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メラン編
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特訓の場所は中央騎士団の訓練場を借りることになった。
ダニエルに訓練の話をしたところ「さすがに神殿の敷地内での攻撃魔法は・・」と断られてしまったが、代わりに中央騎士団の団長に話をつけてきてくれたのである。さすがダニエル、仕事が早い。
そしてトウヤが後継者ということは騎士団には伏せてもらった。瞳も魔法で薄い朱にしてから向かうつもりだ。神殿内の神官たちには知れ渡っているようだが、外部には漏らさないよう箝口令が敷かれているらしい。トウヤの意思を尊重してくれるダニエル、さすがである。(2回目)
「私が中央騎士団の団長のラドリーです。君が高魔力持ちのトウヤくんだね、よろしく。あとは次期領主の方々とお聞きしました。神官長様からは余計な詮索は無用と通達が来ております・・が、あまり派手に暴れませんよう、お願い致しますね。」
ラドリーは身長がとても高く、ゆるく波打った焦茶色の短い髪がふわふわ揺れる一見優しそうな人だった。しかしダニエルに聞いたところ、それは表の顔で、団員達にはめちゃめちゃ厳しい鬼団長らしい。「騙されてはいけませんよ」と朝ダニエルから耳打ちされたことをトウヤは思い出していた。団長と神官長は知り合いのようだった。
「トウヤです。よ、よろしくお願いします。訓練場をお貸ししていただけるとのことで、とても助かります。あ、ありがとうございます。」
「礼儀正しくてよろしい。では、案内しましょう。今日は第二訓練場をお使いください。団員が何名かおりますが、練習相手に使っていただいても構いませんので。そりゃあ、もうビシバシと。」
水色に近い蒼の瞳でにこりと微笑んだエドガーは優しい顔なのにどこか怖い。トウヤはこの人の前で下手なことは言わないでおこう、と思ったのだった。
案内された訓練場は長方形の高い塀に囲まれたところだった。
障害物になるようなものは何もなく、ただドーンっと広い空間が広がっている。
ラドリーが言ったように訓練場には20人ほどの団員がいたが、ラドリーが入ってきたことに気づくと、ピシッと姿勢を正し、礼をしていた。空気も一緒に正されたようだった。
「ここが第二訓練場です。あちらの団員は第四班の者たちです。練習相手が必要でしたら、遠慮なくお申し出ください。おい、ミュラー!来い。」
ミュラーと呼ばれた団員は、「ハイ!」と大きな返事をして走ってやってきた。
赤みの強い茶髪を一つに束ねた薄い朱目の男だった。身長はフィンと同じくらいである。
「第四班、班長のミュラーです!よろしくお願いします!」
ニカっと笑う姿はどこかアルトを思い出させた。顔は全然似てないが、歯を出して笑うところが似ている。薄い朱の瞳もだ。
トウヤはミュラーに(勝手に)親しみを覚え、「よろしくお願いします」と微笑んだ。その顔にミュラーがピシッと口を閉じ、少し頬を赤くする。それに目敏く気付いたフィンはトウヤの前にズィっと身体を乗り出した。
「トウヤ、練習すんだろ?早くあっちいこうぜ。チッ」
「え?わあ!か、担がないで!そう軽々と担がれると、俺のプライドが!って、聞いてます?!ねえ!」
「トウヤぁ、可愛いのは良いことなんだけど、悪い虫がついてきたらどうするのぉ?・・・まあ、潰すけどね。」
最後は小声でぽそり。タミルの目が笑ってない。これはあまり抵抗すると面倒くさくなるやつだ、とトウヤは大人しく団員がいる場所から離れたところに連行された。
そのトウヤ達の姿をラドリーが興味深そうに見ていたことに気づいたのはエドガーだけだった。
ダニエルに訓練の話をしたところ「さすがに神殿の敷地内での攻撃魔法は・・」と断られてしまったが、代わりに中央騎士団の団長に話をつけてきてくれたのである。さすがダニエル、仕事が早い。
そしてトウヤが後継者ということは騎士団には伏せてもらった。瞳も魔法で薄い朱にしてから向かうつもりだ。神殿内の神官たちには知れ渡っているようだが、外部には漏らさないよう箝口令が敷かれているらしい。トウヤの意思を尊重してくれるダニエル、さすがである。(2回目)
「私が中央騎士団の団長のラドリーです。君が高魔力持ちのトウヤくんだね、よろしく。あとは次期領主の方々とお聞きしました。神官長様からは余計な詮索は無用と通達が来ております・・が、あまり派手に暴れませんよう、お願い致しますね。」
ラドリーは身長がとても高く、ゆるく波打った焦茶色の短い髪がふわふわ揺れる一見優しそうな人だった。しかしダニエルに聞いたところ、それは表の顔で、団員達にはめちゃめちゃ厳しい鬼団長らしい。「騙されてはいけませんよ」と朝ダニエルから耳打ちされたことをトウヤは思い出していた。団長と神官長は知り合いのようだった。
「トウヤです。よ、よろしくお願いします。訓練場をお貸ししていただけるとのことで、とても助かります。あ、ありがとうございます。」
「礼儀正しくてよろしい。では、案内しましょう。今日は第二訓練場をお使いください。団員が何名かおりますが、練習相手に使っていただいても構いませんので。そりゃあ、もうビシバシと。」
水色に近い蒼の瞳でにこりと微笑んだエドガーは優しい顔なのにどこか怖い。トウヤはこの人の前で下手なことは言わないでおこう、と思ったのだった。
案内された訓練場は長方形の高い塀に囲まれたところだった。
障害物になるようなものは何もなく、ただドーンっと広い空間が広がっている。
ラドリーが言ったように訓練場には20人ほどの団員がいたが、ラドリーが入ってきたことに気づくと、ピシッと姿勢を正し、礼をしていた。空気も一緒に正されたようだった。
「ここが第二訓練場です。あちらの団員は第四班の者たちです。練習相手が必要でしたら、遠慮なくお申し出ください。おい、ミュラー!来い。」
ミュラーと呼ばれた団員は、「ハイ!」と大きな返事をして走ってやってきた。
赤みの強い茶髪を一つに束ねた薄い朱目の男だった。身長はフィンと同じくらいである。
「第四班、班長のミュラーです!よろしくお願いします!」
ニカっと笑う姿はどこかアルトを思い出させた。顔は全然似てないが、歯を出して笑うところが似ている。薄い朱の瞳もだ。
トウヤはミュラーに(勝手に)親しみを覚え、「よろしくお願いします」と微笑んだ。その顔にミュラーがピシッと口を閉じ、少し頬を赤くする。それに目敏く気付いたフィンはトウヤの前にズィっと身体を乗り出した。
「トウヤ、練習すんだろ?早くあっちいこうぜ。チッ」
「え?わあ!か、担がないで!そう軽々と担がれると、俺のプライドが!って、聞いてます?!ねえ!」
「トウヤぁ、可愛いのは良いことなんだけど、悪い虫がついてきたらどうするのぉ?・・・まあ、潰すけどね。」
最後は小声でぽそり。タミルの目が笑ってない。これはあまり抵抗すると面倒くさくなるやつだ、とトウヤは大人しく団員がいる場所から離れたところに連行された。
そのトウヤ達の姿をラドリーが興味深そうに見ていたことに気づいたのはエドガーだけだった。
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