【完結】透明の石

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メラン編

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歩いて1時間の道も馬車で行けば20分だった。屋敷に向かう途中、魔物に壊されたであろう建物を見るたびトウヤは居た堪れない気持ちになったが、それと同時にやる気も漲ったのである。


屋敷に着くと、全員が出てきた。
生誕祭ぶりに会うケインやシャロンはトウヤの無事を何より喜んでくれた。もちろんケインの抱っこ付きで。
そして、トウヤの後ろからついてきた錚々たる顔ぶれを見て「お前はいつも俺を驚かすなぁ」と苦笑いでトウヤの頭を撫でたのである。シャロンは隣で「また紅茶の出番ですね!」と笑っていた。トウヤも一緒に笑った。

アルトはケインの抱っこの後、トウヤを抱きしめてなかなか離さなかった。マルクルも目に涙を浮かべていたが、ハンスは「なかなか話にこねーから、また何かあったかと思って心配したじゃんかよぉ~」とトウヤの肩を抱き、鼻水を垂らして泣いていた。その後、タミルの視線に気づきピシリと固まるのである。


ケインの屋敷の応接間に入ると見た事のある後ろ姿が目に入った。


「ああーーー!ジャンさん!どうしてここに!ぶ、無事でよかったです!」

「トウヤくん!君も無事でよかった・・ん?瞳の色どうしたんだ?魔法かい?アルトさんから今ここにはいないと聞いていたからてっきり会えないかと・・・会えて嬉しいよ。」

トウヤの頭にポンと手を乗せ、にこりと微笑むジャン。
アルト達と今後の予定を決めるためにたまたま今日訪れていたとのことだった。パッと見た感じでは、大きな怪我もないようだ。トウヤはほっと胸を撫で下ろした。




「ねーえ。この人、誰なのトウヤ。」

「うっわ!タミル!だからいきなり飛びつくなって!この人はメランに来る時に護衛をしてくれた冒険者のジャンさんだよ。お前と同じ黄の属性だってさ。」

「ふーーーん。でも僕よりは弱いでしょ。トウヤ、早くあっち座ろ。」

「コラ!失礼なこと言うなって!ジャンさんすみません・・って、抱きついたまま引っ張んな、ヤメロ!」


値踏みするような目でジャンを見た後、さっさとトウヤを連行していったタミルに呆然とするジャン。背後から「おーおー、嫉妬する男は怖いねぇ」とフィンが揶揄っている。すでに渾沌としてきた場に、トウヤは不安が膨らむのだった。
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