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メラン編
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道路には飴や串焼きが投げ捨てられている。
さっきまであんなに活気と笑い声で溢れていた街が一瞬にして様変わりした。
突然暗くなった空に人々は悲鳴を上げた。
「ま、魔物!?ど、どうしてメランに!黒神様の結界は!?」
「そんなこと言ってる場合じゃない!見ろ!街を襲う気だ!」
「ああ・・・私・・まだ死にたくないわ・・」
悲鳴と怒号が響き渡り、恐怖が伝染していく。
泣き出す子ども、
我先にと人を押し退けてどこかへ逃げようとする大人。
まだ地上に魔物は降りてきていないのに、すでに街は地獄のようだった。
「おい!そこの騎士!お前、中央騎士団のやつだろ?結界が一番強いのはどこだ!」
「あ・・し、神殿と・・お、王城の周辺・・・」
「じゃあ突っ立ってないで、そこにできる限り人を誘導しろ!何のための騎士団だ!」
「は、はい!わかりました、お、おい!警備中の団員へ至急連絡してくれ!」
「あ・・ああ、わ、わかった。」
フィンが警備中だった騎士たちを捕まえ指示を出す。
「くそっ、魔物も見たことがねー中央騎士団が!どうせ碌に闘えもしねーんだろ!」
「まあ、そうだよねぇ。他の領地と違って 中央は魔物入って来ないし。ま、今日初めて入るみたいだけど。」
歴史的な日だねぇ、とタミルはナイフを回しながら呑気なことを言ってる。が、目は笑っていない。
「お、俺もあんなに大きそうなのは初めてだよぉ・・ト、トウヤ!早く逃げようぜ、さっき騎士が言ってただろ!神殿ならここから近いじゃん!」
「・・あ、ああ。そうだな。父さんたちも一緒に連れて行こう。」
「トウヤ、無事か!?ハンスも!何で魔物が・・・!あっちで騎士が神殿に行くように叫んでいたぞ。早くいこう!」
チラッと上空を見ると、空にできた亀裂に頭を突っ込んでいる魔物が目に入った。遥か上空だが、頭だけでもかなり大きいのがわかる。
目を凝らすと空の至る所にひびが入っているようだった。
あれが結界だろう。
俺に結界張れるわけねーじゃんーーー・・・
「ーーーーヤ、トウヤ!ねえ、聞いてる?」
タミルの声に意識を引き戻される。
「あ・・わ、悪い。考えごと・・してて・・」
「ふふ、こんな有事に考えごと?ふふ。トウヤはこんな時でもトウヤだね。でも、急いで逃げて欲しいんだ。さすがにあの数を捌きながら、トウヤ達を守るのは難しそうだし。ね?」
「タミル・・お前も闘うのか・・?」
「当たり前じゃん!僕、こう見えてもとっても強いんだからぁ。魔物もバカだよねぇ。」
「で、でも・・・!」
タミルはおそらく強いのだろう。
しかし、トウヤもあそこまで大きな魔物を見るのは初めてだ。恐怖や不安の方が大きい。
目を泳がせながら、タミルを見る。
すると、タミルの金の瞳がゆらりと揺れた。
「んふふ、ありがとう、トウヤ。心配してくれてるの?僕のこと、心配してくれる人なんてフラーウムにはいなかったから・・嬉しい。」
「な、何言ってんだ!心配ぐらいするだろ!怪我でもしたら・・いや、死ぬかもしれないんだぞ?」
「んー、怪我はするかもしれないけど、それでトウヤが無事・・あ、間違えた。みんなが無事ならいいんじゃない。僕、久しぶりに張り切っちゃう!」
フンッと鼻を鳴らし、胸を叩くタミル。
それでも狼狽えるトウヤ。初めて立場が逆転している。
すると突然後ろからふわりと誰かに抱きしめられた。
「おい、早く逃げろって。このまま抱えていってやろうか?」
「・・・自分で歩けるからいいです、フィン様。」
「んあ゛!ずるい!フィン様!」
「ずるくねーわ!トウヤは俺のもんだ!・・この三つ編みもそれなりに闘えるみてーだし、心配すんなって。な?」
「・・・・怪我しないでくださいね。怪我したら俺、怒りますからね。」
「フィン様!もうそこ退いてください!トウヤ、大丈夫だよ。神殿で待っててね。すぐ迎えに行くから。」
そう言い終えたタミルの唇が、トウヤの左手の甲に押しつけられる。
ちゅっと小さな音を立てて、静かに離れていった。
「愛しい人、守ってみせるからね。」
さっきまであんなに活気と笑い声で溢れていた街が一瞬にして様変わりした。
突然暗くなった空に人々は悲鳴を上げた。
「ま、魔物!?ど、どうしてメランに!黒神様の結界は!?」
「そんなこと言ってる場合じゃない!見ろ!街を襲う気だ!」
「ああ・・・私・・まだ死にたくないわ・・」
悲鳴と怒号が響き渡り、恐怖が伝染していく。
泣き出す子ども、
我先にと人を押し退けてどこかへ逃げようとする大人。
まだ地上に魔物は降りてきていないのに、すでに街は地獄のようだった。
「おい!そこの騎士!お前、中央騎士団のやつだろ?結界が一番強いのはどこだ!」
「あ・・し、神殿と・・お、王城の周辺・・・」
「じゃあ突っ立ってないで、そこにできる限り人を誘導しろ!何のための騎士団だ!」
「は、はい!わかりました、お、おい!警備中の団員へ至急連絡してくれ!」
「あ・・ああ、わ、わかった。」
フィンが警備中だった騎士たちを捕まえ指示を出す。
「くそっ、魔物も見たことがねー中央騎士団が!どうせ碌に闘えもしねーんだろ!」
「まあ、そうだよねぇ。他の領地と違って 中央は魔物入って来ないし。ま、今日初めて入るみたいだけど。」
歴史的な日だねぇ、とタミルはナイフを回しながら呑気なことを言ってる。が、目は笑っていない。
「お、俺もあんなに大きそうなのは初めてだよぉ・・ト、トウヤ!早く逃げようぜ、さっき騎士が言ってただろ!神殿ならここから近いじゃん!」
「・・あ、ああ。そうだな。父さんたちも一緒に連れて行こう。」
「トウヤ、無事か!?ハンスも!何で魔物が・・・!あっちで騎士が神殿に行くように叫んでいたぞ。早くいこう!」
チラッと上空を見ると、空にできた亀裂に頭を突っ込んでいる魔物が目に入った。遥か上空だが、頭だけでもかなり大きいのがわかる。
目を凝らすと空の至る所にひびが入っているようだった。
あれが結界だろう。
俺に結界張れるわけねーじゃんーーー・・・
「ーーーーヤ、トウヤ!ねえ、聞いてる?」
タミルの声に意識を引き戻される。
「あ・・わ、悪い。考えごと・・してて・・」
「ふふ、こんな有事に考えごと?ふふ。トウヤはこんな時でもトウヤだね。でも、急いで逃げて欲しいんだ。さすがにあの数を捌きながら、トウヤ達を守るのは難しそうだし。ね?」
「タミル・・お前も闘うのか・・?」
「当たり前じゃん!僕、こう見えてもとっても強いんだからぁ。魔物もバカだよねぇ。」
「で、でも・・・!」
タミルはおそらく強いのだろう。
しかし、トウヤもあそこまで大きな魔物を見るのは初めてだ。恐怖や不安の方が大きい。
目を泳がせながら、タミルを見る。
すると、タミルの金の瞳がゆらりと揺れた。
「んふふ、ありがとう、トウヤ。心配してくれてるの?僕のこと、心配してくれる人なんてフラーウムにはいなかったから・・嬉しい。」
「な、何言ってんだ!心配ぐらいするだろ!怪我でもしたら・・いや、死ぬかもしれないんだぞ?」
「んー、怪我はするかもしれないけど、それでトウヤが無事・・あ、間違えた。みんなが無事ならいいんじゃない。僕、久しぶりに張り切っちゃう!」
フンッと鼻を鳴らし、胸を叩くタミル。
それでも狼狽えるトウヤ。初めて立場が逆転している。
すると突然後ろからふわりと誰かに抱きしめられた。
「おい、早く逃げろって。このまま抱えていってやろうか?」
「・・・自分で歩けるからいいです、フィン様。」
「んあ゛!ずるい!フィン様!」
「ずるくねーわ!トウヤは俺のもんだ!・・この三つ編みもそれなりに闘えるみてーだし、心配すんなって。な?」
「・・・・怪我しないでくださいね。怪我したら俺、怒りますからね。」
「フィン様!もうそこ退いてください!トウヤ、大丈夫だよ。神殿で待っててね。すぐ迎えに行くから。」
そう言い終えたタミルの唇が、トウヤの左手の甲に押しつけられる。
ちゅっと小さな音を立てて、静かに離れていった。
「愛しい人、守ってみせるからね。」
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