2 / 14
本編
2
しおりを挟む
「ノクス、よく賊を捕えてくれた。これであの辺りの村の者達も安心して暮らせるだろう。」
「・・・・・・お褒めの言葉有り難く頂戴します、殿下。」
「・・・くっくっくっ、それにしても見ものだったろうなぁ。お前のか弱い演技は・・・くっくっ、」
「・・・研究所の修繕、団員への褒美、その他諸々期待してますよ、殿下。・・・チッ。」
品のいい調度品が揃う執務室。
美しい黄金の髪をふわふわ揺らし、腹を押さえ笑うのは、この国の第一王子、獅子獣人のスィーガ。
孤児院育ちのノクスとは、生まれも育ちも全く異なるが、何かと気が合う二人である。
「殿下発案の潜入作戦がうまく行ったのはめでたいですが、次は俺ではなく別の者を指名してください。・・・俺は二度とやりませんからね。」
「まあまあ、そう怒るな。お前くらい強くないと、何かあった時対応に困るだろう。」
「・・・・・・じゃあ殿下がやってください。あなただって、詠唱無しで攻撃できるでしょう?」
「あっはっはっは!私を指名するとは、さすが噂の屈強な男は一味違うなぁ!・・・ブッ!あっははは!」
「・・・・・・ぜってぇ、その噂流したのも殿下繋がりでしょう。チッ。」
フカフカのソファーに座っているノクスは、大層面白くなさそうな顔をして頬杖をついた。
ノクスが団長の任を命じられたのはここ数年のことだ。
魔法師団は騎士団同様、市民の安全を守るために、様々な場所へ赴いて活動する。
だがノクスは、人前に出るのが大嫌いだ。
何故かって、その愛くるしい見た目から、とにかく・・・とにかく、舐められるから。
「え、このちっこいのが?」
「は?この美少年が?」
「冗談言ってねぇで、さっさと団長出せよ。」
などなど。
その度ノクスは丁寧な説明をして来たが、いい加減めんどくさい。
そして最近流れ始めたのが、例の噂だ。
余計ノクスは自分が団長だと名乗りにくくなり、機嫌を損ねている。
しかも今回は、その見た目を生かして賊にわざと捕まり、裏で糸を引いている貴族を炙り出す作戦にまで自分の見た目が使われた。
「・・・おもしろくねぇ。」
その一言に尽きる。
ノクスはこう見えても立派な、成人。
それどころか、実は28歳なのである。
スィーガ王子より四つも歳上だ。
あの断末魔を上げた男達から連れて行かれる時も「だぁれが、少年だ、ゴルァ」と内心だいぶ苛立っていた。
「ノクスの頑張りのおかげで、周辺の村や町から連れて行かれた若者も見つけられそうだよ。」
「・・・それは何よりで。」
「くっくっ・・・あ、そうそう。」
ポン、と手を叩いて立ち上がり、執務室の机をガサゴソ探し出すスィーガ王子。
「あったあった」とノクスの前に差し出したのは一通の手紙だった。
「・・・?遠方の国の紋章ですね。もう側室選びですか。」
「違う違う。私は婚約者一筋だって言ってるだろう。これは君に頼みたい案件でね。適任だと思っている。」
「・・・・・・何ですか、そのニヤけた顔は。」
「まあ、開けてごらんよ。」
ノクスの前に手紙を差し出すスィーガ。
「絶対に面倒くさい案件だ」と確信していたノクスも目の前の獅子が王子であることは重々承知しているため、はあ、と一つため息をこぼした後、それを受け取った。
すでに開けられた封蝋は、それは豪華なデザインで、ノクスは嫌な予感が止まらない。
そして、その予感は見事的中するのである。
「じゃ、来週から早速頼んだよ。ノクス魔法師団団長。」
「・・・王子じゃなきゃ殴ってますよ、本当に。」
「おお、怖い。心から良かったと思うよ、自分が王子でね。」
「・・・・・・・・・はぁぁぁぁあ・・・・・・」
深い深いため息も、このスィーガの前では何の意味もないことが分かっているが、つかずにはいられない。
『親愛なるスィーガ 殿
ご無沙汰している。元気にお過ごしかな?
君の面白い話をまた聞きたいよ。
さて、本題だが貴殿の国の騎士団、魔法師団は大変優秀と聞く。
こちらに落ちてきた異世界人をしばらくそちらに留学させたい。
役目は終えたし、今後は他国を見てまわりたいとのこと。
本人は魔力も身体も鍛えたいそうだ。
どちらかの団で希望を叶えてやってくれ。
本人もそれを希望している。
ついでに婚約者でも見つけてこいと、尻を叩いているが、まあそれは追々な。
では、良い返事を待っている。
ジャスパー より』
「・・・ジャスパーって、あっちの国の第一王子だろうがよ。俺に聖者の相手しろってか・・・めんどくせぇ・・・」
王宮内の大理石の廊下でため息をつくノクス。
あの手紙はしっかりとその小さな手の中に。
「さっさと飯食って寝るか・・・」
今日の夕食は何だろう、と現実逃避をしながら宿舎へと戻るノクスの瞳は、相変わらず美しい夜のような黒色だった。
「・・・・・・お褒めの言葉有り難く頂戴します、殿下。」
「・・・くっくっくっ、それにしても見ものだったろうなぁ。お前のか弱い演技は・・・くっくっ、」
「・・・研究所の修繕、団員への褒美、その他諸々期待してますよ、殿下。・・・チッ。」
品のいい調度品が揃う執務室。
美しい黄金の髪をふわふわ揺らし、腹を押さえ笑うのは、この国の第一王子、獅子獣人のスィーガ。
孤児院育ちのノクスとは、生まれも育ちも全く異なるが、何かと気が合う二人である。
「殿下発案の潜入作戦がうまく行ったのはめでたいですが、次は俺ではなく別の者を指名してください。・・・俺は二度とやりませんからね。」
「まあまあ、そう怒るな。お前くらい強くないと、何かあった時対応に困るだろう。」
「・・・・・・じゃあ殿下がやってください。あなただって、詠唱無しで攻撃できるでしょう?」
「あっはっはっは!私を指名するとは、さすが噂の屈強な男は一味違うなぁ!・・・ブッ!あっははは!」
「・・・・・・ぜってぇ、その噂流したのも殿下繋がりでしょう。チッ。」
フカフカのソファーに座っているノクスは、大層面白くなさそうな顔をして頬杖をついた。
ノクスが団長の任を命じられたのはここ数年のことだ。
魔法師団は騎士団同様、市民の安全を守るために、様々な場所へ赴いて活動する。
だがノクスは、人前に出るのが大嫌いだ。
何故かって、その愛くるしい見た目から、とにかく・・・とにかく、舐められるから。
「え、このちっこいのが?」
「は?この美少年が?」
「冗談言ってねぇで、さっさと団長出せよ。」
などなど。
その度ノクスは丁寧な説明をして来たが、いい加減めんどくさい。
そして最近流れ始めたのが、例の噂だ。
余計ノクスは自分が団長だと名乗りにくくなり、機嫌を損ねている。
しかも今回は、その見た目を生かして賊にわざと捕まり、裏で糸を引いている貴族を炙り出す作戦にまで自分の見た目が使われた。
「・・・おもしろくねぇ。」
その一言に尽きる。
ノクスはこう見えても立派な、成人。
それどころか、実は28歳なのである。
スィーガ王子より四つも歳上だ。
あの断末魔を上げた男達から連れて行かれる時も「だぁれが、少年だ、ゴルァ」と内心だいぶ苛立っていた。
「ノクスの頑張りのおかげで、周辺の村や町から連れて行かれた若者も見つけられそうだよ。」
「・・・それは何よりで。」
「くっくっ・・・あ、そうそう。」
ポン、と手を叩いて立ち上がり、執務室の机をガサゴソ探し出すスィーガ王子。
「あったあった」とノクスの前に差し出したのは一通の手紙だった。
「・・・?遠方の国の紋章ですね。もう側室選びですか。」
「違う違う。私は婚約者一筋だって言ってるだろう。これは君に頼みたい案件でね。適任だと思っている。」
「・・・・・・何ですか、そのニヤけた顔は。」
「まあ、開けてごらんよ。」
ノクスの前に手紙を差し出すスィーガ。
「絶対に面倒くさい案件だ」と確信していたノクスも目の前の獅子が王子であることは重々承知しているため、はあ、と一つため息をこぼした後、それを受け取った。
すでに開けられた封蝋は、それは豪華なデザインで、ノクスは嫌な予感が止まらない。
そして、その予感は見事的中するのである。
「じゃ、来週から早速頼んだよ。ノクス魔法師団団長。」
「・・・王子じゃなきゃ殴ってますよ、本当に。」
「おお、怖い。心から良かったと思うよ、自分が王子でね。」
「・・・・・・・・・はぁぁぁぁあ・・・・・・」
深い深いため息も、このスィーガの前では何の意味もないことが分かっているが、つかずにはいられない。
『親愛なるスィーガ 殿
ご無沙汰している。元気にお過ごしかな?
君の面白い話をまた聞きたいよ。
さて、本題だが貴殿の国の騎士団、魔法師団は大変優秀と聞く。
こちらに落ちてきた異世界人をしばらくそちらに留学させたい。
役目は終えたし、今後は他国を見てまわりたいとのこと。
本人は魔力も身体も鍛えたいそうだ。
どちらかの団で希望を叶えてやってくれ。
本人もそれを希望している。
ついでに婚約者でも見つけてこいと、尻を叩いているが、まあそれは追々な。
では、良い返事を待っている。
ジャスパー より』
「・・・ジャスパーって、あっちの国の第一王子だろうがよ。俺に聖者の相手しろってか・・・めんどくせぇ・・・」
王宮内の大理石の廊下でため息をつくノクス。
あの手紙はしっかりとその小さな手の中に。
「さっさと飯食って寝るか・・・」
今日の夕食は何だろう、と現実逃避をしながら宿舎へと戻るノクスの瞳は、相変わらず美しい夜のような黒色だった。
325
あなたにおすすめの小説
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
隠れオメガの整備士は自由になりたい。なのに暴走する最強騎士を身体を張って止めたら、運命の番だとバレて過保護な専属契約を結ばされました
水凪しおん
BL
※オメガバース設定。激しい戦闘描写や、執着攻めによるマーキング描写、軽度の性的な接触の描写がありますので、15歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
汚染された惑星を浄化する生体兵器『機装(ギア)』。
その搭乗者は優れた能力を持つ『アルファ』に限られ、彼らの精神を安定させる鎮静剤として『オメガ』が存在する世界。
整備士のエリアンは、オメガであることを隠し、ベータと偽って軍の最前線で働いていた。
オメガは道具のように扱われるこの社会で、自由を守るための必死の嘘だった。
だがある日、軍最強のエリートパイロット・クレイドの機装が暴走する事故に遭遇する。
死を覚悟して止めに入ったエリアンだったが、暴走する機体はなぜか彼にだけ反応し、沈静化した。
それは、隠していたオメガのフェロモンが、クレイドと強烈な『共鳴』を起こした瞬間だった。
「見つけた。俺の対になる存在を」
正体がバレたと戦慄するエリアンに対し、冷徹なはずのクレイドが向けたのは、処罰ではなく執着に満ちた熱い視線で……?
孤独なエリート騎士×身分を隠した健気な整備士。
星の命運と本能が交錯する、近未来SFオメガバース!
鬼神と恐れられる呪われた銀狼当主の元へ生贄として送られた僕、前世知識と癒やしの力で旦那様と郷を救ったら、めちゃくちゃ過保護に溺愛されています
水凪しおん
BL
東の山々に抱かれた獣人たちの国、彩峰の郷。最強と謳われる銀狼一族の若き当主・涯狼(ガイロウ)は、古き呪いにより発情の度に理性を失う宿命を背負い、「鬼神」と恐れられ孤独の中に生きていた。
一方、都で没落した家の息子・陽向(ヒナタ)は、借金の形として涯狼の元へ「花嫁」として差し出される。死を覚悟して郷を訪れた陽向を待っていたのは、噂とはかけ離れた、不器用で優しい一匹の狼だった。
前世の知識と、植物の力を引き出す不思議な才能を持つ陽向。彼が作る温かな料理と癒やしの香りは、涯狼の頑なな心を少しずつ溶かしていく。しかし、二人の穏やかな日々は、古き慣習に囚われた者たちの思惑によって引き裂かれようとしていた。
これは、孤独な狼と心優しき花嫁が、運命を乗り越え、愛の力で奇跡を起こす、温かくも切ない和風ファンタジー・ラブストーリー。
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
【完結】竜討伐の褒賞は、鹿角の王子様。(志願)
N2O
BL
執着王子 × 異世界転生魔法使い
魔法使いが逃げられなくなる話。
『上』『中』『下』の全三話、三連休中に完結します。
二万字以下なので、ショートショート𖤣𖥧𖥣
Special thanks
illustration by okiagsa様(X:@okigasa_tate)
MBM様(X:@MBMpaper)
※独自設定、ご都合主義。あしからず。
「禍の刻印」で生贄にされた俺を、最強の銀狼王は「ようやく見つけた、俺の運命の番だ」と過保護なほど愛し尽くす
水凪しおん
BL
体に災いを呼ぶ「禍の刻印」を持つがゆえに、生まれた村で虐げられてきた青年アキ。彼はある日、不作に苦しむ村人たちの手によって、伝説の獣人「銀狼王」への贄として森の奥深くに置き去りにされてしまう。
死を覚悟したアキの前に現れたのは、人の姿でありながら圧倒的な威圧感を放つ、銀髪の美しい獣人・カイだった。カイはアキの「禍の刻印」が、実は強大な魔力を秘めた希少な「聖なる刻印」であることを見抜く。そして、自らの魂を安定させるための運命の「番(つがい)」として、アキを己の城へと迎え入れた。
贄としてではなく、唯一無二の存在として注がれる初めての優しさ、温もり、そして底知れぬ独占欲。これまで汚れた存在として扱われてきたアキは、戸惑いながらもその絶対的な愛情に少しずつ心を開いていく。
「お前は、俺だけのものだ」
孤独だった青年が、絶対的支配者に見出され、その身も魂も愛し尽くされる。これは、絶望の淵から始まった、二人の永遠の愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる