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突然、僕の鼻腔いっぱいに広がった爽やかな匂い。花が咲いた森の中を歩いてるみたいで、懐かしくて、ホッとして、ドキドキする。
目を開けても視界はほぼ真っ暗で、骨が軋みそうなくらい体全体に力が加わってちょっと・・・苦しい。
困惑する僕を抱え込んだまま、"当の本人"はうんともすんとも言わず、ただ僕を「逃がさない」、そう言わんばかりに抱きしめ続けている。
「あの・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「ぐふっ、ク、クロ、クロヴィス、さん・・・?!」
「・・・嫌だ。」
「ま、まだ、僕何も、言ってな、ぐぐっ、」
「・・・クロちゃん、そろそろラウー死んじゃうよ。」
「嫌だ。」
「あーもう・・・まったく、この二人は・・・・・・」
「・・・・・・??!」
ユキ先輩の何やら不満そうな声が背後から聞こえる。
今思えば、扉を開ける前からユキ先輩の黒い耳は警戒するように横にピンと張っていて、心底嫌そうな顔をしていた。
僕も色んな意味でもの凄く緊張はしていたんだけど、それとはまた違った感じで。
扉の前でグイグイ背中を押され「ラウーが開けて」の一点張りで、僕は意を決して扉を開けた。
扉の向こう、つまりこの控室は科代表生徒と指導役の集合場所。
史科は紙面発表会場が別にあるから、そちらの設営に行っていて不在。
実質僕たち魔法科と、士官科の控え室である。
訓練場の周りはまだ朝早いのにも関わらず、すでに生徒が集まり始めていて人がかなり多かった。
僕はクロヴィスさんにあの日以来会うわけで、会場に近づくにつれ人も増え、いつばったり出会すのかと心臓のドキドキが増すばかり。
会えたらまず、あの失礼な対応の謝罪からだ!!と思っていて、頭の中では目紛しく謝罪の言葉が飛び交っていた。
(・・・ちなみにね、この時のユキ先輩はニヤニヤ意地悪な顔だったんだけど、あの扉の前から何かを感じ取ったらしく、先述した通り嫌そうな顔に変わっていったわけです。)
「・・・ユキの匂いがする・・・・・・」
「ぐえっ、い、今、何か言っ、うぐっ、」
「原因つくったの、クロちゃんでしょ。魔物殺すような目で俺を見ないで欲しいんだけど。」
「・・・・・・・・・髪留め・・・」
「えっ?!か、かみ・・・あ、髪ですか?!これは今日ユキ先輩が結ってくれ、んぐっ、」
「・・・・・・・・・・・・やっぱりユキ、か。」
「あー・・・クロちゃんがまた面倒くさい顔になってる・・・」
「クロ、ヴィスさん!く・・・くる、苦しい、です!い、一旦!落ち着きましょう!?」
「・・・!?」
会話がよく聞き取れなくなるぐらい、どんどん力が強くなっていってさすがに締め殺されそうだった。
大声を出したらクロヴィスさんの体がびくりと大きく揺れて、仕方なさそうに離れていく。
クロヴィスさんの体が熱かったのか、僕の体が熱かったのか。僕の額にはうっすら汗が浮かんでいて、離れた途端にすぅっと風があたってひんやりとした。
離れたと言っても、クロヴィスさんの両手はまだ僕の二の腕あたりを掴んだまま。
クロヴィスさんがいつもと違うのは見てすぐ分かるんだけど、一番違和感があるのは目線。
クロヴィスさんが僕と、全く目を合わそうとしない。
「・・・クロヴィスさん?」
「・・・・・・何だ。」
「さっき、何て言ってたんですか?それに突然どうしてあんな・・・じゃなくて、あの、」
「・・・・・・」
「この間は、本当に・・・すみませんでした。失礼な態度だったし、許可もなく魔法を掛けてしま、」
「ユキを番にするつもりなんだろう?」
「・・・は、い?」
「俺は・・・どうすれば、ラウーの隣に居られるんだ?」
「・・・・・・はい??!」
後ろにいたユキ先輩の方をバッと振り返ると、絵に描いたような頭の抱え方をしているのが見えた。
恐る恐る前を向き直す。
よく見ると、目の前のクロヴィスさんの耳が・・・尻尾が・・・・・・!
「あの・・・クロヴィスさん・・・」
「・・・嫌だ。」
「・・・っ、あ、あのですね、」
「ユキのことが好きだとしても、俺はラウーと離れたくない。」
「・・・え?ぼ、僕が、ユキ先輩のこと好」
「聞きたくない。」
「むぐっ!?」
僕の口を覆うようにクロヴィスさんの大きな手が伸びてくる。
獣人は体温が高いはずなのに、クロヴィスさんの手はびっくりするくらい冷たかった。
・・・・・・ん?
・・・・・・・・・んん?
これ、クロヴィスさん、何か大きな勘違いをしてる?!
「んぐっ、むぐぐ、」
「・・・俺はずっとラウーが好きだった。」
「・・・・・・むぐ?!!」
「だがラウーには別の想い人がいて、」
「?!!んーーん!?んんっ、」
「ずっと誰なのか探っていた。」
「・・・むぐっ!!?」
きっとあの時クロヴィスさんの気持ちは、こんな感じだったんだろう。
話をしたい、と懇願しても聞いてもらえない。それどころか僕・・・・・・転移・・・させちゃった・・・!
どんどん弱まっていくクロヴィスさんの手の力。
顔は伏せられていて、よく見えない。
これじゃ、またあの時の繰り返しになってしまう。
僕が好きなのは、ずっと前から一人なのに。
口を覆うクロヴィスさんの手を取って、僕は大きく息を吸う。
その瞬間、クロヴィスさんと目が合った。
初めて、見ます。
クロヴィスさんのそんな揺れる瞳を。
「クロヴィスさん!!あのですねっ、」
「ラウー好きだ。」
「ひえっ・・・っ、ちょっと、あのっ、」
「ユキはいい奴だ。優しくて頭もいい。だが、俺は、」
「~~~っ、待って、待って!!」
「嫌だ。待ちたくな、」
「もうっ!!!」
ぎゅっと、手を押し付けるようにクロヴィスさんの口を覆う。
この瞬間、ほんの一秒にも満たない時間にクロヴィスさんの瞳は大きく見開かれて、僕はその瞳にできる限り近づいて叫んだ。
「僕が好きなの貴方です!」
「・・・・・・・・・は・・・?」
「だからっ、僕が好きなのはクロヴィスさんなんです!」
「・・・・・・お、れ?」
「はい!クロヴィスさんのこと、ずっとずっとずっと、大好きです!」
「・・・・・・は・・・?」
ぴたりと動きが止まるクロヴィスさん。
ひょっとして息してないのでは・・・?と心配になるくらい動かないクロヴィスさんの手をぎゅっと握る。
さっきまであんなに冷たいと感じた手と同じくらい僕の手も冷たくなっていた。
ああ、僕もクロヴィスさんも緊張してたんだなって気づいた途端、足の力が抜けてしまう。
僕がずるずる落ちていくのをクロヴィスさんは慌てて受け止めてくれた。
クロヴィスさんはしばらく何も言わなかったけど、手だけはずっと離さずに握ってくれていて、体温が少しずつ、少しずつ戻っていくのを二人で確かめ合っているような、そんな気がした。
目を開けても視界はほぼ真っ暗で、骨が軋みそうなくらい体全体に力が加わってちょっと・・・苦しい。
困惑する僕を抱え込んだまま、"当の本人"はうんともすんとも言わず、ただ僕を「逃がさない」、そう言わんばかりに抱きしめ続けている。
「あの・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「ぐふっ、ク、クロ、クロヴィス、さん・・・?!」
「・・・嫌だ。」
「ま、まだ、僕何も、言ってな、ぐぐっ、」
「・・・クロちゃん、そろそろラウー死んじゃうよ。」
「嫌だ。」
「あーもう・・・まったく、この二人は・・・・・・」
「・・・・・・??!」
ユキ先輩の何やら不満そうな声が背後から聞こえる。
今思えば、扉を開ける前からユキ先輩の黒い耳は警戒するように横にピンと張っていて、心底嫌そうな顔をしていた。
僕も色んな意味でもの凄く緊張はしていたんだけど、それとはまた違った感じで。
扉の前でグイグイ背中を押され「ラウーが開けて」の一点張りで、僕は意を決して扉を開けた。
扉の向こう、つまりこの控室は科代表生徒と指導役の集合場所。
史科は紙面発表会場が別にあるから、そちらの設営に行っていて不在。
実質僕たち魔法科と、士官科の控え室である。
訓練場の周りはまだ朝早いのにも関わらず、すでに生徒が集まり始めていて人がかなり多かった。
僕はクロヴィスさんにあの日以来会うわけで、会場に近づくにつれ人も増え、いつばったり出会すのかと心臓のドキドキが増すばかり。
会えたらまず、あの失礼な対応の謝罪からだ!!と思っていて、頭の中では目紛しく謝罪の言葉が飛び交っていた。
(・・・ちなみにね、この時のユキ先輩はニヤニヤ意地悪な顔だったんだけど、あの扉の前から何かを感じ取ったらしく、先述した通り嫌そうな顔に変わっていったわけです。)
「・・・ユキの匂いがする・・・・・・」
「ぐえっ、い、今、何か言っ、うぐっ、」
「原因つくったの、クロちゃんでしょ。魔物殺すような目で俺を見ないで欲しいんだけど。」
「・・・・・・・・・髪留め・・・」
「えっ?!か、かみ・・・あ、髪ですか?!これは今日ユキ先輩が結ってくれ、んぐっ、」
「・・・・・・・・・・・・やっぱりユキ、か。」
「あー・・・クロちゃんがまた面倒くさい顔になってる・・・」
「クロ、ヴィスさん!く・・・くる、苦しい、です!い、一旦!落ち着きましょう!?」
「・・・!?」
会話がよく聞き取れなくなるぐらい、どんどん力が強くなっていってさすがに締め殺されそうだった。
大声を出したらクロヴィスさんの体がびくりと大きく揺れて、仕方なさそうに離れていく。
クロヴィスさんの体が熱かったのか、僕の体が熱かったのか。僕の額にはうっすら汗が浮かんでいて、離れた途端にすぅっと風があたってひんやりとした。
離れたと言っても、クロヴィスさんの両手はまだ僕の二の腕あたりを掴んだまま。
クロヴィスさんがいつもと違うのは見てすぐ分かるんだけど、一番違和感があるのは目線。
クロヴィスさんが僕と、全く目を合わそうとしない。
「・・・クロヴィスさん?」
「・・・・・・何だ。」
「さっき、何て言ってたんですか?それに突然どうしてあんな・・・じゃなくて、あの、」
「・・・・・・」
「この間は、本当に・・・すみませんでした。失礼な態度だったし、許可もなく魔法を掛けてしま、」
「ユキを番にするつもりなんだろう?」
「・・・は、い?」
「俺は・・・どうすれば、ラウーの隣に居られるんだ?」
「・・・・・・はい??!」
後ろにいたユキ先輩の方をバッと振り返ると、絵に描いたような頭の抱え方をしているのが見えた。
恐る恐る前を向き直す。
よく見ると、目の前のクロヴィスさんの耳が・・・尻尾が・・・・・・!
「あの・・・クロヴィスさん・・・」
「・・・嫌だ。」
「・・・っ、あ、あのですね、」
「ユキのことが好きだとしても、俺はラウーと離れたくない。」
「・・・え?ぼ、僕が、ユキ先輩のこと好」
「聞きたくない。」
「むぐっ!?」
僕の口を覆うようにクロヴィスさんの大きな手が伸びてくる。
獣人は体温が高いはずなのに、クロヴィスさんの手はびっくりするくらい冷たかった。
・・・・・・ん?
・・・・・・・・・んん?
これ、クロヴィスさん、何か大きな勘違いをしてる?!
「んぐっ、むぐぐ、」
「・・・俺はずっとラウーが好きだった。」
「・・・・・・むぐ?!!」
「だがラウーには別の想い人がいて、」
「?!!んーーん!?んんっ、」
「ずっと誰なのか探っていた。」
「・・・むぐっ!!?」
きっとあの時クロヴィスさんの気持ちは、こんな感じだったんだろう。
話をしたい、と懇願しても聞いてもらえない。それどころか僕・・・・・・転移・・・させちゃった・・・!
どんどん弱まっていくクロヴィスさんの手の力。
顔は伏せられていて、よく見えない。
これじゃ、またあの時の繰り返しになってしまう。
僕が好きなのは、ずっと前から一人なのに。
口を覆うクロヴィスさんの手を取って、僕は大きく息を吸う。
その瞬間、クロヴィスさんと目が合った。
初めて、見ます。
クロヴィスさんのそんな揺れる瞳を。
「クロヴィスさん!!あのですねっ、」
「ラウー好きだ。」
「ひえっ・・・っ、ちょっと、あのっ、」
「ユキはいい奴だ。優しくて頭もいい。だが、俺は、」
「~~~っ、待って、待って!!」
「嫌だ。待ちたくな、」
「もうっ!!!」
ぎゅっと、手を押し付けるようにクロヴィスさんの口を覆う。
この瞬間、ほんの一秒にも満たない時間にクロヴィスさんの瞳は大きく見開かれて、僕はその瞳にできる限り近づいて叫んだ。
「僕が好きなの貴方です!」
「・・・・・・・・・は・・・?」
「だからっ、僕が好きなのはクロヴィスさんなんです!」
「・・・・・・お、れ?」
「はい!クロヴィスさんのこと、ずっとずっとずっと、大好きです!」
「・・・・・・は・・・?」
ぴたりと動きが止まるクロヴィスさん。
ひょっとして息してないのでは・・・?と心配になるくらい動かないクロヴィスさんの手をぎゅっと握る。
さっきまであんなに冷たいと感じた手と同じくらい僕の手も冷たくなっていた。
ああ、僕もクロヴィスさんも緊張してたんだなって気づいた途端、足の力が抜けてしまう。
僕がずるずる落ちていくのをクロヴィスさんは慌てて受け止めてくれた。
クロヴィスさんはしばらく何も言わなかったけど、手だけはずっと離さずに握ってくれていて、体温が少しずつ、少しずつ戻っていくのを二人で確かめ合っているような、そんな気がした。
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