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しおりを挟む それから数日間。
加藤から瞳への正式な『呼び出し』は無く、瞳は加藤の嫉妬に狂ったような視線を浴び続けて体調を悪くしては保健室で休むことを繰り返していた。
動きがあったのは、週明けの月曜日だった。
その日もいつものように嫉妬を向けられ、保健室で休んでいた。
円とは、瞳が保健室で休んでいれば見舞いにくる程度には仲が良いことが周知されてきた。
(そろそろ疲れたな……)
精神的にも、体力的にも。
天気が良くてぽかぽかとした日差しが気持ちいい。空調とも相まって、冬だなんて忘れてしまいそうだ。
すっかり油断して、うとうとした。
それが、事件の始まりとなった。
不審な気配を感じて一気に意識が浮上した。
起き上がろうとして、それを阻むように両腕を掴み上げられて頭の上でひとくくりにされる。馬乗りになってくる男の顔に見覚えは無い。
「悪いな。アンタに恨みはないけど」
「……それなら退いてくれないかな」
「でも、あいつがこうしろって言うんだ」
「お前はそれでいいのか? ……加藤」
物陰でひっそりとこちらの様子を伺っていた加藤へと問いを投げかける。
ゆっくりと姿を見せた加藤の目には、もはや憎しみが宿っていた。
「……気付いてたんだ?」
「最初からな」
「じゃあ話は簡単。西園寺から離れて」
「なぜ?」
「なんで? 当たり前だろ。お前は西園寺に相応しくない」
痛いところを突く、と瞳はひっそりと思う。相応しくない、というのならそれはそうなのだろう。家柄も釣り合わなければ呪いを受けた身で相応しいだなんて口が裂けても言えない。
だけど、そばにいたい。そばにいてほしい。そう思うのはただのワガママだけれど、彼が望んでくれるのなら叶えたい。
そんな二人の関係に、加藤は勘づいたのだ。それなのに。
「お前、西園寺の何を見てる? 顔か? 家柄か?」
「……なっ!」
「確かにお前の家柄なら釣り合うだろうな。だけど、アイツの本質を見ていないヤツに譲る気はない」
「うるさい! お前さえいなければ全部上手くいってたのに……!」
ああ、そうだろうな、と瞳は思う。問題を起こさないように、円が上手く立ち回っていた。
そんなことにも気付かないのか。
「……あわれだな」
「もういい! 徹也、やっちゃって!」
ヒステリックに叫ぶ加藤に、もう何を言っても無駄なのかもしれない。
徹也と呼ばれた男は、瞳の腕を固定した手にギリ、と力を込めてバサリと布団を剥ぐと、する、と瞳の身体に手を這わせた。
武道の心得でもあるのか、簡単には外れないように腕を掴まれていて、瞳は目を閉じた。不思議と、恐怖を感じないのだ。これは、もしかすると。
それでも、この状況からは脱しなければ。
この状況で式神は呼べない。かといって誰かに助けを求めるつもりも無い。ましてや、円以外の男に抱かれてやる気なんてさらさらない。
ぷつり、と瞳のボタンを外していく男に、少し震えながら、それでも瞳は冷静に言葉をかける。
「アンタは、好きなヤツの前で好きでもない男を抱けるのか?」
そう聞けば、男の手がピタリと止まる。
瞳は目を開けて、ひたりと男を見据える。明らかに動揺していた。
(……やっぱり)
加藤を好きだから命令に従ってはいるけれど、瞳を抱くのは本意ではない。それなら、多少の隙も生まれる。
「何してるの! 早く!」
他の男に犯されてしまえば、円の隣には立てないとでも思っているのだろう。そんなのもう手遅れだ。瞳は、もう円じゃないとダメなのだから。
「…………っ!」
徹也の手が、瞳のシャツを強引に引き裂いた。ボタンが弾けて飛んだ先に、この場に居なかったはずの男が立っていた。
加藤の顔色が変わる。それはそうだ。今はまだ授業中。彼がここに来るはずがないと、そう思っていたはずだ。瞳だってそう思っていた。
「ばかっ! 来るな!」
瞳が叫ぶけれど、彼の耳に届いていたかどうか。
シャツを引き裂かれてベッドに押し付けられた瞳の姿。彼に馬乗りになる男。それを指示した加藤。
その全てが、円の逆鱗に触れる。
ざわり、と気配を物騒なものに変えた円は、まず徹也を瞳から引き剥がす。グイと腕を掴んで、いとも簡単に投げ飛ばした。床に転がる男を押さえつけ、腕を捻りあげる。そのままだと下手をしたら折ってしまいそうな勢いに、思わず瞳が声を上げる。
「やめろ! 落ち着けっ!」
ボタンが飛んだシャツをかき合わせて掴む瞳の姿に、円の怒りはおさまらない。
そんな円を煽るように、加藤は保健室の備品であるカッターを持ち出した。カチカチと刃を出して、瞳に切りかかってくる。
「……それはちょっと反則じゃない?」
ピッと腕を掠めてシャツにじわりと血が滲む。
瞳は、どうしたものかと思案する。加藤を取り押さえるのは簡単だけれど、それだけでは解決にならない気がしたのだ。
それに、何か違和感がある。
「見た目も良くて、金も地位も名誉もある。そんな男は最高だろうな」
「…………」
「だけどな、西園寺はアクセサリーじゃない。……本当に好きなヤツを利用して他の男を手に入れて。それで嬉しいか?」
「…………っ!」
加藤が、徹也が息をのむのが分かった。
「お前に、何が分かる……っ!?」
「分からないさ。オレはお前のことは何も知らない。だけど、お前だってオレのことを知らないだろう?」
「……くそっ!」
「お前の問題に首を突っ込む気はない。ただ、これ以上オレや西園寺を巻き込むのはやめろ」
加藤が、グッと言葉に詰まる。
円がやっと徹也を解放すれば、彼はよろよろと加藤に近付き、ゆっくりと抱きしめた。
ああ、これはお邪魔なやつだ。
瞳は上着を持って、円を宥めながら保健室から出ることに成功する。
いかにも『乱暴されました』という格好のままで授業を受けるわけにもいかず、瞳はすぐに早退した。なぜか円も一緒である。
いつもとは違ったけれど後から来た恐怖と震えに、瞳は複雑な心境のままで帰宅して、ひと息つく暇もなく、瞳は円に浴室へと連れ込まれる。
「え? ちょっと、なに……」
「洗ってあげる」
制服を着たまま、ザアッとシャワーを浴びせられる。
「円……っ!」
名前を、呼べば。
シャワーノズルをごとりと取り落とした円に、正面からギュッと抱きしめられる。
「……悪かった」
円の背中を、ぽんぽんとたたいた。もはや、どちらが震えているのかも分からない。
「違う、ごめん。……俺がもっとしっかりしてれば、瞳がこんな目に遭うこともなかった……!」
「なにもなかったから、大丈夫だよ。あれだな、金持ち社会ってのはめんどくさいな?」
「そんなふうに言うの、瞳くらいだよ」
ふ、と円が困ったように笑う。『西園寺』の名前に釣られて近付いてきている人間が多い中、瞳はある意味異質で、円にとっては救いだった。
とりあえず落ち着いた円が、本当に丁寧に瞳を洗い上げ、風呂から出れば怪我の手当てもしてくれた。
「思ったより深い傷じゃなくて良かった」
「ありがとな。まあ、カッターだったし、たかが知れてるだろ」
「そうは言っても心配だよ……」
「うん。ありがと」
「加藤の件は、俺はまだ口出ししちゃダメなの?」
「あー、それな……」
円の人格を無視して相応しいだの相応しくないだの言っていた加藤は、本人こそがそのいわゆる『格差』に苦しんでいるように見えた。
いろいろ思い出しつつ、瞳は、うん、と言う。
「たぶん、もう大丈夫だと思う。円のこと好きなのは本当だろうけど、もっと好きなやついるみたいだし」
「えっ。それって……」
「うん。落ち着くんじゃないかな。ダメなら今度こそ円に頼む」
「わかった。ところで瞳」
「うん?」
「クリスマスプレゼント。何が欲しい?」
「え」
そういえばクリスマスなんてすっかり忘れていた。というか、最近はそれどころじゃなかった。
「瞳は物に執着しないタイプかな、って考えたら、全然分からなくなってさ。もういっそ聞いちゃえ、って思ったんだけど」
「あー、まあそうかな。で? そういう円は何が欲しいんだ?」
「ええ?」
「円が言ったらオレも教える」
「……引かない?」
「内容による」
「……イヴの夜から一日瞳を独占する権利が欲しい」
「…………はい?」
「二人でご飯食べたりケーキ食べたりプレゼント交換したり。まあその、そりゃ……することもシたいけど。独占させてほしい」
「いつもしてるだろ?」
「なんだかんだ邪魔が入ること多いよ!」
言われてみれば。
『仕事』が入ったり、突然神だとか精霊が訪ねてきたり、浄霊、浄化なんかは日常茶飯事。純粋に休暇を楽しむなんてほとんどない。もしかして律や美作も『邪魔』の部類にはいるのか、などと考えてしまう。
「わかった、何とかする」
「本当に?」
「ほんと」
「ありがと! で、瞳は何が欲しいの」
「……指輪を通せるネックレス」
「それって……」
両親が遺していった、円とのペアリング。今は家だから指に着けているけれど、やはりいつでも肌身離さずお守り代わりにしたいと思うのは乙女思考なのだろうか。
「だめ、か?」
「ダメじゃない! 嬉しい!」
円が瞳をギュッと抱きしめてくる。
髪を撫でるついでのように耳に触れてくるからピクンと震える。
「ほんと……瞳って可愛いよね」
「かわいくない……」
「一緒に見に行こうね」
「ん……」
約束だよ、と。そう言って円は瞳に口付けた。
加藤から瞳への正式な『呼び出し』は無く、瞳は加藤の嫉妬に狂ったような視線を浴び続けて体調を悪くしては保健室で休むことを繰り返していた。
動きがあったのは、週明けの月曜日だった。
その日もいつものように嫉妬を向けられ、保健室で休んでいた。
円とは、瞳が保健室で休んでいれば見舞いにくる程度には仲が良いことが周知されてきた。
(そろそろ疲れたな……)
精神的にも、体力的にも。
天気が良くてぽかぽかとした日差しが気持ちいい。空調とも相まって、冬だなんて忘れてしまいそうだ。
すっかり油断して、うとうとした。
それが、事件の始まりとなった。
不審な気配を感じて一気に意識が浮上した。
起き上がろうとして、それを阻むように両腕を掴み上げられて頭の上でひとくくりにされる。馬乗りになってくる男の顔に見覚えは無い。
「悪いな。アンタに恨みはないけど」
「……それなら退いてくれないかな」
「でも、あいつがこうしろって言うんだ」
「お前はそれでいいのか? ……加藤」
物陰でひっそりとこちらの様子を伺っていた加藤へと問いを投げかける。
ゆっくりと姿を見せた加藤の目には、もはや憎しみが宿っていた。
「……気付いてたんだ?」
「最初からな」
「じゃあ話は簡単。西園寺から離れて」
「なぜ?」
「なんで? 当たり前だろ。お前は西園寺に相応しくない」
痛いところを突く、と瞳はひっそりと思う。相応しくない、というのならそれはそうなのだろう。家柄も釣り合わなければ呪いを受けた身で相応しいだなんて口が裂けても言えない。
だけど、そばにいたい。そばにいてほしい。そう思うのはただのワガママだけれど、彼が望んでくれるのなら叶えたい。
そんな二人の関係に、加藤は勘づいたのだ。それなのに。
「お前、西園寺の何を見てる? 顔か? 家柄か?」
「……なっ!」
「確かにお前の家柄なら釣り合うだろうな。だけど、アイツの本質を見ていないヤツに譲る気はない」
「うるさい! お前さえいなければ全部上手くいってたのに……!」
ああ、そうだろうな、と瞳は思う。問題を起こさないように、円が上手く立ち回っていた。
そんなことにも気付かないのか。
「……あわれだな」
「もういい! 徹也、やっちゃって!」
ヒステリックに叫ぶ加藤に、もう何を言っても無駄なのかもしれない。
徹也と呼ばれた男は、瞳の腕を固定した手にギリ、と力を込めてバサリと布団を剥ぐと、する、と瞳の身体に手を這わせた。
武道の心得でもあるのか、簡単には外れないように腕を掴まれていて、瞳は目を閉じた。不思議と、恐怖を感じないのだ。これは、もしかすると。
それでも、この状況からは脱しなければ。
この状況で式神は呼べない。かといって誰かに助けを求めるつもりも無い。ましてや、円以外の男に抱かれてやる気なんてさらさらない。
ぷつり、と瞳のボタンを外していく男に、少し震えながら、それでも瞳は冷静に言葉をかける。
「アンタは、好きなヤツの前で好きでもない男を抱けるのか?」
そう聞けば、男の手がピタリと止まる。
瞳は目を開けて、ひたりと男を見据える。明らかに動揺していた。
(……やっぱり)
加藤を好きだから命令に従ってはいるけれど、瞳を抱くのは本意ではない。それなら、多少の隙も生まれる。
「何してるの! 早く!」
他の男に犯されてしまえば、円の隣には立てないとでも思っているのだろう。そんなのもう手遅れだ。瞳は、もう円じゃないとダメなのだから。
「…………っ!」
徹也の手が、瞳のシャツを強引に引き裂いた。ボタンが弾けて飛んだ先に、この場に居なかったはずの男が立っていた。
加藤の顔色が変わる。それはそうだ。今はまだ授業中。彼がここに来るはずがないと、そう思っていたはずだ。瞳だってそう思っていた。
「ばかっ! 来るな!」
瞳が叫ぶけれど、彼の耳に届いていたかどうか。
シャツを引き裂かれてベッドに押し付けられた瞳の姿。彼に馬乗りになる男。それを指示した加藤。
その全てが、円の逆鱗に触れる。
ざわり、と気配を物騒なものに変えた円は、まず徹也を瞳から引き剥がす。グイと腕を掴んで、いとも簡単に投げ飛ばした。床に転がる男を押さえつけ、腕を捻りあげる。そのままだと下手をしたら折ってしまいそうな勢いに、思わず瞳が声を上げる。
「やめろ! 落ち着けっ!」
ボタンが飛んだシャツをかき合わせて掴む瞳の姿に、円の怒りはおさまらない。
そんな円を煽るように、加藤は保健室の備品であるカッターを持ち出した。カチカチと刃を出して、瞳に切りかかってくる。
「……それはちょっと反則じゃない?」
ピッと腕を掠めてシャツにじわりと血が滲む。
瞳は、どうしたものかと思案する。加藤を取り押さえるのは簡単だけれど、それだけでは解決にならない気がしたのだ。
それに、何か違和感がある。
「見た目も良くて、金も地位も名誉もある。そんな男は最高だろうな」
「…………」
「だけどな、西園寺はアクセサリーじゃない。……本当に好きなヤツを利用して他の男を手に入れて。それで嬉しいか?」
「…………っ!」
加藤が、徹也が息をのむのが分かった。
「お前に、何が分かる……っ!?」
「分からないさ。オレはお前のことは何も知らない。だけど、お前だってオレのことを知らないだろう?」
「……くそっ!」
「お前の問題に首を突っ込む気はない。ただ、これ以上オレや西園寺を巻き込むのはやめろ」
加藤が、グッと言葉に詰まる。
円がやっと徹也を解放すれば、彼はよろよろと加藤に近付き、ゆっくりと抱きしめた。
ああ、これはお邪魔なやつだ。
瞳は上着を持って、円を宥めながら保健室から出ることに成功する。
いかにも『乱暴されました』という格好のままで授業を受けるわけにもいかず、瞳はすぐに早退した。なぜか円も一緒である。
いつもとは違ったけれど後から来た恐怖と震えに、瞳は複雑な心境のままで帰宅して、ひと息つく暇もなく、瞳は円に浴室へと連れ込まれる。
「え? ちょっと、なに……」
「洗ってあげる」
制服を着たまま、ザアッとシャワーを浴びせられる。
「円……っ!」
名前を、呼べば。
シャワーノズルをごとりと取り落とした円に、正面からギュッと抱きしめられる。
「……悪かった」
円の背中を、ぽんぽんとたたいた。もはや、どちらが震えているのかも分からない。
「違う、ごめん。……俺がもっとしっかりしてれば、瞳がこんな目に遭うこともなかった……!」
「なにもなかったから、大丈夫だよ。あれだな、金持ち社会ってのはめんどくさいな?」
「そんなふうに言うの、瞳くらいだよ」
ふ、と円が困ったように笑う。『西園寺』の名前に釣られて近付いてきている人間が多い中、瞳はある意味異質で、円にとっては救いだった。
とりあえず落ち着いた円が、本当に丁寧に瞳を洗い上げ、風呂から出れば怪我の手当てもしてくれた。
「思ったより深い傷じゃなくて良かった」
「ありがとな。まあ、カッターだったし、たかが知れてるだろ」
「そうは言っても心配だよ……」
「うん。ありがと」
「加藤の件は、俺はまだ口出ししちゃダメなの?」
「あー、それな……」
円の人格を無視して相応しいだの相応しくないだの言っていた加藤は、本人こそがそのいわゆる『格差』に苦しんでいるように見えた。
いろいろ思い出しつつ、瞳は、うん、と言う。
「たぶん、もう大丈夫だと思う。円のこと好きなのは本当だろうけど、もっと好きなやついるみたいだし」
「えっ。それって……」
「うん。落ち着くんじゃないかな。ダメなら今度こそ円に頼む」
「わかった。ところで瞳」
「うん?」
「クリスマスプレゼント。何が欲しい?」
「え」
そういえばクリスマスなんてすっかり忘れていた。というか、最近はそれどころじゃなかった。
「瞳は物に執着しないタイプかな、って考えたら、全然分からなくなってさ。もういっそ聞いちゃえ、って思ったんだけど」
「あー、まあそうかな。で? そういう円は何が欲しいんだ?」
「ええ?」
「円が言ったらオレも教える」
「……引かない?」
「内容による」
「……イヴの夜から一日瞳を独占する権利が欲しい」
「…………はい?」
「二人でご飯食べたりケーキ食べたりプレゼント交換したり。まあその、そりゃ……することもシたいけど。独占させてほしい」
「いつもしてるだろ?」
「なんだかんだ邪魔が入ること多いよ!」
言われてみれば。
『仕事』が入ったり、突然神だとか精霊が訪ねてきたり、浄霊、浄化なんかは日常茶飯事。純粋に休暇を楽しむなんてほとんどない。もしかして律や美作も『邪魔』の部類にはいるのか、などと考えてしまう。
「わかった、何とかする」
「本当に?」
「ほんと」
「ありがと! で、瞳は何が欲しいの」
「……指輪を通せるネックレス」
「それって……」
両親が遺していった、円とのペアリング。今は家だから指に着けているけれど、やはりいつでも肌身離さずお守り代わりにしたいと思うのは乙女思考なのだろうか。
「だめ、か?」
「ダメじゃない! 嬉しい!」
円が瞳をギュッと抱きしめてくる。
髪を撫でるついでのように耳に触れてくるからピクンと震える。
「ほんと……瞳って可愛いよね」
「かわいくない……」
「一緒に見に行こうね」
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