【完結】透明の石

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メラン編

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「みなさん、この前はご心配をおかけしました。えっと、俺、一度屋敷に戻りたいんです。あ、歩いて行きますから。夕方・・いや、夜、には帰ります。で、今後のことなんですけど、」

「待て待て待て。お前一人で街うろつく気か?」

「へ?はい。屋敷までなら道わかりますよ?心配しなくても迷子にはなりません。」

「・・フィン様はそういう意味で言ったのではないと思います、トウヤ様。」

「んえ?」


トウヤはポカンと口を開けている。最初は緊張していた面々だが、もうだいぶ慣れた(現領主2人は別)。てっきり迷子を心配されたかと思ったが、そうではないらしい。(仮にも)後継者になったトウヤの身を案じている、とのことだった。「ちょっとそこまでおつかいに」ぐらいのノリだったトウヤは止められると思っておらず、さて、どうしたものかと表情を曇らせている。
だが、アルトへの説明はトウヤには必須事項であり、先延ばしにもしたくない。一緒に村へ帰りたいが、しばらくは帰れなくなることもさすがにトウヤでも予想できた。そこも踏まえて早めにアルトと話がしたかったのである。

「・・・行ってはいけない、と言っているわけではないよ。トウヤ。一人で行くのはあまり勧められたものじゃない、ということだ。」

「へ?イーサン様、な、なるほど?じゃあ・・・・・誰か一緒に来て・・・くれます・・・か?」

「いいぜ」「もっちろん」「わ、私でよければ!」「一緒に行こう」


「・・・・一人ずつ喋ってもらえます?」

どうやら一人で行くことにはならないようだが、全員が一気に返事をしたのでトウヤは聞き取れなかった。改めて聞き直すと4人それぞれ随行する意思があるらしい。「じゃあ、じゃんけんで」と簡単に言うわけにもいかず、トウヤはさらに頭を悩ませ始めた。すると、ダニエルがポンと自分の手を叩き、こう言ったのである。


「それでは、全員で行ってください。模様のこともありますから、諸々の説明も実際見ていただいた方が良いでしょう。あとで馬車を手配します。トウヤ様、これでよろしいですね?」

随行者を一人に決められないと即座に判断したのかダニエルが有無を言わさず決定事項とした。トウヤは「わかり・・ました?」と事の大きさをあまり飲み込めていなかったがもう決定だ。「さあ、トウヤ様、次の話を」とダニエルにニコニコと急かされ、今後についての話を始めざるを得なかったのである。


さすが神官長、上に立つものは頭の回転が早かった。
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