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フィードが遊びに来てくれるようになって半年くらいが過ぎた。と言っても、騎士団の休みは月に2日くらいしかないらしい。激務だなぁ。月に1回、突然僕たちの家に現れて、夕方くらいに帰っていく。だからまだそんなにフィードと会ったことはない。でもフィードの持ち前の明るさと人懐っこさで僕達の仲は親友と言える仲にまで育っていた。

そんなある日、パウロと一緒に木の実拾いから家に戻ると、何やら緊張した面持ちのフィードと、綺麗な銀髪の獣人が家の前に立っているのが見えた。

「あっ!フィードさんだ!おーーーい!」

「隣は・・・誰だろう。見たことない獣人だね。・・・なんかフィード、顔が強張ってない?」

「・・・本当だ。身体もなんかカチコチだね。」

いつもと違うフィードの様子に気づいた僕とパウロは、小走りでフィードの元へ向かった。フィードは近くで見てもやっぱりカチコチだった。

「ひ、ひ、久しぶり、ラピ、パウロ。ここここ、こちら、騎士団の副団長様で・・・」

「「・・・副団長さまぁ?!」」

「は、は、話せば長くなるんだけど・・・とりあえず、中にご案内してもいいか・・・?」


このままではフィードがカチコチになり過ぎて動かなくなりそうだ。そう判断した僕とパウロは目線を合わせ頷くと、2人を家の中へ案内した。家はそんなに広くないが、いつも掃除はしてるので割と綺麗に保たれている。
リビングの4人掛けのテーブルと椅子へ案内した。
紅茶の準備をしている時、昨日焼いた榛と椎の実のパウンドケーキを思い出し、それも一緒に出すことにした。

さっき、副団長、とフィードから紹介された獣人は以前会ったことのある姉さんの番のダレスさんと同じくらい背が高かった。ダレスさんは肉厚で、どっしり、とした体型だったけど、目の前の副団長様はすらりとして全体的に何か美しかった。
品のいい貝殻のボタンが付いた長袖シャツに細身の黒いズボンを履いている。僕が着たら野暮ったく見えそうな服も、全くそう見えなかった。

ふさふさな耳とふさふさで立派な尻尾から察するに、狼の獣人だろう。何故か会ってから一言も言葉を発さない。しかも副団長様なんて、偉い人がこんな何もない村に・・・?と疑問は尽きなかったが、とりあえず紅茶とパウンドケーキをそっとテーブルに出した。

「あ、ありがとう、ラピ。・・・このパウンドケーキ、新作か?刻んだチェリーまで入ってるな。」

「わぁ、さすがフィード。昨日焼いたんだ。・・・えっと、副団長・・・様も、よかったら」
「ジル、だ。」
「へっ?」
「・・・・・・俺はジルヴァドという。ジル、と呼んでくれ。君なら敬称もいらない。」
「で、でも・・・」


目の前の美しい男は榛とよく似た色の瞳をしていた。僕が戸惑っていると、目を細め、拒否権はない、といった顔をする。目以外の、表情は大きく変わらない。というか、ずっと同じ表情な気がする。

恐る恐る僕が「ジ、ジルも、よかったらどうぞ・・・?」と言うと満足したかのように頷いて紅茶を啜り、パウンドケーキを食べ出した。ジルの横で控えめに座っているフィードは、目をまんまるにして何やら驚いた様子だった。


「そ、それで、フィード。どうして、その・・・ジ、ジルと一緒にここへ?」

「・・・そ、それが・・・その・・・」

「俺から話そう。まず、君の名前はラピ、で合っているか?」

突然名前を呼ばれた僕は言葉より先にビクッと身体が反応してしまった。慌てて「はい、ラピと言います」と答えると、また満足そうに頷いた。そしてじぃ、と僕を見つめたジルは思いもよらないことを口にする。




「ラピ、君は俺の番だ。・・・会いたかった。」

「・・・・・・・・・・・・もう一回言ってもらえますか?」


そしてこの後3回も俺はジルに聞き直したが、聞き間違いでも言い間違いでも無いようで、どうやらリス獣人の俺と目の前の狼獣人ジルは番である、ということが明らかになった。



「えっと・・・・・・ええ?僕はどうすれば・・・?」


想像もしていなかったジルの番発言に、先程見たフィードと同じように、僕もカチコチになってしまったのだった。
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