【完結】透明の石

N2O

文字の大きさ
上 下
60 / 128
メラン編

60※

しおりを挟む
「んんんん~~んむ、い、息でき・・ぁん、息できなぃ、ぁん、ん、」

「意地張ってねーで、口開けろって。お前が満足するまで魔力くれてやるよ、ほら。」


顔を横に向け、その隙に息を吸おうと試みたが、トウヤは片手で両手を縫い止められ、反対の手で顎をくいっと下げられた。口が思わずぱかっと開き、溜まっていた唾液が垂れそうになる。唾液が落ちる前に、またフィンの少し大きめの口が覆いかぶさった。
フィンの唾液がこれでもか、というぐらい入り込んできて、全身の血が沸騰するような熱さを感じる。意図的に魔力を多く送り込んでいるようだった。

あまりの熱に耐えきれず、壁にもたれかかっていたトウヤの身体はそのままベッドにずり込んでいき、フィンがトウヤに覆いかぶさるような形になる。
トウヤはフィンを足で押して退けようとするが、それに気付いたフィンに足を固定するように太腿で挟まれてしまった。
全身を固定されている。動けなくなってしまった。その体勢が更にトウヤの羞恥心を煽り、声が我慢できなくなる。必死に堪えていた呻き声が、どんどん漏れ出してしまい、更にそれがまた羞恥心を煽る・・・という無限ループが完成してしまったのである。


「ぁ、ぅん、はっ、も、もぅ、ゆ、ゆるしてぇ、ぁん、ん、」

「あ゛?何で謝んだ?お前は別にはしてねーだろ?俺のもんに手ぇ出すあいつらが悪ぃ。・・チッ、そいつにもこの顔見せたんだろ、腹立つ。」

「ん、ん、ま、まりょく、もぅ、ん、いらな、い、ぅん」

「まだだろーが。お前相当な魔力持ちだろ。ほら、もっとやるよ。」



ちゅ、ちゅと顔、首筋に口付けながらトウヤの蕩けた顔を堪能している。フィンも相当な魔力持ちだが、トウヤはそれ以上だということをフィンは知っている。
本人が「もういらない」と言っても、「まだ入る」ことはわかっているのだ。

しばらく口付けをフィンが続けていると、ガチャ、という鍵を開ける音が聞こえた。思考がもはや停止したトウヤには聞こえていないが、フィンの耳には届いた。
そしてコンコンというノックのあと、返事をしないままでいると「トウヤ?まだ寝てるのか?入るぞ」と夕食を持ってきたイーサンが部屋に入ってきたのである。

扉を開けた先の、蕩けた顔のトウヤとそれに覆いかぶさって不敵に笑っているフィンを見て、イーサンは目を見開いた。

持っていたコップを思わず落としてしまい、パリン、という音が部屋に響く。トウヤはその音にビクッと反応し、ゆっくりと音のした方を向いた。
パチっとトウヤとイーサンの視線が合わさる。しかし、トウヤは急に動けない。もう完全に魔力の熱と濃厚な口付けで蕩けてしまっている。

「ん、い、イーサンさま・・・?」


トウヤはどうにか声を絞り出したが、まだぼんやりとしている。
その声を聞いたイーサンから殺気と共にヒュウ、と冷気が漂い始めた。

パキパキとイーサンの足元に霜が降り、凍っていく。


「・・・フィン様、これは・・・合意の上ですか?」

「ハッ!キスマークこれの相手はあんただな?随分とトウヤにご執着のようで。合意ぃ?あんたも合意とって付けたのかよ?あ゛?」

「・・・・・・」

「ほらな!トウヤはお前のもんじゃねぇ。俺のもんだ。魔力譲渡は模様こっちからしろよ。チッ。」

「・・・トウヤは誰のものでもない。本人が決めることだ。あなたも模様から譲渡すればいいだろう。」



お互い一歩も引かない。
イーサンからはどんどん冷気が溢れている。水魔法だけではなく、氷魔法も得意なようだ。
一方フィンからは火の粉が舞い始めた。
まさに一触即発である。


ちょうどその時、扉からひょこっと別の人物が現れた。



「い、イーサン様?トウヤくんの体調は・・・・って、けけけけけ喧嘩はよくありませんーーーーーー!」



瞬時にあの蔓で2人をぐるぐる巻きにする、救世主エドガーの登場である。








しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

カランコエの咲く所で

mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。 しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。 次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。 それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。 だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。 そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

処理中です...