90 / 128
メラン編
90
しおりを挟む
『立派だった。本当に。トウヤ、感謝する』
ディーの声がする。
でもどうしてだろう、夢の中なのに目が開かない。
『力を使いすぎたんだ。目を開ける必要はない。ゆっくり休むといい』
そっか俺、結界張ってまた倒れたのか。
もしかして毎回倒れるんじゃないか?目が覚めたらまた小言言われるかな。でも今回は小言じゃなくて褒めて欲しいな。
『あの者達も心配しているぞ。休んだら、早く目を覚ましてやれ。またな』
うん、そうするよ。
ディーも心配すんなって。また今度話そうな。
トウヤの耳にはまたあのカランコロン、という優しい音が聞こえた気がした。
「・・・・いい匂いがする。」
「・・・・・一週間も寝といて一言目がそれかよ。」
あれから一週間、トウヤはひたすら眠り続けた。4人は交代で欠かさずトウヤに魔力を譲渡し続け、ちょうどフィンが昼食のコンソメスープを大きな口で食べようとした時、トウヤがやっと目を覚ましたのである。
「い、しゅうかん?おれ、そんなにねて、た?」
「・・・ああ。よかった。目が覚めて。おかえり、トウヤ。ありがとう。」
久しぶりに出した声は掠れていて、けほっと咳をする。そんなトウヤのおでこにちゅ、と口付けるフィンの顔はとても優しく、ホッと安堵したようだった。トウヤは何だか幸せで、嬉しくて、ポロリと涙が溢れた。
「どこか身体が痛むのか?」とフィンが心配そうに尋ねるが、トウヤは力なく首を振り「なんか、うれしくて」と答えた。それを聞いたフィンは愛おしそうにトウヤの頭を撫で、瞼に優しく口付けた。
「他の奴らにもしょうがねぇから知らせてくる」と言い、知らせを聞きつけタミル、イーサン、エドガーがトウヤの部屋に駆け込んできた。
タミルもさすがに飛び付いてはこなかったが、うっすら涙を浮かべ「目が覚めてよかったぁぁぁぁあ」と叫んでいた。
エドガーは泣いていた。そりゃあもう、えぐえぐ言いながら。トウヤが起きて安心したらしい。
イーサンは何も言わなかったが、トウヤの手を優しくとると自分の額に当て、そのあと優しく口付けていた。
その後はダニエルも飛んできて、何度も何度も感謝された。いつもの落ち着きは全く感じられない程に一人であの夜を思い返しては興奮しているようだった。鼻血が出るんじゃないかと思うくらいには。
医者も来て、一通りトウヤの身体を診てくれたが、魔力欠乏以外は何も異常はなかった。まあ、何か異常があっても魔力が戻ればどうにでもなるのだが、念のため、とのことだった。
「王が直接お礼を言いたいそうです」と言われたが、緊張するからお気持ちだけで、と断ったら意外にもすんなりと聞き入れてくれた。ダニエルの力らしい。
「しばらくは安静にしてくださいね。あ、でも魔力は皆さんから譲渡してもらってください。・・・方法はお任せします。」
不敵に笑ったダニエルは、トウヤと4人を残して部屋から出ていったのだった。
ディーの声がする。
でもどうしてだろう、夢の中なのに目が開かない。
『力を使いすぎたんだ。目を開ける必要はない。ゆっくり休むといい』
そっか俺、結界張ってまた倒れたのか。
もしかして毎回倒れるんじゃないか?目が覚めたらまた小言言われるかな。でも今回は小言じゃなくて褒めて欲しいな。
『あの者達も心配しているぞ。休んだら、早く目を覚ましてやれ。またな』
うん、そうするよ。
ディーも心配すんなって。また今度話そうな。
トウヤの耳にはまたあのカランコロン、という優しい音が聞こえた気がした。
「・・・・いい匂いがする。」
「・・・・・一週間も寝といて一言目がそれかよ。」
あれから一週間、トウヤはひたすら眠り続けた。4人は交代で欠かさずトウヤに魔力を譲渡し続け、ちょうどフィンが昼食のコンソメスープを大きな口で食べようとした時、トウヤがやっと目を覚ましたのである。
「い、しゅうかん?おれ、そんなにねて、た?」
「・・・ああ。よかった。目が覚めて。おかえり、トウヤ。ありがとう。」
久しぶりに出した声は掠れていて、けほっと咳をする。そんなトウヤのおでこにちゅ、と口付けるフィンの顔はとても優しく、ホッと安堵したようだった。トウヤは何だか幸せで、嬉しくて、ポロリと涙が溢れた。
「どこか身体が痛むのか?」とフィンが心配そうに尋ねるが、トウヤは力なく首を振り「なんか、うれしくて」と答えた。それを聞いたフィンは愛おしそうにトウヤの頭を撫で、瞼に優しく口付けた。
「他の奴らにもしょうがねぇから知らせてくる」と言い、知らせを聞きつけタミル、イーサン、エドガーがトウヤの部屋に駆け込んできた。
タミルもさすがに飛び付いてはこなかったが、うっすら涙を浮かべ「目が覚めてよかったぁぁぁぁあ」と叫んでいた。
エドガーは泣いていた。そりゃあもう、えぐえぐ言いながら。トウヤが起きて安心したらしい。
イーサンは何も言わなかったが、トウヤの手を優しくとると自分の額に当て、そのあと優しく口付けていた。
その後はダニエルも飛んできて、何度も何度も感謝された。いつもの落ち着きは全く感じられない程に一人であの夜を思い返しては興奮しているようだった。鼻血が出るんじゃないかと思うくらいには。
医者も来て、一通りトウヤの身体を診てくれたが、魔力欠乏以外は何も異常はなかった。まあ、何か異常があっても魔力が戻ればどうにでもなるのだが、念のため、とのことだった。
「王が直接お礼を言いたいそうです」と言われたが、緊張するからお気持ちだけで、と断ったら意外にもすんなりと聞き入れてくれた。ダニエルの力らしい。
「しばらくは安静にしてくださいね。あ、でも魔力は皆さんから譲渡してもらってください。・・・方法はお任せします。」
不敵に笑ったダニエルは、トウヤと4人を残して部屋から出ていったのだった。
10
お気に入りに追加
350
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

カランコエの咲く所で
mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。
しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。
次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。
それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。
だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。
そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる