16 / 128
メラン編
16
しおりを挟む
「目印付けといて、良かったぁ。んふふ。」
バルコニーからようやく下がることができた。
王宮の大理石の廊下を少年が騎士と歩いている。
「本当にお人好しなんだよ、トウヤは。僕の言うこと聞いてちゃあんと腕輪してるし。はぁ~、悪い人に捕まらないか僕心配になっちゃう。」
もうすでに捕まっているのでは?と思いつつ、口に出さないのはダスールだ。
「・・あの腕輪、特殊な魔力を込めましたね?トウヤ殿をあまり困らせてはいけません、タミル様。」
「別にトウヤを取って食ったりしないよぉー・・」
まだね、と心の中でタミルは呟いた。
御目見の後、タミル達各領地の要人は応接間に集まるよう声が掛かった。
楕円の、それはそれは巨大なテーブルに椅子が十数脚並べられている。
椅子には各領地の色の装飾布が掛けられており、タミルは金色の装飾布のある椅子に座った。
まだ全員揃っていないようだ。
両肘をテーブルに突き、脚をぶらんぶらんさせて、「早く自由な時間ちょうだいよ~」と心の中で駄々をこねていた時。
「おい、お前。三つ編みの。」
斜め前に座る人物から突然話しかけられた。
タミルは目線だけそちらに送り、瞳の色を確認する。
そこには燃えるような朱い瞳があった。
「・・・なんですかぁ、フィン、様?僕に何か御用ですかぁ?」
「お前、さっき魔力抑えきれてなかったぞ。何かいたのか?魔物なんかいなかったぞ。」
「魔物なんていなかったですよ。ちょっと別の獲物が来てたので。お気になさらないでくださぁい。」
「別の獲物・・ねぇ、お前ほどの魔力持ちがコントロール出来ない獲物には興味あるなぁ・・・」
そう言ってニヤリと口角をあげるイグニス次期領主に、げぇ、と嫌そうな顔を隠そうともしないタミル。
そうだった、フィン頭おかしいんだった、とタミルは嫌そうにため息をついた。
その後すぐに王、そして要人達が集まりタミルはフィンのニヤニヤした視線から逃れられたのである。
王の話を聞き流しながら、タミルは周りの人間を観察する。
イグニスからは、フィン
ヒュドールからは、現領主と、次期領主
シェマフからは、現領主と、次期領主
それぞれの後ろには騎士が控えている。
あと数名、神官が付いてきている領地もあるようだ。
フラーウムからも神官が2人ついて来ている。
「僕より歳上のおっさんしかいないじゃん、面白くないなぁ」と心の中で悪態を突きつつ、このつまらない会議が終われば、あとは明日の帰り際にまた王宮に集まればいいだけだ。
もうすぐトウヤに会いに行ける!と手のひらを返したように今度はニヤニヤが止まらなくなるタミルであった。
「・・・なんか背筋がぞくぞくする。」
「えぇ~風邪かよ~!・・あ!あとで風邪に効きそうな飯、食いに行こうぜ!」
「どんな飯だよ・・・」
「おーい、屋台そろそろ開けるぞ~!愛想振りまけよ~!」
「「へーーい!」」
生誕祭が始まった。
バルコニーからようやく下がることができた。
王宮の大理石の廊下を少年が騎士と歩いている。
「本当にお人好しなんだよ、トウヤは。僕の言うこと聞いてちゃあんと腕輪してるし。はぁ~、悪い人に捕まらないか僕心配になっちゃう。」
もうすでに捕まっているのでは?と思いつつ、口に出さないのはダスールだ。
「・・あの腕輪、特殊な魔力を込めましたね?トウヤ殿をあまり困らせてはいけません、タミル様。」
「別にトウヤを取って食ったりしないよぉー・・」
まだね、と心の中でタミルは呟いた。
御目見の後、タミル達各領地の要人は応接間に集まるよう声が掛かった。
楕円の、それはそれは巨大なテーブルに椅子が十数脚並べられている。
椅子には各領地の色の装飾布が掛けられており、タミルは金色の装飾布のある椅子に座った。
まだ全員揃っていないようだ。
両肘をテーブルに突き、脚をぶらんぶらんさせて、「早く自由な時間ちょうだいよ~」と心の中で駄々をこねていた時。
「おい、お前。三つ編みの。」
斜め前に座る人物から突然話しかけられた。
タミルは目線だけそちらに送り、瞳の色を確認する。
そこには燃えるような朱い瞳があった。
「・・・なんですかぁ、フィン、様?僕に何か御用ですかぁ?」
「お前、さっき魔力抑えきれてなかったぞ。何かいたのか?魔物なんかいなかったぞ。」
「魔物なんていなかったですよ。ちょっと別の獲物が来てたので。お気になさらないでくださぁい。」
「別の獲物・・ねぇ、お前ほどの魔力持ちがコントロール出来ない獲物には興味あるなぁ・・・」
そう言ってニヤリと口角をあげるイグニス次期領主に、げぇ、と嫌そうな顔を隠そうともしないタミル。
そうだった、フィン頭おかしいんだった、とタミルは嫌そうにため息をついた。
その後すぐに王、そして要人達が集まりタミルはフィンのニヤニヤした視線から逃れられたのである。
王の話を聞き流しながら、タミルは周りの人間を観察する。
イグニスからは、フィン
ヒュドールからは、現領主と、次期領主
シェマフからは、現領主と、次期領主
それぞれの後ろには騎士が控えている。
あと数名、神官が付いてきている領地もあるようだ。
フラーウムからも神官が2人ついて来ている。
「僕より歳上のおっさんしかいないじゃん、面白くないなぁ」と心の中で悪態を突きつつ、このつまらない会議が終われば、あとは明日の帰り際にまた王宮に集まればいいだけだ。
もうすぐトウヤに会いに行ける!と手のひらを返したように今度はニヤニヤが止まらなくなるタミルであった。
「・・・なんか背筋がぞくぞくする。」
「えぇ~風邪かよ~!・・あ!あとで風邪に効きそうな飯、食いに行こうぜ!」
「どんな飯だよ・・・」
「おーい、屋台そろそろ開けるぞ~!愛想振りまけよ~!」
「「へーーい!」」
生誕祭が始まった。
9
お気に入りに追加
350
あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

カランコエの咲く所で
mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。
しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。
次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。
それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。
だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。
そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる