【完結】透明の石

N2O

文字の大きさ
上 下
91 / 128
メラン編

91

しおりを挟む
扉がパタンと閉まり、部屋の中には5人だけである。

「・・・ト、トウヤくん、何か必要なものある?お腹は?すいた?」

「え、っと、ケホ。おなかは、すいてま、す。・・・スープくらいなら食べられるかも、ケホ。」

「じゃあ、これ食え。食べさせてやるよ。」

「えんりょ、しま、あぐ」

有無を言わさず、口にスプーンを突っ込まれた。口に柔らかく煮込まれた野菜の甘みと優しいスープの味が広がった。ゆっくりと噛み潰し、ごくんと飲み込む。すかさずタミルが果実水を持ってきて飲ませてくれる。背中ではイーサンがトウヤを支えるように足の間に挟み込み抱えてくれいた。至れり尽くせりである。

スープは3口食べた。「もういいのか?!あのトウヤが?!やっぱどっか悪ぃんじゃねーの?!」とフィンは珍しく狼狽えていたが、一週間ぶりなので、いきなりは食べられない。それを途切れ途切れに説明すると渋々納得していた。


「湯、浴みしたいです、ケホ。」

「さすがに溺れ死ぬぞ?一緒に入ってやろうか?」

「・・・・いやです。じゃあ、からだ拭きたい、ので、拭くもの貸してく、ださい。」

「僕が拭いてあげるぅ!はい!脱いで!」


タミルの馬鹿力でトウヤの服を脱がそうとする。流石にそれはブンブン首を振り必死に抵抗した。だがトウヤ一人で全部拭くのは少し難しい。手伝ってもらう人を決めることになった。タミル、フィン、イーサンがそれぞれ物凄い念を送って来たが「・・・エドガー様おねがいしま、す」とエドガーを指定した。
3人からジロリと睨まれたエドガーは蛇に睨まれた蛙状態で固まっている。

「僕、やさぁーしく拭くよぉ!ねえ!トウヤぁ!」

「何でメガネなんだよ!!こいつ、人の世話なんかできねぇぞ!絶対俺の方が歳上だ!世話も上手い!」

「全く説得力にかける言い方だな。トウヤ、私はこれでも小さな弟と妹がいる。世話も慣れているぞ?」

「わ、私はこ、これでも25歳です!弟もいます!世話くらいできます!」

「「「「25ぉぉお?!」」」」

「・・・・・・・・!3人とも外でお待ちくださいね。」


エドガーが超絶珍しくご立腹である。3人は瞬時に蔓でぐるぐる巻きにされ、外にポイっと捨てられた。がちゃん、と強めに蔓が扉を閉める。エドガーはトウヤの方をくるっと振り向き「さ、邪魔な人たちはいなくなりましたから、安心してくださいね」とニコリ。意外と怖いぞ、エドガー。


その後、扉の外でお互いの年齢をこっそり確認し合う3人であった。












しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

不憫な青年は異世界で愛される

BL / 連載中 24h.ポイント:99pt お気に入り:2,258

お飾り王妃の死後~王の後悔~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,760pt お気に入り:7,281

親が決めた婚約者ですから

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:475pt お気に入り:1,320

割り切った婚姻に合意はしたけれど、裏切って良いとは言ってない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:134pt お気に入り:705

山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:390pt お気に入り:2,447

悪女と言われ婚約破棄されたので、自由な生活を満喫します

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:681pt お気に入り:2,315

殿下、それは私の妹です~間違えたと言われても困ります~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:383pt お気に入り:5,286

愛などもう求めない

BL / 完結 24h.ポイント:276pt お気に入り:2,786

処理中です...