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「俺、浄化得意なんで」とノクスの小ぶりな尻と腹に手をかざし、無詠唱で魔法を使ったのは、他でもない狼の獣人キイチである。
身体の隅から隅を撫で回すように洗われたノクスは、恐らく自分よりも年下の男にそんなことをされた羞恥心で全身が林檎くらい赤くなった気がしていたが、恥ずかしさで碌に自分の身体も見ることができないまま、またベッドに戻ってきた。
「ねえ、ノクスさん。こんなことするの初めて?それともしたことある?」
「あ゛、んんっ、なん、で、そんなこと・・・あっ、」
「いいから答えて。」
「ひゃっ、は、初めて!初めてだか、ら、もう・・・ち、乳首舐めんなぁ・・・っ、」
「・・・ひゃだ(やだ)。」
「~~っ、ああっ!」
ぱくり、と飴玉を食べるかのようにノクスの薄い桃色の乳首を口に含むキイチ。
風呂から出て、必死に身体を隠そうと服を手に取ったが、さも当然のように、下穿き一枚だけしか履かせてもらえなかったノクス。
同じく下穿き一枚のキイチとのあまりの体格差に愕然とするが、それを引き摺る余裕なんてなかった。
性欲も薄いし、恋人も今までいなかったのだから、こういうことはド素人もいいところなのだ。
繰り返される甘い甘いキスや愛撫に、どうしていいのかわからない。
嫌悪感なんてものは全くなく、ただ、ただ、気持ちがいい。
身体が自分のものではないみたいに。
それが少し、怖い。
「好き・・・っ、好きです、ノクスさん・・・可愛い、好き、大好き。」
「も、黙っとけよぉ・・・っ、」
「俺の恋人になってくれる・・・?ねぇ、ノクスさんは俺のこと好き?こっち見て、」
「~~っ、そ、んなこと急に言われて、も・・・っ、」
「・・・じゃあ俺のこと、嫌?もう、やめたい?」
「・・・えっ、」
優しく、優しくノクスの頭を撫でていた手がぴたりと止まる。
密着していた身体も離れ、すぅーっと、二人の間に空気が流れ込むようだった。
何故か唇を避けるように繰り返されていたキスもぱたりと止まって、ノクスの身体の中で疼く熱がどんどん内に篭っていく。
「俺もこういうことするの初めてなんですけど、ノクスさんが最初で最後の相手になるんで。でもノクスさんが嫌なら、」
「・・・・・・・・・・・・い、て」
「え?」
「だ、だから!!!嫌じゃねぇーって、ば!恋人も、番になりたい奴も今まで居なかったんだよ!急に、こ、こんなっ、」
ぽぽぽ、っとまたノクスの顔が赤くなる。
必死にその赤い顔を隠そうとするが、下を向くと、自分が下穿き一枚のほぼ裸なのが目に入ってしまい、とうとうカチリ、と動きが固まってしまった。
その一通りの動きを見ていたキイチは、自分の中心に熱が集まるのが分かった。
が、ノクスを怖がらせないためにも、ふぅーっと小さく息を吐き、自分を抑えようと必死である。
「・・・ノクスさん、俺のこと好きになってくれる?」
キイチはきゅっと優しくノクスの身体を抱きしめた。
どくん、どくん、とお互いの心臓の音が伝わってくる。
息を吸うと、その甘い香りが自分達の身体に染み混んでくるようだった。
「・・・・・・お前、元は獣人じゃないんだろ?何でそんなに落ち着いてられるんだよ。」
「?番とかはよく分かってなかったですけど、要は相手のことが猛烈に好きになるってことですよね。」
「・・・んー・・・ま、まあ?そ、そうだな?」
「最高じゃないっすか。」
「は?」
「?だって会った瞬間ももうすでに大好きなのに、これから一緒に居て、お互いのこと知ってもっともっと好きになるってことでしょ?楽しいに決まってます。」
「・・・・・・ふはっ、あははっ、そうか。そうだな。」
「・・・!笑った・・・可愛い・・・!!!」
「可愛い言うな。」
「何でですか?可愛いんですもん。もっと笑ってください。・・・・・・あ、もちろん俺の前だけでいいんで。」
「ふっ、ふふ、お前、面白いな。」
「・・・キイチ。」
「・・・?」
「キイチ、って呼んでください。」
ぶす、と口を上に曲げ、自分の膝の上に乗せているノクスを見つめ始めるキイチ。
会ってから一度たりとも(そんなに時間は経ってないが)名前を呼んでくれないノクスに痺れを切らしたらしい。
ノクスはそんなキイチの顔を見て、またくすくすと笑い始めた。
「・・・実はまだまだ餓鬼だろ、お前。」
「・・・・・・18歳です。」
「はぁぁあ?!俺の十個下じゃねーか!!!」
「歳なんて関係ないです!!ほらっ、ノクスさん!!な・ま・え!!!」
「・・・ふはっ、可愛いな。・・・キイチ。俺も好きだよ。」
「~~~っ!!俺の方がもっと好きです!!!!ノクスさん!!大好き!!」
耳と尻尾がぴーーーーん、と立ったかと思ったら、尻尾なんかぶんぶん横に大揺れだ。
目は喜びでキラキラ輝いていて、キイチは力一杯ノクスを抱きしめる。
「んふ、ふふふ、おもしれぇな、キイチ。」
「面白いだけじゃないっすよ!それなりにそういうことに興味はあったんで、知識だけは豊富ですから!じゃ、ノクスさん♪いただきまーーーす!」
「はっ?え、ちょ、ま、」
「待ちませーーーん!」
ぼすん!とベッドに押し付けられ、ノクスの視界はキイチの顔のドアップで埋まった。
「はぁ・・・よく我慢した、俺。ここにも、キスしていいですよね?ノクスさん。」
ペロリ、と舌舐めずりをしながら、人差し指でノクスの唇に触れるキイチ。
黒い耳と尻尾に生えた細かな毛がぶわり、と広がるような、鳥肌にも似た感覚を覚えたノクスは、少し考えた後、こくり、と静かに頷いたのだった。
身体の隅から隅を撫で回すように洗われたノクスは、恐らく自分よりも年下の男にそんなことをされた羞恥心で全身が林檎くらい赤くなった気がしていたが、恥ずかしさで碌に自分の身体も見ることができないまま、またベッドに戻ってきた。
「ねえ、ノクスさん。こんなことするの初めて?それともしたことある?」
「あ゛、んんっ、なん、で、そんなこと・・・あっ、」
「いいから答えて。」
「ひゃっ、は、初めて!初めてだか、ら、もう・・・ち、乳首舐めんなぁ・・・っ、」
「・・・ひゃだ(やだ)。」
「~~っ、ああっ!」
ぱくり、と飴玉を食べるかのようにノクスの薄い桃色の乳首を口に含むキイチ。
風呂から出て、必死に身体を隠そうと服を手に取ったが、さも当然のように、下穿き一枚だけしか履かせてもらえなかったノクス。
同じく下穿き一枚のキイチとのあまりの体格差に愕然とするが、それを引き摺る余裕なんてなかった。
性欲も薄いし、恋人も今までいなかったのだから、こういうことはド素人もいいところなのだ。
繰り返される甘い甘いキスや愛撫に、どうしていいのかわからない。
嫌悪感なんてものは全くなく、ただ、ただ、気持ちがいい。
身体が自分のものではないみたいに。
それが少し、怖い。
「好き・・・っ、好きです、ノクスさん・・・可愛い、好き、大好き。」
「も、黙っとけよぉ・・・っ、」
「俺の恋人になってくれる・・・?ねぇ、ノクスさんは俺のこと好き?こっち見て、」
「~~っ、そ、んなこと急に言われて、も・・・っ、」
「・・・じゃあ俺のこと、嫌?もう、やめたい?」
「・・・えっ、」
優しく、優しくノクスの頭を撫でていた手がぴたりと止まる。
密着していた身体も離れ、すぅーっと、二人の間に空気が流れ込むようだった。
何故か唇を避けるように繰り返されていたキスもぱたりと止まって、ノクスの身体の中で疼く熱がどんどん内に篭っていく。
「俺もこういうことするの初めてなんですけど、ノクスさんが最初で最後の相手になるんで。でもノクスさんが嫌なら、」
「・・・・・・・・・・・・い、て」
「え?」
「だ、だから!!!嫌じゃねぇーって、ば!恋人も、番になりたい奴も今まで居なかったんだよ!急に、こ、こんなっ、」
ぽぽぽ、っとまたノクスの顔が赤くなる。
必死にその赤い顔を隠そうとするが、下を向くと、自分が下穿き一枚のほぼ裸なのが目に入ってしまい、とうとうカチリ、と動きが固まってしまった。
その一通りの動きを見ていたキイチは、自分の中心に熱が集まるのが分かった。
が、ノクスを怖がらせないためにも、ふぅーっと小さく息を吐き、自分を抑えようと必死である。
「・・・ノクスさん、俺のこと好きになってくれる?」
キイチはきゅっと優しくノクスの身体を抱きしめた。
どくん、どくん、とお互いの心臓の音が伝わってくる。
息を吸うと、その甘い香りが自分達の身体に染み混んでくるようだった。
「・・・・・・お前、元は獣人じゃないんだろ?何でそんなに落ち着いてられるんだよ。」
「?番とかはよく分かってなかったですけど、要は相手のことが猛烈に好きになるってことですよね。」
「・・・んー・・・ま、まあ?そ、そうだな?」
「最高じゃないっすか。」
「は?」
「?だって会った瞬間ももうすでに大好きなのに、これから一緒に居て、お互いのこと知ってもっともっと好きになるってことでしょ?楽しいに決まってます。」
「・・・・・・ふはっ、あははっ、そうか。そうだな。」
「・・・!笑った・・・可愛い・・・!!!」
「可愛い言うな。」
「何でですか?可愛いんですもん。もっと笑ってください。・・・・・・あ、もちろん俺の前だけでいいんで。」
「ふっ、ふふ、お前、面白いな。」
「・・・キイチ。」
「・・・?」
「キイチ、って呼んでください。」
ぶす、と口を上に曲げ、自分の膝の上に乗せているノクスを見つめ始めるキイチ。
会ってから一度たりとも(そんなに時間は経ってないが)名前を呼んでくれないノクスに痺れを切らしたらしい。
ノクスはそんなキイチの顔を見て、またくすくすと笑い始めた。
「・・・実はまだまだ餓鬼だろ、お前。」
「・・・・・・18歳です。」
「はぁぁあ?!俺の十個下じゃねーか!!!」
「歳なんて関係ないです!!ほらっ、ノクスさん!!な・ま・え!!!」
「・・・ふはっ、可愛いな。・・・キイチ。俺も好きだよ。」
「~~~っ!!俺の方がもっと好きです!!!!ノクスさん!!大好き!!」
耳と尻尾がぴーーーーん、と立ったかと思ったら、尻尾なんかぶんぶん横に大揺れだ。
目は喜びでキラキラ輝いていて、キイチは力一杯ノクスを抱きしめる。
「んふ、ふふふ、おもしれぇな、キイチ。」
「面白いだけじゃないっすよ!それなりにそういうことに興味はあったんで、知識だけは豊富ですから!じゃ、ノクスさん♪いただきまーーーす!」
「はっ?え、ちょ、ま、」
「待ちませーーーん!」
ぼすん!とベッドに押し付けられ、ノクスの視界はキイチの顔のドアップで埋まった。
「はぁ・・・よく我慢した、俺。ここにも、キスしていいですよね?ノクスさん。」
ペロリ、と舌舐めずりをしながら、人差し指でノクスの唇に触れるキイチ。
黒い耳と尻尾に生えた細かな毛がぶわり、と広がるような、鳥肌にも似た感覚を覚えたノクスは、少し考えた後、こくり、と静かに頷いたのだった。
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