【完結】透明の石

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メラン編

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「・・え、なに、幻?」

思わずトウヤの口から言葉が溢れた。
燃えるような朱い瞳、短めの橙みのある茶髪、引き締まった体躯の男。
目の前に故郷の次期領主様が立っている。


「俺のことか?幻じゃねーよ。お前中央メランかこのフラーウム三つ編みんとこの奴か?知らねーだろうが、俺はイグニスのフィンだ。」

「あ・・・いや、知ってます。俺もイグニス領民なので・・フィン様。」

「あん?うちんとこの領民か。・・益々意味がわからん。おい、三つ編み。獲物こいつじゃねーのか?それともそっちのひょろ長い方が?」

ひょろ長い方(失礼極まりない)、とフィンに指をさされたハンスは両手を胸の前でぶんぶんと振っている。



「・・・フィン様、トウヤにちょっかいかけるのであれば、僕、容赦しませんよ・・・」



タミルがそう言った瞬間。
ビリビリっと、周りに電流の帯が走った。
トウヤの身体には、電流が流れないようにしているらしい。
だが、周りにいたハンスやアルトは逃げ回っている。胸元にいるタミルを盗み見ると、目が本気だ。
金色の瞳にぱちぱちと金色の火花のようなものまで見える。


そんなタミルを見て、フィンは嬉しそうに笑い始めた。

「ッハ、願ってもないね!一度手合わせしてみたかったんだ。こんななよなよしたガキが俺より魔力が上だと?笑わせる。かかってこいや!」

噂通りの破天荒クレイジーである。
楽しそうに笑うフィンの周りには、朱い火の粉が舞い始めた。

逃げ回っていた誰もが、このままではやばいぞーーー・・!と思った瞬間。




「喧嘩は他所でやれ!!!!こんの馬鹿どもが!!!!」




トウヤの渾身の叫び声が響き渡り、そのあまりの剣幕に黄金と朱の魔力を帯びていた2人の動きがぴたりと止まった。






「・・あ、やべ。つい本音が」と呟いた頃にはもう遅い。






「・・んふ・・・プハッ!次期領主僕たちに馬鹿だって!やっぱりトウヤ最高~~~!あはは!大好き~!」


出会った時と同じように笑い出すタミルと、「この俺に、馬鹿って言ったか、こいつ?」と状況を飲み込めないフィン。



何とも言えない沈黙とタミルの笑い声はしばらく続いたのであった。






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