【完結】透明の石

メラン編

３３

怒涛の質問攻めの前にまずはみんなの無事を確かめたかった。


トウヤはダニエルにその旨を伝えると、一旦集まった要人達を別室に案内し、それと入れ替わりにアルト、ハンス、マルクルを柱の間に通してくれた。



「ああ・・・トウヤ・・トウヤ・・・生きていてくれてありがとう。心配したぞ・・・」

父は涙を浮かべてトウヤを優しく抱きしめた。
トウヤもつられて泣きそうになる。

「父さんも無事でよかった・・・あ！あの子は！？ええっと・・・ミナ！ミナは大丈夫だった？」

「ああ、無事だよ。神殿で母親と合流できた。トウヤが庇って助けてくれた、と。生きた心地がしなかったんだからな。」

優しくコツンと頭を突く。トウヤは「ごめん」と小さく呟いた。



「う゛わぁぁぁあ！ト゛ウ゛ヤ゛～！無事でよかったぁ～！」


親子感動の対面の背後で終始ハンスは鼻水を垂らして泣いていたのである。
ハンスのあまりの泣きっぷりに、トウヤはふふっと笑いを溢した。

「よかった、みんな。無事で本当によかった。・・・あとで全部説明するから。ケイン伯父さんの屋敷で待っててくれる？」

「ああ、もちろんさ。こんな事のあとだ。今日村に帰るのは難しい。メラン滞在を少し延ばすことにしたんだ。ケインも心配してたぞ。早く元気になってくれ。」


アルトはポンポンとトウヤの頭を撫で、「後はよろしくお願いします」とダニエルに礼をして柱の間を出て行った。いつもは怒る扱いだが、さすがに今日はトウヤも怒らなかった。

アルト達が出て行った後、目にたまった涙を袖で拭い去る。
そして両手でパチンと頬を叩き気合いを入れた。


「よっしゃ！ダニエルさん、質問攻め祭りに行きましょう！」


ダニエルは思わずブフッと吹き出していたが、「ん、んふ。わかりました・・質問祭り・・・ふふ」と笑いを堪えながら要人達の待つ部屋へ案内しようとしてくれる。

そしてトウヤは気づくのだーー・・





「ダ、ダニエルさん・・・俺、まだ歩けないみたいです・・・どうしましょう」








この後、「ああ、そんなことですか」と微笑んだダニエルは、ひょいとトウヤをお姫様だっこするとスタスタ歩き出した。あまりの自然な動作にトウヤは「？？？」と理解ができないまま要人達が揃う部屋まで運ばれたのである。


お姫様抱っこで登場したトウヤに唖然とした様子の要人達。
恥ずかしさのあまり、あれだけ気合いを入れたのにも関わらずトウヤはしばらく芋虫のようにうずくまり、何も喋れなかったのであった。