544 / 589
第18章 発展のアルトラルサンズとその影編
第535話 vsタイランテス&カーデュアル その1
しおりを挟む
カイベルに居所を聞いて、タイランテスとカーデュアルに追いついて来たアルトラ――
「テメェ、アルトラ! 追いかけてきやがったのか! しつけぇ女だな!」
「『重要ポイント』だと……? いつから話を聞いてたんだ? この私の魔力感知にすら気付かれずここまで近付かれていたのか? ……全く……毎度毎度私の邪魔ばかりしてくれて、本当に嫌な方ですね、貴女……」
【不可視化】で身体を透明にしてしばらく話を聞いていた。
それと、まだ【魔力遮断】の効果が残ってるのか、私の魔力を捉えられないらしい。
「そりゃどうも。悪人にそう思われてるんならむしろ褒め言葉だわ。カーデュアル、あなたに二つ聞きたいことがある、森に倒れていた三人を黒焦げにしたのはあなた?」
「三人? ああ、この町に来てから私の周りを常にウロチョロしてたあの三人ですか。いい加減うざったくなったので黙ってもらいました。町中で殺るにはリスクがありましたが、あの場所ならヒトの目もありませんでしたからね」
多分、自分の同僚か部下なのに、全く躊躇もせずに黒焦げにできるのか……
「じゃあもう一つ、エールデさんに恨みでもあったの?」
「? いいえ? なぜ恨みがあったと思ったのですか? 彼は良い上司ですよ。ただ虫唾が走るくらい癪に障る良い上司でしたがね」
「何で頭を狙った? 戦闘不能にするだけなら他に狙えるところはあったでしょ?」
「何で? 彼が死ねば順当に私かエトラックが隊長に繰り上がりますから。合理的に考えて妨害以上の利益を考えただけですよ。後々私が隊長に選ばれなければエトラックにも同じことをしただけです」
今まで上司として仕えていたヒトを簡単に切り捨て、平気で他人を蹴落とせるなんて……社会不適合の方のサイコパスってヤツか……
このタイプは今まで私の周りに居たことなかったから、初めて関わり合いになるわ。できることなら一生涯遭遇したくなかったタイプ。
その時、妙な音がする。
『キイィィィン』という高い音。
「…………何これ?」
いや、この音聞き覚えがある。
デスキラービーの紫が発してた、エネルギーを溜める時の音だ! (第346話参照)
「気付くのが遅かったですね。永遠にさようなら」
カーデュアルがポケットから握り拳大の石を出す。
私がそれに気付いた瞬間、投げるモーションに入らず、手首を少し上に曲げたと思ったら、次の瞬間手首を縦に振るだけという最小の投擲モーションで投げ付けられた。
十分な電気エネルギーを蓄えたソレは目では捉えられない速さで一直線に私に向かって来る!
避けるのも間に合わず、咄嗟に防御姿勢を取るもその石は私に直撃し、それでも勢いは収まらずそのまま押されるように遠くまで飛ばされてしまった。
◇
「うおぉぉ……ビックリしたぁ……会話してる間にエネルギーを溜め込んでるとは……抜け目無いな……」
きっと普通の亜人ならバラバラになってる威力だ。
一体どれくらい飛ばされた?
五百メートル? 七百メートル? 一キロくらいだろうか?
これくらいの距離なら【次元歩行】で移動すればすぐに元の位置へ戻れる。ってことで――
――移動した。
元の位置に戻ってみると、二人とも私を片付けたと思っているのか、暢気に樹の国の方向へ向かって歩いてる最中だった。
「おい、今のってエールデにやったのと同じ攻撃か? アイツ顔が血まみれになってたし、てっきり貫通するような攻撃だと思ってたけどよう、アルトラどっか行っちまったぞ?」
「そのはずですが……投げた石と一緒にどこかへ行ってしまいましたね。小柄でしたし、小人種のように身体が硬いのでしょうか? まあ巨人のエールデですら瀕死の重傷を与えた攻撃ですから、生きてはいないでしょう。全く目障りな小娘でしたね」
「はい、目障りな小娘のご帰還で~す」
「「 ………………!!? 」」
後ろから声をかけると一呼吸置いて、タイランテスが特大のリアクション。
「ななななな、何だと!? どうなってんだ!? おい、カーデュアル! 女だと思って手加減したのか!?」
「い、いえ、そんなはずは……た、確かに直撃したはずだ! なぜあれが直撃して死なない!? 全く訳の分からんヤツだ! 全く何度も何度も俺の前に顔を見せやがって、全く頭に来る小娘だなぁぁ!!」
「全く全く」ってコイツの口癖か?
一人称も『私』から『俺』になってるし、カーデュアルの紳士然としていた口調が崩れ始めたみたいだ。
「タイランテス!! このまま付いて来られるのも目障りだ、ここで殺ってしまうぞ!」
「お……おう……オメェ、いつもと違うぞ、ダイジョブか?」
やはり態度がおかしいらしく、タイランテスが若干引き気味。
「でも、あなた程度じゃ、私は倒せないよ」
「さっきの竜人が私の真の姿だと思ってるんですか?」
「え? 違うの?」
フリアマギアさん情報ではそういうことだったはずだけど……
「さっき石を投げ付けた時に思い知りましたよ……。貴女が何の種族なのか分かりませんが、その身体はかなり頑丈で少々面倒な生物のようだ。本気で相手をしてさしあげます」
そう言ったカーデュアルの身体がどんどん巨大化していく。
「おぉ……!」
出現したのは黄色光りするドラゴン。
「……イエロードラゴン……だったのか……。さっきの竜人は仮の姿だったのね……」
魔力の性質がアランドラ隊長に似ていると思っていたが、周囲に感じさせる魔力まで隠蔽してたってことなのか。
「面白ぇ! 今度こそ叩き潰してやるぜぇ!」
タイランテスがニヤリと笑い、カーデュアルに続いて巨大化。
目の前に某特撮ヒーローほど (四十メートルほど)の巨人と、五メートルほどの黄色光りするドラゴンが立ち塞がる。
「エ、エールデさんを、守護志士のヒトたちをも騙してたってこと!?」
「その通りです。自分の手の内をひけらかすのは莫迦のやることですからね。能ある鷹は爪を隠すというヤツです」
「………………」
「どうしました? 突然黙って。恐怖で声も出ませんか?」
「…………いや~、タイランテスと比べると迫力に欠けるな、って。あなたより大迫力のタイランテスが後ろに立ってるから、え~と……何と言うか……あなたは大分小さく見えるわ……」
傷付けないように言葉を選んでしゃべったが、結局のところ『小さい』と言ったのは変わらない。
背の高さ八分の一だと流石にねぇ……
タイランテスが後ろに立ってなきゃ十分でっかいんだけど……相対的に小さく見えてしまう……
「わはははは、核心を突かれちまったな! まあ気にするなよ」
「…………いちいちムカつく小娘だ! 身体は小さくとも能力はタイランテスより上だ!!」
「何だと!? お前みたいな小さいのが俺より上のわけねぇだろ!」
「…………試してみますか?」
何か知らんが私を蚊帳の外にして罵り合いが始まった……このまま同士討ちしてくれれば楽なんだけど……
「上等だぁぁ!! エールデに散々殴られてムカついてんだ! やってやるよ!!」
とタイランテスが拳を振り上げた瞬間、カーデュアルが制止する。
「……ストップ、お互い少し落ち着きましょう。私と貴方は協力関係、今の敵はアルトラです。議論はその後にしましょう」
「お、おう……そうだったな」
思惑通りにはいかなかったか。口喧嘩し始めたタイミングで隠れてれば、矛先がこっちへ帰って来なかったかな?
もう一度けしかけてみるか。
「何だ、もう終わり? 一度振り上げた拳を下すなんて情けないのね。あ、負けると思ったから退いたのかなぁ?」
「なんだとテメェ!!? カーデュアル! やっぱり白黒つけようぜ! このままじゃ納得行かねぇ!」
「あんな安い挑発で怒らないください。思う壺ですよ」
すぐにカーデュアルに止められてしまった。
流石に二回目は鎮静剤がすぐ止めるからダメか。
「じゃあ、怪獣大決戦とでもいきましょうか」
私も【巨人化】を使い大きくなる。
「「 なっ!? なんだと!? 」」
二人同時に素っ頓狂な声を上げる。
「お、お前巨人族だったのか!?」
そして、弟と全く同じセリフを吐く兄。
私が巨人化したことにより、十三メートルほどの大きさになり、その結果カーデュアルを見下せる大きさに。
「!!?」
今度はカーデュアルが私の顔を見上げて絶句している。
「ど、どういうことだ? アルトラルサンズの国家元首がデミタイタンだなんて話聞いてないぞ? 本当に巨人だったのか? ………………だ、だがデミタイタンの割には大分小さいな……私より少し大きい程度じゃないか、ハハ……ドラゴンである私なら十分対応できる範囲だ」
自分より約二.五倍ある身長を『少し大きい程度』と捉えるのか?
巨人に対しても対抗できるくらいの自信があるからそう言えるのかな?
「面白ぇじゃねぇか!! 的が大きくなった分当てやすくなったんじゃぁねぇのぉ?」
しゃべりながら不意打ちで右拳を振り上げる。
一度不意打ち喰らってるが (第529話参照)、相変わらず狡い男だ。
それにしてもコイツ、さっきエールデさんにタコ殴りにされてたのに、心をへし折られたりはしていないらしい。随分と自信家だな。
などと余計なことを思考できてしまうくらい攻撃がノロい。
自分が巨人化してても感じるタイランテスの攻撃の遅さ。いくら攻撃力あっても私には当たらんわ。
それを落ち着いて受け流そうと向かってくる拳に手を添えた瞬間、
「!!? …………重たっ!!」
自分も巨人化してるから簡単に受け流せるかと思いきや、予想以上の重さを感じ押し負けないように必死に受け流す!
そうしたところ――
「え?」
――受け流した拳は、その軌道上に居たカーデュアルの首筋にぶち当たった!
「ぐえぇっ!!」
勢いが付いたタイランテスの右ストレートを喰らい、数十メートル吹っ飛んで行った。
「あ、当たっちまったぁ……だ、大丈夫かカーデュアル!!」
「う……く……ドラゴン形態でなければ死んでいた……」
自分の八倍も身長が高いヤツに攻撃されたのに吹っ飛ばされる程度で済むなんて……
八倍の身長差を人間大で例えるなら、人間が猫を本気でぶん殴ったようなもんだと思うんだけど……ドラゴン形態って相当頑丈なのね。
「クソッ! コイツ! 巨大化してもちょこまかしやがって!」
そんなに動いちゃあいない。攻撃の矛先を反らしただけだ。
「もう許せねぇ!! 喰らえオラァッ!!」
なおもがむしゃらに連続で攻撃してくる両手を、回避し、振り払い、受け流す。
「あ、当たらねぇぇぇぇ!! ……くそっ! エールデと言い、コイツと言い、何で攻撃受け流すヤツばかりなんだ! もっと正々堂々正面から戦えやぁぁッッ!!」
『さっき不意打ちした男がそれを言うか?』と考えていると、上段蹴りが来た。
これも落ち着いてしゃがんで躱す。
すると、体勢を立て直した直後に目の端に大量の光る弾が見えた。
「!?」
そちらに顔を向けると、雷エネルギーを帯びていると思われる石つぶてが散弾のようにこちらに向かってきている。エネルギーが分散しているのか、先ほど投げられた石のように早くはないが、このままの軌道だと確実に私とタイランテスに当たる!
急いで土魔法を使い、タイランテスをも囲んだ岩壁を作り出して防御。光る弾丸は岩壁に次々に突き刺さり、どんどん削られていく!
岩に刺さって貫通したものを見ると、それは石ではなかった。
「これ、黄色のウロコだ……高速で投げられたとは言え、岩をボロボロに砕くなんて何て硬いウロコ……」
光る弾丸が飛んで来た方向を見ると、放ったのはカーデュアル。自身のウロコを投げ付けたらしい。
フレアハルトも自身のウロコを武器にして振り回していたのを見たことがある。ドラゴン族がウロコを武器に変質させるあの方法と同じものだろう。 (第400話、第469話参照)
「コイツ、仲間に当たる可能性があること分かっててやってるのか!?」
もしかして内心では全く仲間だとは思っていないのだろうか?
タイランテスはコイツでカーデュアルのそんな意図にも気付いていないのか、なおも必死の形相で私を追撃しようとしているし。
タイランテスの右ストレートを避け、少し距離を開けたが、光の弾丸が岩壁を削ったことで辺りには砂煙が充満。
視界が遮られるも、再び目の端で不自然な砂煙の盛り上がりを確認。
直後にタイランテスが砂煙を掻き分けてその巨体でタックルを繰り出してきた。
が、咄嗟にバックステップ後、上に跳んでタイランテスの後頭部を踏み付け、背中側へ飛び下りた。
これにより砂煙の外には出たが、目の前にカーデュアルが居るポジションに着地した。
直後にカーデュアルから不意打ちのように尻尾振り攻撃。
「うわっ!」
これは流石に攻撃範囲が広すぎて受け流せない。でも、巨人化したこの身体なら。
尻尾を腹の前でガッチリ受け止め、勢いが無くなったところを掴んで、ジャイアントスイングのごとくカーデュアルを振り回す。
「うおぉぉお?」
そしてジャンプして地面に叩き付けた!
「ぐはッ!!」
タイランテスの方を見ると、巻き上がった砂煙は収まっており、まださっきの場所に佇んでいた。
何で動かないのかとよく見ると――
「ぐぬぬぬぬぬ……」
――歯を食いしばって、こめかみに物凄い青筋立ててる……
まだ静かにしてるが内心激怒しているらしい。流石に頭踏まれたのはかなりムカついたか?
「ムッッッッッカつくやろうだッッッ!! だったらこれで潰れろやぁッッッ!!」
突然タイランテスの腕が延びたと思ったら、私の身体全体を両手でガッチリ掴んできた。
いや、良く見ると土や岩がくっ付いて腕の形を形成しているらしい。
「チビ野郎がッ! このまま握りつぶしてやるぁッ!! 今更命乞いしても無駄だぜぇ?」
……
…………
………………
しばらく力を込めて握り続けられるものの――
「な、何だ!? 潰れねぇ!? こんなに小さい身体なのに!? どうなってやがる!!」
――身体特性のお蔭で潰れることはない。が、この拘束から逃れるのは大分困難だ……体格が違い過ぎて全然動ける気がしない……
巨人化で条件が同じってことは、百四十センチの女vs二メートル+αの筋骨隆々の男が放った圧殺型の土魔法でがっちり握られてるのと同じなわけだから、動けるはずがない。
内側から岩石の腕を壊そうと試みるものの、現在進行形で魔力を流して発動しているものだからなのか、壊すこともできない。
「ぐぎぎぎぎぎ……」
「そのまま捕まえててください!」
「おうよ! 良い考えがあるんだな!?」
カーデュアルが両翼を光らせ、何かをするつもりらしい。
凄い魔力の高まりを感じ、数秒で雷雲が形成され始める。
今の時間帯は明け方に近い、白んできていた空があっという間に濃い雷雲で埋まり辺りが真っ暗になった。
「おぉ!? すげぇ雷雲の量だな!」
「あれって……サンダラバードの空間魔法災害の時の十分の一くらいあるんじゃ……?」 (詳しくは第5章 雷の国エレアースモの異常事態編参照)
雷雲なんて少し集まっただけでも普通の亜人には危ないものなのに、ここにはあっという間に五キロ四方はありそうなくらいの雷雲が集まった。
コイツ、雷雲まで操るのか……あれは見るからにヤバイ……電気に耐性の無い生物を殺すには十分な雷雲の量。
「ちょ、ちょっと、タイランテス! 私を掴んでる場合じゃないよ! アレ、あなたも死ぬレベルの大きさよ!?」
「なに!? ちょっと待てカーデュアル!」
その言葉にカーデュアルが少しだけ微笑んだように見えた。笑いを噛み殺すように。
「さようならアルトラ、とても目障りでしたよ。タイランテスは……まあ運が良ければ助かるかもしれませんね。【巨人屠りの雷嵐】!」
凄まじい数の集溜する雷雨。
雷の衝撃で、私とタイランテスが立っていた場所の地面が隆起し、砕かれ、一部は通電の熱で蒸発、地中へ向かって穴が開く。
「ギャアアアアァァアァ――」
隣で発せられるタイランテスの悲鳴。
落雷の光で明滅してしまってシルエットしか見えないが、黒いヒトの塊が痙攣して激しくのたうち回ってるのが見える。
「――アアアァァアァ!! ………………」
悲鳴が聞こえなくなった……気絶?……で済んでれば良いが……
「テメェ、アルトラ! 追いかけてきやがったのか! しつけぇ女だな!」
「『重要ポイント』だと……? いつから話を聞いてたんだ? この私の魔力感知にすら気付かれずここまで近付かれていたのか? ……全く……毎度毎度私の邪魔ばかりしてくれて、本当に嫌な方ですね、貴女……」
【不可視化】で身体を透明にしてしばらく話を聞いていた。
それと、まだ【魔力遮断】の効果が残ってるのか、私の魔力を捉えられないらしい。
「そりゃどうも。悪人にそう思われてるんならむしろ褒め言葉だわ。カーデュアル、あなたに二つ聞きたいことがある、森に倒れていた三人を黒焦げにしたのはあなた?」
「三人? ああ、この町に来てから私の周りを常にウロチョロしてたあの三人ですか。いい加減うざったくなったので黙ってもらいました。町中で殺るにはリスクがありましたが、あの場所ならヒトの目もありませんでしたからね」
多分、自分の同僚か部下なのに、全く躊躇もせずに黒焦げにできるのか……
「じゃあもう一つ、エールデさんに恨みでもあったの?」
「? いいえ? なぜ恨みがあったと思ったのですか? 彼は良い上司ですよ。ただ虫唾が走るくらい癪に障る良い上司でしたがね」
「何で頭を狙った? 戦闘不能にするだけなら他に狙えるところはあったでしょ?」
「何で? 彼が死ねば順当に私かエトラックが隊長に繰り上がりますから。合理的に考えて妨害以上の利益を考えただけですよ。後々私が隊長に選ばれなければエトラックにも同じことをしただけです」
今まで上司として仕えていたヒトを簡単に切り捨て、平気で他人を蹴落とせるなんて……社会不適合の方のサイコパスってヤツか……
このタイプは今まで私の周りに居たことなかったから、初めて関わり合いになるわ。できることなら一生涯遭遇したくなかったタイプ。
その時、妙な音がする。
『キイィィィン』という高い音。
「…………何これ?」
いや、この音聞き覚えがある。
デスキラービーの紫が発してた、エネルギーを溜める時の音だ! (第346話参照)
「気付くのが遅かったですね。永遠にさようなら」
カーデュアルがポケットから握り拳大の石を出す。
私がそれに気付いた瞬間、投げるモーションに入らず、手首を少し上に曲げたと思ったら、次の瞬間手首を縦に振るだけという最小の投擲モーションで投げ付けられた。
十分な電気エネルギーを蓄えたソレは目では捉えられない速さで一直線に私に向かって来る!
避けるのも間に合わず、咄嗟に防御姿勢を取るもその石は私に直撃し、それでも勢いは収まらずそのまま押されるように遠くまで飛ばされてしまった。
◇
「うおぉぉ……ビックリしたぁ……会話してる間にエネルギーを溜め込んでるとは……抜け目無いな……」
きっと普通の亜人ならバラバラになってる威力だ。
一体どれくらい飛ばされた?
五百メートル? 七百メートル? 一キロくらいだろうか?
これくらいの距離なら【次元歩行】で移動すればすぐに元の位置へ戻れる。ってことで――
――移動した。
元の位置に戻ってみると、二人とも私を片付けたと思っているのか、暢気に樹の国の方向へ向かって歩いてる最中だった。
「おい、今のってエールデにやったのと同じ攻撃か? アイツ顔が血まみれになってたし、てっきり貫通するような攻撃だと思ってたけどよう、アルトラどっか行っちまったぞ?」
「そのはずですが……投げた石と一緒にどこかへ行ってしまいましたね。小柄でしたし、小人種のように身体が硬いのでしょうか? まあ巨人のエールデですら瀕死の重傷を与えた攻撃ですから、生きてはいないでしょう。全く目障りな小娘でしたね」
「はい、目障りな小娘のご帰還で~す」
「「 ………………!!? 」」
後ろから声をかけると一呼吸置いて、タイランテスが特大のリアクション。
「ななななな、何だと!? どうなってんだ!? おい、カーデュアル! 女だと思って手加減したのか!?」
「い、いえ、そんなはずは……た、確かに直撃したはずだ! なぜあれが直撃して死なない!? 全く訳の分からんヤツだ! 全く何度も何度も俺の前に顔を見せやがって、全く頭に来る小娘だなぁぁ!!」
「全く全く」ってコイツの口癖か?
一人称も『私』から『俺』になってるし、カーデュアルの紳士然としていた口調が崩れ始めたみたいだ。
「タイランテス!! このまま付いて来られるのも目障りだ、ここで殺ってしまうぞ!」
「お……おう……オメェ、いつもと違うぞ、ダイジョブか?」
やはり態度がおかしいらしく、タイランテスが若干引き気味。
「でも、あなた程度じゃ、私は倒せないよ」
「さっきの竜人が私の真の姿だと思ってるんですか?」
「え? 違うの?」
フリアマギアさん情報ではそういうことだったはずだけど……
「さっき石を投げ付けた時に思い知りましたよ……。貴女が何の種族なのか分かりませんが、その身体はかなり頑丈で少々面倒な生物のようだ。本気で相手をしてさしあげます」
そう言ったカーデュアルの身体がどんどん巨大化していく。
「おぉ……!」
出現したのは黄色光りするドラゴン。
「……イエロードラゴン……だったのか……。さっきの竜人は仮の姿だったのね……」
魔力の性質がアランドラ隊長に似ていると思っていたが、周囲に感じさせる魔力まで隠蔽してたってことなのか。
「面白ぇ! 今度こそ叩き潰してやるぜぇ!」
タイランテスがニヤリと笑い、カーデュアルに続いて巨大化。
目の前に某特撮ヒーローほど (四十メートルほど)の巨人と、五メートルほどの黄色光りするドラゴンが立ち塞がる。
「エ、エールデさんを、守護志士のヒトたちをも騙してたってこと!?」
「その通りです。自分の手の内をひけらかすのは莫迦のやることですからね。能ある鷹は爪を隠すというヤツです」
「………………」
「どうしました? 突然黙って。恐怖で声も出ませんか?」
「…………いや~、タイランテスと比べると迫力に欠けるな、って。あなたより大迫力のタイランテスが後ろに立ってるから、え~と……何と言うか……あなたは大分小さく見えるわ……」
傷付けないように言葉を選んでしゃべったが、結局のところ『小さい』と言ったのは変わらない。
背の高さ八分の一だと流石にねぇ……
タイランテスが後ろに立ってなきゃ十分でっかいんだけど……相対的に小さく見えてしまう……
「わはははは、核心を突かれちまったな! まあ気にするなよ」
「…………いちいちムカつく小娘だ! 身体は小さくとも能力はタイランテスより上だ!!」
「何だと!? お前みたいな小さいのが俺より上のわけねぇだろ!」
「…………試してみますか?」
何か知らんが私を蚊帳の外にして罵り合いが始まった……このまま同士討ちしてくれれば楽なんだけど……
「上等だぁぁ!! エールデに散々殴られてムカついてんだ! やってやるよ!!」
とタイランテスが拳を振り上げた瞬間、カーデュアルが制止する。
「……ストップ、お互い少し落ち着きましょう。私と貴方は協力関係、今の敵はアルトラです。議論はその後にしましょう」
「お、おう……そうだったな」
思惑通りにはいかなかったか。口喧嘩し始めたタイミングで隠れてれば、矛先がこっちへ帰って来なかったかな?
もう一度けしかけてみるか。
「何だ、もう終わり? 一度振り上げた拳を下すなんて情けないのね。あ、負けると思ったから退いたのかなぁ?」
「なんだとテメェ!!? カーデュアル! やっぱり白黒つけようぜ! このままじゃ納得行かねぇ!」
「あんな安い挑発で怒らないください。思う壺ですよ」
すぐにカーデュアルに止められてしまった。
流石に二回目は鎮静剤がすぐ止めるからダメか。
「じゃあ、怪獣大決戦とでもいきましょうか」
私も【巨人化】を使い大きくなる。
「「 なっ!? なんだと!? 」」
二人同時に素っ頓狂な声を上げる。
「お、お前巨人族だったのか!?」
そして、弟と全く同じセリフを吐く兄。
私が巨人化したことにより、十三メートルほどの大きさになり、その結果カーデュアルを見下せる大きさに。
「!!?」
今度はカーデュアルが私の顔を見上げて絶句している。
「ど、どういうことだ? アルトラルサンズの国家元首がデミタイタンだなんて話聞いてないぞ? 本当に巨人だったのか? ………………だ、だがデミタイタンの割には大分小さいな……私より少し大きい程度じゃないか、ハハ……ドラゴンである私なら十分対応できる範囲だ」
自分より約二.五倍ある身長を『少し大きい程度』と捉えるのか?
巨人に対しても対抗できるくらいの自信があるからそう言えるのかな?
「面白ぇじゃねぇか!! 的が大きくなった分当てやすくなったんじゃぁねぇのぉ?」
しゃべりながら不意打ちで右拳を振り上げる。
一度不意打ち喰らってるが (第529話参照)、相変わらず狡い男だ。
それにしてもコイツ、さっきエールデさんにタコ殴りにされてたのに、心をへし折られたりはしていないらしい。随分と自信家だな。
などと余計なことを思考できてしまうくらい攻撃がノロい。
自分が巨人化してても感じるタイランテスの攻撃の遅さ。いくら攻撃力あっても私には当たらんわ。
それを落ち着いて受け流そうと向かってくる拳に手を添えた瞬間、
「!!? …………重たっ!!」
自分も巨人化してるから簡単に受け流せるかと思いきや、予想以上の重さを感じ押し負けないように必死に受け流す!
そうしたところ――
「え?」
――受け流した拳は、その軌道上に居たカーデュアルの首筋にぶち当たった!
「ぐえぇっ!!」
勢いが付いたタイランテスの右ストレートを喰らい、数十メートル吹っ飛んで行った。
「あ、当たっちまったぁ……だ、大丈夫かカーデュアル!!」
「う……く……ドラゴン形態でなければ死んでいた……」
自分の八倍も身長が高いヤツに攻撃されたのに吹っ飛ばされる程度で済むなんて……
八倍の身長差を人間大で例えるなら、人間が猫を本気でぶん殴ったようなもんだと思うんだけど……ドラゴン形態って相当頑丈なのね。
「クソッ! コイツ! 巨大化してもちょこまかしやがって!」
そんなに動いちゃあいない。攻撃の矛先を反らしただけだ。
「もう許せねぇ!! 喰らえオラァッ!!」
なおもがむしゃらに連続で攻撃してくる両手を、回避し、振り払い、受け流す。
「あ、当たらねぇぇぇぇ!! ……くそっ! エールデと言い、コイツと言い、何で攻撃受け流すヤツばかりなんだ! もっと正々堂々正面から戦えやぁぁッッ!!」
『さっき不意打ちした男がそれを言うか?』と考えていると、上段蹴りが来た。
これも落ち着いてしゃがんで躱す。
すると、体勢を立て直した直後に目の端に大量の光る弾が見えた。
「!?」
そちらに顔を向けると、雷エネルギーを帯びていると思われる石つぶてが散弾のようにこちらに向かってきている。エネルギーが分散しているのか、先ほど投げられた石のように早くはないが、このままの軌道だと確実に私とタイランテスに当たる!
急いで土魔法を使い、タイランテスをも囲んだ岩壁を作り出して防御。光る弾丸は岩壁に次々に突き刺さり、どんどん削られていく!
岩に刺さって貫通したものを見ると、それは石ではなかった。
「これ、黄色のウロコだ……高速で投げられたとは言え、岩をボロボロに砕くなんて何て硬いウロコ……」
光る弾丸が飛んで来た方向を見ると、放ったのはカーデュアル。自身のウロコを投げ付けたらしい。
フレアハルトも自身のウロコを武器にして振り回していたのを見たことがある。ドラゴン族がウロコを武器に変質させるあの方法と同じものだろう。 (第400話、第469話参照)
「コイツ、仲間に当たる可能性があること分かっててやってるのか!?」
もしかして内心では全く仲間だとは思っていないのだろうか?
タイランテスはコイツでカーデュアルのそんな意図にも気付いていないのか、なおも必死の形相で私を追撃しようとしているし。
タイランテスの右ストレートを避け、少し距離を開けたが、光の弾丸が岩壁を削ったことで辺りには砂煙が充満。
視界が遮られるも、再び目の端で不自然な砂煙の盛り上がりを確認。
直後にタイランテスが砂煙を掻き分けてその巨体でタックルを繰り出してきた。
が、咄嗟にバックステップ後、上に跳んでタイランテスの後頭部を踏み付け、背中側へ飛び下りた。
これにより砂煙の外には出たが、目の前にカーデュアルが居るポジションに着地した。
直後にカーデュアルから不意打ちのように尻尾振り攻撃。
「うわっ!」
これは流石に攻撃範囲が広すぎて受け流せない。でも、巨人化したこの身体なら。
尻尾を腹の前でガッチリ受け止め、勢いが無くなったところを掴んで、ジャイアントスイングのごとくカーデュアルを振り回す。
「うおぉぉお?」
そしてジャンプして地面に叩き付けた!
「ぐはッ!!」
タイランテスの方を見ると、巻き上がった砂煙は収まっており、まださっきの場所に佇んでいた。
何で動かないのかとよく見ると――
「ぐぬぬぬぬぬ……」
――歯を食いしばって、こめかみに物凄い青筋立ててる……
まだ静かにしてるが内心激怒しているらしい。流石に頭踏まれたのはかなりムカついたか?
「ムッッッッッカつくやろうだッッッ!! だったらこれで潰れろやぁッッッ!!」
突然タイランテスの腕が延びたと思ったら、私の身体全体を両手でガッチリ掴んできた。
いや、良く見ると土や岩がくっ付いて腕の形を形成しているらしい。
「チビ野郎がッ! このまま握りつぶしてやるぁッ!! 今更命乞いしても無駄だぜぇ?」
……
…………
………………
しばらく力を込めて握り続けられるものの――
「な、何だ!? 潰れねぇ!? こんなに小さい身体なのに!? どうなってやがる!!」
――身体特性のお蔭で潰れることはない。が、この拘束から逃れるのは大分困難だ……体格が違い過ぎて全然動ける気がしない……
巨人化で条件が同じってことは、百四十センチの女vs二メートル+αの筋骨隆々の男が放った圧殺型の土魔法でがっちり握られてるのと同じなわけだから、動けるはずがない。
内側から岩石の腕を壊そうと試みるものの、現在進行形で魔力を流して発動しているものだからなのか、壊すこともできない。
「ぐぎぎぎぎぎ……」
「そのまま捕まえててください!」
「おうよ! 良い考えがあるんだな!?」
カーデュアルが両翼を光らせ、何かをするつもりらしい。
凄い魔力の高まりを感じ、数秒で雷雲が形成され始める。
今の時間帯は明け方に近い、白んできていた空があっという間に濃い雷雲で埋まり辺りが真っ暗になった。
「おぉ!? すげぇ雷雲の量だな!」
「あれって……サンダラバードの空間魔法災害の時の十分の一くらいあるんじゃ……?」 (詳しくは第5章 雷の国エレアースモの異常事態編参照)
雷雲なんて少し集まっただけでも普通の亜人には危ないものなのに、ここにはあっという間に五キロ四方はありそうなくらいの雷雲が集まった。
コイツ、雷雲まで操るのか……あれは見るからにヤバイ……電気に耐性の無い生物を殺すには十分な雷雲の量。
「ちょ、ちょっと、タイランテス! 私を掴んでる場合じゃないよ! アレ、あなたも死ぬレベルの大きさよ!?」
「なに!? ちょっと待てカーデュアル!」
その言葉にカーデュアルが少しだけ微笑んだように見えた。笑いを噛み殺すように。
「さようならアルトラ、とても目障りでしたよ。タイランテスは……まあ運が良ければ助かるかもしれませんね。【巨人屠りの雷嵐】!」
凄まじい数の集溜する雷雨。
雷の衝撃で、私とタイランテスが立っていた場所の地面が隆起し、砕かれ、一部は通電の熱で蒸発、地中へ向かって穴が開く。
「ギャアアアアァァアァ――」
隣で発せられるタイランテスの悲鳴。
落雷の光で明滅してしまってシルエットしか見えないが、黒いヒトの塊が痙攣して激しくのたうち回ってるのが見える。
「――アアアァァアァ!! ………………」
悲鳴が聞こえなくなった……気絶?……で済んでれば良いが……
0
あなたにおすすめの小説
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
ひきこもり娘は前世の記憶を使って転生した世界で気ままな錬金術士として生きてきます!
966
ファンタジー
「錬金術士様だ!この村にも錬金術士様が来たぞ!」
最低ランク錬金術士エリセフィーナは錬金術士の学校、|王立錬金術学園《アカデミー》を卒業した次の日に最果ての村にある|工房《アトリエ》で一人生活することになる、Fランクという最低ランクで錬金術もまだまだ使えない、モンスター相手に戦闘もできないエリナは消えかけている前世の記憶を頼りに知り合いが一人もいない最果ての村で自分の夢『みんなを幸せにしたい』をかなえるために生活をはじめる。
この物語は、最果ての村『グリムホルン』に来てくれた若き錬金術士であるエリセフィーナを村人は一生懸命支えてサポートしていき、Fランクという最低ランクではあるものの、前世の記憶と|王立錬金術学園《アカデミー》で得た知識、離れて暮らす錬金術の師匠や村でできた新たな仲間たちと一緒に便利なアイテムを作ったり、モンスター盗伐の冒険などをしていく。
錬金術士エリセフィーナは日本からの転生者ではあるものの、記憶が消えかかっていることもあり錬金術や現代知識を使ってチート、無双するような物語ではなく、転生した世界で錬金術を使って1から成長し、仲間と冒険して成功したり、失敗したりしながらも楽しくスローライフをする話です。
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
※タイトルはそのうち変更するかもしれません※
※お気に入り登録お願いします!※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる