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グレイス編

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「聞いたか?グレイスの新しいはまだ子どもらしいぞ。人間の考えることは、本当悍ましいよなぁ。」

「自分が助かりさえすりゃあ、一人の人生が犠牲になることくらいどうでも良いっつーことだろ?ああー、こわ。」

「黒髪ってだけで・・・可哀想になぁ・・・」

グレイスあっちは魔道具使わないんだろ?だからそいつごと塔に閉じ込めてよぉ、」



俺はわざとらしく「コツ、コツ」っと、ブーツの踵を鳴らす。

我々は耳がいい。

少し離れたところから発した注意も彼らに無事届いたようだ。

ビクッと肩を揺らし、言いかけた言葉を飲み込んだ彼らが、俺の方をゆっくり振り向く。

わざとらしくにこりと微笑んでやると、顔を引き攣らせながら一礼し、そそくさと持ち場へ戻っていった。






隣国のグレイスという国は、人間の国だ。
閉鎖的な国として有名だが、中でも我々のような種族を嫌っている。








話は変わるが、黒髪で生まれた人間、そしてヒトは特殊な力を持っている。




黒髪の者は、魔素の浄化が出来るのだ。


この事は、誰もが知っている。

だからこそソレイユ我が国では、黒髪のヒトを保護するようなプログラムがある。
本人や保護者が希望するのであれば、特別な護衛もつけることができる。


ヒト攫いに遭う可能性があるからだ。




そんな卑劣なことをする奴らを見つけた場合は、すぐ殺してやる。




そして我が国では、魔力を込めて使う道具、所謂魔道具の開発が盛んだ。


先人達は、専用の魔道具に黒髪のヒトの魔力を込めて、空気中の魔素を浄化するシステムを作った。

それは今でも活用されている。


そして俺達のような騎士団が国内各地を巡回し、魔素の原因である魔物を退治しながら、魔素から愛するこの国を守っているのだ。






だが、グレイスは違う。





先程の世間話をしていた彼らも言っていたように、黒髪の、その中でも特に魔力が高い人間を、王城近くの塔に監禁する。

家族や友人と引き離された人間は、死ぬまでそこで暮らし、魔素を浄化し続けるのだと言う。




何とも愚かで、馬鹿げた話だ。


再三に渡って我が国が魔道具の使用を促したと言うのに、全く聞き入れようとはしなかった。



「獣もどきが口を出すな」





そう言わんばかりの態度で。

それが直接的な原因、と言うわけではないのだが、この度我が国とグレイスは戦争に至った。



そして何とも呆気なく、我が国が勝利したのである。


俺が最後にトドメを刺したのは、あの白い塔の奴らだった。




「贄を渡すなっ!!!アレは貴重な物だぞ!!」



「・・・・・・本当にクソみてぇな奴らだな。」


そう吐き捨て、俺はそいつらに剣を突き立てた。








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感想 9

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