【完結】透明の石

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メラン編

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あのの後。


トウヤが力の限り、どう足掻いても離れなかったタミルに負け(実は熊だろ)、仕方なくアルト達の待つ屋台へ一緒に戻った。


「あいつらどこほっつき歩いてんだ」と怒り始めていた父親達は、息子2人+美少年+フラーウムの騎士数人の予期せぬ帰宅に、しばらく開いた口が塞がらなかった。


騒ぎを聞きつけたケインが登場すると、さすがのケインも驚いた様子。

そしてトウヤにへばり付いて離れない美少年を見ると、さらに目を見開いた。


「フラーウム次期領主様!な、何故このようなところに!ええ・・と、とにかく奥に部屋があります。そちらにお越しください。」


その体格が表す通り、どすん、といつも構えているケインのあの慌てっぷり。


そしてフラーウム次期領主だと?





「・・・なぁ。お前まず自己紹介しろよ。」


トウヤが無礼覚悟でそう言うと、タミルはパァっと嬉しそうに自分のことを話し始めた。




「僕、フラーウムのタミル!歳は15で、男の子でーす。王城に呼ばれたんだけど、長旅で疲れちゃって。でもトウヤに出会えたから、僕明日からも頑張れそう。」

えへへ、とトウヤの背中にぐりぐり頭を擦り付けている。


「トウヤ、次期領主だからって僕に敬語使わないでね?寂しくなって、暴れちゃうかも!ね?お願い!」

「・・・・・」

「・・・トウヤ殿、申し訳ございません。主がそう言っておりますので・・どうぞよろしくお願いします。」

「・・・わかった。」




タミル一行は、ケイン商会が取り扱う中でも最上級の紅茶を飲んだ後、「嫌だぁ。トウヤの家に泊まるのぉ」と駄々をこねるタミルに呆然としていたが、


「俺、聞き分けのねーやつ、嫌い。」


と一刀両断したトウヤの言葉に救われ、何とかタミルを連れて王城に向かっていった。

別れ際、タミルは自分の左腕にはめていた金の細い腕輪を目にも止まらぬ早さでトウヤの腕にはめた。

美しい金の腕輪には何やら細かい装飾が施されている。



「トウヤにあげる。・・・僕の許可なく外したら、僕、何するか分かんないからねぇ。」


天使の顔でタミルは笑った。


そうは言われてもやたら高級そうな代物に、すぐ外して返そうと試みたトウヤだが、タミルのその美しい金の瞳が笑っていないことに気づき、静かに頷くことしかできなかったのである。





こうして、ようやく訪れた身内だけの時間。

ケインの屋敷に帰る道中の話題はもっぱらあの美少年のことだった。



「トウヤ、お前・・・タミル様に何したんだ。」

「何もしてねぇよ・・・」

「いやいや、一瞬匿おうとしたのがダメだったんだってぇ。何だよ、あの押しの強さ。権力者こえぇ~よ~」

「・・・いや!しかし見方を変えればこれで私たちの工房とフラーウムとの繋がりができたと言うこと!トウヤくん!ぜひとも仲良くして差し上げなさい!」

「・・・まあ、それもそうだな!トウヤ、前向きに行こう!タミル様も悪いようにはしないさ!」


前向き男は昔も今も健在だった。
父親達の言葉に、トウヤは深い深いため息をつく。


そして2日目のメラン生活がやっと終わった。




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