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グレイス編
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恥ずかしさなんて、一気に吹き飛ぶくらい、真剣な声、そして、真剣な顔だった。
自分の命よりも・・・大事な存在?
・・・僕が?
「ロ、シュさん・・・?ぼ、僕は、今日・・・、そう、今日助けてもらって・・・」
「そうだ。シンを助けたのが俺で心底よかったと思ってる。」
「は、は、はいっ!ありがとうございます!・・・それで、ですね、僕、そんな、褒めていただけるような、人間じゃ、なくて、」
「自分を過小評価しすぎだ。シンは、褒めるところしかない。」
「へっ?!ぼ、僕きっと・・・ロシュさんの、足手纏いに、」
「ならない。」
「ええ?あ、えっと・・・その・・・」
「・・・シンは今、俺のことを恩人だと思ってるよな?」
「は、はいっ!勿論です!」
「今はそれでいい。他の奴らと俺は、シンにとって立場が違うってことだろ。」
「・・・?は、い。」
「・・・つまりだ、」
ロシュさんは僕の身体に縞模様の尻尾を絡ませた。その分、クィっと、身体がロシュさんの方へ引き寄せられる。
「シンと四六時中一緒にいても、お前は嫌がることはないだろう?」
「嫌がるなんてそんなこと・・・っ、絶対にありません!!!」
「だが、それは単に恩人に対する感謝から来るものだということも、否定できないはずだ。」
「・・・それ、はっ・・・」
「それでいいんだ。シン、よく聞け。」
獲物を狙う獣の目って、きっとこんな目をしてるんだと思う。
熱が篭ったその目から、僕は一瞬も逸らすことが出来なかった。
「俺はシンを絶対に離さない。傷付けない。守ると誓う。好きなだけ俺に甘えろ。いいな?」
ロシュさんの瞳に、力強い光が灯る。
そして、僕の耳元に近づくと、優しくこう囁いた。
「もちろん俺は遠慮なくシンを愛すからな。・・・これから覚悟しとけ。」
これが、大人というものなんだろうか。
僕は、一気に顔が熱くなった。
さっき食べた赤い果物くらい、真っ赤だと思う。
少し意地悪な顔で微笑んだ後、ロシュさんは僕を抱えたまま、優しく背中をさすりだす。
「もう今日は、このまま休むといい。水浴びはまた明日だ。・・・おやすみ。シン。」
おやすみ。
「おやすみ」って、こんなにも温かい。
あの塔に居た数年間。
たった一人で、目を覚まし、
たった一人で、浄化をして、
たった一人で、ご飯を食べて、
たった一人で、眠っていた。
最初はもう、どうしようもなく、寂しくて、悲しくて。
でも、誰も助けにはきてくれなかった。
この国が喧嘩に負けたと知って、僕は別に悲しくはなかった。
嬉しい、という気持ちも湧かなかった。
ただ「そうなんだ。」、それだけだった。
僕の心はあの塔の中みたいに、真っ白で、空っぽ。
それがね、ロシュさんの「おやすみ」、たったそれだけで少し色が付いたんだ。
「・・・っ、は、い・・・っ、おや、すみなさい・・・っ、おやすみなさい、ロシュさん・・・っ、」
「・・・ああ、おやすみ。シン。・・・よく頑張ったな。」
優しく、優しく、僕の背中をさするその手の温かさを、僕はきっと一生忘れない。
ぽろぽろ溢れる涙を、ロシュさんは一粒、一粒、まるで大事なものを拾うように拭ってくれた。
とくん、とくん、と聞こえてくるロシュさんの鼓動は、僕の中の大事なものを守ってくれている。
そんな気がしてならなかった。
自分の命よりも・・・大事な存在?
・・・僕が?
「ロ、シュさん・・・?ぼ、僕は、今日・・・、そう、今日助けてもらって・・・」
「そうだ。シンを助けたのが俺で心底よかったと思ってる。」
「は、は、はいっ!ありがとうございます!・・・それで、ですね、僕、そんな、褒めていただけるような、人間じゃ、なくて、」
「自分を過小評価しすぎだ。シンは、褒めるところしかない。」
「へっ?!ぼ、僕きっと・・・ロシュさんの、足手纏いに、」
「ならない。」
「ええ?あ、えっと・・・その・・・」
「・・・シンは今、俺のことを恩人だと思ってるよな?」
「は、はいっ!勿論です!」
「今はそれでいい。他の奴らと俺は、シンにとって立場が違うってことだろ。」
「・・・?は、い。」
「・・・つまりだ、」
ロシュさんは僕の身体に縞模様の尻尾を絡ませた。その分、クィっと、身体がロシュさんの方へ引き寄せられる。
「シンと四六時中一緒にいても、お前は嫌がることはないだろう?」
「嫌がるなんてそんなこと・・・っ、絶対にありません!!!」
「だが、それは単に恩人に対する感謝から来るものだということも、否定できないはずだ。」
「・・・それ、はっ・・・」
「それでいいんだ。シン、よく聞け。」
獲物を狙う獣の目って、きっとこんな目をしてるんだと思う。
熱が篭ったその目から、僕は一瞬も逸らすことが出来なかった。
「俺はシンを絶対に離さない。傷付けない。守ると誓う。好きなだけ俺に甘えろ。いいな?」
ロシュさんの瞳に、力強い光が灯る。
そして、僕の耳元に近づくと、優しくこう囁いた。
「もちろん俺は遠慮なくシンを愛すからな。・・・これから覚悟しとけ。」
これが、大人というものなんだろうか。
僕は、一気に顔が熱くなった。
さっき食べた赤い果物くらい、真っ赤だと思う。
少し意地悪な顔で微笑んだ後、ロシュさんは僕を抱えたまま、優しく背中をさすりだす。
「もう今日は、このまま休むといい。水浴びはまた明日だ。・・・おやすみ。シン。」
おやすみ。
「おやすみ」って、こんなにも温かい。
あの塔に居た数年間。
たった一人で、目を覚まし、
たった一人で、浄化をして、
たった一人で、ご飯を食べて、
たった一人で、眠っていた。
最初はもう、どうしようもなく、寂しくて、悲しくて。
でも、誰も助けにはきてくれなかった。
この国が喧嘩に負けたと知って、僕は別に悲しくはなかった。
嬉しい、という気持ちも湧かなかった。
ただ「そうなんだ。」、それだけだった。
僕の心はあの塔の中みたいに、真っ白で、空っぽ。
それがね、ロシュさんの「おやすみ」、たったそれだけで少し色が付いたんだ。
「・・・っ、は、い・・・っ、おや、すみなさい・・・っ、おやすみなさい、ロシュさん・・・っ、」
「・・・ああ、おやすみ。シン。・・・よく頑張ったな。」
優しく、優しく、僕の背中をさするその手の温かさを、僕はきっと一生忘れない。
ぽろぽろ溢れる涙を、ロシュさんは一粒、一粒、まるで大事なものを拾うように拭ってくれた。
とくん、とくん、と聞こえてくるロシュさんの鼓動は、僕の中の大事なものを守ってくれている。
そんな気がしてならなかった。
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