【完結】透明の石

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メラン編

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「この状況はなんかまずい気がする」

脳内でトウヤは焦っていた。
雷魔法の練習の途中トイレに行きたくなった。人間だから仕方ない。いつもなら誰かついてくると言い出すが「トイレくらい一人で行けるから!子どもじゃあるまいし!」とダッシュで逃げたのである。


そしてこの有り様だ。
あとできっと4人から小言を言われるに違いない。そう考えるとトウヤは頭が痛くなった。
トウヤがこめかみを思わず抑えていると、ふっと影になった。顔を上げると少し離れていたはずのラドリーが身体が密着するほどに近づいていたのである。思わずビクッと身体を揺らすと、にこりとラドリーが微笑んだ。


「何か考え事かな?が多くて、なかなかおしゃべりができなくて残念だったよ。」

「ば、番犬・・・あ、あの、俺練習に戻りたいので・・あの・・・離れていただけると・・・」

恐る恐る失礼にならないように言葉を選ぶ。トウヤが話す最中もラドリーは嬉しそうにニコニコと笑っている。しかし、離れてはくれなかった。どうしたものか、とトウヤが次の言葉を選んでいると、「私はね、」とラドリーが話し始めた。

「私はね、トウヤくん。魔力が高くて有望な人間が大好きなんだ。トウヤくんはまさにその原石。磨けば磨くほど、強くなるに違いない。それでどうかな?騎士団うちに入らないかい?鍛えてあげるよ・・・私が直々に。」

「・・・え?!は?!あの、お、おれ、騎士団には・・・は、入れません。えっと、魔法は使い方を練習したい・・だけで、あ、の、」

「へぇ、勿体ないなぁ。でも、ではなく、なんだね。ますます君が何者なのか気になるなぁ。私はねーーーーーー」







「強くて美しいものは自分のものにしないと気が済まないんだよ。」





ラドリーはそう言うと、トウヤの左瞼に優しく口付けた。




ゆっくりと唇を離すと、またにこりと微笑んでいる。


が嗅ぎつけたようだから、ここまでだ。またお話ししよう、トウヤくん。」



トウヤが呆然とラドリーの水色の瞳を見ていると、見慣れたが2人の間に伸びてきた。


「ラドリー様、トウヤくんと少し距離が近いようです。離れてください。」


救世主エドガーの再来である。
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