【完結】待って、待って!僕が好きなの貴方です!

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最近、天気が良くてとっても気持ちがいい。
暑くなく、寒くなく。
だから昼食はもっぱらテラス席を使うこと多くなった。
でもまあ、みんな考えることは一緒でテラス席がすぐ埋まりがち。
ティフくんは「このクソ狼共が・・・」って何か怖い声で唸ってたけど、僕はティフくんとご飯食べられるならどこでもいい。
別に室内席でも、テラス席じゃないベンチでも。
そう伝えるとティフくんはまた真っ赤な顔で耳を立てていて、僕はまた懲りずにふわふわな頭を撫でた。


でも今日はそんな可愛いティフくんの様子がちょっとおかしい。
朝挨拶をした時から、僕を見て驚いた表情をして、きょろきょろ周りを窺って何かを探していたし、いつもより僕と距離があるように思う。

無事テラス席を確保できたけど、今日は別々の方がいいかもしれない。
でもその前に理由が知りたい。
何か失礼なことをしたのであれば、ちゃんと謝りたい。







「ティフくん、僕今度は何をしちゃったかな?」

「・・・へ?何のこと?」

「今日ティフくん、ちょっといつもと違うから・・・」

「あ、ああ・・・まあ、そうだね・・・」

「僕、ティフくんとはこれからも仲良くしたくて、その・・・理由を教えてもらえると、」

「ちょ、ちょ、ちょ!違うよ?!ラウーくんは何もしてない!僕も相手の出方を窺う必要があったから、ちょっと挙動不審になっちゃっただけで、」

「・・・どういうこと?相手って・・・?」

「・・・・・・まさか気づいてない?で、でも・・・そうだよね・・・ラウーくん竜人族だし・・・うーん、でも・・・・・・モニヨモニョ・・・」

「???」





手を顎に置き、まるで小説に出てくる探偵みたいに考えだすティフくん。
でもとりあえず・・・よかった。
僕がティフくんに何か失礼なことをしたわけじゃなさそうだ。
せっかくできた友達なんだから、ずっとずっと仲良くしたい。 

ふっと肩の力が抜け、その瞬間小さくお腹がぐぅと鳴った。
ティフくんと目が合って、ふふふ、とお互い笑いをこぼす。





「安心したら余計お腹すいちゃった。」

「じゃあいっぱい食べよう!」

「でもその前に聞いてもいい?僕じゃない誰かが、僕に何かしたの?魔力は全く感じないけど。」

「うーんとね・・・・・・んー・・・ラウーくん、昨日の放課後に誰かと会ってるよね?もしかして、恋人?」

「!!?こ、こ、こ、恋人じゃないです!!」

「そっか。んー・・・・・・でもなあ・・・んんん・・・」

「んー・・・??」





また唸り出すティフくん。
これは時間がかかりそうだと判断し、僕は食べながら話すことを提案した。
もぐもぐと食べ進めながらも、「んー」「でもなぁ」と完全に上の空。


昼食を完食して、今日もティータイム。
ようやく考えがまとまったらしいティフくんは、僕の席に少し近づいて周りを確認し、ヒソヒソと話始める。防音魔法までかけて。
獣人は耳がいいから、このくらいしないと内緒話にならないらしい。






「ラウーくんが昨日会った人って強いよね。魔法科?」

「え、えっと、士官科の人で・・・・・・とっても強い、ね・・・??」

「だろうね。僕、その人に喧嘩売られてるみたいで、」

「んええええええええええ!!!?」

「・・・っ、落ち着いてね、ラウーくん。防音魔法解けちゃう。」

「ご、ご、ごめん・・・!」




防音魔法は結構集中力がいる。
完全に音を消してるわけでもないから、あまりにも大きい音を立ててしまったら、魔法に亀裂が入ってしまうのに、驚きでそれどころじゃなくなってしまった。

け、け、喧嘩?!
クロヴィスさんがティフくんに?!

・・・・・・・・・なんで???





「えっと一応、一応ね、その人のために詳細は伏せるけど、獣人は他の種族と比べて五感が発達してるからさ、」

「う、うん。そうだね。教室に居ても今日のメニューわかっちゃうもんね。」

「言葉じゃなくて、いろんな感情を相手に伝える方法があるんだけど、」

「へぇ~~~!」

「今朝ラウーくんに会った瞬間、あ、これは威嚇されてるなぁって。」

「い、い、威嚇ぅ!?」





獣人って、本当凄い・・・・・・けど、威嚇って益々どういうこと?!
ティフくんは士官科に知り合いはいないって言うからクロヴィスさんと会ったことはないだろうし、ティフくんの話題を出したのも昨日が初めてで・・・・・・・・・・・・って!もしかして・・・・・・もしかすると・・・?!





「あの~・・・僕ね、毎日士官科の幼馴染のところに行ってて、」

「毎日放課後走ってるもんね。」

「うっ・・・!そ、それで、その幼馴染にティフくんのこと三年生にも勝つぐらい強くていい子ですって紹介したんだけど、」

「そんな風に言ってくれたの?嬉しい・・・!」

「えへへ・・・、あ、で、でもね?多分その幼馴染、ティフくんに対抗意識燃やしたんじゃないかなと思って・・・」

「・・・・・・ほうほう。」

「ほ、本当にごめんね?その幼馴染とっても強くて、かっこよくて、それでちょっと可愛くて、その、誰にも負けないって言う気持ちが人一倍強くて、」

「なるほど。理解した。」

「だから本当に・・・って、ええ?!今ので何か分かったの?!」

「うん。完全に理解。さ、忘れよ。ティータイム、ティータイム。」

「えええ?!」





一人納得した様子のティフくんは、優雅に新しいお茶を淹れ直し始める。
このあと僕が何を聞いてもにっこりするだけだった。





「友達の僕に威嚇しても仕方ないのにねぇ?」

「そうそう。魔法科と士官科じゃ戦い方が違うから比べるの難しいもんね~」

「・・・・・・」

「何か言いたげな目してない?」

「面白いから、しばらく様子見かな。」

「何のこと?」

「ふふふ。内緒♡」

「ええー・・・?」





完全にティフくんの手の上で転がされている。
でもこれ以上聞いてもきっと答えてくれないだろうから、大人しく僕は諦めて午後の授業のために教室へと戻ることにした。
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