【完結】透明の石

N2O

文字の大きさ
上 下
41 / 128
メラン編

41

しおりを挟む
『・・・・・・・』

「・・・・いや、俺悪くねーし。」


目を開けるとディーがいた。
そっか、俺また倒れたんだなとトウヤは体を起こしながら状況を理解する。起きた時にフィンから何か言われそうだ。



『まず魔力の調整ができるようになるんだな』

「・・・そうする。毎回倒れてたら話になんねーよ」

『まあ、意識して使う初めての黒の魔法結界にしては上出来だ』

「そ、そうだろぉ~!俺やっぱやればできるやつ・・・って、ああ!ディー!何だよ、あの模様!勝手に魔力吸い取るなんか怖すぎだろ!」

『怖くなんぞないではないか。契約者の魔力を全て奪うわけではない。譲り受ける魔力の量はお前が



自分が決めている、すなわち今回の場合はトウヤが無意識にそれだけの魔力欲していたということだ。
そういえば最初に模様に触れたエドガーからは相当な量を吸い取っていた。
殆ど魔力が残っていなかったから状態と同じだったんだろう。その勢いのままエドガーの魔力を吸い取ってしまったのだ。
新たな課題に頭を抱え唸っているトウヤを見てディーがため息をつく。

『大事なのは想像イメージだ。身体の中に花瓶があると思え。トウヤの花瓶はかなり大きいと思っていい。そこにどれだけ魔力を溜めたいのか具体的に想像すればいいだけだ』

簡単に言うなよ、とトウヤは思う。
魔力は普通体力と同じようにある程度休息をとれば回復する。
トウヤは今まで魔法に頼ることもなかったし、魔力を使いすぎることもなかった。
ましてや魔力譲渡なんぞ今までされたことがなかったのだ。それがここ数日でこの変わり様である。
割と順応性の高いトウヤでもかなり難易度が高い。
何と教え方が大雑把ななのだろう、とトウヤは再び頭を抱えた。


『私もこの魔法模様には世話になった。身体に触って魔力譲渡など時間がかかりすぎるからな。・・ああ、彼奴あやつが言っておった方法は思いつきもしなかったが、試すのも良かろう。何より面白そうだ』

「彼奴?誰のことだ?」

『朱の契約者だ。よほどお前に惚れているのだろう。結構なことだ』


朱ということはフィンのことだ。
フィンが言っていた方法・・・?とトウヤは思い返して、顔を瞬時に赤くさせた。


「んな、な、何いっ・・て!俺は模様これからの譲渡で十分だ!!」

『ほお、初心うぶなものよの。模様と唾液と併用すれば一気に譲渡できるではないか。実に合理的だと思うがな、くくっ』

助言に見せかけて揶揄っている。
そう確信したトウヤは益々顔を赤くさせ叫んだ。




高魔力持ち魔力馬鹿は頭も馬鹿なんじゃねーーーのぉーーーー!」


いつだったか我慢した本音を、夢の中であるが思う存分ぶち撒けたトウヤだったのである。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】帝王様は、表でも裏でも有名な飼い猫を溺愛する

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
 離地暦201年――人類は地球を離れ、宇宙で新たな生活を始め200年近くが経過した。貧困の差が広がる地球を捨て、裕福な人々は宇宙へ進出していく。  狙撃手として裏で名を馳せたルーイは、地球での狙撃の帰りに公安に拘束された。逃走経路を疎かにした結果だ。表では一流モデルとして有名な青年が裏路地で保護される、滅多にない事態に公安は彼を疑うが……。  表も裏もひっくるめてルーイの『飼い主』である権力者リューアは公安からの問い合わせに対し、彼の保護と称した強制連行を指示する。  権力者一族の争いに巻き込まれるルーイと、ひたすらに彼に甘いリューアの愛の行方は? 【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう 【注意】※印は性的表現有ります

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

処理中です...