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瞳が目覚めたのは夜明け近くだった。さすが自然の中、鳥の声が聞こえる。
ふ、と目を開けたら誰かに腕枕をされていて、背中に体温を感じる。その誰かが円であることは考えなくとも分かった。
昨夜はものすごく恥ずかしいことをした記憶がある。恥ずかし過ぎて、今の体勢すら恥ずかしくて、逃げ出してしまいたい。
(でも、今動いたら起こすよなぁ……)
そう思うとどうにも動けずにいる。
昨夜に張った防音の結界は、どうやら瞳が寝落ちた時に解除されたようだった。今は残り香のような痕跡が見えるだけである。
それを確認したら、また昨夜のことを思い出してしまう。
瞳はアセクシャルだ。というより、アセクシャルを自認している、と言った方がいいだろう。
アセクシャルとは、円が調べた通りで、他人に性的感情や欲求を覚えない人のことを一般的にそう呼んでいる。親愛や友愛はそれには含まれない。だから、家族として、友人として、好きだという感情は分かるけれど、性的なことが絡むとさっぱり分からないのだ。
今まで出会った人の中に、性的に惹かれた人など居なかったし、そういったことに興味もなかった。だからこそ、誘われても断って一切の関係を断ち切ってきた。
けれど、円は違った。
そもそもの出会いからしておかしかった。
クラスメイトにやたら綺麗な顔をした御曹司がいることは知っていた。けれどまさか、自分が彼と関わることになるなんて思っていなかったから、ただ『認識』していただけだ。
正直な話、アセクシャルとデミセクシャルは紙一重だと、瞳は思っている。
デミセクシャルも他人に性的感情や欲求を覚えないけれど、特に友愛などが深くなった人に性的感情を覚えることがあるという。現に、円は自分を「デミセクシャル」だと言った。
そんな円と関わったきっかけは、気まぐれな『除霊』だった。
登下校の際に通る遊歩道。小さな少女の霊がいた。最初は迷子かと思ったけれど、話を聞くうちに彼女の家族への想いが少女を現世に留めていると知った。だから、霊力を少しだけ渡して心残りを解消させてやったのだ。
その現場を、近くにあった律の事務所から見られていた。
遠回しに言われて、詳しく話をするために自宅へ連れて行ったけれど、よく考えてみたらあの時、別に自宅でなくても良かったはずなのだ。
それこそ遊歩道のベンチで事足りたはずだ。
それなのに、円を連れ帰ってあまつさえ同居を許して。
初めから、瞳は円を自分のテリトリーに入れていた。
もうこんなの、『特別』じゃないか。
そう思い始めている自分がいることを、瞳は否定できない。
『親友』。
そう思うことで折り合いをつけてはいるけれど、昨夜のことを思い出して瞳は両手で顔を覆う。
(『親友』であんなことするかよ!)
円のキスは『親友』のそれではなかったし、そもそも友達同士でキスなんか罰ゲームの領域だろう。
瞳の心情的には、「気付き始めているけれど、自覚はしたくない」といったところだろうか。
アセクシャルのままでありたい。円への何かを自覚した瞬間に、それは崩れる。
そんな瞳の葛藤を知ってか知らずか。円が目覚める気配がした。
瞳の身体に回されている腕にキュッと力が入って髪にキスを落とされるから、思わず声が出る。
「うわっ!」
「瞳? 起きてる?」
「……起きてる。おはよ」
「おはよう」
瞳はモゾモゾと寝返りをうって円の方を向く。恥ずかしいけれど、背中越しに会話するのはあまりにも不自然だ。
帯を解かれて申し訳程度に引っかかっているだけの浴衣の前を掻き合わせると、円はちょっとだけバツの悪いような表情をする。
「あー。昨日のアレはさ、式神たちにバレてる?」
「うーん、どうだろ。見ようと思えば見えてるはずだけど、プライバシーってもんがオレにもあるし、オレの意志じゃなきゃアイツらに殴り込みかけられてるだろうし」
別に何も言ってこないぞ、と教えてやれば、円はなにやらホッとしたようだ。
「よく考えたら俺、式神たちにケンカ売ったのかなとちょっとビクビクしてた」
「ふは。さすがにケンカはないだろ」
瞳は笑うけれど、もし瞳の同意がなければそうであったことなど本人の預かり知らぬところである。
瞳が同意し、尚且つ瞳が笑うから式神たちは良しとしているのだと、円は認識している。公認されるまでは時間がかかりそうだ、と円は思う。
その円の考えが浅い所は、「公認もなにも、黙認されている時点で公認されているようなもの」という事実なのであったが、それは瞳も円も知る術を持たなかった。
そうこうするうちに朝日が登ってきて人の気配が動き出すから、支度を済ませて朝食を食べに行くことにした。
まだ早い時間のせいか、それとも平日のせいか、メインダイニングは席に余裕があった。
朝食メニューは飲み物と卵の調理の仕方が選べるタイプをチョイスする。
飲み物はオレンジジュース、卵料理は王道のオムレツにした。添え物は瞳はベーコンを、円は辛口ソーセージを選ぶ。
更にトーストとジャムが並べられた上に、コーヒー。テーブルの上は朝食らしい混雑具合だ。
全ての料理が揃った頃合いでふたりでいただきますを言って食事を始める。
「瞳、ソーセージ食べてみる?」
「やだよ、辛口だろ? 辛味ってのは味覚の中に入ってないんだぞ」
「味蕾が感じる味覚は4つだっけ?」
「そう。甘味、塩味、酸味、苦味。辛味は痛覚だぞ。お前はマゾか」
「……やばい、否定出来ない」
「やめろ、否定しろ」
好きな人に告白して速攻フラれて尚そばに居たいと言い、日頃から世話を焼く。ある意味マゾと言えるのかもしれないと思ったら、円は真顔になった。
そんな反応に瞳は慌てる。人付き合いは苦手なクセに懐に入れたらとことん大切にするお人好し。
ふたりともいろいろ大渋滞である。
食事が終わる頃にはダイニングもそこそこ混んできたので、ふたりは部屋に戻って食休みをしてから出発することにした。
「あの子大丈夫かなぁ?」
「うん?」
「ほら、昨日の」
「ああ。円は的確な場所を斬ったし、邪念が消えたのも確認した。また同じことを繰り返すようなら救いようがない」
「そっかぁ」
もとより、ただの気まぐれなお節介である。円が気にする必要はないとばかりにバッサリと切り捨てる瞳だ。
「そんなことより。ここの支払い、オレに出させろ」
「だぁめ。今回は全部俺が出す」
「オレのせいで泊まる羽目になったんだから。それにこの部屋ちょっと高いだろ?」
「あのね。もう一泊できるくらいの余裕はあるの。しかも俺にとってはいい思い出になったから受け取れません」
「思い出……」
「記念日でもいいけど」
「うん?」
なんだか話が変な方に行ってないか、と瞳が思った瞬間。他に誰も居ない部屋の中、円がわざと瞳の耳に口を寄せてひそりと囁く。
「昨夜の瞳。めちゃくちゃ可愛かった」
「~~~~っ!」
瞳は真っ赤になって耳を手で押さえながら、円からバッと離れる。囁かれた耳にくすぐったさが残ってムズムズする。
「もう可愛すぎて犯罪だよね」
「知るかバカ! もういい、お前に任せる!」
「りょーかい」
ニヤリと笑う円にしてやられた感がしなくもないが、もはやそんなことどうでもいいくらいには恥ずかしい。あんなことを思い出とか記念日とか言われたらたまらない。
二人きりでいるからそんな話題になるのだ、とばかりに、瞳がチェックアウトを済ませてラウンジで時間を潰すよう提案すると、円は渋々ながらに了承してくれる。
フロントでチェックアウトの手続きを済ませている円を待つ間、瞳は既にラウンジでコーヒーを飲んでいた。
(やけに時間かかってるな……)
そんなことを思いながら、例の少女たちが通り過ぎるのをチラリと眺めた。彼女らはこちらには気付かなかったようだが、『悪い気』は見当たらない。おそらく大丈夫だろうと見当をつけた。
問題なのは、こちらだ。
「あのぉー、おひとりですかぁ?」
明らかに媚を売るような声で話しかけてくる、女性の二人組。
こちらは大学生くらいだろうか。人の美醜にはあまり拘らない瞳だが、この手のタイプには明らかな不快感を示す。相手が女性だろうと男性だろうと、それは変わらない。
今日の瞳は昨日と同じイケメン仕様だ。違うところと言えば、円にドライヤーをかけてもらったおかげで、少し長めの黒髪がいつもよりサラサラなところだろうか。
瞳は彼女らを一瞥すると、すぐに手元に視線を戻す。
「人待ち中ですので」
言外に立ち去れと言われたのにも気付かない彼女たちは、こともあろうに瞳の目の前の椅子に座る。
「待ち合わせですかぁ?」
「やだ、こんなイケメン待たせるなんて」
「もし良かったらご一緒しませんか?」
めんどくさい。本当にこういう声かけは他の誰かにして欲しいと心の底から思い、自分が立ち去るべきかと腰を上げようとした瞬間だった。
「悪い! 待たせた!」
円が、慌てたように声をかけてくるから、ホッと吐息する。
「遅い」
ふ、と笑みながら円の首に手をかけてグイと引き寄せる。耳元に、いたずらっぽく囁く。「キスしていいぞ」と。
そんなふうに言われて、瞳の真意を理解しない円ではない。
ちゅ、と軽く頬にキスを落とした後にそのまま唇を重ねる。せっかく許されたのだ、堪能しなければ損、とばかりに円は瞳の口腔を貪り尽くす。
「ふ、ぅ……ん」
ここまでされるとは思っていなかった瞳の、甘やかな声が吐息とともにもれる。人前だし、軽いもので済むと思っていた浅はかな数秒前の自分を呪いたい。
ようやく解放されると、瞳の表情はとろりととろけるように甘かった。
「コレで許して」
「……ばか」
「タクシー呼んでもらったから、行こう。立てる?」
「ふざけんな、一人で立てる」
ぽかんと見ているしか出来ない女性二人を置いて、瞳は差し出された円の手を取って立ち上がり、その場を後にした。
待っていたタクシーに乗り込むと、円は運転手に行き先を告げてふぅ、とため息をついた。
「俺は『虫除け』かよ……」
「ばぁか。お前につきそうな『虫』も払ってやってるんだよ」
「やっぱり『虫』なんだ……」
「それ以外にどう言えと?」
ああいうタイプは『害虫』に分類している瞳である。ナンパ自体を否定している訳ではないが他でやってくれ、のスタンスだ。
「まあ、瞳に声かけたくらいだから見る目はあるけどさ。後で潰しておかないとね」
「……それはやめておけ」
本当にやりそうでこわい。
そういえば『謎の祓い屋』として一条さやかに言い寄られた時に円がやたら憤慨していたのを思い出す。
果ては今までのことを全部話せと言われて、必死で宥めすかした記憶もある。もしかしてもしかしなくても、円は意外と嫉妬深い?
つい最近も真と張り合っていなかったか?
なんだか面白い、というか可愛いな、と思ってしまって瞳はつい笑みが浮かぶ。
同年代の男子に可愛いだなんて失礼かもしれないけれど、意外と子供っぽくて笑ってしまう。
「笑うとこじゃないんだけど?」
「いや、ごめん。ふ、あはは」
物騒な話をしていたはずなのに瞳が笑うという、よく分からない現象に円が首を傾げているうちに目的地に到着する。
「すみません、ここってタクシー拾えますか?」
「ああ、待ちましょうか? そろそろ昼休憩ですし、メーターは止めておきますから」
「助かります」
簡単なやり取りを交わして、美作おすすめの工場兼直売所に到着である。
駐車場はかなり広く、観光バスなども何台か来ている。どうやらお土産を買うポイントであるらしい。
入り口でエアシャワーを浴びて店内に入れば、かなりの広さとずらりと並んだ商品に圧倒される。しかも、ひとつひとつ試食をしながら選ぶことができるらしい。
「え、すごい」
「あ、煎餅焼きの体験もできるって」
「わ、ホントだ!」
「観光バス来てるだけあって人も多いね」
「そうだな」
慣れた様子の周りの人たちに倣い、ふたりも試食をしたりしてみたが、なんというか、美味しかった。
「律さんとか美作さんっておかきも食べるのか?」
「うん、割と食べるよ」
「じゃあ何か買ってくか」
「あ、じゃあその前にゆばの方に行かない? うどんとか食べられるらしいよ」
「え、食べたい」
別に何をした訳でもないけれどお腹は空くものである。
工場の隣に日光ゆばの店がある。そこが美作指定の店だった。中に入ればかなり簡素な店で、テーブル席が数席。あとはお土産用の店舗となっていた。
とりあえず食事ができるか確認してテーブル席へと誘導される。メニューの数は少ないけれど、ゆばうどんを頼んでみることにした。
「ゆばって、日光と京都が有名だよな?」
「そうだね。でも京都とはゆばの引き上げ方が違うらしいよ」
「へぇー。それで食感が違うのか」
「あ、食べたことあるんだ?」
「一応な。『仕事』関連だと食べた気もしないけど」
「そっか」
そんな話をしていると、妙に親しみやすそうな店員がうどんを運んでくる。それぞれトレーに乗せられて、小鉢の代わりなのか刺身ゆばも乗っていた。
うどんのどんぶりには、揚巻の味付けゆばと、揚げゆばが四枚。さすが、と言うべきか、ゆばづくしである。
「馴染みがあるせいか、オレは日光ゆばの方が好きだな。いただきます」
「あ、写真撮って律たちに送ろ」
「おお、いいね」
「瞳、こっち向いて」
「うん?」
円が写真を撮り終わるのを待つ体勢だった瞳は、突然スマホを向けられてビックリする。カシャリとシャッター音がするから、完全に撮られた。
「ちょ、なに撮ってんの」
「ふ。瞳が可愛いから」
「後で消しとけ」
「やだよ。送信、っと。よし、食べよ。いただきます」
円もスマホを置くと、やっと箸をつける。それを確認してから瞳も食べ始めた。やはりここは刺身ゆばからだろうか。
「あ、美味しいな」
「さすが美作のイチオシ」
「うどんも美味しい」
「この味付けゆば買って帰ろ。これだけでおかずになる」
「小田切さんには? 何か買ってくか?」
「あー、どうしよ。おかきでもいいかな。正直、あの人の家庭環境わかんないんだよね」
「へぇ?」
「何もかもが謎。でも腕は確か」
「オレより不審人物じゃないか?」
「ある意味ね。まあそのうち知っていくよ」
「そうだな」
そんなやり取りを交わしながら食べ盛りの特権で早々に完食し、次はお土産の物色である。
「とりあえず、美作のリクエストが揚げゆばと味付けゆばと刺身ゆば。それはうちにも買ってこ?」
「ああ、それは任せる。というか、ほぼそれでいいんじゃないか?」
「問題は量」
「なるほど。刺身は日持ちがなぁ。味付けゆば美味しかったな」
「うん」
何かを思案していた円だったが、決めたら早かった。テキパキと注文して支払いまで一気だ。
結局、そこそこ大きな袋になってしまったが仕方がない。
それから再び工場に戻って、お土産用と自宅用のおかきを買って先程のタクシーへと戻れば、運転手は既に待機していた。
「すみません、お待たせしました」
「いえいえ。良い買い物はできましたか?」
「はい、おかげさまで」
「それで、どちらへ向かいましょうか?」
「ええと、駅まで」
「はい。了解しました」
円は最寄りではなく、少し遠い方の駅を指定した。日光へ向かう時に使った路線の駅はそちらなのだ。ここからの最寄り駅に行ってしまうと、かなり遠回りして帰ることになる。そのあたりは運転手も把握しているらしかった。別段なにを言われるでもなく、指定した駅まで到着する。
「ありがとうございました」
料金メーターを確認して端数を切り上げたキリの良い金額を渡して釣りは要らないと言って降りた。
駅の時刻表を見れば、あと10分ほどで電車が到着するらしい。
「ちょうど良いくらいか?」
「だね。えっと、到着時間は、っと」
迎えに来ると言っていた美作に電車の時間をメッセージで送る。
「あれ?」
「どうした?」
「もう駅にいるみたいだよ」
「え?」
ほら、と円がスマホを見せてくるから、瞳もひょいと覗き込む。「改札前に居ます」のメッセージと、律を含めた改札前の様子の画像。
「あ、律さんも来てるのか。ここからどれくらいかかるんだっけ?」
「ざっと30分」
「うん。なにか……なにか奢ろう」
「うーん……。買い物してるから大丈夫とは言ってるけど」
「まあ、合流してからの話だな」
「そうだね」
円の言葉とほぼ同時に、電車がホームに滑り込んできた。
電車内はかなり空いていて、少し荷物があるから助かった。行く時は泊まりになるなんて予想もしていなかったのに、何が起こるか本当に分からないものである。
「……円」
「んー?」
「お前、少し寝ろ」
「…………」
「着いたら起こしてやる」
「……バレた?」
「ほとんど寝てないだろ。まあ、オレのせいといえばオレのせいだろうからな」
「瞳のせいではないよ。ただ、眠れなかっただけ」
「目ぇ閉じてるだけでも違うから。肩くらい貸してやる」
「うん、ありがと」
電車の振動が心地よくて、円はうつらうつらしていた。そこを瞳に見つけられたのだ。
まあ、好きな人と同じベッドで、しかも一線を超えていないとなれば欲求不満だろう。悶々とした夜を過ごしたに違いない、というのは円の様子を見ていて分かったことだ。
円は、瞳の言葉に安心したのか。ことり、と頭を瞳の肩に預けてくる。一定間隔の呼吸が、浅いながらも眠りに入ったことを伝えてくる。
「ほんっと、バカだなぁ……」
そう呟いた瞳の声は愛しさに溢れていたが、聞くものは誰もいなかった。
ふ、と目を開けたら誰かに腕枕をされていて、背中に体温を感じる。その誰かが円であることは考えなくとも分かった。
昨夜はものすごく恥ずかしいことをした記憶がある。恥ずかし過ぎて、今の体勢すら恥ずかしくて、逃げ出してしまいたい。
(でも、今動いたら起こすよなぁ……)
そう思うとどうにも動けずにいる。
昨夜に張った防音の結界は、どうやら瞳が寝落ちた時に解除されたようだった。今は残り香のような痕跡が見えるだけである。
それを確認したら、また昨夜のことを思い出してしまう。
瞳はアセクシャルだ。というより、アセクシャルを自認している、と言った方がいいだろう。
アセクシャルとは、円が調べた通りで、他人に性的感情や欲求を覚えない人のことを一般的にそう呼んでいる。親愛や友愛はそれには含まれない。だから、家族として、友人として、好きだという感情は分かるけれど、性的なことが絡むとさっぱり分からないのだ。
今まで出会った人の中に、性的に惹かれた人など居なかったし、そういったことに興味もなかった。だからこそ、誘われても断って一切の関係を断ち切ってきた。
けれど、円は違った。
そもそもの出会いからしておかしかった。
クラスメイトにやたら綺麗な顔をした御曹司がいることは知っていた。けれどまさか、自分が彼と関わることになるなんて思っていなかったから、ただ『認識』していただけだ。
正直な話、アセクシャルとデミセクシャルは紙一重だと、瞳は思っている。
デミセクシャルも他人に性的感情や欲求を覚えないけれど、特に友愛などが深くなった人に性的感情を覚えることがあるという。現に、円は自分を「デミセクシャル」だと言った。
そんな円と関わったきっかけは、気まぐれな『除霊』だった。
登下校の際に通る遊歩道。小さな少女の霊がいた。最初は迷子かと思ったけれど、話を聞くうちに彼女の家族への想いが少女を現世に留めていると知った。だから、霊力を少しだけ渡して心残りを解消させてやったのだ。
その現場を、近くにあった律の事務所から見られていた。
遠回しに言われて、詳しく話をするために自宅へ連れて行ったけれど、よく考えてみたらあの時、別に自宅でなくても良かったはずなのだ。
それこそ遊歩道のベンチで事足りたはずだ。
それなのに、円を連れ帰ってあまつさえ同居を許して。
初めから、瞳は円を自分のテリトリーに入れていた。
もうこんなの、『特別』じゃないか。
そう思い始めている自分がいることを、瞳は否定できない。
『親友』。
そう思うことで折り合いをつけてはいるけれど、昨夜のことを思い出して瞳は両手で顔を覆う。
(『親友』であんなことするかよ!)
円のキスは『親友』のそれではなかったし、そもそも友達同士でキスなんか罰ゲームの領域だろう。
瞳の心情的には、「気付き始めているけれど、自覚はしたくない」といったところだろうか。
アセクシャルのままでありたい。円への何かを自覚した瞬間に、それは崩れる。
そんな瞳の葛藤を知ってか知らずか。円が目覚める気配がした。
瞳の身体に回されている腕にキュッと力が入って髪にキスを落とされるから、思わず声が出る。
「うわっ!」
「瞳? 起きてる?」
「……起きてる。おはよ」
「おはよう」
瞳はモゾモゾと寝返りをうって円の方を向く。恥ずかしいけれど、背中越しに会話するのはあまりにも不自然だ。
帯を解かれて申し訳程度に引っかかっているだけの浴衣の前を掻き合わせると、円はちょっとだけバツの悪いような表情をする。
「あー。昨日のアレはさ、式神たちにバレてる?」
「うーん、どうだろ。見ようと思えば見えてるはずだけど、プライバシーってもんがオレにもあるし、オレの意志じゃなきゃアイツらに殴り込みかけられてるだろうし」
別に何も言ってこないぞ、と教えてやれば、円はなにやらホッとしたようだ。
「よく考えたら俺、式神たちにケンカ売ったのかなとちょっとビクビクしてた」
「ふは。さすがにケンカはないだろ」
瞳は笑うけれど、もし瞳の同意がなければそうであったことなど本人の預かり知らぬところである。
瞳が同意し、尚且つ瞳が笑うから式神たちは良しとしているのだと、円は認識している。公認されるまでは時間がかかりそうだ、と円は思う。
その円の考えが浅い所は、「公認もなにも、黙認されている時点で公認されているようなもの」という事実なのであったが、それは瞳も円も知る術を持たなかった。
そうこうするうちに朝日が登ってきて人の気配が動き出すから、支度を済ませて朝食を食べに行くことにした。
まだ早い時間のせいか、それとも平日のせいか、メインダイニングは席に余裕があった。
朝食メニューは飲み物と卵の調理の仕方が選べるタイプをチョイスする。
飲み物はオレンジジュース、卵料理は王道のオムレツにした。添え物は瞳はベーコンを、円は辛口ソーセージを選ぶ。
更にトーストとジャムが並べられた上に、コーヒー。テーブルの上は朝食らしい混雑具合だ。
全ての料理が揃った頃合いでふたりでいただきますを言って食事を始める。
「瞳、ソーセージ食べてみる?」
「やだよ、辛口だろ? 辛味ってのは味覚の中に入ってないんだぞ」
「味蕾が感じる味覚は4つだっけ?」
「そう。甘味、塩味、酸味、苦味。辛味は痛覚だぞ。お前はマゾか」
「……やばい、否定出来ない」
「やめろ、否定しろ」
好きな人に告白して速攻フラれて尚そばに居たいと言い、日頃から世話を焼く。ある意味マゾと言えるのかもしれないと思ったら、円は真顔になった。
そんな反応に瞳は慌てる。人付き合いは苦手なクセに懐に入れたらとことん大切にするお人好し。
ふたりともいろいろ大渋滞である。
食事が終わる頃にはダイニングもそこそこ混んできたので、ふたりは部屋に戻って食休みをしてから出発することにした。
「あの子大丈夫かなぁ?」
「うん?」
「ほら、昨日の」
「ああ。円は的確な場所を斬ったし、邪念が消えたのも確認した。また同じことを繰り返すようなら救いようがない」
「そっかぁ」
もとより、ただの気まぐれなお節介である。円が気にする必要はないとばかりにバッサリと切り捨てる瞳だ。
「そんなことより。ここの支払い、オレに出させろ」
「だぁめ。今回は全部俺が出す」
「オレのせいで泊まる羽目になったんだから。それにこの部屋ちょっと高いだろ?」
「あのね。もう一泊できるくらいの余裕はあるの。しかも俺にとってはいい思い出になったから受け取れません」
「思い出……」
「記念日でもいいけど」
「うん?」
なんだか話が変な方に行ってないか、と瞳が思った瞬間。他に誰も居ない部屋の中、円がわざと瞳の耳に口を寄せてひそりと囁く。
「昨夜の瞳。めちゃくちゃ可愛かった」
「~~~~っ!」
瞳は真っ赤になって耳を手で押さえながら、円からバッと離れる。囁かれた耳にくすぐったさが残ってムズムズする。
「もう可愛すぎて犯罪だよね」
「知るかバカ! もういい、お前に任せる!」
「りょーかい」
ニヤリと笑う円にしてやられた感がしなくもないが、もはやそんなことどうでもいいくらいには恥ずかしい。あんなことを思い出とか記念日とか言われたらたまらない。
二人きりでいるからそんな話題になるのだ、とばかりに、瞳がチェックアウトを済ませてラウンジで時間を潰すよう提案すると、円は渋々ながらに了承してくれる。
フロントでチェックアウトの手続きを済ませている円を待つ間、瞳は既にラウンジでコーヒーを飲んでいた。
(やけに時間かかってるな……)
そんなことを思いながら、例の少女たちが通り過ぎるのをチラリと眺めた。彼女らはこちらには気付かなかったようだが、『悪い気』は見当たらない。おそらく大丈夫だろうと見当をつけた。
問題なのは、こちらだ。
「あのぉー、おひとりですかぁ?」
明らかに媚を売るような声で話しかけてくる、女性の二人組。
こちらは大学生くらいだろうか。人の美醜にはあまり拘らない瞳だが、この手のタイプには明らかな不快感を示す。相手が女性だろうと男性だろうと、それは変わらない。
今日の瞳は昨日と同じイケメン仕様だ。違うところと言えば、円にドライヤーをかけてもらったおかげで、少し長めの黒髪がいつもよりサラサラなところだろうか。
瞳は彼女らを一瞥すると、すぐに手元に視線を戻す。
「人待ち中ですので」
言外に立ち去れと言われたのにも気付かない彼女たちは、こともあろうに瞳の目の前の椅子に座る。
「待ち合わせですかぁ?」
「やだ、こんなイケメン待たせるなんて」
「もし良かったらご一緒しませんか?」
めんどくさい。本当にこういう声かけは他の誰かにして欲しいと心の底から思い、自分が立ち去るべきかと腰を上げようとした瞬間だった。
「悪い! 待たせた!」
円が、慌てたように声をかけてくるから、ホッと吐息する。
「遅い」
ふ、と笑みながら円の首に手をかけてグイと引き寄せる。耳元に、いたずらっぽく囁く。「キスしていいぞ」と。
そんなふうに言われて、瞳の真意を理解しない円ではない。
ちゅ、と軽く頬にキスを落とした後にそのまま唇を重ねる。せっかく許されたのだ、堪能しなければ損、とばかりに円は瞳の口腔を貪り尽くす。
「ふ、ぅ……ん」
ここまでされるとは思っていなかった瞳の、甘やかな声が吐息とともにもれる。人前だし、軽いもので済むと思っていた浅はかな数秒前の自分を呪いたい。
ようやく解放されると、瞳の表情はとろりととろけるように甘かった。
「コレで許して」
「……ばか」
「タクシー呼んでもらったから、行こう。立てる?」
「ふざけんな、一人で立てる」
ぽかんと見ているしか出来ない女性二人を置いて、瞳は差し出された円の手を取って立ち上がり、その場を後にした。
待っていたタクシーに乗り込むと、円は運転手に行き先を告げてふぅ、とため息をついた。
「俺は『虫除け』かよ……」
「ばぁか。お前につきそうな『虫』も払ってやってるんだよ」
「やっぱり『虫』なんだ……」
「それ以外にどう言えと?」
ああいうタイプは『害虫』に分類している瞳である。ナンパ自体を否定している訳ではないが他でやってくれ、のスタンスだ。
「まあ、瞳に声かけたくらいだから見る目はあるけどさ。後で潰しておかないとね」
「……それはやめておけ」
本当にやりそうでこわい。
そういえば『謎の祓い屋』として一条さやかに言い寄られた時に円がやたら憤慨していたのを思い出す。
果ては今までのことを全部話せと言われて、必死で宥めすかした記憶もある。もしかしてもしかしなくても、円は意外と嫉妬深い?
つい最近も真と張り合っていなかったか?
なんだか面白い、というか可愛いな、と思ってしまって瞳はつい笑みが浮かぶ。
同年代の男子に可愛いだなんて失礼かもしれないけれど、意外と子供っぽくて笑ってしまう。
「笑うとこじゃないんだけど?」
「いや、ごめん。ふ、あはは」
物騒な話をしていたはずなのに瞳が笑うという、よく分からない現象に円が首を傾げているうちに目的地に到着する。
「すみません、ここってタクシー拾えますか?」
「ああ、待ちましょうか? そろそろ昼休憩ですし、メーターは止めておきますから」
「助かります」
簡単なやり取りを交わして、美作おすすめの工場兼直売所に到着である。
駐車場はかなり広く、観光バスなども何台か来ている。どうやらお土産を買うポイントであるらしい。
入り口でエアシャワーを浴びて店内に入れば、かなりの広さとずらりと並んだ商品に圧倒される。しかも、ひとつひとつ試食をしながら選ぶことができるらしい。
「え、すごい」
「あ、煎餅焼きの体験もできるって」
「わ、ホントだ!」
「観光バス来てるだけあって人も多いね」
「そうだな」
慣れた様子の周りの人たちに倣い、ふたりも試食をしたりしてみたが、なんというか、美味しかった。
「律さんとか美作さんっておかきも食べるのか?」
「うん、割と食べるよ」
「じゃあ何か買ってくか」
「あ、じゃあその前にゆばの方に行かない? うどんとか食べられるらしいよ」
「え、食べたい」
別に何をした訳でもないけれどお腹は空くものである。
工場の隣に日光ゆばの店がある。そこが美作指定の店だった。中に入ればかなり簡素な店で、テーブル席が数席。あとはお土産用の店舗となっていた。
とりあえず食事ができるか確認してテーブル席へと誘導される。メニューの数は少ないけれど、ゆばうどんを頼んでみることにした。
「ゆばって、日光と京都が有名だよな?」
「そうだね。でも京都とはゆばの引き上げ方が違うらしいよ」
「へぇー。それで食感が違うのか」
「あ、食べたことあるんだ?」
「一応な。『仕事』関連だと食べた気もしないけど」
「そっか」
そんな話をしていると、妙に親しみやすそうな店員がうどんを運んでくる。それぞれトレーに乗せられて、小鉢の代わりなのか刺身ゆばも乗っていた。
うどんのどんぶりには、揚巻の味付けゆばと、揚げゆばが四枚。さすが、と言うべきか、ゆばづくしである。
「馴染みがあるせいか、オレは日光ゆばの方が好きだな。いただきます」
「あ、写真撮って律たちに送ろ」
「おお、いいね」
「瞳、こっち向いて」
「うん?」
円が写真を撮り終わるのを待つ体勢だった瞳は、突然スマホを向けられてビックリする。カシャリとシャッター音がするから、完全に撮られた。
「ちょ、なに撮ってんの」
「ふ。瞳が可愛いから」
「後で消しとけ」
「やだよ。送信、っと。よし、食べよ。いただきます」
円もスマホを置くと、やっと箸をつける。それを確認してから瞳も食べ始めた。やはりここは刺身ゆばからだろうか。
「あ、美味しいな」
「さすが美作のイチオシ」
「うどんも美味しい」
「この味付けゆば買って帰ろ。これだけでおかずになる」
「小田切さんには? 何か買ってくか?」
「あー、どうしよ。おかきでもいいかな。正直、あの人の家庭環境わかんないんだよね」
「へぇ?」
「何もかもが謎。でも腕は確か」
「オレより不審人物じゃないか?」
「ある意味ね。まあそのうち知っていくよ」
「そうだな」
そんなやり取りを交わしながら食べ盛りの特権で早々に完食し、次はお土産の物色である。
「とりあえず、美作のリクエストが揚げゆばと味付けゆばと刺身ゆば。それはうちにも買ってこ?」
「ああ、それは任せる。というか、ほぼそれでいいんじゃないか?」
「問題は量」
「なるほど。刺身は日持ちがなぁ。味付けゆば美味しかったな」
「うん」
何かを思案していた円だったが、決めたら早かった。テキパキと注文して支払いまで一気だ。
結局、そこそこ大きな袋になってしまったが仕方がない。
それから再び工場に戻って、お土産用と自宅用のおかきを買って先程のタクシーへと戻れば、運転手は既に待機していた。
「すみません、お待たせしました」
「いえいえ。良い買い物はできましたか?」
「はい、おかげさまで」
「それで、どちらへ向かいましょうか?」
「ええと、駅まで」
「はい。了解しました」
円は最寄りではなく、少し遠い方の駅を指定した。日光へ向かう時に使った路線の駅はそちらなのだ。ここからの最寄り駅に行ってしまうと、かなり遠回りして帰ることになる。そのあたりは運転手も把握しているらしかった。別段なにを言われるでもなく、指定した駅まで到着する。
「ありがとうございました」
料金メーターを確認して端数を切り上げたキリの良い金額を渡して釣りは要らないと言って降りた。
駅の時刻表を見れば、あと10分ほどで電車が到着するらしい。
「ちょうど良いくらいか?」
「だね。えっと、到着時間は、っと」
迎えに来ると言っていた美作に電車の時間をメッセージで送る。
「あれ?」
「どうした?」
「もう駅にいるみたいだよ」
「え?」
ほら、と円がスマホを見せてくるから、瞳もひょいと覗き込む。「改札前に居ます」のメッセージと、律を含めた改札前の様子の画像。
「あ、律さんも来てるのか。ここからどれくらいかかるんだっけ?」
「ざっと30分」
「うん。なにか……なにか奢ろう」
「うーん……。買い物してるから大丈夫とは言ってるけど」
「まあ、合流してからの話だな」
「そうだね」
円の言葉とほぼ同時に、電車がホームに滑り込んできた。
電車内はかなり空いていて、少し荷物があるから助かった。行く時は泊まりになるなんて予想もしていなかったのに、何が起こるか本当に分からないものである。
「……円」
「んー?」
「お前、少し寝ろ」
「…………」
「着いたら起こしてやる」
「……バレた?」
「ほとんど寝てないだろ。まあ、オレのせいといえばオレのせいだろうからな」
「瞳のせいではないよ。ただ、眠れなかっただけ」
「目ぇ閉じてるだけでも違うから。肩くらい貸してやる」
「うん、ありがと」
電車の振動が心地よくて、円はうつらうつらしていた。そこを瞳に見つけられたのだ。
まあ、好きな人と同じベッドで、しかも一線を超えていないとなれば欲求不満だろう。悶々とした夜を過ごしたに違いない、というのは円の様子を見ていて分かったことだ。
円は、瞳の言葉に安心したのか。ことり、と頭を瞳の肩に預けてくる。一定間隔の呼吸が、浅いながらも眠りに入ったことを伝えてくる。
「ほんっと、バカだなぁ……」
そう呟いた瞳の声は愛しさに溢れていたが、聞くものは誰もいなかった。
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