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ゴーンゴーン。
鐘が鳴った。一日の始まりの合図だ。
鐘が鳴るのは、最初の授業の前と、最後の授業の後のみ。
つまりこの音は、あと十分程度で授業が始まるということだ。
「ヒュド!授業が始まっちゃう!」
焦った僕の声に、ヒュドはフッと笑った。
「そうだな。行くか。」
すぐさま教室の方へ歩き出したヒュド。
僕は急いでヒュドを追いかけながら、先輩に視線を向けた。
「ティニ先輩、また会いましょうー!」
「ああ、じゃあね。」
ひらひらと手を振って、僕らとは別の教室へ向かっていった。
教室へと急ぎながらヒュドが問いかける。
「本当に怒ってないのか?」
「だから、怒ってないって。」
「でも、明らかにいつもと態度が違った。」
それはそうだ。昔の自分の些細な態度なんて覚えているはずもないし、
中身が変わったといっても過言ではない。
しかし、そんなことを言えるはずもない。
苛立ちが作用してしまったらしい。
「いつもいつもって、僕のことそんなに知ってるの?」
振り返って、感情を吐き出してしまう。
ヒュドはピタッと立ち止まった。
感情を抑えきれなかった。
ただでさえ、過去に戻されたことで混乱していたのだ。
ヒュドは何も言わず、考え込むように僕を見ている。
そんなヒュドを無視して教室へと走った。
今は顔を見られたくないから。
ガラガラッ。
教室を開けて、当然のように自分の席へ座ろうとして気づいた。
僕の席ってどこだ・・・?
多くの生徒の視線を感じる。
どうにか思い出そうとしても、古すぎる記憶を呼び起こすことなんてできなかった。
すぐに諦めて、扉付近の席の子に聞いた。
「ごめん、僕の席ってどこかわかる?」
話しかけたはずなのだが、聞こえていないのか無視をされた。
隣の子としゃべっていたので、無理もないかもしれない。
もう一度声をかける。
「あの、聞いてる?」
ちょんっと肩も触ってみる。
すると、体をビクッと震わせて、僕の顔を見た。
頭にはてなマークが見えるような表情だ。
「えっと、その、邪魔してごめんね?僕の席ってどこかわかる?」
「えっ?」
当然の反応だった。
昨日まで普通に席に座っていたのに、
急に自分の席がわからなくなったなんて、おかしすぎるのだから。
僕は困ったように微笑む。
優しい人だったらしい。
はてなマークを浮かべたまま答えてくれた。
「・・・窓側の後ろから二番目の席がレイくんの席だよ???」
「ありがとう。」
お礼を言うと教えてもらった席に腰を掛けた。
そういえば、教科書とかノートとか筆記用具を持ってきていない。
時間に間に合うようにと必死すぎた。
焦って、机の中を探す。
教科書とノートは机の中に置いてあった。
自分が面倒くさがりなことを感謝した。
ペンもあったが、黒ボールペン一本のみだった。
まぁ、授業は受けられるだろう。
そう安心していると、横から視線を感じた。
いつの間に来たのかヒュドが隣の席に座って、じっと僕を観察していたらしい。
怪しい挙動しかしてなかった気がするのだが、と思いつつニコッと笑っておく。
ヒュドは特に何も反応を示さず、そのまま前に向き直った。
クラス中が騒めいていることにレイは気づいていなかった。
鐘が鳴った。一日の始まりの合図だ。
鐘が鳴るのは、最初の授業の前と、最後の授業の後のみ。
つまりこの音は、あと十分程度で授業が始まるということだ。
「ヒュド!授業が始まっちゃう!」
焦った僕の声に、ヒュドはフッと笑った。
「そうだな。行くか。」
すぐさま教室の方へ歩き出したヒュド。
僕は急いでヒュドを追いかけながら、先輩に視線を向けた。
「ティニ先輩、また会いましょうー!」
「ああ、じゃあね。」
ひらひらと手を振って、僕らとは別の教室へ向かっていった。
教室へと急ぎながらヒュドが問いかける。
「本当に怒ってないのか?」
「だから、怒ってないって。」
「でも、明らかにいつもと態度が違った。」
それはそうだ。昔の自分の些細な態度なんて覚えているはずもないし、
中身が変わったといっても過言ではない。
しかし、そんなことを言えるはずもない。
苛立ちが作用してしまったらしい。
「いつもいつもって、僕のことそんなに知ってるの?」
振り返って、感情を吐き出してしまう。
ヒュドはピタッと立ち止まった。
感情を抑えきれなかった。
ただでさえ、過去に戻されたことで混乱していたのだ。
ヒュドは何も言わず、考え込むように僕を見ている。
そんなヒュドを無視して教室へと走った。
今は顔を見られたくないから。
ガラガラッ。
教室を開けて、当然のように自分の席へ座ろうとして気づいた。
僕の席ってどこだ・・・?
多くの生徒の視線を感じる。
どうにか思い出そうとしても、古すぎる記憶を呼び起こすことなんてできなかった。
すぐに諦めて、扉付近の席の子に聞いた。
「ごめん、僕の席ってどこかわかる?」
話しかけたはずなのだが、聞こえていないのか無視をされた。
隣の子としゃべっていたので、無理もないかもしれない。
もう一度声をかける。
「あの、聞いてる?」
ちょんっと肩も触ってみる。
すると、体をビクッと震わせて、僕の顔を見た。
頭にはてなマークが見えるような表情だ。
「えっと、その、邪魔してごめんね?僕の席ってどこかわかる?」
「えっ?」
当然の反応だった。
昨日まで普通に席に座っていたのに、
急に自分の席がわからなくなったなんて、おかしすぎるのだから。
僕は困ったように微笑む。
優しい人だったらしい。
はてなマークを浮かべたまま答えてくれた。
「・・・窓側の後ろから二番目の席がレイくんの席だよ???」
「ありがとう。」
お礼を言うと教えてもらった席に腰を掛けた。
そういえば、教科書とかノートとか筆記用具を持ってきていない。
時間に間に合うようにと必死すぎた。
焦って、机の中を探す。
教科書とノートは机の中に置いてあった。
自分が面倒くさがりなことを感謝した。
ペンもあったが、黒ボールペン一本のみだった。
まぁ、授業は受けられるだろう。
そう安心していると、横から視線を感じた。
いつの間に来たのかヒュドが隣の席に座って、じっと僕を観察していたらしい。
怪しい挙動しかしてなかった気がするのだが、と思いつつニコッと笑っておく。
ヒュドは特に何も反応を示さず、そのまま前に向き直った。
クラス中が騒めいていることにレイは気づいていなかった。
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