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グレイス編

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「どうした、シン。こっち向け。」

「・・・・・・い、まは、ちょっと、ですね・・・うう、」

「ぷっ、あはははははは」

「もうっ!ララ!笑わないで!」

「・・・・・・シンが元気ならそれでいい。話は・・・終わったのか?」

「はいっ!ロシュさん、それにみなさんも・・・ここまで連れてきていただいてありがとうございます。」

「・・・ああ。」

「あ、あのっ!ソレイユの騎士団の皆様、ちょっとお話いいですか?!」



隣にいたララがハイッと手を上げる。
目がキラキラ・・・いや、ニヤニヤ?してる。・・・何か嫌な予感がするなぁ・・・!


「・・・なんだ。」

「シン兄ちゃんは、お風呂が好きです!あとルルの実みたいな甘いものも!えーっと、浄化はできるのに案外お化けとか怖がります!それから、それからっ、」
「ララ!しぃーーーー!いきなり何言い出すのかと思ったら!」

「だって、もう会えないかも知れないんでしょ?だから、私の知ってること伝えとかないとって・・・うっ、ぐすっ、」

「ああああ、もう泣かないでってば!わかった、わかったよ!」

「いつでもってわけには行かないっすけど、そのうち会えるようになるっすよ?ね、団長?」

「「えっ?!!」」



ロシュさんの方を見ると、何だか複雑そうな顔をしている。
ポリポリと頭を掻いた後、ララの隣にいた僕をひょいっと、抱え上げた。
ララが口元を押さえ、「ひゃーーー」と小さく叫んでいるのが見える。

グレイスこの国も、ソレイユの領地になるからな。行き来はそのうち出来るようになるはずだ。」

「ロシュさん・・・、抱っこ、恥ずかしいです・・・」

「?いつもしてるだろう?」

「いつもしてるんだぁ・・・っ!」

「・・・してますけどぉ・・・うう・・・」



ララの視線から逃れようと俯く僕の顔を、覗き込むロシュさん。

そしてそのまま、こつんと、僕のおでこにロシュさんのおでこが重なった。


わっ、ロシュさんも体温高いんだな。
ヨミさんほどは、高くないけど。
それによく見ると黄金の瞳の奥が、本当に宝石みたいにキラキラしてる。




こんなに近くで瞳を見たことがなかったけど、本当に、本当に、綺麗で真っ直ぐだ。

ロシュさんの瞳に見惚れていたその一瞬。
ふわりと、その宝石のような瞳が弧を描いた。



僕よりも少し高い体温が、すっと離れる。

それが「名残惜しい」だなんて。
そんなことを思った僕は、欲張りだろうか。


名残惜しさを感じたすぐ後。
ロシュさんの少し薄い唇が視界に入った。





ちゅっ。





ふわふわと柔らかい感触と共に、僕のおでこから、小さく、そして可愛い音が聞こえてくる。


そしてまた、あの温かくて優しい、ロシュさんのおでこがこつん、とくっついた。



「すまないが、行き来できる日が来ても簡単には連れて来れない。シンには俺の目が届くところにいて欲しいからな。」



僕の首輪を一撫ですると、にやり、と悪戯な顔で笑うロシュさん。
僕、今おでこにキス、された?
みんな見てた・・・よね?!
ディーナさん、舌打ちしてるし、フォルさんため息ついてるし!

ひゃ~~~っ!

お湯が沸騰するみたいに、僕の頭から湯気が出そう。


「・・・ひゃ、わっ、」

「~~っ!じゃあ、一緒に!一緒に来てくださいねっ!私待ってますから!」

「・・・・・・考えておく。」

「何が、考えておく、よ!?あんたが単にシンちゃんにべったりしたいだけでしょうが!」





わーわー、騒ぎ出すディーナさんを完全に無視したロシュさんは、真っ赤な僕の耳元に近づくと、そっと呟いた。
















「今度来る時は、揃いの首輪でも付けるとしよう。」








そしてロシュさんはまた耳元で、ちゅっ、と小さな音を立てた後、僕をぎゅーっと強く抱きしめた。





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