56 / 128
メラン編
56
しおりを挟む
ばら撒かれた角砂糖を拾ったあと、シャロンが入れ直してくれた紅茶を飲み、一旦落ち着いた。アルトはトウヤを見ながら何やら嬉しそうにずっとニヤニヤしている。そんな視線に居た堪れなくなったトウヤはケインの屋敷に置いていた荷物をまとめるため部屋へ向かった。ハンスとタミル、そしてイーサンがついて行く。
フィンはシャロンの出した菓子を頬張り、エドガーはアルトにトウヤの幼少期について詳しく聞きたい(研究者肌)と言いそのまま応接間に残った。
部屋を開けると、この数日で何が?と言うほど散らかっている。ハンスは片付けができない男だった。
「トウヤ~、俺の荷物にお前の物も混ざってるかも~。確認してくれ~。」
「「・・・・・・」」
「ねぇ、ハンスくん。トウヤと一緒の部屋なのぉ?・・もしかしてトウヤと一緒に寝てたのぉ?」
「・・・ぇえ!?違います!違います!お、俺たち田舎もんですから、こ、こんな大きな部屋に一人で寝んの緊張するんですよ!そ、それにベッドとソファで交代で寝てましたよ!な、トウヤ!?」
タミルの思わぬ疑いにハンスが冷や汗をかきながら首を横にぶんぶん振っている。汗が飛び散る勢いだ。同意を求められたトウヤは「そーそー何考えてんだ、タミル」と冷ややかな目をタミルに向けていた。
「ふーん。ならいいけどぉ。・・・いいこと思いついたしぃ。」
「・・・タミル、妙なこと考えるなよ。」
タミルはにこりと微笑んで首をこてんと傾げるだけで返事をしなかった。大体予想はつくが、今夜は厳重に鍵をかけて寝よう、と考えるトウヤだった。
荷物と言っても大した量ではない。着替えの服と替えの靴ぐらいだ。靴は数足持ってきていた。仮にも靴職人見習いだし、靴にはこだわりがある。するとイーサンがトウヤが手に取った一足の靴をじーっと見ている。
「イーサン様?どうかされました?」
「・・・丁寧な造りの靴だな。どこの工房のものだ?」
「え!ほ、本当ですか!嬉しいです。これは俺が仕上げた靴なんです。父さんからはまだまだだ、って言われたんですけど・・イーサン様にそう言ってもらえると自信がつきます!」
「トウヤが?それは驚いた。これだけ素材も良く縫製も丁寧だ。紐の編み上げも珍しいし、私にもいつか作ってくれると嬉しい。」
パァッと花が咲いたようにトウヤは喜んで「もちろんです!」と頷いた。イーサンは魔法といい、靴といい、トウヤのすることをいつも褒めてくれる。トウヤの脳内では、革の色や靴の形の妄想が膨らむ。まあ、デザインはサキにお願いするだろうが。
にこにこ笑顔で荷物を詰めるとイーサンが何も言わずに半分持ってくれた。こういう男がモテるんだろうな、とトウヤは心にメモを取ったのである。
そしてケインの屋敷でたわいもない話をしながら昼食を取った。
そして、アルトからまた抱きしめられ、トウヤは見送られながら神殿へと戻ったのである。
フィンはシャロンの出した菓子を頬張り、エドガーはアルトにトウヤの幼少期について詳しく聞きたい(研究者肌)と言いそのまま応接間に残った。
部屋を開けると、この数日で何が?と言うほど散らかっている。ハンスは片付けができない男だった。
「トウヤ~、俺の荷物にお前の物も混ざってるかも~。確認してくれ~。」
「「・・・・・・」」
「ねぇ、ハンスくん。トウヤと一緒の部屋なのぉ?・・もしかしてトウヤと一緒に寝てたのぉ?」
「・・・ぇえ!?違います!違います!お、俺たち田舎もんですから、こ、こんな大きな部屋に一人で寝んの緊張するんですよ!そ、それにベッドとソファで交代で寝てましたよ!な、トウヤ!?」
タミルの思わぬ疑いにハンスが冷や汗をかきながら首を横にぶんぶん振っている。汗が飛び散る勢いだ。同意を求められたトウヤは「そーそー何考えてんだ、タミル」と冷ややかな目をタミルに向けていた。
「ふーん。ならいいけどぉ。・・・いいこと思いついたしぃ。」
「・・・タミル、妙なこと考えるなよ。」
タミルはにこりと微笑んで首をこてんと傾げるだけで返事をしなかった。大体予想はつくが、今夜は厳重に鍵をかけて寝よう、と考えるトウヤだった。
荷物と言っても大した量ではない。着替えの服と替えの靴ぐらいだ。靴は数足持ってきていた。仮にも靴職人見習いだし、靴にはこだわりがある。するとイーサンがトウヤが手に取った一足の靴をじーっと見ている。
「イーサン様?どうかされました?」
「・・・丁寧な造りの靴だな。どこの工房のものだ?」
「え!ほ、本当ですか!嬉しいです。これは俺が仕上げた靴なんです。父さんからはまだまだだ、って言われたんですけど・・イーサン様にそう言ってもらえると自信がつきます!」
「トウヤが?それは驚いた。これだけ素材も良く縫製も丁寧だ。紐の編み上げも珍しいし、私にもいつか作ってくれると嬉しい。」
パァッと花が咲いたようにトウヤは喜んで「もちろんです!」と頷いた。イーサンは魔法といい、靴といい、トウヤのすることをいつも褒めてくれる。トウヤの脳内では、革の色や靴の形の妄想が膨らむ。まあ、デザインはサキにお願いするだろうが。
にこにこ笑顔で荷物を詰めるとイーサンが何も言わずに半分持ってくれた。こういう男がモテるんだろうな、とトウヤは心にメモを取ったのである。
そしてケインの屋敷でたわいもない話をしながら昼食を取った。
そして、アルトからまた抱きしめられ、トウヤは見送られながら神殿へと戻ったのである。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
315
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる