【完結】透明の石

メラン編

９８

トウヤの涙に４人は一様に狼狽えだす。
一斉にその場から立ち上がり、あわあわとトウヤの元へ集まった。

トウヤをガバッと抱えると自分の膝に乗せるフィン
トウヤの足元へ座り込み、お腹に顔を埋めるタミル
トウヤの右側から頭をひたすら撫でるエドガー
トウヤの左手をとり、手の甲にそっと口付けるイーサン

一瞬で取り囲まれたトウヤは思わず吹き出し、今度は大きな口で笑い出した。


「アハ、アハハ！みんな慌てすぎ！びっくりして涙止まった！アハハ！俺、本当に大事にされてるんだね。・・・ふふ、みんなありがとう。」


そう、４人ともトウヤを大事にしてくれる。いつも小言を言うのもトウヤを心配してだからこそだし、嫉妬するのもそれだけトウヤのことが好きだからだ。
今回の件で、それが身に染みて分かった。ラドリーのように自分の所有物としてではなく、一人の人間、トウヤとして大事にしてくれている。それはそもそもトウヤが望んでいたことだった。

神ではなく、トウヤとして見て欲しいーー・・・

その想いを、一番近くで尊重してくれていたのがこの４人だった。それに気付かされたのである。


「俺ね、あいつに触られた時、本当に・・・嫌だったんだ。気持ち悪くて、怖くてさ・・。でもみんなから触られるのは・・・は、恥ずかしいけど、全く嫌じゃ・・ない。むしろ、その・・・うう・・・」



トウヤの表情はさっきから大忙しである。泣き出したと思ったら、次は突然笑い出し、今度は顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
それを４人から至近距離で見られているのだ。尚更恥ずかしくなる。

もじもじと言葉を紡ぐトウヤに４人は堪らない気持ちになった。きっかけはアレだが、トウヤが自分たちと改めて向き合おうとしてくれているのだ。こんなに嬉しいことはない。


「その・・・俺、た、たぶん？えっと、あの、みんなのこと・・・す、す・・・うう・・・すき、なんだと、思う・・・あ、愛とか、恋、の方のやつ・・ね？うう・・・」



今度は恥ずかし涙を浮かべるトウヤに４人はニヤニヤが止まらない。
タミルもフィンもイーサンも、そしてエドガーもである。・・ん？エドガー・・・？と、トウヤはハッとして、大慌てで訂正する。

「あぁ？！え、エドガー様はべ、別に俺のこと、そういう意味です、す、好きなわけじゃないのに！か、勝手に、えっと、その・・・すすすみません！」

「ふふ。私、いつそんなこと言いましたか？トウヤくんのことそういう意味で好きですよ。ふふ。黙ってた分、一番たちが悪いかもしれないですね、ふふ。」

「「「はあああ？！」」」

トウヤは思いもよらない言葉に顔を真っ赤にして固まり、３人は思わず叫び出す。エドガーはそんな４人にふわりと微笑んだ。






「役得なことも結構ありましたよ。・・身体拭いたり、ですね。ふふ。」





「「「はぁぁぁぁぁあ？！」」」




３人の叫び声に、ケインが何事か？！と慌てて飛び込んできて、この状態を見られたトウヤの顔が更に赤くなったことは言うまでもないことであった。