【完結】透明の石

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メラン編

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付けといて、良かったぁ。んふふ。」


バルコニーからようやく下がることができた。
王宮の大理石の廊下を少年タミルが騎士と歩いている。


「本当にお人好しなんだよ、トウヤは。僕の言うこと聞いてちゃあんと腕輪してるし。はぁ~、悪い人に捕まらないか僕心配になっちゃう。」

もうすでに捕まっているのでは?と思いつつ、口に出さないのはダスールだ。

「・・あの腕輪、特殊な魔力を込めましたね?トウヤ殿をあまり困らせてはいけません、タミル様。」

「別にトウヤを取って食ったりしないよぉー・・」

まだね、と心の中でタミルは呟いた。





御目見の後、タミル達各領地の要人は応接間に集まるよう声が掛かった。

楕円の、それはそれは巨大なテーブルに椅子が十数脚並べられている。

椅子には各領地の色の装飾布が掛けられており、タミルは金色の装飾布のある椅子に座った。

まだ全員揃っていないようだ。


両肘をテーブルに突き、脚をぶらんぶらんさせて、「早く自由な時間ちょうだいよ~」と心の中でいた時。


「おい、お前。三つ編みの。」


斜め前に座る人物から突然話しかけられた。
タミルは目線だけそちらに送り、瞳の色を確認する。
そこには燃えるような朱い瞳があった。



「・・・なんですかぁ、フィン、様?僕に何か御用ですかぁ?」

「お前、さっき魔力抑えきれてなかったぞ。何かいたのか?魔物なんかいなかったぞ。」

「魔物なんていなかったですよ。ちょっと別のが来てたので。お気になさらないでくださぁい。」

「別の・・ねぇ、お前ほどの魔力持ちがコントロール出来ない獲物には興味あるなぁ・・・」

そう言ってニヤリと口角をあげるイグニス次期領主フィンに、げぇ、と嫌そうな顔を隠そうともしないタミル。

そうだった、フィンこいつ頭おかしいんだった、とタミルは嫌そうにため息をついた。


その後すぐに王、そして要人達が集まりタミルはフィンのニヤニヤした視線から逃れられたのである。


王の話を聞き流しながら、タミルは周りの人間を観察する。

イグニスからは、フィンニヤけ野郎

ヒュドールからは、現領主ラクランと、次期領主イーサン

シェマフからは、現領主フリップと、次期領主エドガー


それぞれの後ろには騎士が控えている。
あと数名、神官が付いてきている領地もあるようだ。
フラーウムうちからも神官が2人ついて来ている。


「僕より歳上のおっさんしかいないじゃん、面白くないなぁ」と心の中で悪態を突きつつ、このつまらない会議が終われば、あとは明日の帰り際にまた王宮ここに集まればいいだけだ。




もうすぐトウヤに会いに行ける!と手のひらを返したように今度はニヤニヤが止まらなくなるタミルであった。








「・・・なんか背筋がぞくぞくする。」

「えぇ~風邪かよ~!・・あ!あとで風邪に効きそうな飯、食いに行こうぜ!」

「どんな飯だよ・・・」

「おーい、屋台そろそろ開けるぞ~!愛想振りまけよ~!」


「「へーーい!」」



生誕祭が始まった。




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