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グレイス編
24 ◎
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「ソレイユでは、16歳で成人。お互い成人を迎えていれば番になれるんだ。」
下から覗き込むように、俺を見上げる黒い瞳は、今日も美しい。
俺より少し低い体温を布ごしに感じながら、並んだ腕を比べると、こうも肌の色が違うのか、と驚くほど、シンは相変わらず色白だ。
食べる量も、動く機会も増えたが、それでもまだまだ身体は細く、その色白の腕ともなれば強く掴んだら簡単に折れてしまうのではないかと、実は、気が気ではない。
俺たちは、色んなことが違って、知らないことも多い。
だからこそ、お互い知るべきだった。
番、のこともそうだ。
「互いに頸を噛むことで番として成立するんだ。番になれば・・・離れられなくなる。精神的な繋がりが出来るからだ。」
「人間のシンちゃんにはまだ分からない部分も多いわよね。でも、獣人にとって番、って言ったらそりゃあもう、自分の命と同じ・・・いえ、自分の命よりも尊い存在なの。」
「は、はい・・・それは以前、ロシュさんから聞きました。」
「・・・・・・番から、無理矢理離されて、精神的に狂った獣人もいる。」
「・・・そ、うなんですか・・・?!」
「ヴァンさんの言ったことは本当っすよ。団長のことだから、色んな説明すっ飛ばしてると思うんすけど、シンくんのことがめっちゃくちゃ大事っていうのは間違いないっすよ。」
「ディーナも、だよねぇ?その耳飾り、ディーナの魔力感じるもん。何か特殊な魔法でもかけてるんじゃなぁい?うーんとね、・・・・・・・・・追跡?ねぇ!当たってる??」
「そ、そ、そうなんですか?!」
「・・・ディーナ、お前ぇ・・・っ」
「シンちゃんの見守りも兼ねてるのよぉ。いいでしょお?」
ディーナがシンの頭を撫でる。
シンは恥ずかしそうに頬を赤らめていた。
・・・面白くない。
ディーナが手を伸ばしても届かない位置に腰をずらす。
「相変わらず大人気ないっすね、団長」と頬杖を突きながら言うのはもちろんフォルだ。
ここは、塁壁境にある騎士団の詰所。
まさか、シンが成人だったとは。
考えもしなかった。
14、15歳だと思い、成人になるまでは・・・とあの白い頸を見るたび噛みたくなるのを必死に我慢してきた。
【 と、歳、ですか?えっと・・・今、じゅ、17歳です、けど・・・ 】
そうシンの口から聞いた時、本当に自分の感情がコントロール出来なくなりそうだった。
俺の中の本能が、噛め、噛んでしまえ、と叫ぶ。
口の中に涎が溜まって、それをひたすら飲み込むしかない。
ああ、何ともどかしい。
だが、そんな俺をここまで引き戻したのは、他でもなくシンだった。
【 僕、知らないことばっかりでごめんなさい!でも、お、教えてください!ロシュさん達のこと、もっと・・・もっと、知りたいですっ!! 】
知りたい。
シンが、知りたい、と言ってくれた。
あれがしたい。
こうしたい。
これらはシンがほとんど言わなかった類の言葉。
シンが少しずつ、少しずつ、変わっていく。
もちろん、人として良い方向に。
それを一番近くで見るのは、俺でありたい。
シンのことをもっと知りたい。
そしてきっと、シンのことを知るたびにまた愛おしさが募っていくのだろう。
「俺はシンを番にしたい。本音を言うと、今すぐにでも、だ。それは変わらない。だが、無理強いはしたくない。18歳になるまで、考えてみて欲しい。」
「は、はいっ、」
「・・・すまないが、全く手を出さない、というのは・・・約束できん。」
「・・・?手、ですか?」
「ちょっと!シンちゃんに何を宣言してんのよっ!狡いじゃない!!!」
「・・・・・・え?!狡い?!ディーナさん、団長止めるかと思いきや、まさかのそっちすか?」
「当たり前でしょ!私だって、耳飾り渡してんのよ!!?本気なんだからねっ!」
「・・・あ、あのっ、」
「なんだ?」「どうしたの?」
「ご、ごめんなさい、世間知らずで・・・あの、手を出すって、ど、どういう意味ですか・・・?」
「「・・・・・・・・・・・・」」
この純粋すぎる人間は、何だ。
近くでやりとりを見ていたヴァンが両手で顔を押さえたのが見える。
・・・気持ちはわかる。だが、お前には、いや、お前にも絶対渡さんがな。
「あのねぇ、シンくん!手を出す、っていうのはこういうことを言うんだよぉ!」
俺の膝の上に乗せていたシンの腕を、ヨミがぐぃっと引っ張るのが、スローモーションのように見えた。
「僕も、シンくんと仲良くしたいんだぁ!」
そう言って、そのままシンを抱きしめたあと、シンの透明感のある頬にキスをするヨミ。
「うっわぁ!お肌すべすべ~~っ!!!」
「・・・・・・殺す。外出ろ、ヨミ。」
「えぇ~~?やだぁ。身を持って教えただけだもん。」
「ヨミ、どけ。私と今すぐ代わりなさい。」
「~~っ、き、き、きす・・・?!」
「・・・シンくん。手を出すってそう言うことっすよ。うちの奴らがほんとごめんね。」
「・・・・・・いいなぁ。」
この後は察しの通り。
混沌とする詰所の中で、あの時と同じようにシンの腹の虫が可愛くなるまで乱闘騒ぎは続いた。
「・・・次シンに手出したら、羽焼いてやるからな。」
「番気取りにそんなこと言われても、僕聞く必要ないもーん。」
「・・・毒でも混ぜてやろうかしら。」
シンには聞こえないよう小競り合いは続いたが、腹が鳴ったことに照れてしまったシンを抱き上げ、鼻の先にキスをして、とりあえずその場は収まった。
下から覗き込むように、俺を見上げる黒い瞳は、今日も美しい。
俺より少し低い体温を布ごしに感じながら、並んだ腕を比べると、こうも肌の色が違うのか、と驚くほど、シンは相変わらず色白だ。
食べる量も、動く機会も増えたが、それでもまだまだ身体は細く、その色白の腕ともなれば強く掴んだら簡単に折れてしまうのではないかと、実は、気が気ではない。
俺たちは、色んなことが違って、知らないことも多い。
だからこそ、お互い知るべきだった。
番、のこともそうだ。
「互いに頸を噛むことで番として成立するんだ。番になれば・・・離れられなくなる。精神的な繋がりが出来るからだ。」
「人間のシンちゃんにはまだ分からない部分も多いわよね。でも、獣人にとって番、って言ったらそりゃあもう、自分の命と同じ・・・いえ、自分の命よりも尊い存在なの。」
「は、はい・・・それは以前、ロシュさんから聞きました。」
「・・・・・・番から、無理矢理離されて、精神的に狂った獣人もいる。」
「・・・そ、うなんですか・・・?!」
「ヴァンさんの言ったことは本当っすよ。団長のことだから、色んな説明すっ飛ばしてると思うんすけど、シンくんのことがめっちゃくちゃ大事っていうのは間違いないっすよ。」
「ディーナも、だよねぇ?その耳飾り、ディーナの魔力感じるもん。何か特殊な魔法でもかけてるんじゃなぁい?うーんとね、・・・・・・・・・追跡?ねぇ!当たってる??」
「そ、そ、そうなんですか?!」
「・・・ディーナ、お前ぇ・・・っ」
「シンちゃんの見守りも兼ねてるのよぉ。いいでしょお?」
ディーナがシンの頭を撫でる。
シンは恥ずかしそうに頬を赤らめていた。
・・・面白くない。
ディーナが手を伸ばしても届かない位置に腰をずらす。
「相変わらず大人気ないっすね、団長」と頬杖を突きながら言うのはもちろんフォルだ。
ここは、塁壁境にある騎士団の詰所。
まさか、シンが成人だったとは。
考えもしなかった。
14、15歳だと思い、成人になるまでは・・・とあの白い頸を見るたび噛みたくなるのを必死に我慢してきた。
【 と、歳、ですか?えっと・・・今、じゅ、17歳です、けど・・・ 】
そうシンの口から聞いた時、本当に自分の感情がコントロール出来なくなりそうだった。
俺の中の本能が、噛め、噛んでしまえ、と叫ぶ。
口の中に涎が溜まって、それをひたすら飲み込むしかない。
ああ、何ともどかしい。
だが、そんな俺をここまで引き戻したのは、他でもなくシンだった。
【 僕、知らないことばっかりでごめんなさい!でも、お、教えてください!ロシュさん達のこと、もっと・・・もっと、知りたいですっ!! 】
知りたい。
シンが、知りたい、と言ってくれた。
あれがしたい。
こうしたい。
これらはシンがほとんど言わなかった類の言葉。
シンが少しずつ、少しずつ、変わっていく。
もちろん、人として良い方向に。
それを一番近くで見るのは、俺でありたい。
シンのことをもっと知りたい。
そしてきっと、シンのことを知るたびにまた愛おしさが募っていくのだろう。
「俺はシンを番にしたい。本音を言うと、今すぐにでも、だ。それは変わらない。だが、無理強いはしたくない。18歳になるまで、考えてみて欲しい。」
「は、はいっ、」
「・・・すまないが、全く手を出さない、というのは・・・約束できん。」
「・・・?手、ですか?」
「ちょっと!シンちゃんに何を宣言してんのよっ!狡いじゃない!!!」
「・・・・・・え?!狡い?!ディーナさん、団長止めるかと思いきや、まさかのそっちすか?」
「当たり前でしょ!私だって、耳飾り渡してんのよ!!?本気なんだからねっ!」
「・・・あ、あのっ、」
「なんだ?」「どうしたの?」
「ご、ごめんなさい、世間知らずで・・・あの、手を出すって、ど、どういう意味ですか・・・?」
「「・・・・・・・・・・・・」」
この純粋すぎる人間は、何だ。
近くでやりとりを見ていたヴァンが両手で顔を押さえたのが見える。
・・・気持ちはわかる。だが、お前には、いや、お前にも絶対渡さんがな。
「あのねぇ、シンくん!手を出す、っていうのはこういうことを言うんだよぉ!」
俺の膝の上に乗せていたシンの腕を、ヨミがぐぃっと引っ張るのが、スローモーションのように見えた。
「僕も、シンくんと仲良くしたいんだぁ!」
そう言って、そのままシンを抱きしめたあと、シンの透明感のある頬にキスをするヨミ。
「うっわぁ!お肌すべすべ~~っ!!!」
「・・・・・・殺す。外出ろ、ヨミ。」
「えぇ~~?やだぁ。身を持って教えただけだもん。」
「ヨミ、どけ。私と今すぐ代わりなさい。」
「~~っ、き、き、きす・・・?!」
「・・・シンくん。手を出すってそう言うことっすよ。うちの奴らがほんとごめんね。」
「・・・・・・いいなぁ。」
この後は察しの通り。
混沌とする詰所の中で、あの時と同じようにシンの腹の虫が可愛くなるまで乱闘騒ぎは続いた。
「・・・次シンに手出したら、羽焼いてやるからな。」
「番気取りにそんなこと言われても、僕聞く必要ないもーん。」
「・・・毒でも混ぜてやろうかしら。」
シンには聞こえないよう小競り合いは続いたが、腹が鳴ったことに照れてしまったシンを抱き上げ、鼻の先にキスをして、とりあえずその場は収まった。
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