81 / 128
メラン編
81
しおりを挟む
「うわぁぁああ、やめ、やめろ!ぎゃぁぁあ!」
「おい!不用意に前へ出るな!ヤハド!そこの団員を下がらせろ、攻撃の邪魔だ!」
あともうすぐで東の砦に着くはずだった。
森を抜ければあとは直線道、イグニス領主ターナーは領主会議のため、メランを目指していた。黒神祭から帰ってこないフィンからの手紙は何もなく、事の顛末は中央神殿の神官長からの手紙で知った。相変わらずな息子への今後の指導方法を考えなければならないと頭を悩ませていたところだった。
来る道中、小型、中型程度の魔物が数匹現れたが全く問題なかった。馬車は性に合わないので、ターナーは自分で馬に乗っている。外の風に当たりながら移動したい。そういうところはフィンに似ている。
旅の供に連れてきたのは3人だ。領主補佐のリタ、騎士のヤハドとアーリャである。野営は久しぶりだったが、宿に泊まるのも勿体ない、と断ったのはターナー自身である。
長い付き合いの3人とは気の知れた仲だ。あと数年もすればフィンが領主になる。口を挟むことも多々あるだろうが、引退後はこうして他の領地を回るのもいい。そんなことを考えていた。
東の砦が見えてきた頃である。王からの指示だろう、迎えの騎士達が数名こちらに向かってきていた。ターナーがそちらに手を振ろうした時、辺りの空気が一変する。異変にいち早く気づいたのは一番若いアーリャだった。
「・・・ターナー様、魔物が急接近しているようです。それも・・数匹、全て大型か、中型と思われます。砦に入る前に戦闘になるかと。」
「・・・わかった。ヤハドは念のため、先に行け。団員に引き返すよう伝えろ。魔物との戦闘は慣れてないだろうからな。」
「承知致しました。私もすぐ戻ります。どうぞご無事で。」
ヤハドは馬の扱いに長けている。馬に足で合図を送ると、ダッと駆け出した。その直後、バキバキバキ、と後方の大木をなぎ倒し、大型の魔物が3体現れたのである。
「・・・この型の魔物は久しいな。どこに隠れていたんだろうなぁ、リタ、アーリャ。腕がなるだろう。」
「・・怪我などされませんように。午後から会議が控えてますからね、ターナー様。」
「わかったわかった。さっさと片付けよう。」
ターナーが馬から降り、大太刀を構えた瞬間。頭上を大きな影が横切った。バッと目線を向けると大きな翼の生えた魔物が4体、団員の方に向かって飛んでいくのが見えた。
「まずい!ヤハドはどうにかなるが、あの大型相手、中央の連中じゃ敵わん!こちらは任せたぞ、私はあちらに行こう!」
向かおうとしていた方角をくるりと変え、ヤハドの方へ向かう。すでに魔物が地上へ降りそうな姿が見えた。
「今日は厄日だな。落ち着いて茶が飲みたい。」
そう溢しながら、ターナーは馬の腹を蹴って速度を上げたのだった。
「おい!不用意に前へ出るな!ヤハド!そこの団員を下がらせろ、攻撃の邪魔だ!」
あともうすぐで東の砦に着くはずだった。
森を抜ければあとは直線道、イグニス領主ターナーは領主会議のため、メランを目指していた。黒神祭から帰ってこないフィンからの手紙は何もなく、事の顛末は中央神殿の神官長からの手紙で知った。相変わらずな息子への今後の指導方法を考えなければならないと頭を悩ませていたところだった。
来る道中、小型、中型程度の魔物が数匹現れたが全く問題なかった。馬車は性に合わないので、ターナーは自分で馬に乗っている。外の風に当たりながら移動したい。そういうところはフィンに似ている。
旅の供に連れてきたのは3人だ。領主補佐のリタ、騎士のヤハドとアーリャである。野営は久しぶりだったが、宿に泊まるのも勿体ない、と断ったのはターナー自身である。
長い付き合いの3人とは気の知れた仲だ。あと数年もすればフィンが領主になる。口を挟むことも多々あるだろうが、引退後はこうして他の領地を回るのもいい。そんなことを考えていた。
東の砦が見えてきた頃である。王からの指示だろう、迎えの騎士達が数名こちらに向かってきていた。ターナーがそちらに手を振ろうした時、辺りの空気が一変する。異変にいち早く気づいたのは一番若いアーリャだった。
「・・・ターナー様、魔物が急接近しているようです。それも・・数匹、全て大型か、中型と思われます。砦に入る前に戦闘になるかと。」
「・・・わかった。ヤハドは念のため、先に行け。団員に引き返すよう伝えろ。魔物との戦闘は慣れてないだろうからな。」
「承知致しました。私もすぐ戻ります。どうぞご無事で。」
ヤハドは馬の扱いに長けている。馬に足で合図を送ると、ダッと駆け出した。その直後、バキバキバキ、と後方の大木をなぎ倒し、大型の魔物が3体現れたのである。
「・・・この型の魔物は久しいな。どこに隠れていたんだろうなぁ、リタ、アーリャ。腕がなるだろう。」
「・・怪我などされませんように。午後から会議が控えてますからね、ターナー様。」
「わかったわかった。さっさと片付けよう。」
ターナーが馬から降り、大太刀を構えた瞬間。頭上を大きな影が横切った。バッと目線を向けると大きな翼の生えた魔物が4体、団員の方に向かって飛んでいくのが見えた。
「まずい!ヤハドはどうにかなるが、あの大型相手、中央の連中じゃ敵わん!こちらは任せたぞ、私はあちらに行こう!」
向かおうとしていた方角をくるりと変え、ヤハドの方へ向かう。すでに魔物が地上へ降りそうな姿が見えた。
「今日は厄日だな。落ち着いて茶が飲みたい。」
そう溢しながら、ターナーは馬の腹を蹴って速度を上げたのだった。
10
お気に入りに追加
350
あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

カランコエの咲く所で
mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。
しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。
次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。
それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。
だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。
そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる