12 / 14
12
しおりを挟む
薬を飲もうと思っていたのに、ただ水を飲むだけになってしまった。
何か食べないと。ガサゴソと戸棚を漁る。確か奥の方に飴とキャラメルを隠していたはず。
コツンと指先に小さいものが当たる。あった。
キャラメルを取り出し、そのまま口に入れた。
ん~、甘くてうまい。
キャラメルを味わっていると、視線を感じた。寝ていた男がこちらをじっと見つめている。
なんとなく気まずくなり、視線を逸らして薬を飲んだ。
「・・・なんで僕の部屋で寝ていたんですか?」
相手はんー?と首を傾げた。
「綺麗な子が無防備にドアを開けて寝ていたから、起きるまでいようかと思ったんだ。怖がらせていたらごめんね。」
申し訳なさそうに弱弱しく笑う彼を見て、善意でやったことなのだと気づいた。
僕が綺麗かどうかは別として、過去にも寮内で過ちを起こす者はいた。
被害を受けないように寝るときはドアを閉めて鍵をかけることが基本だった。
「あ、そうだったんですね・・・。すみません、体調がよくなくてドアを閉める前に眠ってしまって。えっと、先輩・・・?ですよね?ありがとうございます。」
「自己紹介がまだだったね。俺は四年のリオ。よろしく。」
「僕は三年のレイです。よろしくお願いします。」
今更自己紹介をしあうなんて、なんだかおかしく思えてふふっと笑ってしまった。
リオはあっと声をあげた。
「レイ、レイくんか!なるほど・・・。」
なるほど?どういう意味だろう。不思議に思ってリオを見る。
リオは何でもないという風に手を横に振ってみせた。逆に気になる。
「なるほどって何ですか?」
「ん?いや、何でもない。それより、体調が悪いと言っていたが大丈夫なのか?」
気になるが、同じことを聞き続けるのも面倒だと思われてしまうだろう。はぐらかされたままにすることにしよう。別に大したことじゃないだろうし。
「さっき薬を飲んだので、寝たら治ると思います。疲れたのか熱が出ちゃって。」
ははっと笑う。リオは考えるように眉を寄せた。
「あと一時間ほどで夕飯の時刻だと思うんだが、あとでおかゆでも持ってこようか?」
「えっ!いや、あの、嬉しいんですけど、さすがに知り合ったばかりの先輩にそんなこと頼めませんよ・・・」
「でも熱があるんだろう?」
リオは僕の方に手を伸ばしてきた。
急なことでつい体がビクっと反応したが、ただ額に手をあてられただけだった。
リオの手は冷たくて気持ちいい。すりすりとリオの手に自ら額をあてるように動いてしまった。
ハッとしてすりすりするのをやめたが、恥ずかしくてリオの顔を見れない。
「ご、ごめんなさい。冷たくて気持ちよくて・・・」
ふっと笑ったような息が漏れたのが聞こえた。
「いや、むしろ嬉しかったから。それより熱がまだあるみたいだし、夜におかゆ持ってくるよ。心配だし。」
そう言うと額から手をどけた。気持ちよさが名残惜しくてリオの手を目で追ってしまう。
「じゃあ、そろそろ行くよ。次はちゃんとドアは閉めてね。鍵をかけてもらいたいけど、おかゆ持ってきたとき入れなかったら困るからな・・・」
悩ましそうなリオに、僕はじゃあと提案する。
「僕の部屋の鍵、持って行ってください。おかゆ持ってきてもらえるだけで本当にありがたいので。」
リオは目を大きく見開いた後、心配そうに僕を見た。
何か言いたいことがありそうな顔をしていたが、実際には何も言ってこなかった。
「そう、ありがとう・・・。レイくんが横になったのを確認してから俺が外から鍵をかけることにするよ。」
僕をベッドに誘導し、横になったのを確認すると手を額にそっとあててくれた。気持ちいい。
「ああ、そうだ。レイくんタオルってどこにある?」
「あそこです。」
タオルのある場所を指さす。リオはタオルを手に取ると水に濡らして絞り、レイの額に置いた。
こんなことまでしてくれると思っていなかったので、僕はびっくりしてただただリオを見つめてしまった。
するとものすごく柔らかい笑顔で返された。少し顔が赤くなるのがわかる。
「あ、ありがとうございます・・・。」
「いえいえ。じゃあまた。」
そう言って部屋から出て行った。
ガチャン。
鍵を閉めた音がする。ほっと肩の力を抜いた。
それにしても、イケメンだったなぁ・・・。
何か食べないと。ガサゴソと戸棚を漁る。確か奥の方に飴とキャラメルを隠していたはず。
コツンと指先に小さいものが当たる。あった。
キャラメルを取り出し、そのまま口に入れた。
ん~、甘くてうまい。
キャラメルを味わっていると、視線を感じた。寝ていた男がこちらをじっと見つめている。
なんとなく気まずくなり、視線を逸らして薬を飲んだ。
「・・・なんで僕の部屋で寝ていたんですか?」
相手はんー?と首を傾げた。
「綺麗な子が無防備にドアを開けて寝ていたから、起きるまでいようかと思ったんだ。怖がらせていたらごめんね。」
申し訳なさそうに弱弱しく笑う彼を見て、善意でやったことなのだと気づいた。
僕が綺麗かどうかは別として、過去にも寮内で過ちを起こす者はいた。
被害を受けないように寝るときはドアを閉めて鍵をかけることが基本だった。
「あ、そうだったんですね・・・。すみません、体調がよくなくてドアを閉める前に眠ってしまって。えっと、先輩・・・?ですよね?ありがとうございます。」
「自己紹介がまだだったね。俺は四年のリオ。よろしく。」
「僕は三年のレイです。よろしくお願いします。」
今更自己紹介をしあうなんて、なんだかおかしく思えてふふっと笑ってしまった。
リオはあっと声をあげた。
「レイ、レイくんか!なるほど・・・。」
なるほど?どういう意味だろう。不思議に思ってリオを見る。
リオは何でもないという風に手を横に振ってみせた。逆に気になる。
「なるほどって何ですか?」
「ん?いや、何でもない。それより、体調が悪いと言っていたが大丈夫なのか?」
気になるが、同じことを聞き続けるのも面倒だと思われてしまうだろう。はぐらかされたままにすることにしよう。別に大したことじゃないだろうし。
「さっき薬を飲んだので、寝たら治ると思います。疲れたのか熱が出ちゃって。」
ははっと笑う。リオは考えるように眉を寄せた。
「あと一時間ほどで夕飯の時刻だと思うんだが、あとでおかゆでも持ってこようか?」
「えっ!いや、あの、嬉しいんですけど、さすがに知り合ったばかりの先輩にそんなこと頼めませんよ・・・」
「でも熱があるんだろう?」
リオは僕の方に手を伸ばしてきた。
急なことでつい体がビクっと反応したが、ただ額に手をあてられただけだった。
リオの手は冷たくて気持ちいい。すりすりとリオの手に自ら額をあてるように動いてしまった。
ハッとしてすりすりするのをやめたが、恥ずかしくてリオの顔を見れない。
「ご、ごめんなさい。冷たくて気持ちよくて・・・」
ふっと笑ったような息が漏れたのが聞こえた。
「いや、むしろ嬉しかったから。それより熱がまだあるみたいだし、夜におかゆ持ってくるよ。心配だし。」
そう言うと額から手をどけた。気持ちよさが名残惜しくてリオの手を目で追ってしまう。
「じゃあ、そろそろ行くよ。次はちゃんとドアは閉めてね。鍵をかけてもらいたいけど、おかゆ持ってきたとき入れなかったら困るからな・・・」
悩ましそうなリオに、僕はじゃあと提案する。
「僕の部屋の鍵、持って行ってください。おかゆ持ってきてもらえるだけで本当にありがたいので。」
リオは目を大きく見開いた後、心配そうに僕を見た。
何か言いたいことがありそうな顔をしていたが、実際には何も言ってこなかった。
「そう、ありがとう・・・。レイくんが横になったのを確認してから俺が外から鍵をかけることにするよ。」
僕をベッドに誘導し、横になったのを確認すると手を額にそっとあててくれた。気持ちいい。
「ああ、そうだ。レイくんタオルってどこにある?」
「あそこです。」
タオルのある場所を指さす。リオはタオルを手に取ると水に濡らして絞り、レイの額に置いた。
こんなことまでしてくれると思っていなかったので、僕はびっくりしてただただリオを見つめてしまった。
するとものすごく柔らかい笑顔で返された。少し顔が赤くなるのがわかる。
「あ、ありがとうございます・・・。」
「いえいえ。じゃあまた。」
そう言って部屋から出て行った。
ガチャン。
鍵を閉めた音がする。ほっと肩の力を抜いた。
それにしても、イケメンだったなぁ・・・。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる