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ソレイユ編
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「わあ・・・綺麗な庭だね・・・!」
ソルフと一緒に降りたのは、おそらくお城の庭。
見た事ないくらい立派な花が花壇に咲き誇っている。手入れが大変そう・・・!
花が風で折れないように、少し離れた場所に降りてもらったけど、大丈夫だったかな・・・。
『シンは花が好きなのか?・・・今度摘んできてやる。』
「本当?嬉しい!でもぜーんぶ、摘み取ったらダメだからね。」
『・・・分かった。おっ、ほら。獣人が出てきたぞ。ロシュ、って奴はどいつだ。』
ソルフがその大きな顎で、クイッと方向を示す。
そちらに目を向けると、お城から騎士団の隊服を着てるヒト、メイド服を着ているヒト・・・たくさん出てきた。
ちょっとしたパニックになってるみたい。
・・・・・・お、降りる場所間違えたかも・・・!
「ど、ど、どうしよう、ソルフ・・・!一旦帰った方がいい、かなぁ・・・?」
『そのうち出てくる。昼寝でもして待っとこう。』
「ひ、昼寝?!だ、ダメだって~!!」
ふわぁ~、と欠伸をするソルフ。
でも今、竜の姿だからめちゃくちゃ迫力があって、お城から出てきたヒト達からも悲鳴が上がった。
ど、どうしよ・・・!ロシュさんも、ディーナさんもいないみたいだし・・・!
「テオスの神と・・・そちらは、シン、で宜しかったかな?」
少し高い、落ち着いた声がする。
ちょっと涙出そうになってたけど、ゴシゴシ手で拭って振り向く。
そして、そこには大きな角の生えた、王子様がいた。
王子様だよ、本当に。
キラキラした服着てるし、歩く姿さえ気品を感じる・・・!
「はっ、はい!シン、です。」
「ロシュの言う通り、綺麗な黒髪だね。」
「!!?ろ、ロシュさんとお知り合いですか?!あ、えっと、喋っても・・・よかったですか・・・ぼ、ぼく・・・」
「構わない。テオスの神に、その愛し子。立場が違う。私が平伏した方がいいかな?」
にっこり、と笑う顔。
僕はぶんぶんぶんと、大きく首と手を振った。
「ロシュもすぐ来る。街を上空を飛ぶ神を見て、勘付いただろうしね。」
「あっ、そ、そうで」
「シンっっ!!!!!」
王子様の後ろから、見慣れた隊服が見える。
濃紺に臙脂色のライン。
引き締まった身体。
そして、あの黄金の髪。
「ろ、ロシュさぁん・・・っ、」
会いたかった。
ソルフのそばに居るのも嫌じゃない。
急に連れて行かれたのは嫌だったけど、僕を大事にしてくれようとしてるのはとっても伝わってきた。
でも、僕は、ロシュさんに会いたかった。
ロシュさんの側に居たかった。
『それ以上、近づくな。』
「ぐえっ、」
僕の方に駆け寄るロシュさんの元に行こうとした僕の首元の服を、ソルフの大きな爪で器用に引っ掛けたみたい。
首がいきなりギュッて締まったから、変な声が出ちゃった。
「・・・テオスの竜よ、その人間を・・・シンを、離していただきたい。」
『ならん。シンは俺の愛し子にした。シンが死ぬまで俺が面倒を見る。』
「・・・・・・黙っていれば・・・勝手なことを・・・っ、」
「わっ!ソルフ!!!喧嘩しないって言ったでしょ!?なんで、ひっく、そんな風に、」
『うわっ!な、泣くなって言っただろう!シ、シン!』
ボンッとヒトの姿になったソルフが慌てて僕を抱き上げる。
僕、今怒ってるんだからね!と、ポカポカ胸元を叩いた。
目からぼろぼろと涙が落ちてくる。
『く、クソッ。おいっ、そこの虎!シンを泣き止ませろ!』
「・・・シン、こっちおいで。」
ソルフが顔をグゥっと顰めさせた後、ゆっくりと僕を地面に下ろした。
「ひっく、ソルフ、ありが、と。ひっく、」
『・・・あとで俺のところに戻れ。』
「ん。ひっく、分かった。」
僕は少し震える足を、一生懸命、前に出した。
前に、前に。
あの、大好きなヒトの元へ。
「ロシュさぁん、心配、ひっく、かけて、ごめんなさぁい!」
「シン・・・っ、謝るな。すまない、俺が側にいたのに・・・っ!無事でよかった・・・」
「会いたかった、で、す。ひっく、ロシュさん、好き。大好、んんっ、」
ぐんっと、顎を掴まれ上を向かされた。
それと同時に僕の口をぱくり、と丸ごと食べられる。
僕の初めてのキスは、そんなキスだった。
『・・・覚悟は出来てるだろうな、虎ぁ。』
「シンは俺の番だ。愛し子になろうとそれは変わらない。認めてもらうからな。」
「・・・き、き、き、す」
「方法はあれですが、泣き止みましたね、テオスの神。」
『生意気な連中だな・・・っ、クソッ。シン!山に帰ろう!』
「・・・・・・ソルフ、お引越しするって、言った。」
『ぐう・・・、その目で見るのヤメロ・・・』
ソルフは何とかロシュさんと僕を引き離そうとしてたけど、僕はぎゅうっと隊服を掴んで離さなかった。
「・・・シン、嬉しいが、そろそろ、離れ・・・」
「・・・やです。」
ロシュさんが顔を真っ赤にして、僕のことを抱きしめたのは、この後すぐで。
そしてこの騒ぎは、しばらく王城だけに留まらず、城下町も騒がせた・・・らしい。
ソルフと一緒に降りたのは、おそらくお城の庭。
見た事ないくらい立派な花が花壇に咲き誇っている。手入れが大変そう・・・!
花が風で折れないように、少し離れた場所に降りてもらったけど、大丈夫だったかな・・・。
『シンは花が好きなのか?・・・今度摘んできてやる。』
「本当?嬉しい!でもぜーんぶ、摘み取ったらダメだからね。」
『・・・分かった。おっ、ほら。獣人が出てきたぞ。ロシュ、って奴はどいつだ。』
ソルフがその大きな顎で、クイッと方向を示す。
そちらに目を向けると、お城から騎士団の隊服を着てるヒト、メイド服を着ているヒト・・・たくさん出てきた。
ちょっとしたパニックになってるみたい。
・・・・・・お、降りる場所間違えたかも・・・!
「ど、ど、どうしよう、ソルフ・・・!一旦帰った方がいい、かなぁ・・・?」
『そのうち出てくる。昼寝でもして待っとこう。』
「ひ、昼寝?!だ、ダメだって~!!」
ふわぁ~、と欠伸をするソルフ。
でも今、竜の姿だからめちゃくちゃ迫力があって、お城から出てきたヒト達からも悲鳴が上がった。
ど、どうしよ・・・!ロシュさんも、ディーナさんもいないみたいだし・・・!
「テオスの神と・・・そちらは、シン、で宜しかったかな?」
少し高い、落ち着いた声がする。
ちょっと涙出そうになってたけど、ゴシゴシ手で拭って振り向く。
そして、そこには大きな角の生えた、王子様がいた。
王子様だよ、本当に。
キラキラした服着てるし、歩く姿さえ気品を感じる・・・!
「はっ、はい!シン、です。」
「ロシュの言う通り、綺麗な黒髪だね。」
「!!?ろ、ロシュさんとお知り合いですか?!あ、えっと、喋っても・・・よかったですか・・・ぼ、ぼく・・・」
「構わない。テオスの神に、その愛し子。立場が違う。私が平伏した方がいいかな?」
にっこり、と笑う顔。
僕はぶんぶんぶんと、大きく首と手を振った。
「ロシュもすぐ来る。街を上空を飛ぶ神を見て、勘付いただろうしね。」
「あっ、そ、そうで」
「シンっっ!!!!!」
王子様の後ろから、見慣れた隊服が見える。
濃紺に臙脂色のライン。
引き締まった身体。
そして、あの黄金の髪。
「ろ、ロシュさぁん・・・っ、」
会いたかった。
ソルフのそばに居るのも嫌じゃない。
急に連れて行かれたのは嫌だったけど、僕を大事にしてくれようとしてるのはとっても伝わってきた。
でも、僕は、ロシュさんに会いたかった。
ロシュさんの側に居たかった。
『それ以上、近づくな。』
「ぐえっ、」
僕の方に駆け寄るロシュさんの元に行こうとした僕の首元の服を、ソルフの大きな爪で器用に引っ掛けたみたい。
首がいきなりギュッて締まったから、変な声が出ちゃった。
「・・・テオスの竜よ、その人間を・・・シンを、離していただきたい。」
『ならん。シンは俺の愛し子にした。シンが死ぬまで俺が面倒を見る。』
「・・・・・・黙っていれば・・・勝手なことを・・・っ、」
「わっ!ソルフ!!!喧嘩しないって言ったでしょ!?なんで、ひっく、そんな風に、」
『うわっ!な、泣くなって言っただろう!シ、シン!』
ボンッとヒトの姿になったソルフが慌てて僕を抱き上げる。
僕、今怒ってるんだからね!と、ポカポカ胸元を叩いた。
目からぼろぼろと涙が落ちてくる。
『く、クソッ。おいっ、そこの虎!シンを泣き止ませろ!』
「・・・シン、こっちおいで。」
ソルフが顔をグゥっと顰めさせた後、ゆっくりと僕を地面に下ろした。
「ひっく、ソルフ、ありが、と。ひっく、」
『・・・あとで俺のところに戻れ。』
「ん。ひっく、分かった。」
僕は少し震える足を、一生懸命、前に出した。
前に、前に。
あの、大好きなヒトの元へ。
「ロシュさぁん、心配、ひっく、かけて、ごめんなさぁい!」
「シン・・・っ、謝るな。すまない、俺が側にいたのに・・・っ!無事でよかった・・・」
「会いたかった、で、す。ひっく、ロシュさん、好き。大好、んんっ、」
ぐんっと、顎を掴まれ上を向かされた。
それと同時に僕の口をぱくり、と丸ごと食べられる。
僕の初めてのキスは、そんなキスだった。
『・・・覚悟は出来てるだろうな、虎ぁ。』
「シンは俺の番だ。愛し子になろうとそれは変わらない。認めてもらうからな。」
「・・・き、き、き、す」
「方法はあれですが、泣き止みましたね、テオスの神。」
『生意気な連中だな・・・っ、クソッ。シン!山に帰ろう!』
「・・・・・・ソルフ、お引越しするって、言った。」
『ぐう・・・、その目で見るのヤメロ・・・』
ソルフは何とかロシュさんと僕を引き離そうとしてたけど、僕はぎゅうっと隊服を掴んで離さなかった。
「・・・シン、嬉しいが、そろそろ、離れ・・・」
「・・・やです。」
ロシュさんが顔を真っ赤にして、僕のことを抱きしめたのは、この後すぐで。
そしてこの騒ぎは、しばらく王城だけに留まらず、城下町も騒がせた・・・らしい。
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