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メラン編
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ーー・・何か身体がふわふわする。
雲を触ったことないけど、直接触ったらこんな感じなのかな、とぼんやり思うぐらい意識がはっきりしない。
しかも・・・ここはどこだ。
目の前に大きな黒い柱が見える。
足元を見ると、柱とは正反対で雪のように真っ白だった。
見渡す限り、柱以外のものは見当たらない。
黒と白の世界だった。
これはーー・・・夢?
キョロキョロと周りを見渡していると、黒い柱の後ろから、何かがふわりと出てきた。
人のようにも見えるが、全体的に靄がかかっている。
俺は、思わず後退る。
人間か?それともーー・・・
恐怖と混乱と不安が入り混じり、俺の眉間に深い皺が寄る。
とりあえず走って逃げよう、そう踵を返した時だった。
『・・ーーーーて。』
『・・う・・く、・・た。・・・ぎ・・よ。』
黒い靄が何か言っている。
「・・・ここはどこだ。俺はあんたに用事はない。みんなのとこに帰してくれ。」
『・ま・・た・・来る。』
このモヤモヤ、今、来ると言ったか?
もう来なくていい!と叫ぼうとした瞬間。
その黒い靄が辺り一面に広がって、トウヤの目の前が真っ黒になった。
ようやく、目を覚ましたのだ。
白くて綺麗な天井が目に入り、ああ、俺んちじゃなかったんだった、とトウヤが理解するまで3分はかかった。
トウヤは朝弱いのだ。
いつも起きてしばらくはぼんやりしている。
「何か嫌な夢見た気がする・・・」
「・・んあ?もう朝か?トウヤ、おはよぉ~・・・って、意識あるぅ?」
「・・・・・・おはよ。」
そうだった、ハンスと同じ部屋だった、とトウヤは思い出す。
ベッドは一つしか無いので、一日交代でベッドを使うことにした。
もう一人は大きめのソファだ。
寝心地に何ら問題はない。
昨夜は、じゃんけんの結果トウヤがソファになった。
夢は気になるが・・・あまり思い出せない。
思い出せないことを考えたって仕方ない。
トウヤはさっさと頭を切り替えて身支度を始めた。
身支度を整えて食堂に向かうと、大人たちはもう揃っていた。
新聞を読みながらも、こちらに気付いた器用なケインがニカっと歯を出して笑う。
「おう!おはよう。よく眠れたか?今日も働いてもらうぞ~。さあ、朝食を食べなさい。」
「おはようございます、お二人とも。ソファは寝辛く無かったですか?もう一つ部屋使ってもいいですからね?」
「おはよーございます。ソファでもガッツリ寝ましたよ、俺。今夜はハンスがソファだけど、こいつは尚更大丈夫なんで。ありがとうございます。」
「ええ、ええ?俺のことなんだと思ってんのぉ?大丈夫だけどさぁ。」
新鮮なサラダを目の前に、今日も不毛なやりとりをする。
メラン2日目が始まった。
雲を触ったことないけど、直接触ったらこんな感じなのかな、とぼんやり思うぐらい意識がはっきりしない。
しかも・・・ここはどこだ。
目の前に大きな黒い柱が見える。
足元を見ると、柱とは正反対で雪のように真っ白だった。
見渡す限り、柱以外のものは見当たらない。
黒と白の世界だった。
これはーー・・・夢?
キョロキョロと周りを見渡していると、黒い柱の後ろから、何かがふわりと出てきた。
人のようにも見えるが、全体的に靄がかかっている。
俺は、思わず後退る。
人間か?それともーー・・・
恐怖と混乱と不安が入り混じり、俺の眉間に深い皺が寄る。
とりあえず走って逃げよう、そう踵を返した時だった。
『・・ーーーーて。』
『・・う・・く、・・た。・・・ぎ・・よ。』
黒い靄が何か言っている。
「・・・ここはどこだ。俺はあんたに用事はない。みんなのとこに帰してくれ。」
『・ま・・た・・来る。』
このモヤモヤ、今、来ると言ったか?
もう来なくていい!と叫ぼうとした瞬間。
その黒い靄が辺り一面に広がって、トウヤの目の前が真っ黒になった。
ようやく、目を覚ましたのだ。
白くて綺麗な天井が目に入り、ああ、俺んちじゃなかったんだった、とトウヤが理解するまで3分はかかった。
トウヤは朝弱いのだ。
いつも起きてしばらくはぼんやりしている。
「何か嫌な夢見た気がする・・・」
「・・んあ?もう朝か?トウヤ、おはよぉ~・・・って、意識あるぅ?」
「・・・・・・おはよ。」
そうだった、ハンスと同じ部屋だった、とトウヤは思い出す。
ベッドは一つしか無いので、一日交代でベッドを使うことにした。
もう一人は大きめのソファだ。
寝心地に何ら問題はない。
昨夜は、じゃんけんの結果トウヤがソファになった。
夢は気になるが・・・あまり思い出せない。
思い出せないことを考えたって仕方ない。
トウヤはさっさと頭を切り替えて身支度を始めた。
身支度を整えて食堂に向かうと、大人たちはもう揃っていた。
新聞を読みながらも、こちらに気付いた器用なケインがニカっと歯を出して笑う。
「おう!おはよう。よく眠れたか?今日も働いてもらうぞ~。さあ、朝食を食べなさい。」
「おはようございます、お二人とも。ソファは寝辛く無かったですか?もう一つ部屋使ってもいいですからね?」
「おはよーございます。ソファでもガッツリ寝ましたよ、俺。今夜はハンスがソファだけど、こいつは尚更大丈夫なんで。ありがとうございます。」
「ええ、ええ?俺のことなんだと思ってんのぉ?大丈夫だけどさぁ。」
新鮮なサラダを目の前に、今日も不毛なやりとりをする。
メラン2日目が始まった。
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