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フラーウム編
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3日目の夜、トウヤは結界を張るため暗い月明かりの下、空を見渡せる草原立ち、またあの薄手の黒いローブを羽織っている。
夜空の色と同じ色の瞳でゆっくりと辺りを見渡し、ゆっくりと夜空に向かって手を伸ばした。
トウヤの周りには、いつもの4人と、フラーウムへ向かう道中一緒に過ごしている護衛騎士3人と神官2人もいる。
トウヤは「他言無用を守ってもらえるなら別に近くで見ても大丈夫」とタミルに伝えていた。神官2人は涙を浮かべ喜んでいたそうで、トウヤは少し照れくさい気持ちになった。
トウヤの手からはまたあの黒い靄が溢れ出し、夜空の星を隠すように広がっていった。
トウヤの頭にはカランコロン、とあの玩具の音が鳴る。
ふぅーっと靄に息を吹きかけると、少しずつ黒から淡い色に変化した靄が光を放ち消えていく。
何度見ても美しい光景だが、初めてそれを見た騎士3人は言葉を失って夜空を見上げ呆然としているし、神官2人は間近で見た黒神の力に感極まって嗚咽を漏らし泣いている。
手を下ろしたトウヤは少しヨタッとよろめいたが、今回は後のことも考えて力を調整したので意識を失うことも倒れることもなかった。
すかさず4人がかけ寄り、全員がトウヤにキスをしたり、抱きしめたりしている。「ひ、人前では、やめてぇ・・・」とトウヤは必死に抵抗するのであった。
「す、素晴らしかったです!トウヤ様。わ、私、本当に感動致しました!心が震える、とはまさにあの事でございます。」
「へ?!え、あ、あの、ありがとうございます・・・、チリル、さん。」
4人から順番に抱えられ、野営の場所まで戻ったトウヤは焚き火の前で温かいお茶を飲んでいた。すると興奮冷めやらぬ神官の一人、チリルから物凄い勢いで礼を述べられたのである。チリルはトウヤよりも背が低い小柄な男性で、焦げ茶色のサラサラした、肩につかないくらいの髪の男性だった。少しリスっぽいな、とトウヤは思った。
「チリル、興奮しすぎ。鼻血出さないでよねぇ。まあ気持ちは分かるけどさぁ。その格好で夜空の下にいるトウヤは本当に綺麗だもん。」
「~もうっ、恥ずかしい事言うなってタミル!」
「いえ!本当にお美しいです!元々愛らしいお顔立ちに加えて、黒神としての美しさが加わり・・・ああ、何と神々しいのでしょうか!他言無用とはいえ後世に伝えるべき光景でありまし」
「はいはい、そこまでだチリル。鼻血出てるぞ。はい、ハンカチ。・・・トウヤ様、うちの神官が失礼致しました。私も先程川の水で心を沈めていなければこうなっておりました。先程のトウヤ様は本当に美しく・・・神聖な光景でございました。」
チリルにそっとハンカチを手渡したのは、もう一人の神官であるサーウェイである。こちらはチリルとはまた違った印象で、俺より背が高く、年齢も少し上だと見た目で分かる。赤毛で、俺と同じく癖毛だった。
血だらけのハンカチはもういらないとチリルにぴしゃりと伝えた後、トウヤの方を嬉しそうに見ている。
間近で向けられる憧憬の眼差しにトウヤはどこを見ていいのか分からなくなり、焚き火の方へ目線を移して逃げたのだった。
夜空の色と同じ色の瞳でゆっくりと辺りを見渡し、ゆっくりと夜空に向かって手を伸ばした。
トウヤの周りには、いつもの4人と、フラーウムへ向かう道中一緒に過ごしている護衛騎士3人と神官2人もいる。
トウヤは「他言無用を守ってもらえるなら別に近くで見ても大丈夫」とタミルに伝えていた。神官2人は涙を浮かべ喜んでいたそうで、トウヤは少し照れくさい気持ちになった。
トウヤの手からはまたあの黒い靄が溢れ出し、夜空の星を隠すように広がっていった。
トウヤの頭にはカランコロン、とあの玩具の音が鳴る。
ふぅーっと靄に息を吹きかけると、少しずつ黒から淡い色に変化した靄が光を放ち消えていく。
何度見ても美しい光景だが、初めてそれを見た騎士3人は言葉を失って夜空を見上げ呆然としているし、神官2人は間近で見た黒神の力に感極まって嗚咽を漏らし泣いている。
手を下ろしたトウヤは少しヨタッとよろめいたが、今回は後のことも考えて力を調整したので意識を失うことも倒れることもなかった。
すかさず4人がかけ寄り、全員がトウヤにキスをしたり、抱きしめたりしている。「ひ、人前では、やめてぇ・・・」とトウヤは必死に抵抗するのであった。
「す、素晴らしかったです!トウヤ様。わ、私、本当に感動致しました!心が震える、とはまさにあの事でございます。」
「へ?!え、あ、あの、ありがとうございます・・・、チリル、さん。」
4人から順番に抱えられ、野営の場所まで戻ったトウヤは焚き火の前で温かいお茶を飲んでいた。すると興奮冷めやらぬ神官の一人、チリルから物凄い勢いで礼を述べられたのである。チリルはトウヤよりも背が低い小柄な男性で、焦げ茶色のサラサラした、肩につかないくらいの髪の男性だった。少しリスっぽいな、とトウヤは思った。
「チリル、興奮しすぎ。鼻血出さないでよねぇ。まあ気持ちは分かるけどさぁ。その格好で夜空の下にいるトウヤは本当に綺麗だもん。」
「~もうっ、恥ずかしい事言うなってタミル!」
「いえ!本当にお美しいです!元々愛らしいお顔立ちに加えて、黒神としての美しさが加わり・・・ああ、何と神々しいのでしょうか!他言無用とはいえ後世に伝えるべき光景でありまし」
「はいはい、そこまでだチリル。鼻血出てるぞ。はい、ハンカチ。・・・トウヤ様、うちの神官が失礼致しました。私も先程川の水で心を沈めていなければこうなっておりました。先程のトウヤ様は本当に美しく・・・神聖な光景でございました。」
チリルにそっとハンカチを手渡したのは、もう一人の神官であるサーウェイである。こちらはチリルとはまた違った印象で、俺より背が高く、年齢も少し上だと見た目で分かる。赤毛で、俺と同じく癖毛だった。
血だらけのハンカチはもういらないとチリルにぴしゃりと伝えた後、トウヤの方を嬉しそうに見ている。
間近で向けられる憧憬の眼差しにトウヤはどこを見ていいのか分からなくなり、焚き火の方へ目線を移して逃げたのだった。
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