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番外編
Special thanks
しおりを挟む「綺麗だねえ~・・・!」
「どれがいい?」
「・・・・・・え?!」
「他の物も持ってこよう。」
「い、い、いらない!どれも素敵だけど!お、俺はいらないからね!」
手に取った光り輝く宝石を慌ててランドルフに返す。
どうしてだ?と、不思議そうな顔でナディルに近づくランドルフの顔面の圧に、ナディルはまた顔を赤くした。
番になって、早五年。
ナディルはランドルフに、ランドルフはナディルに毎日恋をしている。
「もうすぐナディルの誕生日だ。」
「・・・そうだった、ね。忘れてた。で、でも!こんなに高そうな宝石は絶対買わないで!も、も、もったいない!」
「・・・ならばどんなものがいい?ナディルは何も欲しがらないだろう。」
「・・・・・・そ、そんな急に言われても・・・」
ナディルは物欲がない・・・に等しい人間。
去年は絞りに絞り出して、靴。
一昨年は少し豪華な果物の盛り合わせ。
ランドルフの誕生日には毎年ナディルが自分で掘った金細工を贈っている。
目尻を下げ嬉しそうな顔で受け取るランドルフを見るだけで、ナディルは胸がぽかぽかして、お互い大満足だ。
「・・・あ、」
「何かあったか?」
「うん。」
嬉しそうに頷いて、ふふふ、と笑い始めたナディルの腕を軽く引き、自分の胸元に閉じ込めた。
番の香りはいつまで経ってもこんなに心躍るものなのだろうかと、ランドルフはナディルの首元に鼻を寄せ幸せを噛み締める。
「時間がいいな。」
「・・・時間?」
「そう。最近ずっと忙しいでしょう?だから二人の時間、欲しいなって。」
「・・・・・・」
「っ、わ、どうしたの?く、くる、苦しいよ・・・!!」
細い腰に腕を回し、ぎゅううっとナディルを抱きしめた。
ナディルは少し苦しさもあるが、ランドルフの想いを感じ取り、自分も腕を回す。
ナディルの手をランドルフの尻尾がいたずらに撫でると「くすぐったいよ」と笑った。
「何としてでも休みをとる。」
「・・・あんまりハニルさん達困らせちゃだめだよ?」
「遠出でもするか。」
「え!いいの?!なら工芸品の街に行きたい!」
職人魂に突然火がついた。
あれも見たい、これも見たいと、珍しく興奮気味に話し出すナディルを見て今度はランドルフが笑い出す。
少し恥ずかしそうな顔をして、トーンダウンするナディルの顎をくいっと上げ、唇に触れる。
すぐに真っ赤になるナディルは、身長が伸びても、少し筋肉がついても、何年経っても変わらない。
「ナディルとなら、どこへ行っても楽しいだろうな。」
「・・・俺の台詞なんだけど。」
頬を撫でるランドルフの手をとると、ナディルは手首にキスをした。
「愛してる。」
「それは俺の台詞なんだが?」
二人して、声を出して笑い合う。
扉の向こうには休憩時間をとっくに過ぎているのに戻ってこない主を探しにきたダレス。
二人の甘い空気を読んで少しだけ待つことにした。
----------------⭐︎
素敵な表紙絵に心から感謝・・・☺︎
2024.10.9
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あらまぁ 様
うわー!本当ですね😱
ご指摘ありがとうございます!!
すぐ訂正します🙇♀️
ほんわりさん 様
ひゃ〜〜!光栄です!ありがとうございます😭
近々、小話を追加しようと思っているのでまた読んでいただけると嬉しいです🫶感想とても励みになります✨
かわいくて、やさしくて、心がほっこり暖かくなる、素敵なお話でした。
読後、とっても幸せな気分になりましたよ(#^.^#)
発酵アカエナ属 様
感想ありがとうございます!
受けを溺愛する権力者が書きたくて、出来たお話^_^
ほっこりしていただけて、とても嬉しいです〜♪