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第18章
第514話 ネッココパニック!
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壊した内壁あったところの外側へ木枠を立て、配線を敷き始めた。
「じゃあ、私はちょっとリーヴァントと打ち合わせに行って来るから、あとお願いね」
「はい」
◇
そして数時間後――
今度出来たと言う小学校の内検へ行くための打ち合わせをリーヴァントとした後、戻ってくると――
屋根は取り除かれて剥き出し、家の中は穴だらけになってました……
「こ、こんな穴だらけにして住み続けられるのかしら……」
内壁が全て取り除かれ、柱と外壁で建っている状態。間に木枠が沢山設置されてるから天井が落ちてくることは無いようだが……
その天井にも真ん中辺りに穴が開いていた。多分電灯を付けるための穴と思われる。
カイベルがやることながら、今までより規模が大きい分ちょっと不安に感じていると、庭で昼寝していたネッココが私より少し早く帰って来ていたらしく、部屋の中央辺りでウロウロと行ったり来たりしながら狼狽しているのが目に入った。
『なに!? 何で壁壊れてるの!? 天井にも穴!? 誰がやったの!? 何者かの襲撃!? アルトラどこ行ったの!? カイベルはどこ!?』
何も知らされていなかったネッココ、家の中に誰も居ないため、大いにパニックである。
が、その焦りようとは裏腹に、小人のような大きさの彼女のその動きは何だか可愛くもある。
少ししてネッココの焦りの声が聞こえたのか、
「私ならここです」
と、天井に開いた穴からカイベルが顔を覗かせる。
『何やってるの!? カイベルが壊してるの!? ご乱心なの!?』
どこで覚えてくるんだろう、こういう言葉……
ソロソロとネッココに近付き、後ろから声をかける。
「ただいまネッココ。だ、大丈夫よ。今家をバージョンアップしてる最中なの」
心配している私が言うのもなんだけど……
『アルトラ!? どこ行ってたの!? それホント!? ホントに大丈夫なの!? どう見たって壊してるように見えるけど!? さっきからメリメリメリメリ言ってるわよ!? 私追い出されたりしないよね!? 追い出されたら私はどこへ行ったら良い!? ああ……追い出されたらどこで生活しよう!! 捕まって擦り下ろされたりしないかしら……!?』
不安な未来をめちゃくちゃ早口で捲し立ててる……
『メリメリメリメリ』ってのは木を剥がす音とかかな?
「大丈夫、追い出すようなことにはならないから」
不安的な想像が飛躍しているネッココを宥める。
心配なのかネッココが私の隣でカイベルの様子を観察し始めた。
「ところでいつもより帰って来るの早いじゃない。どうしたの?」
『そんなの! 自分が住処にしてる家から聞いたことない音が聞こえてるんだから心配になって目が覚めちゃったのよ!!』
リディアは遠くへ行ってるからともかく、ネッココは庭で寝てたんだから出かける前に言っておくべきだったかな……
『それで、バージョンアップって何してるの!?』
「うちでも電気使えるようにしようと思ってね、今その設備を整えてもらってるの」
『ふ~ん』
何か反応薄いな。どうでも良いのかな?
「特に気にならない感じ?」
『だって電気ってアレでしょ!? 役所とかで建物内が光ってるヤツ! あんなのアルトラがいつもやってる光を天井まで浮かべるのと大した違いないじゃない!』
ああ、ネッココにとってはそういう認識なのか。
「でも私が帰るの遅くなったら、家の中真っ暗でしょ? 電気使えるようになったら自分たちで明かり点けられるようになるのよ?」
『そうなの!? 暗くなると元気出ないから、自分でも明かりが点けられるなら凄く有りだわ!!』
植物だから暗くなると動きづらくなるのかな? だから真っ暗になって動きづらくなる前に家の中に入って来るのか。
でも、魔界なんて常闇の世界なのに動きづらい生態をしてるのか?
そういえば、ユグドの大森林内って光を咲かせる花のお蔭で大分明るかったから、この子らも暗さが苦手なように進化したのかもしれないな。
「それにね、電気って明かり点けるだけじゃないから、生活が変わるかもよ?」
『何ができるの!?』
「エアコンとか扇風機とか使えるようになる」
『それはなに!?』
「涼しい風を起こしてくれる機械よ。夏にあると涼しいよ」
『夏に? 私、ここに居て暑いと感じたこと無いけど!?』
そういえば……夏はずっと熱バリア張ってるから、私も暑かった記憶無いな……
町に出れば暑さを享受していたけど……
「じゃ、じゃあ冷蔵庫使えるようになったりとか! オレンジジュースだって冷えてて美味しくなるかもよ?」
『冷蔵庫って、今だってあるじゃない! アルトラが物質魔法と氷魔法で作った箱が! アレが冷蔵庫なんじゃないの!?』
「ん? う~ん……」
考えてみれば確かに……魔法で作れてるんなら別に買う必要も無いしな……しかも私が作ったヤツは電気使わんし。
「じゃ、じゃあコタツは? 冬は暖かいよ!?」
『私、まだその“冬”っての経験してないから分からないのよねぇ……去年の冬はどうしてたの!?』
「そういえば……普通に魔法でコタツを作って……」
『………………うちに電気って必要無いんじゃない?』
「いやいや、料理とかにも使えるし!」
『カイベルじゃダメなの!?』
それ言ったら、『全部カイベル一人居れば良い』って結論に収束しちゃうし……
と思っていたら思わぬところから援護射撃が。
「私も電気があれば便利になって助かりますね。特に料理と洗濯と掃除は電気があると無いとでは大きく違いがありますので」
と答えるのは、いつの間にか天井から降りて来ていたカイベル。
そうは言ってるが、私は知っている。料理にしても掃除にしてもカイベルには多分電化製品は必要無い。
この援護射撃は、多分私を擁護するために言ってくれたことだと思う。
料理は絶妙な火魔法を操り、電気コンロやオーブンレンジ・トースターを必要としない。
掃除も絶妙に風魔法をコントロールして、竜巻のような魔法に掃除したゴミを吸い込んでゴミ箱へ捨てているのを見たことがある。掃除機無くても掃除機のような吸引力を操っているのだ。そのため掃除機も必要としない。
唯一洗濯だけは、洗濯機にかけて放置して別のことができるからカイベルの助けになるかどうかってところ。
まあ、要するに彼女一人居ると電気で便利になる部分の大部分が必要無くなるらしい。
「ま、まあカイベルがこう言ってるくらいだから、電気は無いよりあった方が良いのよ」
と、一応援護射撃に合わせておく。
『ふ~ん……まあ、私たちが明かりを点けられるようになるってだけでも凄く良いわ! いつ完成するの!?』
「一週間ほどかかると思います」
『一週間ね! 今から明かり点ける時が待ち遠しいわ!』
「でも、一週間後に電気が通ってるかどうかはまだ分からないけどね」
『どういうことなの!? 電気ってもう使えるもんじゃないの!? 役所の電気ってどこから来てるの!?』
「あれはあそこだけで使えるように設備を整えてあるの。一週間後にダムが稼働しててくれれば、うちでも使えるようになってるよ」
日が落ちてきたため、リディアが帰って来た。
「ただいマ……うわっ! 何だコレ!? 何でこんなんなってんダ?」
壁が取り払われ、穴だらけになっていることをリディアにも説明。
「ふ~ん、遂にうちにも電気が来るんだナ!」
◇
その日の晩――
いつものようにクリューが夕御飯を食べに来た。
「…………アルトラ……何ですか、あのブルーシートで覆われてる場所は? しかも家中に」
「今電気工事中でね、今日の作業を中断したからブルーシートで覆ってるの」
「…………ああ、アルトラの家でも工事してるんですね。今、アルトレリアの町中で電気工事ブームですからね……私も何でも屋の従業員なんで駆り出されてますよ。しかし、色んなところが剥き出しで、そんな中でご飯食べてると変な感覚に陥るのですが……何だか出先の作業現場で食べてる感覚がしますよ。隙間風とかどうしてるんですか?」
「家の周りに風バリアで……」
「雨降ったらどうするんですか?」
「雨は降らない予報らしい。仮に降った場合は水バリアで……」
「…………カイベルが規格外ですけど、アルトラも十分便利な生物ですよね」
「“便利”って言葉には引っかかるけど、褒め言葉として受け取っておくわ」
「ところで、風も雨も魔法で防げるなら、あのブルーシートって意味あります? あれって風雨から守るためにかけておくものですよ?」
「う、うん……見た目が穴だらけだから一応隠しておこうかなって……」
「で、どれくらいこの状態が続くんですか? 二週間ですか? 三週間ですか?」
「一週間くらいらしい」
「一週間!? 私も電気設備の敷設の手伝いに行きますけど、普通一週間でなんてできませんよ!?」
「そこはまあ……」
と、カイベルへ目配せする。
「あ、ああなるほど。彼女ならたった一週間で終わるんですね。流石カイベル……」
「じゃあ、私はちょっとリーヴァントと打ち合わせに行って来るから、あとお願いね」
「はい」
◇
そして数時間後――
今度出来たと言う小学校の内検へ行くための打ち合わせをリーヴァントとした後、戻ってくると――
屋根は取り除かれて剥き出し、家の中は穴だらけになってました……
「こ、こんな穴だらけにして住み続けられるのかしら……」
内壁が全て取り除かれ、柱と外壁で建っている状態。間に木枠が沢山設置されてるから天井が落ちてくることは無いようだが……
その天井にも真ん中辺りに穴が開いていた。多分電灯を付けるための穴と思われる。
カイベルがやることながら、今までより規模が大きい分ちょっと不安に感じていると、庭で昼寝していたネッココが私より少し早く帰って来ていたらしく、部屋の中央辺りでウロウロと行ったり来たりしながら狼狽しているのが目に入った。
『なに!? 何で壁壊れてるの!? 天井にも穴!? 誰がやったの!? 何者かの襲撃!? アルトラどこ行ったの!? カイベルはどこ!?』
何も知らされていなかったネッココ、家の中に誰も居ないため、大いにパニックである。
が、その焦りようとは裏腹に、小人のような大きさの彼女のその動きは何だか可愛くもある。
少ししてネッココの焦りの声が聞こえたのか、
「私ならここです」
と、天井に開いた穴からカイベルが顔を覗かせる。
『何やってるの!? カイベルが壊してるの!? ご乱心なの!?』
どこで覚えてくるんだろう、こういう言葉……
ソロソロとネッココに近付き、後ろから声をかける。
「ただいまネッココ。だ、大丈夫よ。今家をバージョンアップしてる最中なの」
心配している私が言うのもなんだけど……
『アルトラ!? どこ行ってたの!? それホント!? ホントに大丈夫なの!? どう見たって壊してるように見えるけど!? さっきからメリメリメリメリ言ってるわよ!? 私追い出されたりしないよね!? 追い出されたら私はどこへ行ったら良い!? ああ……追い出されたらどこで生活しよう!! 捕まって擦り下ろされたりしないかしら……!?』
不安な未来をめちゃくちゃ早口で捲し立ててる……
『メリメリメリメリ』ってのは木を剥がす音とかかな?
「大丈夫、追い出すようなことにはならないから」
不安的な想像が飛躍しているネッココを宥める。
心配なのかネッココが私の隣でカイベルの様子を観察し始めた。
「ところでいつもより帰って来るの早いじゃない。どうしたの?」
『そんなの! 自分が住処にしてる家から聞いたことない音が聞こえてるんだから心配になって目が覚めちゃったのよ!!』
リディアは遠くへ行ってるからともかく、ネッココは庭で寝てたんだから出かける前に言っておくべきだったかな……
『それで、バージョンアップって何してるの!?』
「うちでも電気使えるようにしようと思ってね、今その設備を整えてもらってるの」
『ふ~ん』
何か反応薄いな。どうでも良いのかな?
「特に気にならない感じ?」
『だって電気ってアレでしょ!? 役所とかで建物内が光ってるヤツ! あんなのアルトラがいつもやってる光を天井まで浮かべるのと大した違いないじゃない!』
ああ、ネッココにとってはそういう認識なのか。
「でも私が帰るの遅くなったら、家の中真っ暗でしょ? 電気使えるようになったら自分たちで明かり点けられるようになるのよ?」
『そうなの!? 暗くなると元気出ないから、自分でも明かりが点けられるなら凄く有りだわ!!』
植物だから暗くなると動きづらくなるのかな? だから真っ暗になって動きづらくなる前に家の中に入って来るのか。
でも、魔界なんて常闇の世界なのに動きづらい生態をしてるのか?
そういえば、ユグドの大森林内って光を咲かせる花のお蔭で大分明るかったから、この子らも暗さが苦手なように進化したのかもしれないな。
「それにね、電気って明かり点けるだけじゃないから、生活が変わるかもよ?」
『何ができるの!?』
「エアコンとか扇風機とか使えるようになる」
『それはなに!?』
「涼しい風を起こしてくれる機械よ。夏にあると涼しいよ」
『夏に? 私、ここに居て暑いと感じたこと無いけど!?』
そういえば……夏はずっと熱バリア張ってるから、私も暑かった記憶無いな……
町に出れば暑さを享受していたけど……
「じゃ、じゃあ冷蔵庫使えるようになったりとか! オレンジジュースだって冷えてて美味しくなるかもよ?」
『冷蔵庫って、今だってあるじゃない! アルトラが物質魔法と氷魔法で作った箱が! アレが冷蔵庫なんじゃないの!?』
「ん? う~ん……」
考えてみれば確かに……魔法で作れてるんなら別に買う必要も無いしな……しかも私が作ったヤツは電気使わんし。
「じゃ、じゃあコタツは? 冬は暖かいよ!?」
『私、まだその“冬”っての経験してないから分からないのよねぇ……去年の冬はどうしてたの!?』
「そういえば……普通に魔法でコタツを作って……」
『………………うちに電気って必要無いんじゃない?』
「いやいや、料理とかにも使えるし!」
『カイベルじゃダメなの!?』
それ言ったら、『全部カイベル一人居れば良い』って結論に収束しちゃうし……
と思っていたら思わぬところから援護射撃が。
「私も電気があれば便利になって助かりますね。特に料理と洗濯と掃除は電気があると無いとでは大きく違いがありますので」
と答えるのは、いつの間にか天井から降りて来ていたカイベル。
そうは言ってるが、私は知っている。料理にしても掃除にしてもカイベルには多分電化製品は必要無い。
この援護射撃は、多分私を擁護するために言ってくれたことだと思う。
料理は絶妙な火魔法を操り、電気コンロやオーブンレンジ・トースターを必要としない。
掃除も絶妙に風魔法をコントロールして、竜巻のような魔法に掃除したゴミを吸い込んでゴミ箱へ捨てているのを見たことがある。掃除機無くても掃除機のような吸引力を操っているのだ。そのため掃除機も必要としない。
唯一洗濯だけは、洗濯機にかけて放置して別のことができるからカイベルの助けになるかどうかってところ。
まあ、要するに彼女一人居ると電気で便利になる部分の大部分が必要無くなるらしい。
「ま、まあカイベルがこう言ってるくらいだから、電気は無いよりあった方が良いのよ」
と、一応援護射撃に合わせておく。
『ふ~ん……まあ、私たちが明かりを点けられるようになるってだけでも凄く良いわ! いつ完成するの!?』
「一週間ほどかかると思います」
『一週間ね! 今から明かり点ける時が待ち遠しいわ!』
「でも、一週間後に電気が通ってるかどうかはまだ分からないけどね」
『どういうことなの!? 電気ってもう使えるもんじゃないの!? 役所の電気ってどこから来てるの!?』
「あれはあそこだけで使えるように設備を整えてあるの。一週間後にダムが稼働しててくれれば、うちでも使えるようになってるよ」
日が落ちてきたため、リディアが帰って来た。
「ただいマ……うわっ! 何だコレ!? 何でこんなんなってんダ?」
壁が取り払われ、穴だらけになっていることをリディアにも説明。
「ふ~ん、遂にうちにも電気が来るんだナ!」
◇
その日の晩――
いつものようにクリューが夕御飯を食べに来た。
「…………アルトラ……何ですか、あのブルーシートで覆われてる場所は? しかも家中に」
「今電気工事中でね、今日の作業を中断したからブルーシートで覆ってるの」
「…………ああ、アルトラの家でも工事してるんですね。今、アルトレリアの町中で電気工事ブームですからね……私も何でも屋の従業員なんで駆り出されてますよ。しかし、色んなところが剥き出しで、そんな中でご飯食べてると変な感覚に陥るのですが……何だか出先の作業現場で食べてる感覚がしますよ。隙間風とかどうしてるんですか?」
「家の周りに風バリアで……」
「雨降ったらどうするんですか?」
「雨は降らない予報らしい。仮に降った場合は水バリアで……」
「…………カイベルが規格外ですけど、アルトラも十分便利な生物ですよね」
「“便利”って言葉には引っかかるけど、褒め言葉として受け取っておくわ」
「ところで、風も雨も魔法で防げるなら、あのブルーシートって意味あります? あれって風雨から守るためにかけておくものですよ?」
「う、うん……見た目が穴だらけだから一応隠しておこうかなって……」
「で、どれくらいこの状態が続くんですか? 二週間ですか? 三週間ですか?」
「一週間くらいらしい」
「一週間!? 私も電気設備の敷設の手伝いに行きますけど、普通一週間でなんてできませんよ!?」
「そこはまあ……」
と、カイベルへ目配せする。
「あ、ああなるほど。彼女ならたった一週間で終わるんですね。流石カイベル……」
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