【完結】透明の石

N2O

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メラン編

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目を開けると白と黒だった。



「・・・よお。俺、もしかして死んだ?」

『・・死んでおらぬ。無茶をしおって』



目の前には何やら不機嫌そうなディーが腕組みをしてトウヤを見ている。


「はあ?!だってあれは身体から勝手に出てきたんだよ!お、お陰で、た、助かったみたいだけどさ!何だよ!あれ!」

『・・・あれがだ。お前は魔力がまだ十分に溜まっていないのに、力任せに使ったから・・倒れたのだ』


あの黒い靄がねぇ・・・どうせならもっと見栄えのする色がよかった、とトウヤは思ったが口には出さないでおいた。


「必死だったから・・・訳わかんなかったけど・・。そっか、俺本当に黒の魔法使えるんだな。やっと信じたわ。」

『私があれほど説明したではないか!・・・まあよい。足の傷もその時の魔法で消えておる。結界のほころびも少しは修復できた。・・・魔力は殆ど残っていないがな』

「・・・あれ?じゃあ何でちゃんと人間の形なわけ?俺に魔力貯まってないとモヤモヤ人間になるんじゃなかったの?」

『お前は今中央神殿の中心に寝かされておる。の近くだ。魔力はそこから多少は補える』

「えっ!そ、そんなところに寝かされてんの!?は、恥ずかしい・・・」


トウヤは自分の姿を想像し、恥ずかしさに身を震わせた。


『何馬鹿なことを言っている。こうなったからには、急いでもらうぞ。また魔物が入ってきてからでは遅いのだ』



だって恥ずかしいじゃん・・・とまだ身を震わせているトウヤを無視し、ディーはこれからの話を始めた。
ディーとトウヤの作戦会議の始まりである。







① 朱、蒼、黄、翠の高魔力持ちから魔力を譲渡してもらう

② メランの結界を張り直す

③ イグニス、フラーウム、ヒュドール、シェマフにそれぞれ赴き、結界を張る

④ 結界内に閉じ込めた魔物を浄化、殲滅する

~完~


『私の時には、メランの結界までで終わってしまった。他領地の神殿だけは神官たちが必死に結界を張っているだろうが、国を守るためには街ごと結界を張る方が確実だ。任せたぞ、トウヤ』

「いやいやいやいや、簡単に言うなよ。俺、黒の魔法初心者だぜ。」

『魔力が溜まれば使い方は身体が知っておる。そして、後継者トウヤの誕生に合わせて、各属性選りすぐりの高魔力持ちが生まれているはずだ』

「・・・なんだ、その計画的犯行は・・・」



確かにタミルもフィン様も抜きん出た魔力持ちだと聞いた。
なるほど、こいつの仕業か・・とトウヤは頭を抱えた。

『この襲撃が生誕祭でよかったかもしれぬ。・・お前には少々痛い思いをさせたが。ちょうど要人たちが揃い踏みだろう。話をつけると良い』

「はあ?俺、そんな偉い人ばっかり相手できねーよ!・・ん?タミルは別、いや、フィン様も・・・んん?」

『中央の神官には神託を下しておる。後は任せたぞ、トウヤ』

「はぁぁぁあ?!何勝手に話終わらせてんだ!ちょっ、ま、待てってーー・・」







消えていくディーを必死に追いかけようとするトウヤ。
それを、ふふんと満足げに見下ろしているディーの顔が見えた。



その満足げな顔を最後に、白と黒の世界は強制終了(ディーによって)されたのである。

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