる。
その深さに、さっきまでのは浅かったのだと否が応でも思い知らされた。
「ひっ、あ、あぁっ、ふか、いっ……あっ」
自分ではうまくできなかった、私のいいところ――いつもフィストスが執拗に突いてくるそこが、重力も手伝って強すぎるほどに押しつぶされる。
背中ごと仰け反る私の腰を支えるように掴んで、腰の動きと合わせるようにがつがつと揺さぶられて……頭がおかしくなりそうだった。
「あっ、う、ああっ、あ、あ、っん……、っ……!!」
「は……っ」
先ほどとは比べ物にならないほどの強い光で、頭の中がいっぱいになる。腰がうねるように痙攣して、達したのだと頭が理解するより早く、視界が反転した。
何が起きたのかも分からないうちにフィストスの腰が動いていて、もう泣き声みたいになっている音が私の口から漏れる。
「あっ、ひぐっ……だめ、だめ、イってる、イってるからぁっ……」
聞こえるのは、肌がぶつかる音、繋がった部分の水音、それに、フィストスの荒い息遣い。
欲情を映したような赤い目に見つめられながら追い詰められて、また高みに押し上げられる。
「あっあぁっ、んっ……んぁ、あっ……」
「エルフリーデ……、一緒に……」
「んっ、うん、フィス、トス……あっ、あっ……!」
額に汗を浮かべているフィストスの首に腕を回して、どちらからともなくキスをして……言葉の通り、私たちは同時に果てた。
しばらくして先に息を整えたフィストスが、ゆっくりと私の中から出ていく。私はまだ少し頭にもやがかかったようだったけれど、フィストスが何やら私のお腹をそっと撫でているのは分かる。
フィストスの精を吐き出されたお腹の中が、なんだかまだ熱い。
「なぁエルフリーデ」
「うん……?」
「子供、ほしいか?」
「まぁ……できれば……」
悪魔と人間が肉体関係を持つことは多々あれど、子供が生まれることはまずないと説明されている。
ハイデマリーについては本当に珍しいことなのだと、ユルゲンとフィストスが口を揃えて言っていた。実際、結婚して10年以上して、これはやっぱり無理なのだろうと思っていた頃にできた子らしい。
子供は望めないものだと思ったほうがいいと聞いた上で、それでもフィストスと結婚すると決めた。
温泉と宿は能力とやる気のある人に引き継げばいいし、どうしてもということであれば養子をとることだってできるのだ。
だから私はあまり気にしてはいない。フィストスとずっと一緒にいられたら、それだけでいい。
「じゃあ、残しておく」
「うん」
何を残しておくんだろう。
よく分からないままに返事をした私の額にキスしたフィストスは、そのまま唇を下へ下へとやって。
「今後も頑張らないとな」
そう言って最後、おへその下にキスを落とした。
*
翌朝。
目が覚めてもしばらくウトウトして、ようやくベッドから起き上がる。
「あ……」
立ち上がった瞬間、中からとろりとこぼれてくる初めての感覚があった。思わずお腹に力を入れたけれど、重い液体が、ゆっくりと太ももへ向かおうとしている。
「残しておくって、そういうこと……?」
昨夜のフィストスの発言の意味が、今になってようやく分かった。
いつもはフィストスが魔法を使ってくれていたらしく、気がついたら身体が綺麗になっている。
今回も表面はいつもどおり綺麗になっていたけれど……中に出したものだけは、そのままにしていたんだ……。
昨日、子供がほしいって言ったから。フィストスも私との子供ができたらいいって、思ってくれてる。
あれ、じゃあ、今後も頑張るって……つまり、ええと……。
顔の火照りを感じながら背後のベッドを振り向けば、フィストスがぐっすり眠っていた。ベッドの上に身を乗り出して、眠っている悪魔の頬に唇を寄せる。
「大好き」
小声で言ってみたけれど、フィストスは目を覚まさない。そんなフィストスにもう一度軽くキスをしてから、そっと部屋を出た。
働き始めるハイデマリーと出会わないように急いで、けれどちょっとぎこちない足取りで、お風呂場に向かったのだった。
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