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フラーウム編
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「ここに来たことは気付かれているだろうけど、言わない方がいい」
帰り際、タミルに言われたことだった。
食事もいつも一人で食べているらしく、じゃあトウヤもこっちで、と名乗り出たがタミルに止められた。話がややこしくなるのは避けたいそうだ。所謂タミル派の人達の多くは神官で、メランに一緒についてきていたチリルとサーウェイもそうらしい。
付き合いが一番長いのが騎士のダスールで家族みたいなものだ、と言っていた。
屋敷に戻ってからは、カミールやルアンから色々話しかけられたが、トウヤはとてもそんな気になれず、体調がすぐれないと理由をつけさっさと部屋に戻ったのだった。
部屋に戻り、これまでのタミルのことを思い返していた。駄々っ子で、我が道を突き進むタイプのように見えて、よく周りを見ている。トウヤの変化にはいち早く気づき駆けつけてくれるのもタミルだ。
長い間一人で過ごし、味方が少ない中でそういう風に育ったのだろう。むしろあのぐらいの駄々なら可愛いものだ、とトウヤは思い直すのだった。
タミルはかなりトウヤに執着しているが、おそらく愛情に飢えているのだろう。そしてトウヤの中ではタミルはすでに心から大切な人であり、何とか救ってあげたいという気持ちがかなり大きかった。
この屋敷に滞在するのは、マンジャル周辺の結界を張り終える間だ。それが終わった後はこの屋敷を離れ、更にフラーウムの奥へ進み、結界をどんどん広げていく。魔物討伐も同時進行だ。
その短い期間で、何かできることはないだろうか。そればかりがトウヤの頭を占領していくのであった。
次の日からマンジャル周辺の結界を張るために必要な分の魔力譲渡を続けてもらうことと、周辺の森に出向き、魔物がいれば先に討伐することになっていた。
ルアンも同行することになったが、タミルは一切ルアンに近付かなかったし、ルアンもタミルはいないものとして扱っていた。移動中の空気もあまり良くなかったが、ルアンはそれを気にもとめず、トウヤの隣にべったり張り付いて、ずっと話しかけていた。トウヤも無下には出来ず、返事をしていたが頭の中はタミルのことでいっぱいだった。
「ーーーヤ様?トウヤ様?聞いておられますか?気分でも悪いのですか?」
「・・・あ、すみません・・・少しぼーっとしてて。な、何でしたっけ?」
「トウヤ様の婚約者の話ですよ。そのように愛らしいお姿なのですから、候補が1人や2人、いやそれ以上にいらっしゃるのでは?・・・私もぜひ名乗り出たいものです。」
「こ、こ、婚約者ぁ?そ、そんなものいませんよ。愛らし・・・くもないですし。考えたこともありませんから。」
「そうですか・・・では、私も立候補ということで。頭に入れておいてくださるとありがたいです。」
ルアンはそう言うと、にこりと笑い、トウヤの手に自分の手を重ねようとした。すかさず目の前に座っていたイーサンが冷気を出し始めると「・・・おや、失礼しました」と手を引っ込めていたが、トウヤはゾワゾワっと鳥肌が立ったのである。
帰り際、タミルに言われたことだった。
食事もいつも一人で食べているらしく、じゃあトウヤもこっちで、と名乗り出たがタミルに止められた。話がややこしくなるのは避けたいそうだ。所謂タミル派の人達の多くは神官で、メランに一緒についてきていたチリルとサーウェイもそうらしい。
付き合いが一番長いのが騎士のダスールで家族みたいなものだ、と言っていた。
屋敷に戻ってからは、カミールやルアンから色々話しかけられたが、トウヤはとてもそんな気になれず、体調がすぐれないと理由をつけさっさと部屋に戻ったのだった。
部屋に戻り、これまでのタミルのことを思い返していた。駄々っ子で、我が道を突き進むタイプのように見えて、よく周りを見ている。トウヤの変化にはいち早く気づき駆けつけてくれるのもタミルだ。
長い間一人で過ごし、味方が少ない中でそういう風に育ったのだろう。むしろあのぐらいの駄々なら可愛いものだ、とトウヤは思い直すのだった。
タミルはかなりトウヤに執着しているが、おそらく愛情に飢えているのだろう。そしてトウヤの中ではタミルはすでに心から大切な人であり、何とか救ってあげたいという気持ちがかなり大きかった。
この屋敷に滞在するのは、マンジャル周辺の結界を張り終える間だ。それが終わった後はこの屋敷を離れ、更にフラーウムの奥へ進み、結界をどんどん広げていく。魔物討伐も同時進行だ。
その短い期間で、何かできることはないだろうか。そればかりがトウヤの頭を占領していくのであった。
次の日からマンジャル周辺の結界を張るために必要な分の魔力譲渡を続けてもらうことと、周辺の森に出向き、魔物がいれば先に討伐することになっていた。
ルアンも同行することになったが、タミルは一切ルアンに近付かなかったし、ルアンもタミルはいないものとして扱っていた。移動中の空気もあまり良くなかったが、ルアンはそれを気にもとめず、トウヤの隣にべったり張り付いて、ずっと話しかけていた。トウヤも無下には出来ず、返事をしていたが頭の中はタミルのことでいっぱいだった。
「ーーーヤ様?トウヤ様?聞いておられますか?気分でも悪いのですか?」
「・・・あ、すみません・・・少しぼーっとしてて。な、何でしたっけ?」
「トウヤ様の婚約者の話ですよ。そのように愛らしいお姿なのですから、候補が1人や2人、いやそれ以上にいらっしゃるのでは?・・・私もぜひ名乗り出たいものです。」
「こ、こ、婚約者ぁ?そ、そんなものいませんよ。愛らし・・・くもないですし。考えたこともありませんから。」
「そうですか・・・では、私も立候補ということで。頭に入れておいてくださるとありがたいです。」
ルアンはそう言うと、にこりと笑い、トウヤの手に自分の手を重ねようとした。すかさず目の前に座っていたイーサンが冷気を出し始めると「・・・おや、失礼しました」と手を引っ込めていたが、トウヤはゾワゾワっと鳥肌が立ったのである。
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