祓い屋はじめました。

七海さくら/浅海咲也(同一人物)

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085.

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 朝食が終われば、なぜか律によって美作と二人で部屋を追い出された瞳である。
 女の子同士の話がしたい、ということらしいが、予定外に時間ができてしまって美作と二人で悩んでしまう。


「……どうします?」
「……瞳さま。もしよろしければ、わたしの買い物に付き合ってくださいませんか?」
「買い物、ですか?」
「実は、律さまと円さまの誕生日が近いのです。いつもこんな風に出かけられることなんてありませんでしたので、プレゼントを買って差し上げたいと思いまして」
「行きましょう」


 人混みにはできるだけ行きたくない瞳であったが、美作の語る理由を聞けば断るなんてとんでもなかった。むしろ瞳も何か用意したいと思った。
 そんなわけで、二人でショッピングである。
 せっかくなのでショッピングモールまで足を運ぶことにした二人は、美作の運転で出かけることになる。


「そういえば、美作さんの誕生日はいつなんですか?」
「わたしは6月です」
「え」
「お会いしたばかりの頃ですねぇ」


 なぜか、初めて律と美作が瞳の家に泊まった時のことを思い出す。そういえばあの時、年齢を聞いたら美作は妙に慌てていなかったか?


「いやぁ、誕生日が近いのに年齢を聞かれた時は驚きました」
「言ってくださいよ!」
「生年月日というのはとても重要でして。祝うこともできますが、占ったり呪いをかけることもできるんですよ」
「あ」
「ですので、安易に教えたりしてはいけませんよ。ちなみにわたしの誕生日ですが、6月の……」
「わ───! 言わなくていいです!」
「ふふふ」


 慌てて自分の耳を塞げば笑われた。ぐぬぬ、と瞳は唸る。


「楽しんでますね?」
「いいえ、嬉しいんです」
「え?」
「さあ、着きましたよ。ちょうど開店時間ですね」


 言われて時計を見れば、ちょうど開店時間を1分ほど過ぎたところ。
 車を駐車場へ停めて店内へ入れば、土曜日のせいかそれなりの人たちが買い物を楽しみ始めていた。


「美作さん、何をプレゼントするんですか?」
「そうですね。律さまには新しいマグカップを、と思っているのですが」
「なるほど。じゃあオレ、紅茶にしようかな。ここたしか紅茶の専門店ありましたよね?」
「ありますね」
「まず律さん用のマグカップ見に行きましょう」
「はい」


 二人で食器も扱う雑貨店へ行ってあれこれ見ているうちに、とても綺麗な色使いでありながらシンプルなペアのマグカップを見つけた。寒色系と暖色系が対になるように箱に収められている。
 瞳はそれが気になって、ちょっと考えると美作に聞いた。


「美作さんのマグカップも新調しません?」
「はい?」
「いやコレ。ペアですけど、片方を美作さん用にしません? オレからプレゼントってことで」
「律さまとペア、ですか……?」
「ダメですか?」
「いえ、そんなことはないですが。律さまがどう思われるか……」
「大丈夫じゃないですか?」
「ですが瞳さま。これは高校生が誕生日プレゼントとして渡すには高価です」
「オレ普通の高校生じゃないんで大丈夫です」
「あ……」
「決まりでいいですか? 買ってきますね」
「いや待ってください! わたしが!」


 結局、瞳に押し切られる形でペアカップをギフト用にラッピングしてもらう美作である。
 そんな美作を見ながら、円には何を贈るか考える。
 いわゆる普通の高校生が誕生日プレゼントとして渡すものが分からないのが一番の悩みなのである。
 よく使うものとするなら、時計か財布辺りだろうか。
 だが、財布とするなら使い心地など本人に確認してもらった方がいい。となると時計か。
 そんなことを考えているうちに、美作がラッピングしたものを紙袋に入れてもらって戻ってくる。


「お待たせしました」
「じゃあ次、紅茶選んでいいですか?」
「もちろんです」


 人混みは好きではないし苦手だが、ずっとひとり暮らしだったので、実はそこそこ慣れてはいたりする。
 紅茶専門店へ来ると、瞳は店員に声をかける。その場限りであれば、声をかけることは苦ではない。


「やはり定番はダージリンですか?」
「そうだと思います。プレゼントですか?」
「あ、律さまはフレーバーティーも好まれますよ。フルーツ系がお好きです」
「でしたらこちらがオススメです」


 店員が勧めてきたのは、フルーツ系のフレーバーティーと限定商品など、ダージリンを含めて四種類。


「では、それをまとめてギフト用に詰めていただけますか?」
「かしこまりました」


 店員は何の疑いもなく準備を始めるけれど、美作はついギョッとしてしまう。
 普通ではないと分かってはいるけれど、買い方が豪胆すぎる。
 お茶請けとして出すのにちょうどいい焼き菓子のギフトパッケージがレジ横にあったので、ついでとばかりにそれも購入してしまう瞳であった。
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