【完結】透明の石

メラン編

９２

「トウヤくん、力が強かったら言ってね？」

「あ、だいじょうぶです。エドガー様、ありがとう、ございます。」


弟がいる、と言っていたが、エドガーは本当に慣れているようだった。トウヤの手が届かない背中や足先を優しく拭いてくれた。その間、「そういえば今まで４人と世間話の類したことないな」とトウヤは気づくのである。お互いのことを実はあまり知らない。

「エドガー様は、弟さ、んが１人いるんです、か？」

「ふふ、いますよ。もうトウヤくんぐらい大きいですけどね。優秀な弟なんだ。あ、トウヤくん、喉が痛いでしょう？無理して喋らなくてもいいんだよ？」

「無理はして、ないです。みんなと、こういう世間話？してなか、ったなと思って。ケホ。」

「・・・そうだね。私も今度ゆっくりお話ししたいなぁ。でも今日は起きたばっかりだから、ね？はい！これでおしまいだから、また休もう。」


エドガーはささっとトウヤの服を整えると、ゆっくり身体をベッドに倒してくれた。優しさが身に染みる。エドガーに礼を言うと、ふわりと微笑んだ。
そんなエドガーの顔をじぃと見ながら「とても２５歳には見えない童顔だな」と割と失礼なことを考えていたトウヤだが、エドガーに目元を温かい手で覆われ、子守唄を歌われた。「めちゃめちゃ子ども扱いされてる！」と思ったが、その手の温かさにつられていつのまにか寝てしまうトウヤだった。



「ふふ、君が私の気持ちに気付いたらどんな顔をするのかな。・・おやすみ、可愛い私の神様。」

そう言ってエドガーはすーすー寝息を立てるトウヤの左手首にそっと口付けた。