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フラーウム編
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マンジャル周辺には魔物はあまりいなかった。中心街ということもあり、騎士も多く配置されているので魔物もあまり近付かないのだろう、とエドガーが考察していた。
森に出るたび、ルアンも一緒で内心トウヤはうんざりしていたが、自分の行動が原因でタミルを尚更悪い立場にしたくない気持ちもあったので仕方なく相手をしていた。
タミルとはあの小さな家で毎日会っていた。魔力譲渡のためもあったが、単純に心配だったのである。それは他の3人も同様だったようで、トウヤが行くときには必ず着いてきていた。そんな3人を見てタミルはいつも「トウヤとの2人の時間邪魔しにきたんでしょぉ」と口では言っていたが、ちょっと嬉しそうに笑うのであった。
そんなマンジャルでの生活も10日間ほど過ぎた頃、トウヤは一人で考えたある計画を実行に移したのである。
その日はいつものようにカミールとルアンから夕食に誘われていた。理由をこじつけて毎回断っていたが、この日はその誘いに初めて乗ったのである。タミルは心配そうにしていたし、他の3人にも「一緒に行こうか?」と言われたが、トウヤはそれを断った。
あのローブや黒の上下を身に纏い、部屋でパチン、と自分の両頬を叩き、気合を入れた。
「よっしゃ、俺、がんばれ!」
そう呟き、広い屋敷の中を戦場に赴くような気持ちで一人歩いたのだった。
食堂もかなり広かった。こんなに広いならタミルも誘えよ、でもタミルが嫌かもしれない・・・などと考えていると料理が次から次へと運ばれてきたのである。
カミールとルアンはトウヤの正装を見てしきりに褒めちぎっていたが、トウヤはとりあえず愛想笑いを浮かべ何も喋らなかった。少し緊張していたのである。
デザートまでしっかり出されたが、トウヤは頑張って食べ切った。そして食べ終わるとカミールに「大事な話をしたいから神官長も呼んでほしい」とお願いした。
カミールはあまり良い顔をしなかったが、トウヤが何度もお願いすると近くにいた側近に声をかけ呼びに行かせた。
場所を応接間に移し、30分もすると神官長がやってきた。何人か神官を引き連れていたが、その中にチリルとサーウェイの姿もあった。チリルはトウヤと目が合うと嬉しそうに会釈をしてきたが、隣にいた別の神官に注意をされていた。ぺこぺこと平謝りしているチリルを見て、トウヤは少し緊張が解けた気がした。ありがとう、チリル。
「遅くにお集まりいただき、ありがとうございます。皆様に了承してもらいたいことがあったので、集まってもらいました。」
トウヤは高級そうな椅子からすっと立ち上がり、大きな声で話し始めた。
「了承、ですか?一体なんでしょうか。何かお困りのことでも?」
「いえ、とても簡単なことですから。困ってもいません。皆様には俺の話に頷いていただく以外ありませんので、時間もとりません。」
「はあ、それでどのようなことでしょうか?」
カミールが怪訝そうな顔でトウヤを見ている。それもそうだろう、トウヤはこんなに一方的な言い方をしてこなかった。むしろあまりカミールやルアン、ましてや神官達も呼びつけてまで話をするような、おしゃべり好きにはとても見えなかったのである。体調が悪いふりをして食事を断っていたから尚更だ。
トウヤは一つ深呼吸をして、落ち着いた声で言い放った。
「タミルを俺の婚約者にします。あなた達に断ることはできません。」
予想外の発言にシーンと静まり返ったが、すぐ後でガシャーーーンと、チリルが持っていたどこかの鍵束を思わず落としたのだった。
森に出るたび、ルアンも一緒で内心トウヤはうんざりしていたが、自分の行動が原因でタミルを尚更悪い立場にしたくない気持ちもあったので仕方なく相手をしていた。
タミルとはあの小さな家で毎日会っていた。魔力譲渡のためもあったが、単純に心配だったのである。それは他の3人も同様だったようで、トウヤが行くときには必ず着いてきていた。そんな3人を見てタミルはいつも「トウヤとの2人の時間邪魔しにきたんでしょぉ」と口では言っていたが、ちょっと嬉しそうに笑うのであった。
そんなマンジャルでの生活も10日間ほど過ぎた頃、トウヤは一人で考えたある計画を実行に移したのである。
その日はいつものようにカミールとルアンから夕食に誘われていた。理由をこじつけて毎回断っていたが、この日はその誘いに初めて乗ったのである。タミルは心配そうにしていたし、他の3人にも「一緒に行こうか?」と言われたが、トウヤはそれを断った。
あのローブや黒の上下を身に纏い、部屋でパチン、と自分の両頬を叩き、気合を入れた。
「よっしゃ、俺、がんばれ!」
そう呟き、広い屋敷の中を戦場に赴くような気持ちで一人歩いたのだった。
食堂もかなり広かった。こんなに広いならタミルも誘えよ、でもタミルが嫌かもしれない・・・などと考えていると料理が次から次へと運ばれてきたのである。
カミールとルアンはトウヤの正装を見てしきりに褒めちぎっていたが、トウヤはとりあえず愛想笑いを浮かべ何も喋らなかった。少し緊張していたのである。
デザートまでしっかり出されたが、トウヤは頑張って食べ切った。そして食べ終わるとカミールに「大事な話をしたいから神官長も呼んでほしい」とお願いした。
カミールはあまり良い顔をしなかったが、トウヤが何度もお願いすると近くにいた側近に声をかけ呼びに行かせた。
場所を応接間に移し、30分もすると神官長がやってきた。何人か神官を引き連れていたが、その中にチリルとサーウェイの姿もあった。チリルはトウヤと目が合うと嬉しそうに会釈をしてきたが、隣にいた別の神官に注意をされていた。ぺこぺこと平謝りしているチリルを見て、トウヤは少し緊張が解けた気がした。ありがとう、チリル。
「遅くにお集まりいただき、ありがとうございます。皆様に了承してもらいたいことがあったので、集まってもらいました。」
トウヤは高級そうな椅子からすっと立ち上がり、大きな声で話し始めた。
「了承、ですか?一体なんでしょうか。何かお困りのことでも?」
「いえ、とても簡単なことですから。困ってもいません。皆様には俺の話に頷いていただく以外ありませんので、時間もとりません。」
「はあ、それでどのようなことでしょうか?」
カミールが怪訝そうな顔でトウヤを見ている。それもそうだろう、トウヤはこんなに一方的な言い方をしてこなかった。むしろあまりカミールやルアン、ましてや神官達も呼びつけてまで話をするような、おしゃべり好きにはとても見えなかったのである。体調が悪いふりをして食事を断っていたから尚更だ。
トウヤは一つ深呼吸をして、落ち着いた声で言い放った。
「タミルを俺の婚約者にします。あなた達に断ることはできません。」
予想外の発言にシーンと静まり返ったが、すぐ後でガシャーーーンと、チリルが持っていたどこかの鍵束を思わず落としたのだった。
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