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第1章
出会い。
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あの日僕が見たのは、
小さな、小さな、この世界の神様。
あの高校1年生の始まりから終わりを、僕は、二度と忘れない。
彼女と、過ごした時間を。
忘れない。
新しい香り、
4月の香り、
不思議な香り、
昨日とは全く違う世界に来たみたいな、ふわふわした感じ、新しい生活に期待をふくらませながら教室のドアをガラリと開ける。
そこから溢れ出るのは明るい真っ白な光。
・・・違う。
ぶわっと黒い陰が押し寄せる。
ああ、ダメだ。
僕はまだ、人が怖い。
咄嗟にバリアを張る。
急に周りの音がこもる。
ほっとする。
もう傷つくのはゴメンだ。
モヤっとした世界の中で空いている席を見つける。
前に人がいるが女子なのでとりあえず問題は無いだろう。
「はじめまして。」
ガタタッ
びっくりした。
急に話しかけられた。あの女子だ。
「私、七和 桜って言うの。よろしく。」
その声だけは、妙に透き通って聞こえた。
「・・・僕、八屋 春斗・・・よろしく。」
彼女の顔がぱぁっと明るくなる。
「七和と八屋・・・桜と春斗・・・おお!!すごーい!なんかうんめーってかんじ!」
なんか平仮名感がすごい話し方だ。
ふわっとした印象の彼女は暖かい・・・春にぴったりな女性だと思った。
(何処ぞのポエムみたいで恥ずかしくなった。)
それから彼女とはよく話すようになった。
「今日の数学の宿題終わってる?」
「いや、まだ。」
「ふふふ、私も、」
「どこまでやった?」
「問の5番かな、」
「あ~僕4番だ。」
「勝った~」
「・・・あと5分で授業はじまっちゃうよ。」
「ええっ!やば!」
とか、
「わ~八屋くんのお弁当美味しそ~」
「七和は学食?」
「ううん、購買でパン買ってる。」
「そうなんだ。」
「今から焼きそばパンをゲットしに行くところ!」
「焼きそばパンって1番人気だろ?」
「そう、だから始まる直前に購買の前にいれば~」
「なるほどね。」
「あ!時間!というわけで、行ってきます!」
「ファイト~」
とか、
彼女と話しているうちに
ちょっとだけ世界が明るくなった。
この世界をもう一度だけ、見つめ直したいと思った。
春がそろそろ終わる。
そんなある日。
「次、物理か~私ちょっと物理って苦手。」
「ええ?僕は得意だけどなぁ・・・」
「物理が得意って羨ましいよ・・・この前のテストもわかんないとこあった。」
「・・・どこがわかんないの。」
「ここ~」
「公式覚えれば簡単だよ。まず・・・」
「ふむ・・・」
授業のあとは放課後だったので、そのまま2人で教室に残った。
桜の花びらが教室に入って、二人の間にポトリと落ちた。
「・・・この花びらも地球に引っ張られてここに落ちた。」
「そうだね。」
「・・・春・・・終わるね。」
「・・・だね。」
「夏が来たら、何しよっか。」
「え?」
「夏休み、どこいこっか。」
「僕と?」
「うん。」
「家族は?」
「どうせ両親ふたりとも仕事だよ。」
「そっか。」
なんだかんだ、僕も夏休みにある予定と言ったら彼女と僕、あと先輩が5人だけが部員の「物理部」の活動くらいで(そういえば彼女は物理が嫌いなのにどうしてこの部活にしたんだろうか。)
、その他はなんにもなかった。
彼女と過ごす夏は、少しだけ、想像できた。
楽しそうな僕の顔。
「・・・どこいこっか。・・・ね。」
2人で最後の花びらを外へ落とした。
小さな、小さな、この世界の神様。
あの高校1年生の始まりから終わりを、僕は、二度と忘れない。
彼女と、過ごした時間を。
忘れない。
新しい香り、
4月の香り、
不思議な香り、
昨日とは全く違う世界に来たみたいな、ふわふわした感じ、新しい生活に期待をふくらませながら教室のドアをガラリと開ける。
そこから溢れ出るのは明るい真っ白な光。
・・・違う。
ぶわっと黒い陰が押し寄せる。
ああ、ダメだ。
僕はまだ、人が怖い。
咄嗟にバリアを張る。
急に周りの音がこもる。
ほっとする。
もう傷つくのはゴメンだ。
モヤっとした世界の中で空いている席を見つける。
前に人がいるが女子なのでとりあえず問題は無いだろう。
「はじめまして。」
ガタタッ
びっくりした。
急に話しかけられた。あの女子だ。
「私、七和 桜って言うの。よろしく。」
その声だけは、妙に透き通って聞こえた。
「・・・僕、八屋 春斗・・・よろしく。」
彼女の顔がぱぁっと明るくなる。
「七和と八屋・・・桜と春斗・・・おお!!すごーい!なんかうんめーってかんじ!」
なんか平仮名感がすごい話し方だ。
ふわっとした印象の彼女は暖かい・・・春にぴったりな女性だと思った。
(何処ぞのポエムみたいで恥ずかしくなった。)
それから彼女とはよく話すようになった。
「今日の数学の宿題終わってる?」
「いや、まだ。」
「ふふふ、私も、」
「どこまでやった?」
「問の5番かな、」
「あ~僕4番だ。」
「勝った~」
「・・・あと5分で授業はじまっちゃうよ。」
「ええっ!やば!」
とか、
「わ~八屋くんのお弁当美味しそ~」
「七和は学食?」
「ううん、購買でパン買ってる。」
「そうなんだ。」
「今から焼きそばパンをゲットしに行くところ!」
「焼きそばパンって1番人気だろ?」
「そう、だから始まる直前に購買の前にいれば~」
「なるほどね。」
「あ!時間!というわけで、行ってきます!」
「ファイト~」
とか、
彼女と話しているうちに
ちょっとだけ世界が明るくなった。
この世界をもう一度だけ、見つめ直したいと思った。
春がそろそろ終わる。
そんなある日。
「次、物理か~私ちょっと物理って苦手。」
「ええ?僕は得意だけどなぁ・・・」
「物理が得意って羨ましいよ・・・この前のテストもわかんないとこあった。」
「・・・どこがわかんないの。」
「ここ~」
「公式覚えれば簡単だよ。まず・・・」
「ふむ・・・」
授業のあとは放課後だったので、そのまま2人で教室に残った。
桜の花びらが教室に入って、二人の間にポトリと落ちた。
「・・・この花びらも地球に引っ張られてここに落ちた。」
「そうだね。」
「・・・春・・・終わるね。」
「・・・だね。」
「夏が来たら、何しよっか。」
「え?」
「夏休み、どこいこっか。」
「僕と?」
「うん。」
「家族は?」
「どうせ両親ふたりとも仕事だよ。」
「そっか。」
なんだかんだ、僕も夏休みにある予定と言ったら彼女と僕、あと先輩が5人だけが部員の「物理部」の活動くらいで(そういえば彼女は物理が嫌いなのにどうしてこの部活にしたんだろうか。)
、その他はなんにもなかった。
彼女と過ごす夏は、少しだけ、想像できた。
楽しそうな僕の顔。
「・・・どこいこっか。・・・ね。」
2人で最後の花びらを外へ落とした。
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