102 / 128
フラーウム編
101
しおりを挟む
あれからトウヤ達は一週間ほどケインの屋敷で過ごしている。毎日魔力を譲渡してもらったり、魔法の練習をしたり、少しずつフラーウムへ向かう準備を進めた。
この期間中、王城に滞在している各領主たちがトウヤを気遣い、顔を見に来てくれることがあった。ケインはまたもや要人の登場に苦笑いだが、シャロンは慣れたようにあの紅茶を出してくれた。
自分の領地の領主が訪ねてきた場合、つまり自分の父親なのだが、それぞれ次期領主は応接間でたわいもない話をしていた。ターナーの場合フィンが、ラクランの場合イーサンが、フリップの場合エドガーが、と言った具合である。
しかし、フラーウム領主カミールが来た場合だけそうではなかった。
カミールがトウヤの元を訪れたのはちょうどケインの家に来て4日が経った時だった。
その日の午前中、前もってタミルの護衛騎士のダスールが知らせに来たのである。ダスールはどこか浮かない顔をしている。
「トウヤ様、タミル様。本日の午後、カミール様がこちらを訪れるそうです。・・・あの、ルアン様もご一緒とのことでして・・・その・・・」
「ハイハーイ、僕はその時別の部屋にいろってことでしょぉ。分かってるってば。心配性だなぁ、あの人達も」
「は?何で?タミルも一緒にいればいいじゃ」
「トウヤぁ、いーのいーの。いつものことだから、ね?・・・僕も会いたくないし。」
タミルは眉を下げたように笑いながら、トウヤの服の裾を引っ張った。そんなタミルを見るとトウヤは何も言えなくなり、仕方なくそのまま王城に戻るダスールを見送ったのである。
「トウヤ様、お初にお目にかかります。フラーウム領主のカミールでございます。」
立派な馬車から降りてきた中年の男性は、少し髭を伸ばし、綺麗な金髪を一つ結びにした色気のある人だった。タミルとよく似たキラキラ煌めく黄金の瞳がよく似合っている。やや目は細めだ。
トウヤも形式上の挨拶をすると、カミールが再びその口を開き、馬車から降りてきたもう一人の少年をトウヤに紹介した。
「こちらは私の息子のルアン、と申します。仲良くしてやってください。ほらルアン、お前も挨拶なさい。」
「トウヤ様、初めまして。フラーウムのルアンです。トウヤ様とは歳が近いと伺いました。どうぞ、よろしく。」
ルアンと名乗った少年はそういうと、綺麗な黄金の瞳でにこりと笑った。瞳の色と髪の毛の色以外、タミルとはあまり似ていない。
カミールと似て、やや細めの目をしており背も高くトウヤよりもがっしりしていた。髪も短く切り揃えられている。歳を尋ねると18歳、とのことだった。
外では何だから、とトウヤはケインと共に2人を応接間に案内する。いつものようにあの紅茶が出てくると、カミールはその香りと味の良さを気に入ったようでシャロンを捕まえ、詳しく聞いているようだった。シャロンもある意味商売上手である。
その2人が話している間、ルアンはしきりにトウヤへ色々なことを質問していた。故郷はどこだ、とか、好きな食べ物は何か、とか。まるで見合いだな、とトウヤは思った。
タミルもかなり強引にトウヤに近づいてきたが、愛情表現も超ストレートで嫌味はなかった。しかしルアンからはどこか今後のための根回しをされているような気分になり、あまり仲良くなれそうだとは思えなかった。
1時間ほど滞在したあと、カミールとルアンは王城に戻っていった。その翌日にはタミルを置いて先にフラーウムへと戻ったらしい。
トウヤはタミルの抱えているものが少し垣間見えた気がした。
この期間中、王城に滞在している各領主たちがトウヤを気遣い、顔を見に来てくれることがあった。ケインはまたもや要人の登場に苦笑いだが、シャロンは慣れたようにあの紅茶を出してくれた。
自分の領地の領主が訪ねてきた場合、つまり自分の父親なのだが、それぞれ次期領主は応接間でたわいもない話をしていた。ターナーの場合フィンが、ラクランの場合イーサンが、フリップの場合エドガーが、と言った具合である。
しかし、フラーウム領主カミールが来た場合だけそうではなかった。
カミールがトウヤの元を訪れたのはちょうどケインの家に来て4日が経った時だった。
その日の午前中、前もってタミルの護衛騎士のダスールが知らせに来たのである。ダスールはどこか浮かない顔をしている。
「トウヤ様、タミル様。本日の午後、カミール様がこちらを訪れるそうです。・・・あの、ルアン様もご一緒とのことでして・・・その・・・」
「ハイハーイ、僕はその時別の部屋にいろってことでしょぉ。分かってるってば。心配性だなぁ、あの人達も」
「は?何で?タミルも一緒にいればいいじゃ」
「トウヤぁ、いーのいーの。いつものことだから、ね?・・・僕も会いたくないし。」
タミルは眉を下げたように笑いながら、トウヤの服の裾を引っ張った。そんなタミルを見るとトウヤは何も言えなくなり、仕方なくそのまま王城に戻るダスールを見送ったのである。
「トウヤ様、お初にお目にかかります。フラーウム領主のカミールでございます。」
立派な馬車から降りてきた中年の男性は、少し髭を伸ばし、綺麗な金髪を一つ結びにした色気のある人だった。タミルとよく似たキラキラ煌めく黄金の瞳がよく似合っている。やや目は細めだ。
トウヤも形式上の挨拶をすると、カミールが再びその口を開き、馬車から降りてきたもう一人の少年をトウヤに紹介した。
「こちらは私の息子のルアン、と申します。仲良くしてやってください。ほらルアン、お前も挨拶なさい。」
「トウヤ様、初めまして。フラーウムのルアンです。トウヤ様とは歳が近いと伺いました。どうぞ、よろしく。」
ルアンと名乗った少年はそういうと、綺麗な黄金の瞳でにこりと笑った。瞳の色と髪の毛の色以外、タミルとはあまり似ていない。
カミールと似て、やや細めの目をしており背も高くトウヤよりもがっしりしていた。髪も短く切り揃えられている。歳を尋ねると18歳、とのことだった。
外では何だから、とトウヤはケインと共に2人を応接間に案内する。いつものようにあの紅茶が出てくると、カミールはその香りと味の良さを気に入ったようでシャロンを捕まえ、詳しく聞いているようだった。シャロンもある意味商売上手である。
その2人が話している間、ルアンはしきりにトウヤへ色々なことを質問していた。故郷はどこだ、とか、好きな食べ物は何か、とか。まるで見合いだな、とトウヤは思った。
タミルもかなり強引にトウヤに近づいてきたが、愛情表現も超ストレートで嫌味はなかった。しかしルアンからはどこか今後のための根回しをされているような気分になり、あまり仲良くなれそうだとは思えなかった。
1時間ほど滞在したあと、カミールとルアンは王城に戻っていった。その翌日にはタミルを置いて先にフラーウムへと戻ったらしい。
トウヤはタミルの抱えているものが少し垣間見えた気がした。
応援ありがとうございます!
7
お気に入りに追加
315
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる